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国会会議録

「デフレ効果が大」 参院調査会 消費税増税 参考人から異論

参院・「デフレ脱却と財政再建調査会」が19日開かれ、与党が推薦した参考人までが4月からの消費税増税に異を唱えました。

意見陳述したのは国際大学名誉教授の宍戸駿太郎、日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷(もたに)浩介の両氏。日本共産党から辰巳孝太郎議員が質問しました。

安倍政権のアベノミクスを評価する立場の宍戸氏は、「消費税は安定的といわれるが、(経済)大国ではデフレ効果の方が大きく、沈殿する」と指摘。「消費税増税で税収を増やすというのは成長の王道ではなく、完全雇用の確保や国民の所得を増やすことが税収増につながる」と主張しました。

藻谷氏は、「異次元の金融緩和」について「空回り」と指摘したうえで、お金が出回る量が増えただけで雇用、消費、輸出の増加に至っていないと説明。大企業に対する減税についても「賃金が増える保証はなく、効果はない」と否定的な考えを示しました。

2014年2月20日(木)赤旗より転載

議事録を読む 参考人陳述部分
○参考人(宍戸駿太郎君) 宍戸でございます。
今日は、わざわざ参議院のデフレ脱却のためのアベノミクスの問題で御招待いただきまして、誠にありがとうございました。
それでは、時間がございませんから、ポイントだけ二十分間でお話をいたしまして、日頃考えております問題をぶつけまして、皆さんといろいろと議論をすることの方が重要でございますから、ポイントだけを今日申し上げたいと思います。
パワーポイントを使いますので、よろしくお願いします。(資料映写)
テーマは、もう少し目を覚ましたらどうかと、こういうことで、アベノミクスに関しまして賛成をする意見と、一方で批判をする意見とがだんだんと出そろってまいりましたので、この辺でアベノミクスの、私は最初から、非常に重要な歴史的な転換を、この自民党のアベノミクスというのは大きな歴史的な意義があるというふうに高く評価をいたしまして、アベノミクスに関する、奇跡を起こせと、こういう本を書いたわけでございますが、今日は、その後二年目に入った場合のアベノミクスに関しまして若干疑念が、普通のマスコミもそうですが、当初の意見に対しまして大分批判的な意見も増えてまいりまして、私はアベノミクスを更に強化したらいいと、こういう考えで今日お話を持ってきたんですが。
問題は、この長期デフレというものをぶち破るということで、歴史的な意義をこの自民党の新しい政権が担っていたわけです。それが二年目に入りまして、消費増税が、五%から八%に上がりまして、この辺からだんだんと変調を来して、少し当初のパワーがなくなるんじゃないかということをよくマスコミその他で議論が出てまいりまして、私も、第一楽章はすばらしかったのですが、シューベルトの未完成交響曲のように、第二楽章になりまして急にメロディーの基本的トーンが変わってまいりまして、第三楽章になると、シューベルトの未完成交響曲は第三楽章は出てこない、なくなっちゃったわけです。これは映画にもなっていますが。こういったことになっては大変だということで、第二楽章が大事なんだということを今日申し上げたいと思います。
なぜデフレになったかという反省に関して、これは自民党、民主党その他今までの歴代のバブル以後の推移を見てまいりますと、幾つかの要因がありまして、まず、バブル潰し自体が強過ぎた、そのために不良債権が大量に発生したと、こういうことですね。それから、第二が、公共投資十年間、アメリカが日米構造協議で、日本がデフレをかぶって日本の対日輸出が鈍るということは大変だということで、公共投資、十年間で四百三十兆円、これは皆様方まだ御記憶に残っていると思いますが、これを言いまして、当時の羽田内閣でしたか、これが一応閣議了承をしているんですね。十年間の公共投資計画というものは具体的な形では出なかったんですが、基本的な発想はいいということだったんですが、これがその後だんだんと色が薄れてまいりまして、結局六割ぐらいしか実現しなかったと、これが一つの要因ですね。それから、問題は九七年の消費増税というのが三%から五%。これはもろに影響があったわけであります。
このほかに、なぜこういった状態が続いたかという、長期にデフレが続くということは通常あり得ないことですが、これは羅針盤自体がどうも狂っていたんではなかろうかと、こういうことで、デフレ脱出をしようと思っても方向が違っていると、こういうことで、羅針盤の問題は後で申し上げます。
基本的に、二本の矢、財政再建と消費税増税という形で金融と財政の両面で日本経済を活性化しようということで、三番目が成長の矢と、こういうことになっているんですが、全体の政策の展開が短期指向型であるということですね。中期経済計画とかあるいは長期の総合開発計画とかというのがなくて、現在のところまだ単年度予算に終始している。それから、日本銀行が新しい政策によってリフレ目標というのを、コアコアCPIで二%というのを出したんですが、これが現在まで経済成長の目標と整合性がないということなんですね。もっとこれ成長しないとこのコアコアの二%というのはなかなか達成できない。これは日銀の政策委員会の中でも半分はこういう意見を持っていらっしゃるようですね。
ということで、アベノミクス、この段階で、もっと大幅にひとつ反省と前進をしていただけないだろうかというのが私の希望でございまして、基本的に日本経済の底力というのを考えますと、三つあるだろうと思います。この底力が十分に認識できないで非常に慎重なマクロ経済政策にまだ終わっているということでありまして、第一は国民貯蓄でありまして、これは世界最強であります。これは対外黒字残高が二百七十兆円、GDPの約半数の純貯蓄を持っている国というのは世界中どこでもないですね。
それから、技術進歩の速さ。これは、デフレになっても技術進歩というのはどんどん続いていきます。これはITから始まりまして、今は、最近は新しい生物学、医学面で極めて急速な技術進歩というのがとどめなく日本では進んでおりますから、これは下手をしますと、成長になるが逆にデフレに誘導をいたしますから、物価が下がりますね。
それから、第三番目の巨大なデフレギャップというのは、これは日銀、内閣府等はまあ巨大とは言わないんですが、我々の計算は、大体百兆円前後のデフレギャップがあると。
この遊休化した資本設備と潜在労働力というものは、極めて良質な潜在労働力があって、まだ使い切っていないではないかと。若者は就職ばかり考えて勉強を余りしないじゃないかと、こういったことをよく留学生が日本の学生を批判していますが、こういった状況は労働力の、就職の問題も深刻な問題があるということで、この三つの底力がちゃんとあれば、悪性インフレーションに今なるんじゃないかとか、あるいは金利暴騰論というの、これはしょっちゅう起こるんですが、これに対して強靱な抵抗力を日本経済は持っているんじゃないかと、こういうことをまず申し上げて、後でもう少し更に具体的な問題に入ります。
なぜ単年度主義で遠くが見えないのかと、こういうことで、これをいろいろと考えますと、どうも羅針盤が狂っているんじゃないかと。特にこれは、前は立派な羅針盤があったんですが、小泉政権以来、自民、民主、新自民党、全部同じ羅針盤を使っているんです。これはいろいろ問題がありまして、名目成長率が三%、実質が二%というのがこの羅針盤から割合に安定した成長路線で出てくるんですが、これは後で申しますように、余りにもデフレ脱出の戦略としては低過ぎるんですね。で、この羅針盤に附帯いたしまして各種の計器がぶら下がっているわけですが、これが全部狂ってしまうわけですね。このやり方の、羅針盤の基本はマクロ計量モデルなんですが、昔の想定成長率法そのままなんです。
