リニア認可するな
以下、しんぶん「赤旗」より転載。
リニア計画
環境協定なぜ拒む
辰巳氏 地元無視のJR東海
日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は16日の参院国土交通委員会で、リニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)の工事実施計画を提出したJR東海が、前例のある環境保全協定を拒否している問題を追及しました。
環境保全協定はこれまでリニア実験線(山梨県)建設や北海道新幹線建設の際に、地元自治体や漁協とJRなどが結んでおり、今回は長野県などが求めていました。国交省の藤田耕三鉄道局長は「(協定締結は)当事者間でよく話し合っていただきたい」と述べ、無責任な姿勢を示しました。辰巳氏は「前例もあり、JR東海が拒絶するのはおかしい。国が指導すべきだ」と厳しく指摘しました。
辰巳氏は、リニア建設によって景観が激変し、10年間にわたって1日1700台以上の工事用車両が生活道路を往来する長野県大鹿村で、議会が「工事実施計画の認可をしない」よう求める意見書を全会一致で可決したことを紹介。知事が「観光、環境に影響する」として残土を搬出するトンネル(同県南木曽町)の削減を求めても、JR東海が「事業の工期から難しい」と拒否している実態を突きつけました。
(2014年10月18日 しんぶん「赤旗」)
以下、会議録を掲載
(2014年10月16日 参議院国土交通委員会)
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎でございます。
リニア新幹線について質問をいたします。
本年六月に環境アセス評価書に対して環境大臣からの意見が提出をされ、続いて七月十八日には国土交通大臣から意見も出されました。環境大臣からは、このリニアの事業に当たって、その事業規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を最大限回避、低減するとしても、なお相当の環境負荷が生じることは否めないとしました。また、太田大臣からも、地域住民等への丁寧な説明、これを求めました。
それを受けて、八月の二十六日、JR東海は環境アセス評価書の補正版を公表し、工事実施計画の認可申請を国交省に提出をいたしました。
大臣にお聞きしますが、この環境アセス補正版で大臣の意見は反映されたと考えておられますでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 中央新幹線は極めて大規模な事業でありまして、多量の建設残土に伴う生活環境や自然環境への影響、あるいは事業に伴う水環境への影響等、多岐にわたる分野での影響が指摘をされています。このため、今御指摘のありましたように、七月十八日には私の国土交通大臣意見を述べ、国交省からも独自の観点から八項目の措置を講ずるよう求めました。
JR東海が、八月二十六日に、補正した環境影響評価書を送付してまいりました。現在、工事実施計画の審査の一環として、具体的に国土交通大臣意見がどのように反映されているかを含めまして確認をしている作業をしているところでございます。
○辰已孝太郎君 審査の段階だということであります。
私、この評価書の補正でも十分にこれ反映されていないというのが、少なくない自治体、住民の考えだと、こういうふうに捉えております。
実は私、この間、山梨県の実験線から始まって、神奈川、静岡、長野、岐阜、愛知の沿線自治体に調査に入ってまいりました。住民やまた自治体の方々からの話もたくさん聞いてまいりました。今日、資料にもお配りしておりますが、長野県の大鹿村という人口千人ほどの小さな村があります。大鹿歌舞伎というのも有名ですし、映画化もされております。地方の人口減が言われて久しい中で、すばらしい自然があり、Iターンで移住してくる人も多いと聞きました。ところが、このリニアの建設計画がこの大鹿村に激震を走らせたわけであります。
今日の資料には、この村を代表する自然を一望できるスポット、これが大西公園という公園からの風景なんですが、パンフレットなどにも使われております。ところが、このリニアの建設が予定されている変電所からの送電線、送電鉄塔によってこの景観がもう著しく改変されてしまうと。そのため、この大鹿村は死活問題だとしまして、鉄塔を設置しない方策などを求める、景観と環境への影響を回避又は低減することと、アセス準備書に対して意見としてまとめたわけですが、結局、JR東海からの評価書ではゼロ回答となったわけであります。
