日本共産党 衆院比例 近畿ブロック たつみコータロー

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国会会議録

トラック運転手の労働条件改善を

物流労働者の労働条件悪化を助長しかねない物流総合効率化法改定案が4月28日の参院国土交通委員会で、自民、公明などの賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。

日本共産党の辰巳孝太郎議員は採決に先立つ質疑で、規制緩和によりトラック運転手が低賃金、長時間・過密労働を強いられている状況に触れ、「適正運賃が収受されない実態も深刻だ」と指摘しました。運転手に対し、適正運賃・料金や燃料高騰分の費用、高速道路料金の支払いがないなど、主に荷主に問題がある取引の実態が政府調査でも示されていると述べました。

国交省が荷主に是正措置を勧告する「荷主勧告制度」がある一方、警告書の発出がわずか2件、荷主名が公表される「荷主勧告」は0件(2014年度)だと指摘した辰巳氏は、「荷主の横暴を取り締まるための規制強化が必要だ」と強調しました。

辰巳氏は「トラック運転手の賃金を保障する『標準運賃制度』のような仕組みが必要ではないか」と提起。石井啓一国交相は「今後、官邸が主導するサービス産業の生産性向上および、下請け等中小企業の取引条件の改善に向けた議論とも連携しつつ、適正運賃の周知に向けた具体的方策の検討を進めたい」と答弁しました。

