参議院本会議で初質問!既存高速道路の老朽化対策迫る
2014年05月16日
既存高速道の維持管理・更新を
道路法改定案で辰巳議員質問
参院本会議
道路法改正案が16日の参院本会議で審議入りし、日本共産党の辰巳孝太郎議員が質問しました。
同法案は高速道路の大規模更新・修繕費用のねん出のために、高速道路料金の無料化を15年先送りするものです。
辰巳氏は、大規模更新・修繕債務4兆円を従来の計画と別枠にすることで、新たな道路をつくり続けることができると指摘しました。
1兆円を超える税金を投入する東京外郭環状道路や2008年に調査が中止された海峡横断道路を復活させる動き、建設理由の説明がつかない新名神高速道路の2区間など、不要不急の新規事業を指摘。「新たな巨大道路より、既存の高速道路の老朽化対策や維持管理・更新こそ最優先にするべきだ」と主張しました。
太田昭宏国土交通相は「厳格な評価を行い必要な事業は実施する」と述べ、新名神高速を含む新規事業推進の考えを示しました。
地方自治体が管理する道路の老朽化対策についても、辰巳氏は予算、人材・技術力不足に対応する国のふさわしい支援を求めました。
○辰已孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、道路法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
本改正案は、高速道路の大規模更新・修繕を実施する費用四兆四百五十億円を捻出するため、二〇五〇年までとしていた高速道路の料金徴収期間を十五年延長するものであります。つまり、高速料金の無料化を十五年先送りするということであります。
二〇〇四年に道路公団を民営化した当時の計画では、道路公団の債務約四十兆円と新規の高速道路建設に係る債務を四十五年で償還するというものでありました。その時点で、既に大規模更新・修繕が将来必要だということは認識していたのではありませんか。なぜその費用を見込まなかったのでしょうか。民営化先にありきで、将来高速道路会社が返済すべき債務を少なく見せようとしたからではありませんか。
結局、今回の法案は、民営化のスキーム自体がそもそも成り立たないものであったことを示しています。このようなずさんな計画で民営化を進めた結果、約束していた無料化を先送りし、新たな負担を利用者、国民に求めることについてどう受け止めていますか。国土交通大臣の答弁を求めます。
今回、大規模更新・修繕に要する四兆円に上る債務は、元々四十五年で償還する計画の建設債務とは別枠にしています。なぜ別枠にするのでしょうか。予定されている新規道路建設を抑制すれば、大規模更新・修繕費用も当初どおり四十五年で償還する計画の枠内に収めることは可能ではありませんか。建設債務と別枠にすることで、今後も増え続ける大規模修繕・更新費用に影響されることなく新規道路の建設を続けるということではありませんか。
道路公団民営化に当たっては、有料では採算の取れない区間は、新たに多額の税金を投入して無料の高速道路を整備する新直轄方式が導入されました。さらに、東京外郭環状道路や名古屋環状二号線については、一兆円を超える税金を投入して建設費の大半を賄い、高速道路会社はごく僅かの負担をする合併施行方式により建設を進めています。こんなやり方を認めれば、高速道路会社は、制限なくこれからも新たな道路を造ることができるのではありませんか。お答えください。一体、あとどれだけ高速道路を造り続けるつもりなのか、伺います。
高規格幹線道路一万四千キロのうち、事業化されていない区間はどれだけあるのですか。それも造り続けるつもりですか。一万四千キロ以外にも、首都高や阪神高速などを含む地域高規格道路六千九百五十キロの計画があります。さらに加えて、二〇〇八年に調査が中止された海峡横断道路を復活させる動きもあります。莫大な費用を掛け新たな巨大開発道路を造ることより、既存トンネルなどの維持管理・更新こそ優先すべきではありませんか。お答えください。
民営化に当たり、抜本的見直し区間として凍結された路線の一つに新名神高速道路の二区間があります。二〇一二年に凍結を解除した根拠は、名神高速の渋滞と老朽化でした。しかし、この間、第二京阪道路が開通し、渋滞回数は減少しています。名神高速の大規模改修工事は新名神が開通するまでに終わる予定であり、工事の際の代替路という理由は当たりません。凍結を解除した根拠は全く成り立たないのです。
新名神二区間の総事業費は六千八百億円です。この建設を凍結し、その費用を大規模更新・改修に充てるべきではありませんか。答弁を求めます。