それだけではありません。発生残土、これを搬出するためのダンプカーが一日千七百台以上往来すると。つまり、八時間の運搬時間として、十七秒に一台ダンプカーが通る計算になる。これが十年以上続くと。本年九月の十八日に、大鹿村村議会が全会一致で総理並びに国交大臣に対して意見書を決議いたしました。そこには、特に建設残土の運搬に伴う環境負荷低減策等の具体的情報が明らかになり、住民の懸念が解消されるまでは工事実施計画を認可すべきではないと、ここまで求めているわけですね。
補正版を受けても住民、自治体の懸念は解消されておりません。大臣、このことをどう受け止めますでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 九月十八日に大鹿村議会がリニア中央新幹線計画の認可につきまして、建設発生土の運搬時の生活環境負荷低減等の観点から慎重な検討を求める意見書を全会一致で可決したことは承知をしています。工事用車両の通行は地域の生活環境に大きな影響を与えるものであり、御指摘の意見書は地域の懸念を表明されたものだと理解をしています。
国交省としましては、環境影響評価法に基づく国土交通大臣意見の中で、適宜建設発生土の仮置場を活用しながら搬出量や時間帯を調整し、工事用車両による円滑な搬出に資する措置を講じること、貨物鉄道の利用など発生土の工事用車両以外での搬出方法についても検討し、環境負荷の低減に努めること、これを求めています。現在、工事実施計画の審査の一環として、具体的に国土交通大臣意見がどのように反映しているかも含めまして確認をしている作業中であります。
○辰已孝太郎君 JRのアセスには全く村民、自治体が求めるような配慮はないということも言っておきたいと思います。
大鹿村は、中川村、南木曽町などとともに日本で最も美しい村連合に加盟し、豊かな自然を求めて都会からの移住者も多いわけです。この連合のホームページには、失ったら二度と取り戻せない日本の農山漁村の景観、文化を守りつつ、最も美しい村としての自立を目指す運動なんだと、ここまで言っているわけであります。市町村合併という選択をせずに、住民自治とすばらしい自然をよりどころに頑張っているのがこういう自治体でありまして、訪問した南木曽町の町長は、自分たちは特別なことを求めていないんだと、ふだんの生活ができる、これが一番幸せなんだということも言っております。この思いに耳を傾けていないというのがJR東海だということも言っておきたいと思います。
この南木曽町なんですが、今日、二枚目の地図にも示しましたが、坑口が近距離に二か所設置をされまして、そこから残土が運び出される計画になっております。妻籠宿などもあり、観光そして環境に影響するとして知事意見においてもこの坑口の削減を求めたわけですが、JR東海は拒否したわけですね。JR東海にその理由は何だと聞けば、これを削減すれば二〇二七年の開業に間に合わないと、この姿勢が住民の不信というのを実は高めているわけであります。
国交省に聞きますけれども、今、工事実施計画を審査中だと。私、聞きたい。大事なのは工期なのか、それとも環境保全なのか、どうですか。
○政府参考人(藤田耕三君) 私ども、今、工事実施計画の審査、主に三つの観点から行っております。一つは技術基準等への適合、二つ目には環境への配慮、それから三つ目には工事費あるいは完了予定時期といった問題でございます。この観点、いずれも大事な観点でございまして、どれかを優先するという性格のものではないと思っております。
○辰已孝太郎君 JR東海はとにかく工期ありきと。国交省が審査に当たってそれに追随することがあってはならないということも言っておきたいと思います。
JR東海の環境アセスというのは、自治体、住民の声には十分に応えておりません。そこで重要になってくるのが環境保全協定の締結であります。長野県知事、長野県の中川村、南木曽町、喬木村、大鹿村などから、結ぶべきだとの要望も出ております。ところが、JR東海は一貫してこれを拒否、拒絶をしております。
しかし、私、調べてみたところ、山梨県ですね、実験線では、これ環境保全協定結んでいるわけですよ。二〇〇五年には、北海道新幹線の渡島当別トンネル建設の際に、上磯郡漁協、漁協ですね、と鉄道・運輸機構が環境保全協定を結んでいるわけですね。
これ、ちょっと事実関係だけ確認しますけれども、これは間違いないですね。
