公営住宅家賃の減免周知を政府に要求
以下、しんぶん「赤旗」記事を転載します。
2015年4月10日(金)
公営住宅家賃の減免周知を
千葉・母子無理心中未遂 辰巳参院議員が政府に要求
(写真)質問する辰巳孝太郎議員=9日、参院予算委 |
日本共産党の辰巳孝太郎議員は9日の参院予算委員会で、公営住宅の家賃減免制度の周知徹底を政府に求めました。
昨年9月、千葉県銚子市の県営住宅で家賃が払えなくなった母子世帯の母親が13歳の娘を殺害する無理心中未遂事件が起こり、行政の対応が問われています。世帯収入は母親のパート収入7万円と児童扶養手当で計12万円しかなく、1万2800円の家賃を9カ月滞納。一昨年3月末で入居許可を取り消されました。
辰巳氏が家賃減免などで救うことができなかったのかとただしたのに対し、国土交通省の橋本公博住宅局長は「県の基準では適用可能だ」と答えました。
辰巳氏は、県が母親に直接、減免申請をうながした形跡がなく、入居者の事情の把握や民生部局との十分な連携がされなかったと指摘。太田昭宏国交相は「事件はきわめて残念だ。入居者の状況把握や福祉部局との連携強化の徹底を図る」と答えました。
辰巳氏はさらに、母子は生活保護を利用できたのではないかと追及。「母親は市役所の社会福祉課を訪れたが、申請せずに帰った。国保料も家賃も滞納しているこの世帯に申請の意思が本当になかったのか。行政側は命のとりでとして声なき声を聞く努力をしたか」と迫りました。安倍晋三首相は「住宅部局と生活保護を扱う民生部局の間で情報共有して家賃の軽減策を講じるなど居住安定の支援策を要請した」と答えました。
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎です。
昨年九月の二十四日、千葉県銚子市にある県営住宅にお住まいの四十三歳の母親が、当時十三歳の娘の首を絞めて殺害する痛ましい事件が起こりました。母子家庭の二人暮らしで、家賃を滞納し、その日は県営住宅からの強制退去が執行をされる日でありました。家を失ったら生きていけないという思い詰めての無理心中未遂でありました。行政は救うことができなかったのか。この問題について質問をいたします。
まず、国交大臣にお聞きしますが、公営住宅法の趣旨、目的を確認したいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 公営住宅法の目的は、第一条におきまして、「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」と規定されています。
○辰巳孝太郎君 ところが、最も福祉や手当てを必要とされる公営住宅の現場でこの悲惨な事件は起こりました。当時、母親の収入は、パート収入が七万円、児童扶養手当等を合わせましても十二万円程度でありました。入居許可が取り消された二〇一三年三月三十一日時点で十一万五千二百円、九か月分の家賃滞納が確認をされております。
公営住宅は収入によって家賃が決定しますが、所得によっては更に減額できることになっております。この母親の収入、所得では、家賃は減額できたのではないですか。
○政府参考人(橋本公博君) お答え申し上げます。
千葉県によりますと、この世帯における非課税所得も含めた具体的な所得金額を把握していないということから、減免基準に該当するか否かを判断可能な正確な収入月額の算定は困難であったとのことでございます。仮に、議員御指摘のとおり給与所得が毎月七万円、児童扶養手当が毎月五万円でこれ以外の収入がなかったとした場合には、県の基準では家賃の減額率八〇%の適用は可能ではなかったかと考えます。
○辰巳孝太郎君 それでは、県は家賃の減免の申請を促したんでしょうか。
○政府参考人(橋本公博君) 千葉県によりますと、家賃減免制度につきましては、鍵の引渡時に行う入居者説明会において県営住宅の住まいのしおりを配付して説明する、また毎年度の家賃決定通知書の裏面に制度についても記載をしてお知らせをしておるということでございます。
ただし、御指摘の世帯につきましては、家賃滞納開始後に文書による通知等により御本人の事情を把握するよう努めたものの、連絡あるいは相談がいただけなかったとのことでございます。
○辰巳孝太郎君 滞納後はされていないということなんですね。
公営住宅の家賃滞納に対する国の取組はどうなのか。一九八九年、当時の建設省住宅局通知で家賃の滞納についてどのように記していますか。紹介ください。