当時、内閣府が使っていました、昔の内閣府が経済審議会というのとそれから経済企画庁とが開発いたしまして、非常に世界に冠たるマクロ計量モデルを開発しまして、海外の学術雑誌にも引用されるという大変に立派なマクロ計量モデルを持っていたんですね。これが小泉内閣のときに突如変更いたしまして、妙な羅針盤、狂った羅針盤が出てきました。これは、当時の池田内閣及び佐藤内閣の所得倍増計画というのは、優れたマクロ計量モデルで全て設計をして、そして誘導目標を立てたわけですが、これは数千個の供給目標を積み上げた硬直的な社会主義方式に対抗する意味もありまして、欧米でもインディカティブプランニングとしまして、マクロ計量モデルを金融と財政とそして長期成長と、この三つの矢をマクロ計量モデルから出していたというのが現状であったんですが、これが突如変わってしまったわけですね、小泉内閣のとき。
この問題は非常に深刻な問題でありまして、また後で申し上げたいと思いますが、この想定成長率法というのは非常に素朴な方法でありまして、四%日本経済が五年間あるいは十年間成長した場合と、五%の場合と、六%の場合にどれぐらい国際収支がもつかと、あるいはどれくらい雇用を吸収するかということで、デマンドサイドと全く切り離した方法でありますから、これではインディカティブプランニングとして家計がどうなるのか、民間設備投資がどうなるかと、こういった全然シミュレーションができないですね。ということで、経済審議会が計量委員会という当時最も優れた経済学者とそれから経済企画庁の計画局のスタッフとで共同で開発したというモデルでありまして、これを使っていれば別に問題はなかったんですが、これをすり替えちゃったんですね、小泉内閣のとき。
これが一つの悲劇の源泉でありまして、こういうことになるんですね。例えば、五兆円の公共投資を継続的にずっと増加させますと、これは、通常はマルチプライヤーというのが働きまして、二年目、三年目、四年目とこのマルチプライヤーが上昇いたします。東洋経済あるいは電力経済研究所は、これは公共投資は実質なんですが、乗数効果を名目で計算をいたしますと三倍から四倍という大きな値が出てまいります。これに対しましてこちらは、大体二・五倍と通常言われているんですが、これは中期マクロモデル。それからDEMIOSというモデルが我々が使っているモデル。それから参議院のモデルもあります。
こういった形で、大体一を超えて二倍、一・五から二倍ぐらいに上昇する。名目GDPは三倍から四倍ぐらいに上昇するんですが、内閣府のモデルというのは、小泉内閣以来今使っていらっしゃる内閣府のモデルは、当初発表したときは、これが〇・五から〇・三ぐらいまで下がってくると。それから、今取り替えて使っていらっしゃるのが、乗数は一なんです。だから全然効果がないんですね。さらに三年目になると下がり始めると。
こういった、諸外国から、先進国から見ても驚くような計量モデルを何とアベノミクスの基本的な羅針盤として使っていらっしゃるということは極めて重要な問題でございまして、これが一つの問題でございます。これは我々の、私どもの書きました本にも詳細に載せておりますので、御覧になってください。
例えば、アメリカの場合ですね。日米共同で開発しておりますから、アメリカの場合も大体初年度でもう二倍。それから二・五倍、それから大体二倍ぐらいですね。それに対して名目のGDPは大体二・五から三倍前後まで上昇します。これは普通の計量モデルの反応でありまして、これを間違えますと政策効果を完全にミスリードしてしまうわけであります。ミスジャッジするわけであります。
消費税増税に関しても同じであります。消費税増税の効果というのはデフレ効果を持ちますから、大体一%から四%、五%ぐらいGDPを押し下げるわけですが、これは日経新聞のNEEDSの場合も同様であります。それから、電力経済研究所の場合も大体大きいんですが、大和総研は、公共投資でこれを相殺する自動相殺が入った消費税増税ですからこれは一・三ぐらいになっていますが、内閣府のデフレ効果というのは、最初はデフレ効果が一・五ぐらい起こるんですが、大体一・〇ぐらいで、デフレ効果に関しても五分の一という小さなデフレ効果しか出してこないんですね。
こういったものをお使いになっている限りはアベノミクスはまだ目が覚めないんじゃないかというのが我々の反省点でありまして、実際の公共投資というのは、我々のDEMIOSのシミュレーションをいたしますと、財政と並んで金融が必ずサポートをしております。これは日本銀行ですが、これが直にこれをサポートするんではないんですが、時間的な遅れで国債の買いオペレーションが始まりまして、金融支援型の財政支出というのが日本の公共投資の通常の傾向であります。
これは、このグラフ御覧になると、公共投資五兆円をずっと五年間継続するんです。そうしますと、実質GDPが大体二十兆円を続けますと、その二倍の四十兆円から五十兆円ぐらいの実質GDPが膨れ上がるんですね。これに対して、名目のGDPというのがありまして、これがこの高いやつですね、名目GDPは大体三倍から四倍近い、ここで六十兆円から七十兆円の名目GDPができ上がる。これをサポートしているのが日本銀行の通貨の供給であります。
通常、これは信用乗数というのが強烈に働きますから、信用乗数は、何と八十兆円を超えるところまで信用乗数は働くんですね。この結果、単なる公共投資の乗数効果というのは、雇用と消費に及ぼすだけではなくて、基本的には為替レートの円安を誘導いたしますから、この点で雇用が拡大をすると、こういった形になりますので、これが大体、アメリカ側もほぼこの傾向は出ておりまして、これがノーマルなマクロモデルによる政策効果の計測の結果であります。
この点で、十分なもしも分析を行えば、公共投資と日本銀行の合わせ技で減債が行われているんだということがはっきりいたします。これは信用乗数と雇用乗数というものが両方が働くんですね。そして、日本経済は好循環を起こすということであります。この好循環によって円安が起こり、それから税の自然増収が起こると、こういうことでありまして、今後、今消費増税をいたしましたから、強烈な国土強靱化法というものをせっかく自民党は今これを発動する準備だと思いますが、防災と減災と復興の促進、この三つの側面で強烈な公共投資をもしも実行すれば、日本列島の大動脈に当たる、特に日本海国土軸とか、それから日本海と太平洋を結ぶ、ここで言う連関軸というのがありますが、動脈の中の両方をつなぐ、それから東西海岸を結ぶ連結軸というのがここに書いてあります。こういったことから始まりまして、ミッシングリンクと言われている高速道路も、それから今の非常にローカルな問題に入りますと、たくさんの公共資本の橋が崩れるとかトンネルが落ちるとか、こういった当面緊急を要する公共投資もございますから、この効果は極めて大きいんだということを申し上げまして、これを中心にいたしまして、政府消費も防衛、教育、科学技術、医療、福祉という形で政府消費と移転支出、こういったものももっと公共投資と並んで、もしも安倍内閣の中期財政政策が発動するならば、日本経済はデフレから本格的に脱出できるんではなかろうかということを申し上げたいわけです。
これは、デフレを脱却いたしますと、政府債務とGDPの比率の低下、これは麻生さんがよく言っておられますが、比率で下がっていくんだよ、成長をするとということを言っておられますが、比率だけではなくて、絶対額の政府債務というのは純額で急速に下がってまいります。これは先ほどの私の配付資料にも書いてございますからもう省略いたしますが、これがもたらす効果は地域格差の解消なんですね。今の東北あるいは東北の震災復興の問題、北海道とかあるいは日本の地域格差で苦しんでいる地域というのは、この全国的な公共投資の特に列島強靱化法が本格的に動き出せば景気は急速に拡大するであろうと、こういうふうに考えておりまして、今の消費増税によるデフレ効果をはるかに打ち消すだろうということで、今シミュレーションを用意しておるんですが、今日はちょっと間に合わなかったんですが。
