企業に公共データ 改定企業立地促進法 共産党反対
2017年05月25日
参院本会議で5月26日、改定企業立地促進法が賛成多数で可決・成立しました。日本共産党は反対。採決に先立つ25日の経済産業委員会で辰巳孝太郎議員が質疑と討論に立ち、約2千社の「地域経済けん引企業」に支援を集中する問題を追及しました。
改定法は、けん引企業に税制優遇や優良農地転用を認めるもの。けん引企業が自治体に条例改廃や公共データ提供を提案できる「地域版特区」制度も導入します。
辰巳氏は、都道府県の農業試験場が保有する種苗データや、学力テスト結果を企業の求めに応じて提供する可能性を質問。農林水産省の菱沼義久技術会議研究総務官が種苗データも「都道府県の判断で提供できる」と認めたため、種子法を廃止し、農業競争力強化支援法で「民間事業者への提供を促進する」なかで、さらに強力に規制緩和を進めるものだと批判しました。
世耕弘成経産相は、学テ結果の提供も「否定されない」と認めました。
辰巳氏は、自治体が条例で民泊の年間提供日数を定めても、けん引企業が法律の上限まで引き上げるよう提案できると指摘。「地方版特区」制度は、住民の命やくらし、環境保全より特定企業の利益を優先するものだと強調しました。
2017年6月8日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
企業立地促進法改正案について聞きます。
まず、地域牽引事業者の承認についてお聞きしてまいります。
政府は、まず最初に二千余りの企業を選定すると、こういうふうに言っていますけれども、まず、どのようにその二千社余りは選定されるのか、お答えください。
○政府参考人(星野岳穂君) お答え申し上げます。
地域未来投資促進法案における支援を効果的に進めていくためには、地域経済牽引事業の担い手を発掘するということが非常に重要だと認識しております。地域の企業の中には、ポテンシャルは高いものの自治体等から十分に認識されていない企業もあると考えておりまして、地域の関係者に対して地域中核企業の候補について政府が情報を提供することにより、まず、企業に対して地域未来投資促進法案の支援措置を活用した地域経済牽引事業への挑戦を促すことや、あるいは自治体、地域の産官学金のステークホルダーに対しまして、基本計画の策定や各地域での事業計画、環境整備に取り組む契機となる、きっかけとなるということを考えてございます。
この地域中核企業の候補の抽出に当たってでございますけれども、具体的な選定の基準というのはこれから今後詰めていくということになりますけれども、まず、RESASの企業データベースの活用ですとか、それから、経済産業省の地方経済産業局を始めといたしまして全国に所在する関係省庁の地方支分局による案件や情報の発掘、それから、地域の実情や特性を最も身近で把握しておられます自治体による案件の発掘あるいは情報収集などによって得られましたデータ、情報等を活用いたしまして、地域の中核企業の候補として約二千社程度を抽出して、この夏頃を目途に公表したいと考えているものでございます。
○辰巳孝太郎君 様々な政府の政策で、トップダウンでやっていって失敗した政策というのはたくさんあると思うんですよ。地域の実情、事業を一番よく知っているのは、私はやはり自治体だと思うんですね。
大臣に改めてお聞きしますけど、なぜ最初から企業選定過程に関わって自治体にさせないのか、これを聞きたいと思います。
○国務大臣(世耕弘成君) 自治体は、御指摘のように、地域の実情や特性を最も身近で把握していることから、地域中核企業の候補を抽出するに当たっては、自治体からも情報提供をいただきながら選定をしていきたいというふうに思っています。
一方で、先ほども申し上げたように、地域企業の中では、ポテンシャルは高いものの自治体から十分に認識されていない企業もあると考えておりまして、具体的な選定の基準の詳細は今後詰めさせていただくことになりますけれども、自治体の情報と併せて、RESASの企業データベースですとか帝国データバンクのデータですとか、あるいは経産省の地方経済局を始めとする全国に所在する関係省庁の地方支分部局によって案件を発掘することによって得られた情報などを活用して、地域中核企業候補として二千社程度を抽出して、夏頃を目途に公表したいと思っていますし、これは何も強制するわけでもないので、あくまでも候補ですから、あとは自治体が、最終的には自治体が判断をされるということになるんだと思います。
○辰巳孝太郎君 やはり当法案の立て付けを見てみますと、基本方針を策定した国が自治体の策定した基本計画を同意するということになっています。つまり、自治体が策定する基本計画は国の基本方針に沿うことが義務付けられているわけでありまして、強制することはないと大臣おっしゃいましたけれども、国が選定をした企業を外すことは、なかなか自治体にとって困難な状況が生まれかねないんじゃないかと私は思うんですね。