○政府参考人(橋本公博君) 平成元年十一月二十一日付けの住宅局長通知におきましては、「家賃の滞納が生じた場合、入居者に対する家賃支払いの督促等の措置を早期に講じること。なお、このとき併せて、収入等の状況、入居者の事情を十分に把握するとともに、保証人に対しても早期に入居者の家賃滞納の状況を通知すること、」、これらにより「把握した入居者の収入状況等により、所得が著しく低額又は病気等により著しく多額の支出を要する等により、家賃負担が著しく過大となり、やむを得ず家賃を支払えない状況にある者に対しては、家賃の減免等の措置を講ずること等により、入居者の支払い能力に応じて負担の軽減を図るようにすること。この場合、民生部局との連携を十分にとること。」としております。
○辰巳孝太郎君 この場合、住宅は県営ですから千葉県、民生部局となると銚子市となるわけです。
それでは、通知にあるような収入等の状況、入居者の事情の十分な把握、民生部局とのそれぞれの十分な連携はできていたんでしょうか。
○政府参考人(橋本公博君) 千葉県によりますと、御指摘のケースにつきましては、家賃が滞納され始めた後に事情をお伺いする旨の文書をお送りをしておるということでございますが、残念ながら御本人から県に対して連絡あるいは相談はいただけなかったとのことでございます。
○辰巳孝太郎君 十分にできていないんですね。
それでは、国交省が求めていることが実施されなかったからこのような痛ましい事件が起こったとは考えないんでしょうか。大臣、どうですか。
○国務大臣(太田昭宏君) 御指摘の事件が起きてしまったことは極めて残念に思うところです。現在は公判前でありまして、事実の全容が明らかでないことから、事件自体について述べることは差し控えさせていただきます。
この公営住宅の滞納家賃の徴収、この問題につきましては、国交省としてもこの事件後の平成二十六年十一月に改めて地方公共団体宛てに通知を発出をいたしたところです。この中で、入居者の状況の把握に努めることや福祉部局との連携を強化することについて徹底を図ったところでございます。
今後も、現場レベルまでこうした徹底がされるよう、全国の公営住宅管理担当者を集めた研修会などの機会を活用して対応策を周知したいと思っております。
○辰巳孝太郎君 国はそう言うんですよ。だけど、行政、県や市は縦割り行政ですから、収入も十分に把握できない、連携できていないということが問題でこういう事件が起こってしまったんですね。
では、指摘しなきゃいけないのは、国交省はこの滞納住宅の徴収業務の強化は熱心に推進をしてきたということであります。二〇〇七年の事務連絡では、ノウハウを有する民間業者を活用することを通じて、徴収に関する能力の向上や事務の効率化を図りと、官民一体で徴収業務の強化の音頭を取っているわけであります。公営住宅で家賃を滞納するというのは相当のことだと私は思います。しかし、この中では、一切滞納解消への援助とか家賃減免制度の周知徹底の必要性などの言及は全くないわけなんですよ。私は、国交省というのは力の入れるところがちょっと違うんちゃうかというふうに言わなければならないと思います。
では、生活保護行政についてはどうか。この二〇一三年三月三十一日、入居許可の取消しとなりました。その翌日、長女が中学校に入学した。国民健康保険料の滞納分を分けて支払うことを約束して短期証を発行してもらった。そのときに生活保護を勧められて、隣の社会福祉課に行っているんです、お母さんは。しかし、申請はせずに帰ったんですね。
まず、確認しますけれども、生活保護が必要な人に手当てされない、いわゆる水際作戦というのはあってはならないと思いますけれども、それでよいですね。
○国務大臣(塩崎恭久君) まず第一に、今回の痛ましい事件、中学二年生の女の子がこのようなことになったことに対して改めてお悔やみ申し上げたいと思います。
今お話がありましたが、生活保護の相談があった場合に、相談者の生活状況を丁寧に把握をするということがまず第一、生活保護の仕組みについて理解を得られるように十分説明をする、そして、必要に応じて利用可能な他の福祉施策の紹介をするなどの対応をやるということが定められているわけでありまして、相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないということはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むということとなっておりまして、適切な窓口対応に努めるように全国の地方自治体に通知をしておるところでございまして、今お話しの、御指摘の水際作戦はあってはならないものだというふうに考えております。