こういったことを申し上げまして、最後に人口問題。人口問題というのは大変に悲観的に見る方が多いんですが、人口問題は絶好のチャンスでありまして、アベノミクスに必要な長期ビジョンで人口の長期予測というものを是非入れていただくという必要があるんですね。特に、今、人口問題研究所というのは、生命保険、保険会社のコーホートモデルというので中心にできておりますから、経済要因が全く入っていないんですね。
実は、人口というのは経済と政策との相互依存の関係で決定するものでありまして、戦争中のような産めよ増やせよというようなことをやる必要は毛頭ありませんけれども、少子化対策あるいは住宅対策、それから雇用機会を与えるということを、結婚できないというのは雇用が不安であるから結婚できないんですね。こういった若者を、もっと出生率を上げるように、特殊出生率というのはひところ一・五を切ったといって大騒ぎしたんですが、一・二ぐらいまで下がったんですけれども、最近、ここ数年間、特殊出生率は元へ戻る傾向があります、上昇の傾向がありますが、いずれにしましても、少子化対策というものを本格的にすれば人口はもっとまともな人口の形ができるだろうと。
人口のピラミッドは、ここにありますが、こういった日本とインド、インドはまだピラミッド型です。日本はちょうど釣鐘型の逆釣鐘型になっておるんですが、これが少子化、若年人口が減ってしまった形なんですが、これに対しましてスウェーデンというのは理想的な形をしておりまして、ちょうど釣鐘型で均衡した形で、若者も十分に生まれて、人口の減少が起こっていないですね。
こういった形に人口のピラミッドを変えていくということが極めて重要でありまして、これが、最後に書いておりますが、人口のピラミッドを経済政策と社会政策によって変えることは十分に可能であるということで、これは二十年計画、あるいは二十数年の計画でありますが、この間もしも経済成長を高めていくということがあれば、これは深尾さんの長期のデフレギャップの推計でありますが、この深尾推計は我々に比べますとちょっと低いんですが、いずれにしましても、実際のGDPが今、実質で五百五十兆円前後に対しまして約五十兆円ぐらいのギャップということを計算しておりますが、我々の計算は大体これの二倍、百兆円ぐらいのギャップがあるというふうに計算しておりますが。
いずれにしましても、日本経済の成長がこのギャップを、バブル以後成長を止めてきたんですが、それに最近のリーマン・ショックの谷底によって今ようやく回復する過程にありまして、まだまだデフレの谷は深いんですね。まだまだデフレの谷は深い。
ということで、結論を申し上げますと、今のアベノミクスの完全雇用を目指した成長政策としては、名目で六ないし七、実質で四ないし五ぐらいの中期目標をオリンピックが行われる二〇二〇年を目標にいたしまして成長を加速化をする必要があると。二〇二〇年以後はやや減速をいたしましていいんですが、それと並びまして人口政策というもの、特に少子化対策の問題、それから婦人の就職の問題もありますので、基本的に我々のライフスタイルを変えるということが消費を刺激すると同時に、人口の少子化を食い止めるという形で、長期の社会目標、社会福祉目標はスウェーデン型の人口ピラミッド、いわゆる釣鐘型の人口ピラミッドで、若者に長期的な負担を掛けないことですね。若者が今非常に元気がないのは、一つは、我々が年を取ったらほとんど社会保険は破綻するんではなかろうかと、こういった恐怖感があるんですね。だから、若者の勇気を出すためには人口の形を変える必要があります。
そういう意味で、今のを積立型、賦課方式から積立方式に徐々に切り替えるという、このためにはお金が非常に掛かります。お金が掛かりますが、経済成長を完全雇用の路線にまで二〇二〇年に持っていけば、膨大な自然増収が発生をいたします。これによって社会保険の財源は非常に、これ二〇二〇年の成長シナリオで、既に社会保険の保険料収入というのが約三十兆円前後増えるんですね。これは年間ですね。これによって社会保障の給付も増えます。年金、医療、福祉ですね。これに対しまして、今の一般会計の負担は、十兆円ぐらい負担はむしろ下がるという形で、この保険料収入が経済成長とともに上昇するというポイントを考えていただきますと、社会保険の長期計画を考えるためにも経済成長をもっと加速化する必要があるということを申し上げまして、ポイントだけ、あとは皆さんからいろいろ御意見をお伺いしたいと思います。
どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
次に、藻谷参考人にお願いいたします。藻谷参考人。
○参考人(藻谷浩介君) 皆さん、こんにちは。藻谷でございます。
まずもって、お呼びいただきましてありがとうございました。
それから、今からお話しする内容なんですが、今の宍戸先生がおっしゃった話とは全く違う次元の話をしますので、これは一致しているところもあれば違うところもありますが、そういう話ではなくて、全然違う話だとお考えください。つまり、私が話す話が宍戸先生のおっしゃっていることへの賛同や反論にはほとんどなっていない、どっちでもない話です。ということで、そこはちょっと御了解をいただいた上で、議論の中では、実は賛同、大変僣越ながら、そのとおりだというところが多々ありましたので、それはつまり、アベノミクスと宍戸先生がおっしゃっていることと私が申し上げていることは三角形みたいになっています。
それから、諸先生方、大変恐縮です、下を御覧になって話をお聞きになる習慣だと思うんですが、済みません、前を向いていただいてよろしいでしょうか。恐縮です、これ、動きますので。私は紙を配るのは本当にもう大反対なんですが、ふだんは配らないです。今日は参議院なんで配りましたけれども、済みませんが前を見てください。よろしくお願いします。ぱっぱぱっぱ行きますので。前を見ていただく理由はすぐ分かると思います。(資料映写)
これ、非常に僣越ですが、エア景気回復と書いています。今からお話しする話はマクロモデルの話ではございません。また、これからどうなるという話も一切いたしません。去年何が起きたかということについてのみお話をいたします。よろしいでしょうか。
去年何が起きたのか。一言で言うとエア経済回復であります。これは恐らくアベノミクス賛成の方も反対の方も、多くの方が御賛同いただけると思います。違いは、これから本格的に回復するんだと考えるのか、エアのまま終わるのかということについては意見が違うと思いますが。ただ、取りあえず、去年に起きたところまでの話で終わりますが、見ていただくと、皆さんが聞いている話と違うということで、ちょっとこれを御覧ください。これがアベノミクスが始まる前で、全員前を見ていただいたら次の紙を出します、よろしいですか。二〇一二年、安倍政権発足当時の段階で私はテレビに出ていろんな予測をしました、こういうことになりますよと。それが実際、一年たったらどうなったか。こうなりました。
やはりこういう物の考え方が必要でして、この時点で後々起きたことをちゃんと予測していたかできていなかったかで、それなりにやはりエコノミストの人たち、誰の話が信用できるかできないかは分かるということです。あるいは政治の皆様も、現状こうなっていると、今後どうなるかはともかく、この一年間はこうなるということがちゃんと予測できていたかということを胸に手を当ててお考えいただきたい。ちなみに、これからどうなるかは取りあえず私は申し上げません。取りあえずこの一年間は既に数字があるわけですから。
御覧のとおり、円安誘導策により輸入が激増し、貿易赤字が拡大し、そして、これは余り予測したくなかったんですが、一部では私はテレビなどでも公言していましたが、残念ながら経常収支赤字基調になってしまった。嫌な予測が当たりましたけれども、これについて皆様は予測をされていたでしょうか。そもそも現状を御認識でいらっしゃるでしょうか。