松村副大臣も、本年の第六回未来投資会議において、本年夏までに関係省庁一体で案件を発掘し、約二千社の地域中核企業の候補を発表するんだ、予算や税制、リスクマネー供給など政策を総動員し、今後三年間で約二千社を集中的に後押ししていきたいと、こういうふうに述べているわけですけれども、これでトップダウンに本当にならないのかということが非常に分からないんですね。
副大臣おっしゃる関係省庁一体で、この中に有識者会議という話も出てきているんですけれども、この中に自治体は含まれるんでしょうか。念のため確認したいと思います。
○政府参考人(鍜治克彦君) まず、国と自治体の関係でございますけれども、国が定めます基本方針というのは、地域経済牽引事業全体の促進の目標をどう設定していただくかでありますとか、あるいは地域の特性というのを例えばどういう基準でお選びいただいたらいいのかとか、ある意味この法律を使っていただく上でのベースとなりますいろんな基本計画の設計に対するまず方針を示させていただきまして、それに対して各自治体が、自分たちはこういうものを地域特性と考える、そういう枠組みで私ども国の方に同意を求めると、こういう立て付けでございますので、今委員御指摘のお話で、個別の企業A社、B社というものについて、別に国が一々同意を与えるわけではございません。あくまでマクロな、例えば長野県の飯田地域では、航空機産業の集積を自分たちの地域特性と認識して応援していきたいんだという長野県と飯田市からの基本計画に私どもが同意を与えると。その上で、A社、B社という個別の航空機プロジェクトの企業はあくまで県の方で認定していただいて、そこに国は介入いたしません。
ただし、じゃ、その航空機の企業A、Bというときに、非常に有名な企業もあるけれども、実はこの企業は精密加工でどんどん例えば三菱重工から受注を取っているというような企業が、私どもが、先ほど大臣申しましたビッグデータの中で結構そういう情報が、国として承知している情報がございますので、これはこれでお示しをするということでありますので、それぞれの役割に応じてこのスキームが回っていくのではないかと考えております。
その上で、副大臣に答弁いただきました関係省庁連絡会議、まさにこれまでの御議論でもございましたように、観光庁からは観光関係の様々な優良事例の御紹介をいただく、それを政府全体で取りまとめて、これも参考情報として自治体にお流しするということでございます。
それから、専門家の会議というのは、私ども経産省の中に設けます、二千社の発掘の際に、我々役人だけでやるのではなくて、やはりファンドの専門家でございますとか海外マーケットに精通した専門家でございますとか、こういう方々のお知恵を借りたいという、そういう整理になっております。
○辰巳孝太郎君 ですから、二千社を国が選定するといったときに、関係省庁という中には自治体は含まれないということだと思うんですね。ですから、やはりそのスキーム、流れから見るとトップダウンではないかと、こう言われかねないと思うんですね。
この法案については、様々、衆議院でも農地に関して質疑がありました。農水省は、地域未来投資促進法の施行に合わせて農地法の施行令を改正をし、これまで原則できなかった第一種農地、これの転用を認める、そういう方針を明らかにしております。
農水省に確認しますが、そもそも優良農地はなぜ原則転用が不可なんでしょうか。
○政府参考人(新井毅君) お答え申し上げます。
食料の安定供給は国の最も重要な責務の一つでございまして、平成二十七年三月に閣議決定されました食料・農業・農村基本計画におきましては、平成二十五年に三九%であった食料自給率を平成三十七年度に四五%に引き上げることが目標とされております。これを達成するため、食料自給率向上に向けた重点的な取組の一つとして、国民に対する食料供給のための生産基盤であります優良農地、これは集団的に存在する農地及び基盤整備事業対象農地でありますけれども、この優良農地の確保を推進するということとしているものでございます。
○辰巳孝太郎君 農業生産にとって最も基礎的な資源であって、食料自給率にも関わってくる、だから優良農地、原則転用不可なんだということでありました。
これに関わって多くの懸念が出されたと。大臣は、国が定める基本方針において、土地利用の調整について、まず既存の遊休地の活用を優先するよう明記している、このことが優良農地を確保させる歯止めになるということを繰り返しておられますけれども、これ果たして本当に、大臣、実効性あるんでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) この法案では、国が策定する基本方針等により、土地利用の調整のための仕組みを導入することによって遊休地の活用を図ることとしております。基本方針における土地利用の調整に関し配慮すべき事項として、遊休地の活用について明確化する予定であります。