○政府参考人(藤田耕三君) 例えば、鉄道・運輸機構が一部の漁業協同組合と環境保全協定を締結している例があることは承知しております。
○辰已孝太郎君 結んでいるんですよ。
私はもう一回国交省に聞きたいんですけど、では、このJRの環境保全協定は結ばないという姿勢について国交省はどう考えているのか、少なくとも住民の懸念払拭のためにはこの協定を結ぶべきだと私は思いますけれども、どうですか。
○政府参考人(藤田耕三君) 中央新幹線は大規模な事業でございまして、地域の生活環境等に大きな影響を与えます。このために、地元の理解を十分に得ながら事業を進めることは必要だと思っております。
ただ、協定の締結につきましては基本的には当事者間の問題であると考えておりまして、当事者間でよく話し合っていただきたいと思っております。
○辰已孝太郎君 政府は国家的プロジェクトだとリニアを言ったりしていますけれども、こういうときだけは当事者間でやれと言うわけですよ。私にとったら、これは二枚舌だと言わなければならないと思います。前例があるんですから、私は、JR東海、これ拒絶するのはおかしいと思っておりますし、先ほど言いました中川村というところは、大鹿村から出る発生残土がこれ通る場所なんですね。ところが、JR東海は、この中川村を関係市町村ではないとして、評価書の対象に入れていないわけであります。評価書に書かれていない問題について自治体が環境保全などのちゃんとした協定を結んでほしいと求めるのは、私は当然のことだと思っております。自治体は強く求めているわけです。ところが、JR東海は拒絶をしているわけですから、じゃ、これきちんと誰が結ばせるのかといえば、私は国しかないと、国がちゃんと指導すべきだということも言っておきたいと思います。
怒っているのは長野だけじゃありません。静岡も怒っております。静岡は、県北部約十・七キロをリニアが全線トンネルで通過する区間であります。中間駅はできません。六月に南アルプスがユネスコエコパークに登録をされたわけですけれども、その中に発生残土を捨てる、置くという計画であります。
候補地の一つがツバクロ沢というところなんですが、地元で聞きますと、そこには一番捨ててほしくないと言っておりました。そのツバクロ沢、三枚目の資料に書いていますけれども、約五十メートル、高さ五十メートルの残土ですね、それが一キロ続くと。五十メートルといったら十五階建てのマンションぐらいの高さなんですが、これが崩れたらどないしようかと心配されているわけであります。元々南アルプスは約百万年前に急速に隆起した山々ですから、不安定で崩れやすいと。私も実はこれ、ツバクロ沢見に行こうと思って九月に調査に行ったんですが、直前の雨で落石がありまして、これ阻まれ見れなかったんですよ。地元にとっては、せっかくのエコパーク登録が取り消されかねないという心配の声が出ています。
そして、静岡で最も懸念されているのが、県の南北を走る大井川の水量減少であります。
環境アセスでも、大井川の水量が毎秒二トン減少する可能性があるとしております。毎秒二トンというのは、大井川下流に位置する七市六十万人の水源と同じ量であります。静岡にとっては大井川というのは文字どおり恵みの水でありまして、静岡のお茶は大井川からの霧やもやによってうまみが増すと、こう言われておりますし、日本国内のサクラエビ、この水揚げの一〇〇%全ては実は大井川河口域の駿河湾からのものであります。シラスも有名でありますけれども。この駿河湾に流れ込む大井川の水量が減ることによってプランクトンなどの栄養が海に届かずに、稚魚の生息に影響を与えると懸念する研究者の指摘もあります。
残土、またその運搬によって、観光資源の破壊、水量減少による影響を懸念して自治体がその対策を求めて、そして環境保全協定を結んでほしいと要求するのは、私は当然の話だと思います。そして、エコパーク、お茶、サクラエビ、これ、リニアは自然だけではなくて地域を代表する特産品をも奪ってしまう可能性があると、地域の産業を破壊して何が地方創生だと私は言っておきたいと思います。
最後に、二〇五〇年グランドデザイン、国土のグランドデザイン二〇五〇について、リニアに関連してお聞きしたいと思います。
七月に公表されましたグランドデザインでは、東京、名古屋、大阪をリニア新幹線によって六十七分で結び、六千万人にも及ぶ一大都市圏、スーパーメガリージョンを形成するとしております。同時に、この中では、東京一極集中は望ましくないとしております。