ただ、これは、僣越ながら、去年の十二月の段階で数字を虚心坦懐に眺めれば残念ながら予測できたことであります。どうして予測できるのか。それは、済みません、もう一度申し上げますが、宍戸先生のおっしゃった話とは全然関係ない話です。全く矛盾しない、現状を短期的に見てこうなっているという話ですからね。ただ、長期的に、過去二十年間どうなってきたのかというのも数字を是非御覧いただきたい。これが、驚くことに、私がお会いする非常に多くの経済学者の方は、過去二十年間の日本の輸出の推移を御存じない人が非常に多いんですね。皆さんもお会いになられたら確認してみてください。過去二十年間に、プラザ合意の前に比べて日本の輸出が一・五倍に増えているのを知らない人がいたら、その人は余り国際収支について語ってはいけないはずなんですね。大変たくさんの方がそうです。なぜか。対前年同期比しか見ていないからです。昨対ですね。これをいわゆる昨対病と申します。
私のやり方は、マクロ経済ではなく企業の収支予想のやり方です。国の収支を企業の収支予想と同じやり方で予測していいのかと言われますが、マクロ経済でやるよりは正確だということは申し上げておきたい。つまり、過去二十年間、二十五年間に売上げが五割増ですと。にもかかわらず、相当高い黒字から赤字に転落しました。なぜですか。コストアップです。輸入が激増しています。過去二十年間に、三十年間に輸入は二・五倍に増えました。輸出が一・五倍で輸入が二・五倍ですから、赤字に転落した。
したがって、仮にこの国の収支を黒字化したいのであれば、対策は非常に明快でありまして、輸入の減少が必要です。逆に輸出をどんどん伸ばすというやり方が、既に一・五倍に増えているものを更に伸ばすというやり方がフィージブルかというと、かなり現実には難しい。
いろいろと批判される民主党の三年間、これ民主党に実は関係ないと思いますが、日本企業は結構頑張った結果として、震災にもかかわらず輸出がほとんど減りませんでした。ただし、以前に比べて三割減だとおっしゃる先生もいらっしゃいます。その以前というのはリーマン・ショック前の三年間なんですが、世界経済同時バブルのときでございます。この世界景気同時バブルの三年間を除けば、今の輸出水準ははっきり言って史上最高でございます。したがいまして、よほど世界景気がリーマン・ショック前のようにもう一回バブルにならない限り、これ以上輸出が増えると想定するのは普通はあり得ないです。仮に企業がそういう収支計画を持ってくれば却下であります。それは無理でしょうと。
で、実際どうなったか。御覧のとおり、アベノミクスは頑張って円安に誘導し輸出が増えているんですが、これは御存じだと思いますが、数量ではなく金額が増えたわけです。なぜか。日本の輸出企業は多くが残念ながら円基軸通貨という話とは逆にドル建てで商売をしております。多くの企業がドル建てで商売をしているので、海外で売った売上げが、同じ百ドルが、一ドル七十七円だと七十七円にしかならないものが、今百一円から二円になりますので、つまりドルを円に換算する時点で二割五分ぐらいの収益増が起きております、売上増が。その結果として輸出が増えたということになるのですが、これはエア輸出増でありまして、エアというのは、御存じですね、演奏しているふりをして実は演奏していないというやつですが、金額の換算上増えただけです。
ところで、輸入も激増しました。これはエアではございません。御覧のとおり、アベノミクスの一年間で、輸入は月次当たり一兆五千億円ぐらい増えているわけなんですが、これは輸入の化石燃料の値段の高騰によるものです。
ところで、これを原発を止めたせいだと皆さんおっしゃるんですが、よく見ていただきたいんですが、原発が止まっていって全部止まる間の一年三か月、輸入は増えていませんでした。で、とっくのとうに原発が全部止まった後の、申し訳ないんですが、新政権発足以降、輸入は激増しています。ちなみに、これは新政権のせいではないです。円安になったからこうなったんです。
原発が全部止まったときに輸入はなぜ増えなかったのか。これは、実際貿易統計の方でより詳しく化石燃料の輸入量等をチェックしていただくと分かりますが、ほとんど輸入量は増えていません。理由も簡単で、皆さんが省エネしたからです。ところで、今も省エネはしております。ちなみに、安倍政権下でも粛々と省エネをちゃんと進めておられまして、日本の化石燃料輸入量は引き続き減少しています。よろしいでしょうか。が、円安が余りにすごいので、同じ量を輸入するのに掛かる日本円が非常に高騰しているために、当然赤字になるわけであります。これもエア輸入増ではないのかと言われそうですが、実際問題としてキャッシュが出ていってしまっているわけなんでございまして、円ベースでは、御存じのとおり油を買っている、いなきゃいけないほとんど全ての人の生活に影響が出ています。
そして、円安は経常収支黒字を若干増やします。これもドル建てでもらうことになっている金利、配当が、評価額が円ベースに換算するときに若干増えるからなんですが、御覧ください、民主党政権のときからですが、それ以前からずっとそうですが、日本の外国から稼ぐ金利、配当はすごいものがありまして、宍戸先生のおっしゃるような莫大な貯蓄が投資されているために、もう年間に今十六兆円ぐらいの黒字を稼いでいるんですが、残念ながら油代の高騰によるマイナスが非常に大きくなってまいりまして、それから去年は観光客が大分増えたんでございますけれども、残念ながら観光収支が黒字化するには至らず、トータルの経常収支が季節調整済値で赤字、四か月連続であります。
こうなりますと、国全体としてお金がもうかっていたのが、出ていく側に回ります。アメリカと同じことになります。まだまだ序の口ですが、本当に長い間放置しておいてこの経常収支赤字が大きくなると、双子の赤字になってしまいます。そうしますと、これは大変国家的にはよろしくないでしょう。
ところで、この話を聞いたときに、だって企業はもうかっているじゃないか、株は上がっているじゃないかとお考えの方、これはもう皆さんは国家運営をされているわけですから御承知おきいただきたいんですが、特定の輸出企業がもうかって株が上がって株屋さんがもうかるという話と国全体が黒字になるというのは逆方向です。
そんなことはあるまいという方はアメリカで何が起きているかをよく御覧ください。アメリカの株価は史上最高です。ところで、アメリカの財政赤字は別に、少し減らしていますけれども、全然解消に遠く至りません。そして、アメリカは大幅な国際収支赤字を続けています。アメリカも全く同じです。政府が赤字をこいて国際収支が赤字になると株は上がるというのは、別に日本だけの現象ではございません。ドイツはちなみに黒字ですけれども、黒字でかつ株も上がっていますが、要するに株さえ上がればいいというものではない。ただ、日本は残念ながらドイツ型の上昇ではなく、アメリカ型の上昇になっている。
もう一度申し上げますが、マクロモデルの話をしているのではなくて、事実がこうだということを言っている。それに対してマクロモデルの人からは、Jカーブ効果というのがあってやがて輸出が増えるから大丈夫だという反論といいますか意見を聞くことがあるんですが、Jカーブじゃないんですね。よろしいでしょうか。円安が始まったときからダイレクトにすぐに輸出は増えています。別に輸出増加が遅れてきているわけではございません。ただ、輸出増加が輸入の増加に追い付かない。これは当たり前のことです。
会計学上はこれを粗利がマイナスな状態だというふうに申し上げるんですが、つまり、日本の輸出企業の輸出行動自体が原価割れの状態なんです、必要な化石燃料額を合わせると。つまり、百円輸出するのに百十円原価が掛かっている状態です。そういう状態でありますからして、円安になって輸出が仮に増えたとして、例えば百円の輸出が二百円になったら、原価百十円が二百二十円になりまして、赤字がマイナス十円からマイナス二十円に拡大する。これ企業経営では本当に常識ですけれども、粗利がマイナスの段階で売上げ増加策をやるというのは普通の企業ではあり得ないことでありまして、粗利がマイナスのときにはコストダウンをして、まず黒字体質に転換してから売上増を図ります。