具体的には、基本計画を策定する都道府県及び市町村、また土地利用調整計画を作成する市町村は遊休地の把握及び活用を促進する必要がある旨を基本方針に明記するとともに、本法案の土地利用調整の仕組みの中で基本計画等が基本方針に適合していることを国や都道府県が確認していくことになります。さらに、国においても、今後、工場適地調査の調査項目等を見直して、中規模以下の未分譲地や遊休地を調査の対象に加えることを検討していきます。また、これらの調査結果については、この法案の施行に向けて設置する地域未来投資促進サイトにおいて自治体や企業に対して情報発信を行って、遊休産業用地の活用を促進をしていくわけでございます。その上で、工場跡地への立地調査については、工場立地法に基づく工場立地動向調査も活用して把握をしていきます。
こうした取組によって、遊休地の活用の促進についてPDCAをしっかり回していきたいというふうに考えています。
○辰巳孝太郎君 ですから、大臣冒頭おっしゃったように、配慮なんですね。配慮した結果その場所しかないということになれば、これ優良農地の転用が認められてしまうということになります。しかも、地域経済牽引事業者側から土地利用調整計画の提案もできることになっているわけです。
現行規定、これを見てみましても、第十三条に、同意企業立地重点促進区域への工場等の立地に対し、農地転用の際の手続を省略できる規定というのがあります。基本計画に土地利用調整事項を定めているものは、現在で四十三計画あるわけですね。これに基づいて農地の転用が行われるとしているのは十六計画あるわけであります。この十六計画で農地転用された農地について、農地の種別と、そして転用面積はどうなっているのか、お答えください。
○政府参考人(星野岳穂君) お答え申し上げます。
現行の企業立地促進法の配慮規定といいますのは、自治体の基本計画に位置付けられた重点促進区域内におきまして農地法等による処分が迅速に行われるよう適切に配慮をするというものでございます。本規定はあくまでも手続の迅速化の規定でございまして、また、自治体の基本計画に位置付けられた重点促進区域内の農地で行う工場及び事業所等の整備全てが農地転用の迅速化の配慮の対象となっているものでございます。
このうち、重点促進区域内で実際に農地転用があったと承知しております十六計画につきましては、計画で合計約三百二十五ヘクタールの農地が基本計画に位置付けられているところでございまして、このうち、計画の段階で種別が明らかな百八十五ヘクタールの農地につきまして集計をいたしますと、少なくとも、第一種農地が約二十一ヘクタール、第二種農地は約十四ヘクタール、第三種農地が百五十ヘクタールでございまして、百八十五ヘクタールのうちの約八割を第三種農地が占めているという数字になってございます。
○辰巳孝太郎君 その中でも第一種農地があるわけですね。今回の改正案では更にそれを拡大強化するということになるわけであります。これでは、本当に優良農地というのはきちんと確保できないと私は思うんですね。
しかも、改正案第十七条では、土地利用調整の対象施設を現行第十三条の工場等から事業の用に供するに拡大をする、つまり用途制限なしだと。そして、配慮の内容を事務手続の迅速化から施設整備が円滑に行われるよう適切な配慮へと拡大しようとしているわけですね。つまり、これ、原則認められない優良農地の転用を含め、あらゆる支援を行えるようにするというのが今回の法改正の中身だというふうに思います。これでは優良農地は守れないと私は言わなければなりません。
続いて、この本法案第四条の二項六にある、事業者への自治体が持つ公共データの提供について取り上げたいと思います。
自治体が基本計画を定める際に、公共データの民間公開の推進、その他の地域経済牽引事業の促進に必要な事業環境の整備に関する事項について規定をすることができることになっております。
そもそも、この公共データの公開のニーズというのは一体どのようなものがあるんでしょうか。