辰巳氏は、「運転手の安全面、健康や賃金に本格的にメスを入れない限り、日本の産業を支える物流の人材不足は解消されない」として、政府に実効性のある措置を求めました。

2016年5月1日付「しんぶん赤旗」より引用

議事録を読む

○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
本改正案は、物流業務の効率化、省力化を図り、労働力不足に対応するというものであります。二〇一五年十二月二十五日、国交大臣の諮問を受けた審議会、この答申では、労働者の確保が極めて厳しい、我が国の物流は危機的な状況に直面という認識を示しております。
まず大臣に聞きますが、なぜトラックドライバーが不足をしているんでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) トラック運転手不足の要因につきましては、トラック運送業が他産業と比較して長時間労働、低賃金の傾向にありまして、これがトラック運転手の円滑な確保を難しくしている要因であると認識をしております。
○辰巳孝太郎君 国交省は、二〇〇八年の時点で、二〇一五年には業界全体で約十四万人の、一事業者につき二、三人のトラックドライバーが不足をするという試算をしておりました。一体何の手を打ってきたのかということで、政府の対策が私は問われていると思います。
では、先ほど大臣が長時間、低賃金と言っていただきましたが、なぜこの業界では長時間労働と低賃金、こうなっているんでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) トラック運送事業者の九九%は中小零細企業でありまして、荷主、元請に比べて立場が弱いことから、荷主都合の長時間の荷待ち時間を押し付けられる、適正運賃の収受が難しいといった実態があり、これが低賃金、長時間労働の一因となっていると認識をしております。
○辰巳孝太郎君 道路貨物運送業、トラックに係る労働基準関連法令の違反というのも見ておきたいと思うんですが、二〇一四年で監督実施事業場数二千七百六十五のうち労働基準関係法令違反が二千三百十一、これ全体の八三・六%であります。また、改善基準告示違反、この事業場が千八百四十五で六六・七%というふうになっておりまして、まさにブラックな職場となっているのが実態であります。
私は、こういう事態を招いている主な要因がこの間の規制緩和であったということも指摘をしておかなければならないと思います。規制緩和前後の事業者数は、一九九〇年度、これでは四万七十二でありましたが、二〇一四年度は六万二千六百三十七、つまり一・六倍に増加をしておりまして、この同じ期間、大型トラック運転者の所得も三百八十三万円から三百四十四万円と減少をしております。また、規制緩和に伴って、いわゆる認可運賃から届出制に改悪をされて運賃規制は撤廃をされました。それに加えて、二〇〇三年の貨物自動車運送事業法の改悪によって営業区域というのも撤廃をされました。
全日本建設交運一般労働組合によりますと、トラックドライバーが、例えば六日間百四十四時間出っ放し運行を余儀なくされるケースも出てきている、大都市近辺のトラックステーションでは、早朝から満車状態で地方の大型トラックがひしめき、運転者は車の中で就寝することを余儀なくされている、金曜日の夕方に入ってきたトラックは、いつ取れるとも知れない帰り荷を待って、月曜の夕方、三日、四日過ごすこともざらだと。ここまで労働環境が悪化をしているわけでございます。
大臣、改めて聞きますが、やはりこの規制緩和、反省すべきだと思うんです。反省ありませんか。
○国務大臣(石井啓一君) 平成二年の規制緩和は、競争促進によりサービスの多様化等をもたらし、市場の活性化という観点からは一定の成果があったと考えられます。その一方で、事業者数が約一・六倍に増加したこと等により競争が激化し、事業者の経営環境が悪化していると、こういう面もあるかと存じます。
○辰巳孝太郎君 今大臣おっしゃっていただきました、経営環境が悪化をした、それに伴って労働環境も悪化したと。そして、これだけ皆さんが審議会も開いてトラック運転手の不足をどうしようかと議論をせざるを得なくなっているわけですから、今の大臣の答弁は事実上、規制緩和の失敗を認めたというふうに捉えたいと思います。
このやはり規制緩和がドライバーの健康に深刻な影響も及ぼしているということも取り上げなければなりません。二〇一四年度の脳・心臓疾患の労災認定の全体の件数と、そしてその中でトラック運転手が占める数と割合を示していただけますか。
○政府参考人(土屋喜久君) お答え申し上げます。
お尋ねの平成二十六年度におきます脳・心臓疾患の労災認定件数は全体で二百七十七件でございまして、そのうちトラック運転手に係るものが七十四件でございますので、率にいたしまして二六・七%となってございます。
○辰巳孝太郎君 驚きの数字なんですね。つまり、実際のドライバーは八十三万人であります。労働者数四千七百万人のうち八十三万人ということですから、一・八%に満たないトラックドライバーが、この脳・心臓疾患の労災認定でいいますと二六%を占めるまでになっているということであります。
これ、大臣、どう受け止めますか。やはり、劣悪な労働条件は、労働者の命と健康に関わるとともに安全運行にも直結する大問題だという認識はございますでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 脳・心臓疾患の労災認定におきましてトラック運転者の占める割合が高いことから、トラックの安全輸送を徹底するため、適切な労働環境を確保すべく、運転者の過労運転の防止や健康管理が重要と認識をしております。
このため、国土交通省といたしましては、貨物自動車運送事業法に基づきまして、運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準の遵守や、健康診断による運転者の健康状態の把握をトラック事業者に義務付けております。監査等を通じまして、トラック事業者に対し、過労運転防止のために必要な運行管理の徹底や的確な指導監督に努め、トラック事業の労働環境の改善に努めてまいりたいと存じます。
○辰巳孝太郎君 大臣、もう一度、改めて、やはり問題は低賃金、長時間労働、過密労働をどう改善するかだというふうに私は思うんですが、低賃金、長時間労働、どう具体的に改善をしていくのかをお示しいただきたい。
○政府参考人(藤井直樹君) お答えいたします。
賃金や労働時間など、トラック運転者の労働条件改善に向けては、トラック運送事業者の経営環境を改善することが不可欠であると考えております。
このことを踏まえ、国土交通省においては、平成二十七年度、トラック事業者、荷主、労働組合等から成るトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会、これを厚生労働省と共同で設置をし、トラック運転者の労働時間の削減、トラック事業者の適正運賃の収受の実現に向けた議論を開始したところでございます。平成二十八年度からは、トラック運送事業者と荷主の協働による待機時間の削減あるいは荷役の効率化など、長時間労働を削減し過労運転を防止するためのパイロット事業を実施し、ベストプラクティスを創出し、その普及促進を図ることとしているところでございます。
○辰巳孝太郎君 恐らく、パイロット事業の後にはガイドラインということだと思うんですが、私、ガイドライン作るだけでは不十分だと思うんですね。今、適正運賃の収受がされないという話もありましたが、この実態が本当に深刻であります。
二〇一一年の全日本トラック協会の調査によりますと、運送原価を無視した受注の有無、これが全体の五割弱となっております。また、政府は、官邸主導で、トラック輸送における適正な取引や輸送の安全確保を図るため、貨物利用運送事業者とトラック運送事業者の取引関係や輸送の安全確保に関する実態調査を二月にも実施をしております。
この調査では、適正運賃・料金の収受ができていない、七〇%、荷主都合による荷待ち待機をさせられたが費用の支払がない、七一%、燃料高騰分の費用を収受できていない、七九%、高速道路利用を前提とした時間指定がされているのに高速道路料金の支払がない、四三%等々、主に荷主に問題がある取引の実態が生々しく示されております。明らかに法令違反だと判断されるものばかりだと思うんですね。
公取に確認をしますが、こうした実態が広くあることについてこれまでどういうふうに改善に取り組んで指導してきたのか、実績をお答えいただきたい。
○政府参考人(原敏弘君) お答えいたします。
平成十五年の下請法の改正により、新たに自動車貨物運送等の役務取引も下請法の対象に追加するとともに、平成十六年に、特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法を指定するなど、道路貨物運送事業における取引の適正化を努めているところでございます。平成二十六年度におきましては、道路貨物運送業について二百六十五件の指導を行ったところです。
今後とも、このような取組を通じ、道路貨物運送業における取引の適正化に努めてまいる所存でございます。
○辰巳孝太郎君 二百六十五件ということなんですね。
私は、下請事業者が置かれている実態に比して、勧告や指導の件数が余りにも少な過ぎると思います。しかし、公取はまだ頑張っている方で、私はもっとひどいのは国交省だというふうに思っております。
トラック運送事業者が行った違反行為について、荷主の関与があった場合に国交省が荷主に対して是正措置を勧告する荷主勧告制度というのがあります。今日、資料にもお配りしておりますが、貨物自動車運送事業法第六十四条に基づく勧告制度であります。
国交省、発出実績をお答えいただきたい。
○政府参考人(藤井直樹君) お答えをいたします。
貨物自動車運送事業法には、トラック運送事業者の違反行為について荷主や元請の主体的な関与が認められる場合に当該荷主等に対して是正措置を勧告し、違反行為の再発を防止する荷主勧告制度が定められているところでございます。
これまで、荷主等の主体的な関与が認められたケースというのはないために荷主勧告を発動した実績はございません。一方で、荷主の関与が認められるなどの場合として平成二十六年度には警告書を二件、さらには、荷主の明確な関与は認められないが再発防止のために荷主の協力が必要なものとして協力要請書を平成二十六年度においては四十八件発出しているところでございます。
○辰巳孝太郎君 そうなんですね。協力要請書が四十八件、警告書、これが二件、荷主勧告はゼロだということであります。やはり実態とこの取締りを含めた取組に余りにも乖離があるというのが実態であります。先ほど国交省は、大分前から、二〇〇八年の時点で業界全体でトラックドライバーが不足すると、こう言っていたにもかかわらず、この発出件数が余りにも少な過ぎるということであります。
結局、私は、労働者の賃金を確保すること、労働環境を改善することが人手不足、これの解消のために何よりも必要だと考えております。
高知県では、全国唯一、一般貨物自動車運送業において特定最低賃金、これ九百十円を設定して努力をしております。国としても、建設労働者であれば例えば設計労務単価があるわけです。また、貸切りバスであれば上限・下限運賃があるわけでありまして、契約において下請事業者が不利な立場であることを前提に、事業者及び労働者を保護する制度が不十分ながらここには存在をしているわけであります。
大臣、トラックドライバーの賃金を保障する標準運賃制度のような仕組みがやはり必要ではないですか、お答えください。
○国務大臣(石井啓一君) トラック運送事業者が、安全コストや人件費を含む必要なコストを適切に負担できる環境をつくることは重要であると認識をしております。
このため、二月十九日に開催をいたしました第三回トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会におきまして、適正運賃収受の実現に向けた議論を開始したところであります。
運賃につきましては、例えば目安となる運賃を定めるべきだと、また原価計算に基づく運賃設定を徹底すべきだと、さらには待機料金、附帯作業費などの運送以外のコストを適切に収受すべきだと、様々な意見がございます。
今後、官邸が主導するサービス産業の生産性向上及び下請等中小企業の取引条件の改善に向けた議論とも連携しつつ、適正運賃収受の実現に向けた具体的な方策について検討を進めてまいりたいと考えております。
○辰巳孝太郎君 最後に、やはり実効性のある措置をお願いしたいと思うんですね。ドライバーの安全、健康、そして賃金、ここに本格的にメスを入れない限り、日本の産業を支える物流の人材不足は解消されないということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。