ですから、この段階で輸出を増やすと、そもそも非常に高い水準にある輸出を更に増やすという目標自体が相当むちゃなんですが、それに加えて、円安にして輸出を増やすという策は国全体の赤字を増やす結果に終わるというのは、申し訳ないんですが当たり前で、ここでJカーブという言葉が出てくること自体が、厳しい言い方ですが、商業高校に行って勉強した方がいいんじゃないかと思いますね、企業の基本的な会計について、マクロ経済を持ち出す前に。そもそも、収支が黒字か赤字かということについては、マクロ経済以前に基本的な会計の問題ですから。粗利が赤字の会社が売上増をしてはいけないんです。もうごく当たり前のことです。これも多くの先生はおっしゃっていたことですし、残念ながら、外れたら、いや、よかった、外れたと思うわけですが、残念ながらこの一年間は嫌な予測が当たってしまったということを申し上げておきます。
さて、ところで、お分かりのとおり、日本は別段国際競争に負けているわけではございません。日本が赤字をこいている相手は資源国であります。中東とオーストラリア、あとは天然ガス、石油の出るインドネシア、マレーシア、まあブルネイとかもそうですが、あとロシアですね。日本の人が、多くの人が誤解をしているのですが、アジアの新興国に対しては日本はずっと黒字でございます。この状況は変わっておりません。ただ、中国に関しては去年から日本の方が香港を入れても残念ながら赤字になったと思いますが、これはいろんな理由があるんですが、基本的には政治的に日本製品を買いにくい方向に向こうが誘導しているのに乗っかっちゃったということですね。
ところで、日本が黒字をこいている相手の筆頭がアメリカであるのは御存じだと思いますが、たまに知らない人がいますが、その次が台湾だということを知らない人が非常に多いですね。その次がタイで、東南アジアのタイですということを御存じでしょうか。それからオランダなんですね。そして韓国です。韓国に対して日本が大黒字であるというのを知らないで何か日韓関係を論じている人が多いのには本当に驚きます。これはずっと前から同じですけれども。
つまり、赤字の企業がいて、収支を持ってきて、どうしたら改善できますと。誰が見ても中東とオーストラリアに払うお金を減らしましょう、終わりということになります。
ところで、それは原発再稼働だという方には、そうじゃなくて、省エネでその分はミスマッチできているので、逆にもっともっと省エネを進めて輸入量、絶対額を減らしていかなければ駄目なんです、車から何から、電力に関係ないところでも大量のエネルギー消費をしているわけですから。ということがもう当然の課題ということになります。
つまり、なかなか政治的に進まない、時間が掛かる原発再稼働を一年も二年も待っている暇があったら、一年間の間に劇的に三割ぐらい省エネしましょうということをやるべきで、やり方は極めて簡単で、こういうものを、今やっていますけど、LEDに替える、空調を最新式の、それこそパナソニックでも何でもいいんですが、ダイキンさんでも、最新の国産の空調に取り替える。そして何よりも、これは自民党の先生も民主党の人もその他の政党の皆さんも、恐らく多くの方が賛成されているはずですが、通ったと思いますが、建物を断熱改修する。そのことによって、東大の小宮山総長もおっしゃっていますけれども、本当に数割、もう場合によっては半分以上のエネルギー消費が減らせるわけなんで、それをまずやってからですね。もうこれは一年、二年の間に急速にできるばかりか、宍戸先生のおっしゃっている公共投資と同じで、景気回復には非常に効果があります。ということを是非申し上げておきたい。
ところで、皆さん、今のは円安の話でしたが、内需の話を申し上げます。
これも宍戸先生がおっしゃっていたことなんですが、GDPを目標幾らという議論は、私の、銀行屋からすると信じられないですね。外需と内需を一緒にした数字です。だから、どっちをどれだけ達成するのかというブレークダウンもないのに、GDP何%成長といっても分かるわけがないじゃないかと昔から思っていました。
ところで、日本は内需が成長しないのが大問題ですということなんですが、これがまた私、ここは宍戸先生と違うんですが、異議申し上げますが、デフレ、デフレとおっしゃるんですけれども、何で物価の話が出てくるのか。売上げが増えないことが大問題なんです。逆のことを申し上げますが、仮に物価がどんどん上がっても、お客さんが減ってしまって、物価が上がったけれども客数が減って売上げが下がるのは誰にとっても全くいいことではないんです。よろしいでしょうか。
例えば牛丼屋さんが、あるいはハンバーガー屋さんが値下げ戦略をやって失敗しまして値上げをしました、一転して。ところが、従来以上に、安いのを目当てにして来ていた人が来なくなったので、売上げがかえって下がるという現象が起きています。ところで、その牛丼屋さんやハンバーガー屋さんは値上げを実施できたわけですから自社的にはデフレ脱却をしたのですが、売上げは下がるわけです。もちろん逆に、値下げをして客を増やそうと思ったらかえって売上げが下がったというのもある。どっちにしろ売上げが下がればまずいわけですが。
値段に着目してデフレだインフレだとおっしゃるのは勝手ですが、それはマクロモデル的にはそういう議論なんでしょうけど、企業経営している側からいいますと、売上げが増えないと意味がないんですよ。
それで、これが売上げの数字です。小売販売額です。アメリカで言えばリテールセールスです。この数字にはサービス業が入っていませんので、通常、日本のマクロ経済学者の人は使いません。ですが、日本人の非常に多くは物を作っているか運んでいるか売っているかなので、サービス業、飲食、ホテルその他入っていませんけれども、小売販売額が最も基本的な指標であることは間違いないばかりか、残念ながらサービス業の正確な数字がございませんので、小売販売額を見る以外にないんです。
御覧ください。バブル前に大成長を遂げていた小売販売額はバブル後横ばい、そして減少。ここから大事なところなんですが、減少を続けるのではなく、小泉内閣の二年目から微増といいますか横ばいに戻り、そして民主党の三年間、余り民主党に関係ないかもしれませんが、増加していたんです。総じて言うと、バブル崩壊後横ばいであるということについて強く申し上げたい。ちなみに、この間、日本の人口はゆっくり減り始めまして、生産年齢人口はかなり、五%減っています。
ある方がおっしゃっていますが、生産年齢人口当たりの小売販売額や名目GDPを出してみると、成長率は日本は世界有数若しくは世界一位だという話があります。人口減少にもかかわらず、お店の売上げを増やすのに成功しているんです。ちなみに、これは生産が頑張ったんじゃなくて企業が頑張っているということを申し上げておきます。
ところで、内需、外需を一緒にしたGDPと違って、まずこの内訳を、ブレークダウンをちゃんと見てください。内需指標のさらに物販であるこの小売販売額を見ると、皆さんの選挙区の多くの企業の人の実感と合う数字が出ています。そこに輸出企業の数字を入れたGDPを持ち出すと、先生、分かってないなんて言われちゃいますよ。さらに、これは減っていません。微増なんです。つまり、誰か売上げが減っている分、誰か増えているんです。
さて、それで、なぜしかし横ばいなのか。御覧ください。ここに個人所得というのが出てきます。この個人所得というのは、これまたGDP上、推計いっぱいあるんですが、これは税務署に申告された個人の年収の単純合計、課税対象所得額というもので、給料のみならず、株を売ったとか家売ったも全部入っています。これがまた誰も使わない数字なんですが、私は信用しています、特に増えたときは。税務署に増やして申告すると税金取られますのでね。