○政府参考人(鍜治克彦君) 本法案におけます公共データの民間公開は、地域経済牽引事業促進のための事業環境整備の一環といたしまして、自治体の判断で基本計画に記載をしていただいた上で当該データを活用した事業を促進していただくということを想定しているわけでありまして、具体的なケース、ニーズとして今私どもが想定しておりますものとして、例えば会津若松市におきましては市内各所にセンサーを設置いたします。このセンサーから取得される公共車両の走行情報等のデータ、これが一義的には自治体に集約されるわけですが、このデータを公開することによりまして、いろいろな渋滞状況でございますとか、あるいは観光関係の様々な人流、物流の動きなどを把握することによって、そういうデータを生かしたビジネスへの活用の可能性を検証しようと。これは今、会津若松市の方で、市と関係する企業の方で連携してお取組を進められようとしております。
あるいは、北九州でございますけれども、ここではスタジアムにスポーツを見にお客様がいらっしゃるわけですが、そのお客様たちがスポーツの試合が終わって出てきた後どういう流れになるか、これをやはりセンサー等によりまして歩行者の様々な移動形態をフォローして、そこを見える化するとともに、その歩行者の方々に様々な逆に提案をすることによりまして、例えばスポーツミュージアムから即家に帰ってしまうのではなくて、レストランとかほかの施設に誘導するといったような、そういう新しいビッグデータ活用型の町づくり、これもお取組が進んでいるというふうに聞いております。
そういうような様々な公共データを活用した新しい町づくり事業、これに対しましてベースとなります公共データ、オープンデータ、これを使っていこうということを今回、この四条でもうたわせていただいておるところでございます。
○辰巳孝太郎君 公開方法なんですけれども、これインターネットその他の方法によりとあるんですけれども、これによらなくても、個社に、一社だけにこの公共データを渡すことは可能なんでしょうか。
○政府参考人(鍜治克彦君) 公共データの民間公開に当たりましては様々な手法があるわけでございまして、一般的には機械判読型のデータで様々な自由編集ができるような利用ルールの下でインターネットを通じて公開する、これがオープンデータの基本形ではあると思っております。
他方で、余り広く一般公開をすることが適切でないようなケースにおきましては、限定した関係者で共有を図る限定公開、こういう手法も、今後こういった官民にございます様々なデータの活用の手法の一つとしては活用の仕方があるということで考えられておるところでございまして、この個別の地域経済牽引事業の前提としての基本計画でどのようなデータの公開の仕方をしていくのかということにつきましては、一義的にはやはり当該地方公共団体の下で御判断いただくことになるのではないかと考えております。
○辰巳孝太郎君 つまり、可能だということなんですね。一般にインターネットで公開するということではなくて個社にということになれば、これは企業ですから、営利企業ですから、ほかの企業にこういう情報を渡したくないということになれば、うちだけに下さいということが可能になるということであります。
今日、資料にお付けしましたけれども、二〇一三年に経団連は公共データの産業利用に関するアンケート調査というのをしておりまして、それの結果なんですね。あくまでアンケートですから、ここには企業からどのようなニーズがあるのか、公共データが非常に高いニーズになっているということが示されており、不動産取引の判断材料の多様化、正確化なども活用の一例としているわけであります。これ、住民票とか、非常にパーソナルな情報も欲しいんだと、こう企業は思っているということなんですね。
大臣にお聞きしますけれども、これ、つまり基本計画で公共データの公開推進を規定することになる、その基本計画の実行のために選定された企業がデータが欲しいとなると、結局、これ拒めないんじゃないかと。推進の立場で、こういう公共データを公開することになるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) この法律では、自治体は、基本計画を推進する立場から、十五条に定めている手続によって、地域経済牽引事業の実施に当たって必要な事業環境の整備としてデータ提供を求められた際は適切に検討をすることが求められています。
一方で、このデータ提供の提案を受けた場合、地方公共団体の長は、地域経済牽引事業計画の実施に資するものであると認められ、かつ、当該提案を踏まえた措置を講ずる必要があるときにデータの提供を行うということになっていますので、必ずしもデータを提供しなければいけないという制度にはなっていませんし、そもそも、この法律に基づくデータの公開は地域経済牽引事業の促進のための環境整備の一環として自治体の判断の下で行われるわけですけれども、例えば個人情報を含む機微情報などについては、個人情報保護法を始めとする各種法律や自治体の条例に基づく適切な保護の下で行われることが前提になるというふうに思っています。