○辰巳孝太郎君 あってはならないんですけれども、生活保護の申請がもしこの母親からあれば、認められていたんじゃないですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今回、千葉県の方から確認をしたところ、本事案については、生活保護制度の内容を聞きたいという相談はされて、制度概要を説明し、今後何かあれば来所するということだったそうでございまして、面接をそれで終わったということで、この対応自体には問題がなかったというふうに報告を受けているところでございます。
○辰巳孝太郎君 私は、国保料も滞納、家賃も滞納しているこの世帯が、本当に申請の意思がなかったのかと言わなければならないと思います。母親もここで救済されていれば、もっと違った結果になっていたのではないかと思うんですね。
最後に、総理にお聞きします。
必要とされる人に生活保護が行き渡っていない現実があります。政府は何をすべきだとお考えですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 御指摘のような痛ましい事件が起こったことは残念の極みであります。
公営住宅の滞納家賃の徴収に当たっては、入居者の置かれている状況に十分配慮をしながら行うことが重要と認識します。今回の事件を受けて、改めて国土交通省より各自治体に対し、住宅部局と生活保護等を扱う民生部局との間で十分連携して対応するよう徹底を行ったところであります。
具体的に言えば、家賃の督促の際には、戸別訪問等により入居者の状況を十分に把握をする、やむを得ず家賃を支払えない者に対しては、住宅部局と民生部局の間で情報共有を図りつつ家賃の軽減策を講じる、必要に応じ、滞納者に対し、生活保護など居住安定のための支援策の情報提供を行うなどの対応を行うことを要請したと承知をしています。
今後も、現場レベルまでこうした趣旨が徹底されるよう、全国の公営住宅管理担当者を集めた研修会などあらゆる機会を活用し、今回のようなケースへの対応策等を広く周知する予定と聞いています。引き続き、国土交通省と厚生労働省が協力をしつつ、各自治体に対し助言を行うようにしてまいりたいと思います。
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、二〇一五年度総予算三案に対する反対討論を行います。
反対する第一の理由は、本予算案が国民負担増と給付額の削減を推し進める社会保障の全面改悪予算であることです。
年金削減、高齢者医療の窓口負担増、介護報酬の大幅削減、生活保護の連続削減と住宅扶助、冬季加算の切下げ強行は、国民の命と暮らしを脅かすものです。社会保障の自然増抑制路線からきっぱりと決別して、大改悪を中止するべきです。
第二の理由は、政府が大企業に対して二年間で一・六兆円もの減税、研究開発減税等の優遇税制といった減税のばらまきに乗り出そうとしていることです。
アベノミクスの異次元金融緩和は、円安、株高をつくり出し、ごく一握りの輸出大企業と富裕層の株主を大もうけさせました。その株高は、日銀や年金積立金など巨額の公的マネーによる株の買い支えで維持されています。
一方、庶民の暮らしはどうか。昨年四月の消費税率引上げは深刻な景気悪化をもたらし、実質賃金は二十二か月連続で減少しています。非正規雇用やワーキングプアが増え、中小企業の円安倒産が続出しています。今必要なのは、雇用の七割を支える中小企業支援と一体で最低賃金を抜本的に引き上げるなど、国民の懐を直接暖める政策であり、応能負担の原則に沿った税制改革によって格差を是正することであります。
第三の理由は、本予算案が補正予算と合わせて五兆円を超える過去最高額の軍事費を計上しており、安倍政権が進める戦争する国づくりを具体化するものだからです。ステルス戦闘機、イージス艦、オスプレイなど、海外で戦争をするための装備がめじろ押しです。
選挙で示された沖縄県民の新基地ノーの声を一顧だにせず、辺野古の埋立工事などの予算を前年度の八十倍の一千七百三十六億円計上することなど、絶対に認められません。今やるべきは、憲法九条に基づいた外交戦略によって、平和な沖縄と日本、平和なアジアと世界をつくることに貢献することです。
第四の理由は、政府が国民世論に反して原発再稼働を進めようとしていることです。
安倍総理は、二月十二日の施政方針演説で、責任あるエネルギー政策として原発の再稼働を進めますと表明しました。本予算案は、原発再稼働に加えて、原発輸出を推進する予算を計上しています。しかし、福島事故の原因も未解明で収束の見通しもない現実と、原発ゼロの日本を求める国民多数の声に背を向ける安倍内閣の再稼働推進は無責任なエネルギー政策にほかなりません。
最後に、政治と金の問題では、我が党は、四月一日、衆議院に企業・団体献金全面禁止法案を提出しました。既に提出した政党助成法廃止法案とともに、政治腐敗の温床を断つために引き続き全力を尽くすことを表明し、反対討論を終わります。(拍手)