御覧ください。失われた二十年、デフレとおっしゃいますが、二〇〇七年、実は安倍首相が最初に首相をやっておられた年の日本人の申告所得額の税務署に申告された合計は百九十一兆円で、バブルの年、平成三年の百八十八を上回っているんです。ちなみに、当時、実感なき景気回復、戦後最長の景気拡大、イザナミ景気と言われました。これは冗談ではなく、本当に景気は拡大していたんです。これを物価が下がっているから不景気だと言われると、じゃこの所得って何なんですかという話になります。むしろ、当時、物価は下がっているのに所得は増えたので、えらいもうかった人はいたはずです。
ところで、その後、所得はマネーゲームが終わりましてばあっと下がってしまうんですが、御覧ください、小泉改革の頃に所得が増えてリーマン・ショックで下がる、この変動がお店の売上げにほとんど影響を与えていません。ちょっとだけ上がって、ちょっとだけ下がったじゃないか、実は全部これ、ガソリンスタンドの売上増、売上減でありまして、ガソリンの値下がりによるものでした。
実は、所得が増えても物を買わないというとんでもない事態が日本の統計上起きていまして、これは全てのマクロモデルが前提としていない、とんでもない事態なんです。昔は、所得が増えれば売上げも増えて、所得が横ばいなら売上げも横ばい、所得が減れば売上げも減少ときれいに連動していたのに、二十一世紀に入ってから連動が切れているんです。
ところで、最近、所得が余り増えていないのに売上げがゆっくり増えています。いわゆる実感なき景気回復。皆さんの選挙民の方はこっちを見ているんです。
さて、それで、これを輸出のせいだと言う人がいるんですが、さっきもお示ししたとおり、バブル崩壊後に日本の輸出は一旦倍増し、四割減し、また持ち直しております。このようにすごいジェットコースターのように上下しているんですが、それが国内の売上げに全く影響を与えません。普通おかしいんですが、与えていないので仕方がない。こちらは税務署の数字、こちらは店に全部聞いた数字、こちらは通関統計から起こした数字。全数調査なので、うそだといって、矛盾している、モデルと違うといっても、現実がこっちなんです。それで私は臨床経済論者と書いているわけですけど、マクロモデルではなく、臨床的にそうなんですね。株式チャートでいうとけい線分析みたいなものです。現実がこうなんです。
ちなみに、この話が都合が悪くなると皆さんお休みになるんですけど、どうかちゃんと聞いていただきたいと思います。よろしいですか。いろんなところでいろんな学者にこの話をするんですけど、学者の方はよくこの辺りで寝出すんですよね。ちゃんと、現実がこうなんだから見ていただかないとね。
皆さんのやっている伸び率と違って、絶対数が増えないと皆さん困るんですね。それは伸び率でいうと微妙に連動していますよ。だけど、絶対数で全然ビビッドな連動がない。輸出が増えても内需が増えないのは困るんですが、輸出が減っても内需が減らないというのはすばらしいことなんです。日本経済は非常に強靱です。これは宍戸先生がおっしゃったとおりで、強靱というのは、マッドメンではなくてレジリエントだということです。
さて、それで、しかし、こういうことを分からない人が、全部日銀のせいだと言い出します。で、マネタリーベースを増やせという議論になるんですが、御覧のとおりです。日本のマネタリーベースはバブル前に四十兆円まで増えていたんですが、これを竹中さんが百十一まで増やし、それを実は安倍さんが絞りまして、その後で民主党がまたわあっと増やしまして、白川さんが百二十一まで増やして、当時、史上最高であります。白川さんが金融緩和をしなかったというのは、定性的な評価で言っているのかもしれませんが、絶対数でいうと、ようこんなにやったなという数字であります。
ところで、マネタリーベースを三倍に増やしたのですが、日本のお店の売上げは全く増えませんし、個人所得も増えませんでした。輸出に関しても相関がありません。
ところで、その前、マネタリーベースをバブル期に十七兆円増やしたところ物すごいバブルが起きて、その後、一兆円絞ったらバブルが崩壊したと皆さんおっしゃるんですが、そんなにすごい反応が出るんなら、このときになぜバブルが起きていないんでしょう。どうして民主党はバブルを起こせなかったんでしょうか。それは、モデル上、こんなことはあり得ないと言われるかもしれませんが、日本は統計は正確な国ですから、事実としてはこうだということです。つまり、御飯食べても太らない人がいたということです。
で、皆さん、雇用です。雇用をどんどん増やす、そのためには輸出を増やすだとか日銀が金融緩和するとおっしゃっているんですが、過去二十年間、輸出も増えたし減ったし、また増えて、マネタリーベースも増えて減って、また増えました。それと雇用の増減がほとんど影響がない。パーセンテージを細かく見ると相関しているのですが、絶対額ベースで全く雇用が横ばいであります。そのために、実は雇用が横ばいであるために給与所得が増えませんので小売販売額が増えないんです。これは鉄板のような関係があります。
ところで、この状態で何とかせないかぬということでアベノミクスが始まりました。アベノミクスの一年間が右側に出ます。さあ皆さん、よく御覧ください。二〇一三年どうなったのか。こうなったんですよ。二〇一三年、年間平均でいうとマネタリーベースは百六十三兆円です。ちなみに今はもう二百兆円を超えていますけれども。取りあえず年間平均百六十三、それに対して小売販売額が一兆円増。ですが、実は増加ペースがちょっと弱まったんですけど、雇用が四十一万人増。そして、輸出が、さっきも言いましたが、金額評価の関係で六兆円増。マイナスではありません。よく頑張ったとは言えるんですが、ただ、これは胸に手を当てて考えていただきたいんですが、当初狙っていたようなレベルの増加には全くなっていないですということではないでしょうか。それはそうです。だって過去は連動していないんですから。
実は、今のトレンドは、何にも最近のトレンドと変わっていないんです。これが、景気回復なんだけどエア景気回復と私が申し上げているのは、これは非常にきついんですが、金融緩和をやっている人というのは、申し訳ないんだけど、ほかの国では起きるんですよ、だけど日本で現に起きていないことに対して完全に無視して、私が読んだ本だと回復するとおっしゃっているのはいいんだけど、それだとマヤの雨乞いと同じなんですよね。よそじゃ雨乞いしたら雨降るのかもしれないけど、日本で現に降っていないものを、どうして日本でも急に降ると言えるのか。それを是非、モデルではなく日本の現実に即して説明していただかないと話が通じない。
ちなみに、ここに出ていませんが、公共投資額の積み増しも全く同じですし、国の借金が死ぬほど増えたのも同じですが、一生懸命頑張ってきたんですが、雇用と消費を増やすに至っていないわけです。理由は何なのか。もうちょっとで終わります。
それで、株価ですね。株価は上がったじゃないか。御覧のとおりです。これも絶対数で物を見ていませんので、皆さんとしては株が上がったということになるんでしょう。事実、上がったのは大変喜ばしいことなんですが、去年の日経平均の月末の平均が一万三千七百円です。これ月末平均ですので、三百六十五日平均にするともうちょっと下がりますけれども、大体去年の後半がぴったり一万三千七百円で膠着していましたので、それと偶然にも平均値が一致していますが、御覧のとおり、株価は上がったり下がったりしています。