○辰巳孝太郎君 ですから、自治体の判断でオーケーだということなんですね。基本計画で定めて、それで牽引事業で選定しているわけですから、その企業が欲しいということになれば、しかも個別で個社だけに欲しいということになればなかなか拒めないというふうに思うんですね。これ、やっぱり公共データの問題というのは非常に大きいと思うんです。
続けて、廃止された種子法についても、少し農業に関わってですけれども、確認したいと思います。
非常に重要な問題だと思うんですね。都道府県の農業試験場は種苗の生産に関する様々なデータを保有しております。こうしたデータも地域経済牽引企業の求めに応じて提供する対象になるんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
○政府参考人(菱沼義久君) お答えいたします。
本法案に基づき承認されました事業計画に基づき事業者が事業を実施する際に必要とする情報につきましては、都道府県の判断により事業者に提供されるものと承知しております。
この中で、公的研究機関が試験研究によって得られる知見につきましても、都道府県の判断により提供することができるというふうに承知しております。
○辰巳孝太郎君 ということなんですよ。これ、とんでもない話なんですね。
今国会において種子法というのが廃止をされました。これは主要農産物の種を安定供給するための公的責任を放棄し、外資系企業を含む民間参入種子ビジネスを促進するものだとして我々反対したわけであります。生産者、消費者、専門家の間で、多国籍企業による種子の独占につながりかねない、食の安全や食料主権が脅かされると危惧が広がっているわけであります。また、同じく今国会で成立した農業競争力強化支援法には、都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進するとあるわけですね。
こうした中で、今日の議題であるこの地域未来投資促進法、これ第十五条に基づいて地域経済牽引企業から種苗のデータを求められることになるわけですね。
大臣、特定企業の利益のために農業試験場が種子に関するデータを提供するということは、これ我が国の食料主権にも関わる重大問題、そういう認識はありませんか。
○国務大臣(世耕弘成君) 今御指摘の種苗のデータについて、種苗法に基づいて品種登録されたデータについては、品種登録簿により公開をされているわけであります。また、関連の研究データなどについては、公開の判断はこれを所有する自治体の判断であると理解をしています。
したがって、関連の研究データ等を活用した地域経済牽引事業の提案があった場合、データを保有する自治体において地域の成長発展の基盤に資するものとして地域経済牽引事業の要件に該当すると判断すれば事業の承認を行うことは可能でありまして、データの内容によって一概に本法律の適用が否定されるものではないと。ただ、あくまでも地域のためだということでありまして、一つの企業の利益のためにやっているわけではないということは明確に申し上げておきたいと思います。
なお、都道府県などの公的研究機関の知見の利用に関しては、知見の提供の公平性を確保する観点から、農水省が策定したガイドラインの中で、非独占的な実施許諾を原則として、特定の者に独占的な実施許諾を行う場合には、このことを公示をして、他に実施許諾を希望する者がいないかどうかを一定期間確認する等の一定の配慮が求められているわけでございます。
○辰巳孝太郎君 いや、ですから、できるわけなんですね。
大臣、今ガイドラインをおっしゃいましたけれども、実際にどのような許諾をするのかというのも都道府県の判断になるわけであります。これ結局、国民の胃袋を営利企業に、これ外資も含みますけれども、つかませる農業競争力強化支援法のような規制緩和を更に強力に進める役割をこの法律が果たすことになると私は言わなければならないと思うんですね。
改めて確認しますけれども、今、外資系の企業という話もありました。これは、本法案では、承認される事業者に対しては規模の制限といいますか規定というのはありません。確認しますけれども、これ、大企業であっても地域経済牽引事業者に選定され得るということでよろしいですね。
○政府参考人(鍜治克彦君) 本法で地域経済牽引事業の担い手となる企業の資本金等の規模に制限はございません。当然のことながら、本法の支援措置の一環といたしまして、中小企業者にのみ適用が可能な信用保険制度のインセンティブとかそういうのはございまして、大企業がおのずから使えない支援措置はございますけれども、事業の主体として特に制限はしてございません。
○辰巳孝太郎君 ということなんですね。ですから、様々な問題がこの法案にあるということだと思います。
続いて、データの提供に関してですけれども、学力テストの公表問題についてちょっと確認をしたいと思うんですね。