反対討論を読む

○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
我が党は、二〇〇五年制定の物流総合効率化法について、中小企業の支援に限定されていた流通業務効率化促進法を廃止し大手物流業にも支援対象を拡大する大企業優遇策だとして反対をいたしました。
実際に、この十年間で総合効率化計画認定に係る減税額は、大企業では四十二億七千百万円にも上ります。一方で、七〇%以上を占める小規模事業者に至っては僅か二億二千九十万円しか減税をされていません。
改正案は、支援の対象となる流通業務総合効率化事業について、二以上の者が連携して行うことを前提に、多様な取組へと対象を拡大し効率化を図るとしています。しかし、トラック輸送の七〇%以上を占める小規模事業者は帰り荷の確保も独力では限界があり、元請や二次、三次下請利用運送事業者に頼らざるを得ないのが現状です。小規模事業者が主体的に二以上の者の連携を行うことは現実的に困難です。
今行うべきは、重層下請構造を解消し、荷主や元請、大手企業による買いたたきなど、物流業界にはびこる不公正取引を是正することであります。
また、改正案は、労働力不足に対応するとしていますが、労働者を確保し育成するようなものではありません。労働者がいなくても済むように効率化し省力化するものであります。これでは人員削減や長時間過密労働など労働条件の悪化を助長するケースも生じかねません。労働力不足の背景には、低賃金、長時間過密労働の劣悪な労働条件があります。そして、その大本には物流事業の規制緩和があります。この規制緩和政策を是正し、運送の担い手である労働者の安全、安心運行を保障する賃上げ、労働条件の改善こそ急務です。
以上申し述べ、反対討論とします。