ところが、このスーパーメガリージョンを形成することによって、東京に人、企業などが今以上に集中をしてしまういわゆるストロー効果、又はこの三大都市圏に近隣の都市が吸い寄せられるストロー効果というのが懸念をされております。リニアの建設によって更にこれを進めてしまうんじゃないか。
国交省に聞きますけれども、ストロー効果にならない担保というのはあるんでしょうか。
○政府参考人(本東信君) お答えを申し上げます。
リニア中央新幹線の整備によりまして、東京―大阪間はお話しのとおり約一時間で結ばれる、これによりまして、都市間移動というよりも言わば都市内移動に近いと、こういったものになるわけでございます。これによりまして、通勤、出張、あるいは旅行、こういったものも容易になると。例えば、大阪にお住まいの方が東京に単身赴任されなくても大阪から通勤できると、こういったことも容易になるわけでございます。これによりまして、東京以外の地域に拠点を置くことが促されたり、あるいは東京から旅行に出かける、こういった方々も増える、そういった効果も期待されると考えております。
したがいまして、リニア中央新幹線の整備は決して東京一極集中を加速すると、そういうものではなくて、むしろ東京以外の地域がその創意工夫によりまして人の流れを呼び込む、そういうチャンスになり得るものではないかというふうに考えております。
○辰已孝太郎君 ストロー効果でそれぞれの都市が努力すると、創意工夫すると言うんですけれども、大体どこの都市だって創意工夫はしているんですよ。移動が六十七分ですか、これで東京に行かなくても大阪から出勤できると言いますけれども、一体どれぐらいの定期代が掛かるんですか。結局、企業にとってはそれの、てんびんに掛けるんですよ。ストロー効果というのは、どれだけ都市が努力をしたとしても起こってしまう場合がある社会現象なんですね。私、大事なのは、そういうことの検証をきちんとやっているのかということなんですよ。
グランドデザインの中には、時間距離が短いと、例えば二時間だとストロー効果が発生しにくいという指摘があるという文言が出ているんですけれども、この根拠は何なんですか。
○政府参考人(本東信君) お答え申し上げます。
御指摘の点でございますけれども、国土のグランドデザイン二〇五〇の策定に当たりましては、有識者の方々に御参画をいただきまして、懇談会を設置していろんな御議論をいただきながら検討を進めたところでございます。御指摘の点につきましては、この有識者による懇談会の第二回目の会合において御指摘があったと、そういうものでございます。
○辰已孝太郎君 それは誰が言ったんですか。
○政府参考人(本東信君) この有識者の懇談会でございますけれども、参加される方々に活発に自由に御議論を行っていただくと、そういう趣旨のために、議事概要を後日公表しておりますけれども、その中ではお名前を掲載しないと、そういう前提で御議論をいただいているものでございます。そういうことでございますので、御質問の点についてはお答えを控えさせていただきます。
○辰已孝太郎君 私、議事概要を見させていただきましたけれども、確かに名前は書いていないんですよ。何人かの有識者と、それとこの第二回はゲストスピーカーとしてリニアに関することをいろいろ教えてほしいと、発言してほしいということで葛西JR東海の会長が来てはるんですね。リニアについてこれを言っていると。これ、結局、時間距離が短いとストロー効果が発生しにくいと言っているのは、JR東海の葛西会長じゃないですか。
私は、有識者会議といっても、結局当事者なんですね。リニアを建設したいこの当事者が、ストロー効果は起きないと、そういう指摘があるんだということを幾ら言っても、結局このグランドデザイン、そのことをストロー効果が起きない根拠にしているわけですよね。私はこれ、もう本当に茶番だと思っているんですけれども、結局様々な影響については研究も検討も十分にされていないということでありますし、国会でこのストロー効果についても議論さえされていないということであります。
世界に例を見ないプロジェクトだとリニアはいいますけれども、確かに高速化によって国の形を変えて、そして人々のライフスタイルさえも変えてしまう可能性があります。しかし、その代償は取り返せない自然破壊であり、地方をより衰退させていくものだというふうに私は思います。このような事業は絶対に国交省、大臣は認可すべきではないということを申し伝えて、私の質問を終わります。
以下、委員会で配布した資料を掲載。