例えば、承認された地域経済牽引事業者であるディベロッパーとか不動産とか、そういう事業者が地域の特性を調査する一環として地域の学力テストの結果の提供を地方公共団体に求めることができるのではないでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(鍜治克彦君) 本法案は、これまでも御説明申し上げてきましたとおり、地域経済牽引事業を促進する観点から、地域経済牽引事業として、自治体の判断の下でその地域の特性を生かして付加価値を高めて地域経済に波及効果の高い事業を認定するわけでございますので、ディベロッパーの方がどう教育に関するデータをそういうふうにお使いになるのかちょっと承知しかねますが、あくまで法律の要件を満たした地域経済牽引事業者のお取組を自治体が、県が承認すると、そういう構造でございます。
○辰巳孝太郎君 ディベロッパーだけではなくて、例えば塾関係者とか、やはり所得の状況を知りたいんだ、学力テストの状況を知りたいんだということは、私はあり得るというふうに思うんですね。
我々は学力テストの実施そのものに反対をしてきました。子供の学力状況であれば抽出調査で事足りるわけですが、今はもう全員調査ということでやっております。更に重大なのは結果の公表ですね。これ、二〇一四年からは学校別の平均点の公表も解禁をしているわけであります。このことによって更なる序列化を進めることになるわけなんですね。
文科省に確認しますけれども、今、市町村における市町村全体のテスト結果、市町村立学校における各学校の学力テストの結果公表の数はそれぞれどのようになっていますでしょうか。
○政府参考人(白間竜一郎君) お答え申し上げます。
平成二十六年度に実施をいたしました全国の学力・学習状況調査の結果の公表に関する調査結果、これを基にお答え申し上げますと、自らの市町村全体の結果を公表している自治体は、公表予定を含めまして千五市町村、全体の約五八%、また、市町村立学校の結果を公表している自治体は、公表予定を含めまして百十二市町村で全体の約六%となっておるところでございます。
○辰巳孝太郎君 ですから、今のところ、市町村レベルで見ますと、各学校、この学校の平均点はどのようになっているかということを公表しているところというのは六%ですから、非常に少なくなってはいるんですね。
しかし、当法案によって、一民間企業を、それら各学校、若しくは各地域、市町村ではなくて何々町とか、ここの所得を知りたいとか、学力テストを学校ごとに知りたいということを首長に要求をして、そして市町村の教育委員会がその公表を認めた場合は、これテスト結果が提供されることになるということだと思うんですね。
大臣、こうなると、これ建前でも子供の学力を調べると言っている学力テストが、一民間企業のもうけのために使われてしまうことになるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) さっきから、この法律に視点を当てて説明をすると、そういうデータの利活用は地域経済牽引事業の要件に該当すれば否定されないという答弁になるんですが、その前に、別のちゃんと法律やガイドラインがあるわけです。例えば、住民票データを全部提供したとか、税のデータを全部個人名付きでやったなんということになったら、これはもう完全に個人情報保護法違反ですから、そこで必ず引っかかるわけであります。
この学力・学習状況調査についても、この個票データについては、文科省が定める状況調査に関する実施要領において調査の趣旨や取扱配慮事項等が定められているわけでありますから、教育委員会の判断を踏まえてデータを保有する自治体が判断をするということになって、それは自治体が一般に公開しているもの以上のものを出すということは、これはもう普通は考えられないわけであります。
○辰巳孝太郎君 大臣、当然、個別を識別できる、そういう所得の情報であるとか学力テストの情報であるとか、これが提供され得ることがないというのは当然であります。しかし、個別が識別されない状況で、ひも付けできない状況で出すことは、これ市町村の条例などでできるわけですね。都道府県などがやるんだということであれば、これ首長などがやるんだということになればできるということだと言わなければなりません。
この情報についても様々な問題があると。この十五条に関連して、私は改めて民泊問題というのをちょっと取り上げたいと思うんですね。
