新ODA大綱のもとで支援物資軍事転用
日本共産党の辰巳孝太郎議員は20日の参院ODA(政府開発援助)特別委員会で、昨年の改定で他国軍への支援を一部解禁した「開発協力大綱」の問題を取り上げ、支援物資が軍事転用される危険性を追及しました。
辰巳氏は、ODAは非軍事に限定されているのに、「民生目的」などであれば他国軍への支援を容認した現大綱を批判。過去に供与した巡視船などが軍事利用されない担保があるのかただしました。
岸田文雄外相が、在外公館を通じたモニタリング(監視)などの取り組みしか示せなかったのに対し、辰巳氏は、昨年ベトナムの海上警察や漁業監視部隊に供与された中古漁船の事例を指摘。供与以前に、監視部隊は銃や爆弾の装備が認められており、「軍用武装が可能な機関に船舶を供与したということだ。軍事活動との境界線は非常にあいまいで、ODAの運用上、問題だ」と批判しました。
岸田外相は「しっかりモニタリングする」などと弁明するだけで、辰巳氏は「こうした供与はやめるべきだ」と強調。武器輸出を禁じた「武器輸出三原則」の撤廃や集団的自衛権の行使容認とともに、「『積極的平和主義』の名のもとに、ODAの精神も平和憲法もないがしろにするものだ」と主張しました。
2016年5月25日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
ODAの実施、運用について今日はちょっと質問したいと思うんですね。
ODAの実施は非軍事に限定をされなければならないわけでありますが、前ODA大綱では、援助実施の原則として、軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避すると、こうなっておりました。ところが、現開発協力大綱では、ここに加えて、民生目的、災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には、その実質的意義に着目し、個別具体的に検討すると。この実質的というのが非常に曖昧だという声も上がったわけであります。
この間、政府は、二〇〇六年にインドネシアに対してODAで巡視船を供与いたしました。また、二〇一五年、昨年ですね、ベトナムには中古漁船を漁業監視機関にODAで供与しております。これからフィリピンに多目的船十隻を供与するということになっております。
この巡視船供与の際に、軍事利用されない、こういう担保があるのかということをまず大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、我が国は、海洋国家として海洋における法の支配を重視する、こういった観点から、海上法執行機関等に対する巡視船等の装備の供与あるいは人材育成、こうしたものを通じまして、御指摘のように、インドネシア、ベトナム等に対しまして海上法執行能力向上を支援してきております。
そして、こうした巡視船等の供与に際しましては、開発協力大綱を踏まえて、軍事転用されないために、先方政府との間で、目的外使用あるいは第三者への移転、こういったことを行わないなど文書で同意を取り付けております。そして、供与後もこれをしっかり維持、確認しておかなければなりませんので、モニタリング等を通じて適切な使用を担保する、こういった取組を続けている次第であります。
○辰巳孝太郎君 モニタリングという話がありましたが、岸田外務大臣は同時に透明性を高める取組も必要だという話しされています。具体的にどういう取組なんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) この開発協力大綱ですが、新しい大綱におきましても、ODAを軍事目的に用いないというこれまでの原則、これは全く変わっておりません。
この原則との関係で、開発協力の透明性あわせて適正性、これを確保することが重要だということで、具体的な取組としましては、まずは、案件採択前の調査段階において、NGOを含めた民間の有識者から構成される開発協力適正会議、ここで御議論をいただき、そして議事録をホームページ上に公開しています。そして、先ほども申し上げましたが、相手国と取り交わす文書等の中で、軍事目的に使用しない、これを確認しております。そして、援助実施後も、我が国の開発協力が軍事的用途に使用されたり国際紛争助長につながったりすることがないように、相手国政府の協力も確保しつつ、在外公館を通じたモニタリングや事後評価を通じてしっかりフォローするとしています。
あわせて、JICAのホームページ上のODA見える化サイト、あるいは外務省のODAホームページ上で全ODA案件を公開する、あるいは開発協力白書、国別データブック、こういったものにも掲載する、こういったことを積み重ねることによって透明性と適正性、確保するよう努めている次第であります。
○辰巳孝太郎君 それでは、二〇一五年、去年にベトナムにODAで供与された中古漁船について確認したいと思います。
これはノンプロジェクト無償資金協力でありまして、南シナ海における海上法遵守のための監視体制の強化を図ることを目的にして、日本で使われていた船舶をベトナムの海上法執行機関、海上警察及び農業農村開発省、漁業監視部隊に供与するものでありました。
当然、軍事転用されることはないということだと思いますが、モニタリングはされましたでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) ベトナムに供与した中古船ですが、まず、一隻が海上警察の管理下で使用されています。これは適正に使用されているということが確認されています。残り五隻は海上警察又は漁業監視機関の管理下で活動開始に向けた補修中又は補修手続中であると承知をしております。
○辰巳孝太郎君 これから使われる予定だということなんですが、現地の報道によりますと、ベトナム国内で武器、弾薬、補助武器の使用管理法令の改正が行われ、二〇一三年ですが、この漁業監視部隊が現在使用できるのは催涙スプレーとか麻酔剤とかレーザーとかスタンガンなどに限られていますが、今後は銃や爆弾、弾薬などの軍用武器の装備を可能にするものの改正が行われたと。昨年の一月には、漁業取締り部隊用の軍用武器と補助武器の装備、管理、使用に関する共同通達が発効し、漁業取締り船でこれらの武器の使用が正式に可能になったと、こういう報道がされておりますが、このことは確認されていますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) ちょっと、今御指摘のベトナム側の方針については私は詳しく直接承知はしておりませんが、いずれにしましても、我が国のODAにより供与した巡視船及び中古船に先方が武器等を搭載することについては、海上警察による海上法執行活動等のために真に必要と判断される範囲内かどうか、こういった判断に基づくものであると思います。
先方が武器等を搭載する場合、我が国としましては、モニタリング等を通じて、目的外使用等が行われない、こういったことをしっかりと確保していく、こういったことによってフォローしていくべき問題であると考えます。
○辰巳孝太郎君 私が伺いたいのは、警察行動と海上法執行ということなんですが、しかし、現にベトナムの法律では、武器、弾丸、爆薬などのこういった軍用の搭載が認められる法律になっているんじゃないかということなんですね。つまり、そういうところにODAで船を供与しているわけですね、日本から。これはやっぱり運用上問題ではないかということなんですけど、その点についてはどうですか。
○国務大臣(岸田文雄君) 肝腎なのは、その海上法執行活動のために真に必要なのかどうかということであると思います。
先ほども申し上げましたように、供与に当たっては、事前に文書等を通じまして、目的外使用あるいは第三者への移転、これは行ってはならないということを確認しています。海上法執行活動以外の目的に使用されるようなことがないようにしっかりとモニタリングをしていく、このことが重要であると考えます。
○辰巳孝太郎君 しかし、結局こういう法律ができたということであれば、海上活動、警察活動等、いわゆる軍事の活動の境界線が非常に曖昧になっていると。武器、弾薬を搭載できるようになっているわけですから、まさにそういうところにODAで供与するということの問題だと思います。
この間の武器輸出三原則の撤廃であるとか集団的自衛権の行使容認であるとか、また軍事転用されるおそれの極めて高い機関へのODA供与ですね、私は、積極的平和主義の名の下にODAの精神も平和憲法もないがしろにするものだということで、こういう運用は改めるべきだということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。