それで、一万三千七百円で、今日一万四千七百円ですが、喜ばしいとはいっても、申し訳ないんだが水準としてはバブル崩壊後の二十年の中でも決して高い方ではないんです。上がったのはいいことなんですよ。いいことなんですが、まるで何か史上最高に上がったみたいな雰囲気の報道もありますので、実はまだまだぐんぐん上がっていかないと本当の意味で上がったとは言えない。前回、安倍さんが首相だった頃に比べても、その時期いっとき二万円になっていましたので、全然それを達成していないのでありますが、ただ、よく御覧ください、マネタリーベースの方は空前絶後に増えているわけです。確かにマネタリーベースが増えれば株価が上がるというのは一年遅れで起きるんですが、非常に関係性が弱くなっています。これは比率で見ていると分からないんですが、絶対数で見るとはっきり分かることです。
つまり、そしてやがて力尽きて元の株価に戻るという繰り返しですので、私が申し上げたいのは、今度株価がまた元に戻っても政府のせいではないんです、これは。そもそも株価は外国の投資家がどれだけ買うかで動いていて、ほとんど、何というんですか、国内要因になっておりませんので。日本政府が頑張った結果として上がるというような相関関係がどんどん薄くなっているということを申し上げます。
更に申し上げますと、バブルのときの株価の最高は平成元年でありまして、三年ではございません。元年から三年の間に株価が一万五千円も下落する間に、お店の売上げは二十兆円増えています。小泉改革の頃、株価が八千六百円から倍に増えたわけですが、お店の売上げはガソリンスタンド以外は全く増えていません。その後、福田内閣に向けて株価が半減しましたけれども、お店の売上げは全く落ちておりません。
そんなに、株やっている人には申し訳ないんだけど、ほとんどの真っ当に商売している人にとっては余り関係ないことなんで、騒ぎ過ぎではないでしょうか、申し訳ないんだが。いや、騒ぐなとは言いませんよ。でも、重要じゃないとも言わない、だけど明らかにプライオリティー的にそればっかり言い過ぎであります。
物価も同じであります。日本では昔から物価が上がった年には当然お店の売上げも増えるという正の相関があったわけなんですが、九五年を境に、物価が上がったにもかかわらずお店の売上げが落ちる年、物価が下がっているにもかかわらずお店の売上げが増える年というアバンギャルドな年が結構増えてまいりました。そして、ちなみにこれが民主党三年間と去年であります。御覧のとおり、震災のときはさすがに物価も下がるし売上げも下がったのですが、去年は物価も上がったし売上げも上がって良かったんですが、よく見ると、おととしは物価は上がらなかったけど売上げは増えておりました。
もう一度申し上げますが、実は一般人が気にしているのは物価の方ではなくて、この上にいるか下の方にいるかでありまして、分かりますか、売上げが増えるか減るかの方が重要なんで、そのことは是非御認識いただきたいと思います。こういうのは経済学の一般論と全然ずれていて、こういう話をするたびに経済学を知らない藻谷と言われます。それに対して私のお返しするのは、経済を知らないあなたと。いや、大変申し訳ない、私が経済を知っているとは言わない。ただ、数字がこうなんですよと、しかも日本の統計は非常にはっきりしているんですよということを申し上げる。つまり、恋愛をしている人間に向かって恋愛学を知らないと言われても返しようがないということであります。現にこういう形になっちゃっているんだから、なぜと言われても分からないけどそうなんですよと。
で、皆さん、最後です。では、何で就業者が増えないのかということを申し上げます。
これは、前々から私が申し上げているとおり、人口が要因です。それで、これは宍戸先生と同じことを私も申し上げたいんですが、人口要因を無視してマネタリーベースを増やせば景気が回復するというのはエア景気回復です。実際には、人口が減り続けるという問題に手を着けない限り、本当の意味での景気回復は起きません。
だから、御覧のとおり、日本の十五歳―六十四歳はどんどん減っております。それに対して働いている十五歳―六十四歳の人もどうしても減ります。そうすると、六十五歳以上も働くんですが、就業者の総数も減るんだよと、そういうグラフなんです。
分かりにくいですよね。ゼロを外します。御覧ください。これは非常に重要な数字です。「デフレの正体」の本に対して文句を言った全ての人間に、この表に対して反論をしていただきたい。日本の生産年齢人口掛ける七〇・〇という数字を計算すると、こういうふうになっております。それに対して、生産年齢人口のうち、実際にパート、アルバイトを含め仕事をしている人の実数がこうです。
御覧のとおり、当然、景気の波がございますので、不景気、好景気、不景気、好景気、不景気、好景気、不景気、好景気、不景気。今また好景気です。景気の波で変動しますが、景気というのは二、三年、一年から三年で後退するのが景気であります。これを二十年続くものを景気と言っているところが既に解釈の間違いも甚だしいんでありまして、誰が見てもこれは合成関数です。つまり、景気の上下プラス生産年齢人口そのものの上下が合成されてこうなっているわけです。
あるインフレ誘導論者の非常に著名な大学教授がこれを見ておっしゃいました、当たり前のことを言っているじゃないか、当たり前だ、そんなのはと。そのとおりです。当たり前なので、全員言っていただきたい。これを無視して雇用だけ増やすと言っても絵空事に終わります。実際には六十五歳以上の人もたくさん働いているので、現役の労働者が減る割には労働者総数はそこまで減らないとしても、増えていくのは非常に難しい趨勢にあります。もちろん増えることは短期的には可能ですよ。ですが、不景気のときに元に戻ってしまうわけです。
問題は、ここでアベノミクスがやっていることが非常に正しいことが出てきます。七〇%しか働いていないという構造を変えなくてはいけません。どうやったら変わるんでしょう。それは、専業主婦の方で働きたい方に働いていただくというのがナンバーワンプライオリティー。それから、その他五%というのがナンバーツーであります。これは、障害者の方、うつ病で休業している方、そういう方なんです。この方々を戦力化するということです。
ところが、失業者を減らそうと皆さんされますが、それはナンセンスです。なぜか。失業者の方は転職中の方がほとんどなわけです。三%以上が転職中の人なんです。いつ調査したって常に三%以上いるんです。そうではなく、完全雇用にしても、専業主婦が一二%もいらっしゃるところでは生産年齢人口が七割しか働かない。ちなみに、総人口にすると既に五割切っています、働いている人は。人間の半分、二人に一人働いていない国でよくこれだけ経済を維持できていると思いますけれども、現実には維持しているんですばらしいんですが、もうちょっと女性が働きやすくするだけで全然状況が変わります。
今の数字ですが、こういうことになっております。今まで日本の現役人口はこのとおり平成七年から下がってきたのですが、もうちょっとで終わりますね、今後、社人研予測によりますと、コーホート予測ですね、先ほど先生がおっしゃった、人間を、人口を増やすという努力をしない場合、こういうふうになっていきます。それに対して、働く人間というのはこうなっていく。今日、初めて藻谷試算が出ました。もう一度申し上げますが、それ以外の数字は全て国の基本統計です。私の意見は一言も入っておりません。これが唯一私の意見なんですが、誰がやっても同じです。
日本では百歳の人が二十五人に一人働いています。六十五歳は二人に一人働いている。その比率をずっと伸ばすとこうなります。足下だけで二百二十万人働く人が減ります。ちなみに、去年、四十一万人増えたのは大変すばらしいことなんですが、これは六十五歳で退職した人が働き続けたからです。
ところで、日本に一千万人いらっしゃる十五歳から六十四歳の専業主婦の五人に一人働いていただくことにより、これが補えます。当面はそれで食いつなぎながら、今度は次に賃上げをしながらつないでいくというのが日本経済の正しい再生法であります。