政府は、牽引事業の例示の一つとして観光というのを挙げております。今、違法民泊、すなわち旅館業法によらずに自らの自宅を使用して人を宿泊させることになりますけれども、これが問題になっております。この民泊を解禁する法案が今国会に提出をされております。これにはホテルや旅館業界からは当然反対の声が上がっております。主にホテル、旅館であれば建築基準法や消防法に基づいて避難経路を定めなければならないとか様々な規制があるわけですけれども、民泊となれば一般の家で基本できるわけですから、これイコールフッティングの観点からどうなのかと、こういう声が出るのは当然だと思うんですね。
仮にこの民泊新法が可決をされますと、民泊サービスを行おうとする者は都道府県知事への届出が必要となる、仲介業者というのがあるわけですが、これも登録が必要となると。ただし、今回の法案では、民泊の年間提供日数の上限というのがこれ最大で百八十日と定められております。これ、あくまで上限ということでありまして、この日数については各自治体の条例で定めることになっていると。ですから、自治体によっては三十日しか認めない、六十日しか認めないと、こういう条例ができていくんだろうと思うんですね。
確認しますけれども、第十五条における牽引事業者が首長に行う提案の中には、これ条例改正も含まれるということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(鍜治克彦君) 事業者からの様々な事業環境整備の提案の中には条例改正の提案についても含まれ得ると考えております。
ただし、それはあくまで提案でございますので、その上で、自治体としては、当該地域への波及効果につきまして、自治体としてこれが意味があると思うこと、さらにその提案を踏まえて実際に条例改正するかどうかというのは、当該自治体の行政長としての判断あるいは地方議会の御判断、こういったものが当然合わさった上での御結論にはなってくると承知しております。
○辰巳孝太郎君 ですから、となると、仮に民泊事業者あるいは仲介事業者が牽引事業者に選ばれて、例えばこの年間三十日、六十日としか認められていない年間提供日数の上限を百八十日いっぱいまで認めてほしいという提案ができると、こういうことですね。
○政府参考人(鍜治克彦君) 繰り返しでございますが、そういう御提案は当然できるわけでございますけれども、まさにその百八十日の上限を当該自治体の御事情で下げておられる自治体の長が個別事業者の御提案でまたそれを上げるというのは、一般的には余り考えにくいとは思います。
すなわち、今回の、元々の企業立地法におきましても、工場の緑地規制について国の基準あるいは自治体の基準に対して更に特定の地域でその緑地規制の基準を緩和するというような仕組みもございますので、アナロジーとしては同じようなことが論理的にはあり得るわけでございますけれども、当然、民泊についての適正な宿泊日数の上限というのは総合的な判断で当該自治体の長が、あるいは議会が御判断になることでございます。提案はできるということがこの法案でございます。
○辰巳孝太郎君 考えにくいですか。これ考えますよ。考えますよ、当然。全く考えにくくないと思うんですね。
しかも、この十五条の二項において、もし当該提案をこれ必要ないというふうに認める場合でも、その旨及び理由を遅滞なく当該提案をした者に通知するよう努めると。これ理由を付さなきゃならない、努めなければならないということになっているわけであります。
大体、この法案というのは地域型の特区みたいなものですから、先ほど、元々条例で決めた上限を、首長がそれを規制緩和することは考えられないというんだったら、この法案そのものを否定することに私はなると思うんですよ。結局、牽引事業者からの提案を受ければ政治判断を迫られて、これ提案を認めない場合も行政手続にのっとる必要が出てくると、こういうことだと思うんですね。
確認しますけれども、これ事業者に大きな権限を私は与える法案だと思います。この事業者の承認の取消しというのはどのように規定されていますでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) これは、法律の第十四条第二項に基づいて、承認された地域経済牽引事業計画について、この計画を実施する者が計画どおりに地域経済牽引事業のための措置を行っていないと認める場合にその承認を取り消すことができる旨を規定をしております。例えば、計画に位置付けられた資金調達のめどが立っておらず、事業計画を行う意思も見られない場合などがこれに該当します。
なお、自治体による事業の実施状況の把握は、三十六条の報告の徴収によって担保することになります。
○辰巳孝太郎君 計画で示された目標に達していなければ、これ必ず承認を取り消すことになるんでしょうか。この辺が非常に私は曖昧だと思うんですけれど、例えば、景気が少し悪くなったので目標に達していない、だけど、それはまあ認めましょうと、こういうことになるんでしょうか。その辺、どうですか。