最後に、まとめなんですが、これが「デフレの正体」に書いたことなんですけれども、日本では現役世代が減っているので労働者が減っています。ところで、労働者が減っているんですが、生産が落ちません。これについては、浜田宏一先生が、人口が減ると生産が落ちてインフレになるとおっしゃっていたんですが、それは労働集約型産業では起きます。看護師とか医者が典型ですがね。それ以外の場所では全然起きておりません。
例えば、福岡県大牟田市は人口が半分近くに減っておりますが、工業出荷額は実は最盛期より今が一番多いです。こういうのはもう経済の常識として知っておいていただきたい。皆さんは大牟田の人口がどんどん減っているから大牟田の産業は駄目になっていると思っているが、全然違います。無人工場が操業している。そもそも、そういう現場の、臨床の数字を御覧にならなくてアダム・スミスが書いた経済理論だけで議論するから話がおかしくなるんです。実際には、日本では、人口が減ると減るのは報酬、雇用者報酬であり、そしてそれを、現役を相手にしたお店の売上げが減るんです。
実は、これで生産調整をして売るのをやめればデフレになりません。ところが、企業はついつい機械が生産するので作り続けます。その結果、値崩れが起きていく。これはミクロ経済学上の値崩れなんですが、それをデフレと言ってしまってマクロ経済の話に変えてしまうんですね。で、今度は日銀のせいだと言い出します。
日銀のせいじゃないという理由は、金融緩和を三倍、もう実は今既にバブル時の四倍までしているのに諸外国と違って全く物価が上がらない希有な国日本ですね。これが日銀のせいではないということを示しています。別に日銀を擁護するつもりは全くありませんが、事実としてそうなので。これは、企業が過剰生産をやめるか、現役世代の収入を増やして物を買わせるか、どっちかでしか必ず解決しません。
いずれにしましても、そのことに向き合っていくには、金融緩和ではなく、先ほど言った成長戦略の中でも女性の就業促進ですね、三年育休ではなく三か月で職場に戻れる制度の普及が急務だと思います。
どうも長い間失礼いたしました。

 

議事録を読む 辰巳質問部分
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。
宍戸先生、藻谷先生、本当にありがとうございました。
まず宍戸先生にお聞きしたいんですが、先ほど消費税増税について少しばかりの意見表明もされたと思いますけれども、しかし、私たちは消費税増税、四月からも、来年十月からの増税も反対なんですが、国会の中では消費税はやっぱり増税しなければならないという財政上の観点からおっしゃる方も多いかと思うんですね。
では、宍戸先生の方は、例えば消費税増税はデフレを悪化させる、日本の経済の成長にならないというのであれば、所得の再分配という観点からも、また財政上の観点からも、じゃどういう方策が別にあるのかというふうにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。
そして、時間がないので、続いて藻谷先生の方の質問ですけれども、先生の本を読ませていただきまして、現代の先進国にとって一番足りないものが消費活動をするための時間だというふうに書いておられて、やはり日本の異常な長時間労働に対しての懸念というのがあったと思います。私も本当に同感ですし、先ほどのやはり時給を上げていくということが大事だという点でも、私たちは、最低賃金を引き上げることだったら政治だってすぐにできるわけだからということで提言もさせていただいています。
質問なんですけれども、先生のお話は、やはり就業者数の増加というのが個人消費全体の増加、消費の増加に寄与していくということだと思うんですが、最近では政府の政策として、いわゆる株式、株への投資をどんどん進めていこうと。この間、廃止になりましたけれども、株の譲渡に対する税金をまけてきたりとか、最近ではNISAというものも始まりましたけれども、一見すると株への投資が進むと個人消費などは冷え込んでしまうんじゃないかという側面もあったりするのかなというふうにも思うんですが、この点について、国、政府の方針についてどのようにお考えでしょうかということをお聞きしたいと思います。
○会長(鴻池祥肇君) では、今回は藻谷参考人から御答弁お願いします。
○参考人(藻谷浩介君) はい、分かりました。
一般論としましては、株式の投資を個人がやってお金を稼いでいただいて、それをどんどん消費に回していただければ活性化するわけなんで、経済原理の原則一般からいえば、個人投資の促進は当たり前、先進国の常識ということになります。
ところで、先ほどお見せした日本の不都合な過去の数字によりますと、小泉改革のときに、主に株式投資が原因ですが、個人所得、税務署に申告された課税対象所得額が年間百七十六兆円から百九十一兆円に十五兆円増えておりました。その後、リーマン・ショックでまた百七十六兆円に十五兆円減ってしまうんですが、先ほどお示ししたとおり、その間、小売販売額に関して言いますと増加がなかったわけです。三兆円だけ増加があったんですが、先ほど申し上げたとおり、内訳を見ると、燃料小売業、ガソリンスタンドの増加のみでありまして、それ以外のものの売上げ、要するにそれはガソリンが上がったからなんですが、円安で、波及しませんでした。
これは、経済学の世界では、だから株式投資をすると消費にお金を使わなくなるからやめろなんというのは、もうばかかと、永久国外追放になりますが、私はそういうことを言っているんじゃないんですが、日本国においてはセーの法則が壊れていて、株でもうかった人がどうも全然消費をしてくれないという過去の嫌な実績がございますので、この傾向が続いているんであれば、投資優遇策はやっても余り効果が出ないよねと、まあやるのはもちろん勝手ですが、財政を悪化させてまでやることではないだろうとは思います。
その理由というのは、だんだんアメリカもそうなってきているんですが、やはり株式投資をしている人の種類が変わってきまして、お金を稼いでためていくことに、貯金道の人がどんどん投資に残っていまして、使うために稼いでいる人が、だんだんまともな投資家がいなくなってきていると。生き残っているのが、要するに金を殖やすことにしか興味のない人ばっかりになってきているということが恐らくその原因なんですが、本来の投資から外れているんですね。本当は本来の投資家を増やせばいいわけですが、残念ながら、現実でいうと、今のやり方ではなかなかそういうふうにならないということなんだと思います。
○参考人(宍戸駿太郎君) さっきの消費税と財政再建の問題ですね、これは急ぐと丸木橋を渡ったことになって、橋が折れる可能性があります。急がないで我慢をして成長に励めと、こういうことなんです。ということは、生産効果の高いいろんな財政支出があるわけですから、それは科学技術の振興策もありますし、教育の問題、福祉もあります。それから公共投資という最も資本的な支出がありますし、こういった財政出動をもっとやって、日本銀行がそれをサポートする体制にあるわけですから、今は。昔の日本銀行ではありませんから。金融支援型の財政出動をやれば生産はどんどんもっと増えるわけです。
今なかなか生産が上がっていないというお話があったんですが、もっと日本経済には成長の能力が、実力がいっぱいあるんです。ですから、実質四%とか五%の成長も決して奇跡ではないんです。これは、若い方は余り経験なかったんですが、私は所得倍増計画のときに経済企画庁にいましたから。七%の成長率が、池田内閣が言ったのが実際は一〇%になったんです。このときに消費者物価は五%上がりましたからね。これは成長し過ぎですが。
いずれにしましても、日本経済ってまだまだ成長の実力をいっぱい持っているものですから、海外の有識者は、どうして二%ということで安倍内閣は安心して成長戦略を言っているんだろうかとみんな不思議に思っていますよ。そういうことでございますから、十分財政は潤うと、こう思っております。
○辰已孝太郎君 ありがとうございました。