○国務大臣(世耕弘成君) そこはいろいろあると思います。景気状況によって悪かったり、あるいは全体的に悪ければ、これは国自体のやり方を見直さなければいけないというところも出てくるというふうに思いますので、計画の数字に達していないから即承認を取り消すということはありません。どちらかというと、計画で例えばきちっとやりますと言ったことを全くやる意思が見られないとか、そういう場合があったときに取り消すということだと思います。
○辰巳孝太郎君 とりわけ十五条に規定されているとおり、この承認事業に認定される、承認されるということは、これ一企業に非常に大きな権限を私は与えることになると思うんですね。これを、承認を取り消されるということも一民間企業にとっては非常に命取りになると思うんですよ。
牽引事業者となれば、税制優遇始め補助金も入ります。規制緩和を自ら求めることもできるわけですね。先ほどあったとおり、他社に出さない形で公共データなども入手ができると。至れり尽くせりだと私は思うんですよ。これでは私、政治家とこの事業者との癒着が生まれるんじゃないかと、こういうふうに思うんですね。
総務省に一応確認します。これ、例えば知事の所属する政党や政治団体に対して地域経済牽引事業者が政治献金をすること、これも可能ではないでしょうか。
○政府参考人(大泉淳一君) お答え申し上げます。
一般論としてでございますが、政治資金規正法上は、会社、労働組合その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならないということとなっておりますので、相手方は政党でございます。その上で、企業の求めに応じていろんなことがあった場合に、企業について政治資金規正法上規制があるかということにつきましては、それは特段の規定はございません。
○辰巳孝太郎君 大臣、これ、企業・団体献金をこの部分では禁止するなど、何らかの歯止めが必要じゃないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 先ほどから、辰巳議員はあたかも特定の一社を応援するためにこの我々法律をやっているように言われるんですけれども、これ地域全体が裨益するわけです。そういうことを前提にした我々は基本計画を認定していくわけでありますし、当然、都道府県や市町村が基本計画を定めてやる中では、その地域の特性ですとか地域経済に対する効果に関して基本計画の中できちっと説明責任を負っているわけですから、何か特定の企業に献金をもらってその企業に便宜を図るというようなことは実質できないというふうに思っております。
○辰巳孝太郎君 できないというなら法的な規制が必要だと思います。
以上です。終わります。
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
政府は、この十年間、企業立地促進法の下、大企業の工場が立地すれば地域経済が活性化するという地域経済政策を進めてきましたが、立地企業の撤退と地方の疲弊が進み、格差は拡大しました。本法案が、このように破綻した呼び込み型の企業誘致政策の反省をすることなく更に進めようとしていることは問題です。
反対理由の第一は、特定の地域中核企業に支援を集中する一方、地域の雇用と経済の担い手である産業集積を法律の目的、理念から削除し、切り捨てるものだからであります。本法案の支援対象となる地域牽引企業は僅か二千社にすぎません。一握りの稼ぐ力と言われる中核企業が伸びれば地域全体が潤うというのは幻想にすぎません。特定企業の成長が国民経済の好循環にはつながりません。地域の内発的な成長支援を応援するべきです。
第二は、地域牽引事業者の事業環境整備に係る措置の提案制度は、言わば地方版特区制度であり、特定企業への支援策ということです。地域経済牽引企業が様々な条例による規制の緩和、撤廃を直接求めることは、住民の命や暮らし、環境保全より特定企業の利益を優先させるもので、地方自治の本旨に反するものであります。
第三は、地方自治体が保有する公共データを地域牽引事業者の求めに応じて提供する問題です。企業にとって情報、データは利益を生むものであり、喉から手が出るほどと言われるほど欲しい情報です。特定企業の利益を優先し、住民が知らないままデータが提供されるおそれが生じますが、個人情報を保護する保証は明らかではありません。
第四に、地域経済牽引企業のために優良農地の転用を可能にすることです。衆議院で一部修正されていますが、転用の歯止めにはなっていません。
最後に、真に地域経済を発展させる道は、産業集積の面としての役割に光を当て、内発的、持続的な発展につながる地域循環振興政策へ根本的に転換すべきだということを指摘して、討論といたします。