次に、高速道路の老朽化対策の問題です。
社会資本整備審議会は、四月十四日、「最後の警告―今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」と提言し、警鐘を鳴らしています。同審議会は、今後適切な投資を行い修繕を行わなければ近い将来大きな負担が生じると、二〇〇二年以降繰り返し警告してきました。にもかかわらず、政府は道路公団民営化に際して高速道路の管理費を約三〇%削減させました。警告に耳を貸さず、本格的な老朽化対策を先送りしてきた責任についてどう考えますか。お答えください。
〔副議長退席、議長着席〕
こうした中で発生したのが二〇一二年十二月の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故です。九名の尊い命が失われました。中日本高速道路会社は、事故の三年前に、落下した天井板を撤去する計画を立てていましたが、長期間通行止めになることを理由に実施しませんでした。安全最優先で天井板を撤去していれば防げた事故であります。必要な修繕費用を確保させず、コスト削減を求めた国の責任は重大です。反省はあるのですか。国土交通大臣の答弁を求めます。
地方自治体が管理する道路の老朽化対策について伺います。
我が国の道路の八割以上を市町村が管理しています。しかし、町の約五割、村の約七割で橋梁保全業務に携わる土木技術者が存在しません。地方自治体が老朽化対策を実施する上で、予算不足、人不足、技術不足の三つの課題があると提言では指摘されています。
今後、地方自治体が管理する橋やトンネル、道路の大規模更新・修繕にどれだけ費用が必要になると考えていますか。その更新費用にふさわしい財政支援を求めます。次に、人不足、技術力不足について実情をどのように把握していますか。そして、国としてどのように対処、支援するのでしょうか。
以上、総務大臣と国土交通大臣に答弁を求めます。
維持更新・改修の財源を確保するために、新規の大型開発事業を抑制すべきです。政府の財政制度等審議会も、新規投資を重視する考え方を転換し、既存ストックの有効活用に軸足を移していくべきであると指摘しているではありませんか。予算編成において、新規の大型開発は抑制し、既存施設の老朽化対策、維持更新への転換を徹底するべきではありませんか。財務大臣及び国土交通大臣にお聞きします。
日本共産党は、安倍政権が進める国土強靱化や成長戦略の名による巨大開発事業の復活や拡大を厳しく批判し、今こそ既存インフラの老朽化対策、維持更新事業を最優先させる方向に転換するべきだという指摘をして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣太田昭宏君登壇、拍手〕
○国務大臣(太田昭宏君) 辰已孝太郎議員の御質問にお答えします。
まず、民営化当時の更新事業の見積りについてお尋ねがありました。
道路構造物の老朽化予測には限界があり、民営化時においても更新需要の発生は想定していましたが、具体の箇所や対処方法が十分には明らかになっていませんでした。その後、東日本大震災や笹子トンネル天井板落下事故が起こり、老朽化対策が一層必要であるという認識が共有されていたところです。
このような認識の下、建設後五十年が経過し、老朽化の進展により更新の必要な箇所が明らかになったことなどから、今般、更新事業に取り組むこととした次第であります。
次に、無料化の時期についてお尋ねがありました。
現在の償還計画に基づく建設債務については、将来世代に先送りせず、四十五年以内に償還する方針を今後も堅持してまいります。
今後とも、国民の皆様に丁寧に説明し、負担について御理解を得るよう努力してまいります。
次に、建設債務と更新債務の区分についてお尋ねがありました。
高速道路の更新は極めて大事な取組であり、また、新規建設についても、厳格な評価を行い、必要な事業を推進することが重要であると考えております。
その中で、現在の償還計画に基づく建設債務については、将来世代に先送りせず、四十五年以内に償還する方針を今後も堅持してまいります。このため、建設債務と新たな追加される更新債務を明確に区分し、各々の償還状況を国民に分かりやすく提示してまいります。
次に、高速道路の整備方式についてお尋ねがありました。
高速道路の整備方式の一つに、国が行う直轄方式と会社が行う有料道路方式を組み合わせて事業を実施する合併施行方式があり、これまでも、国と会社の役割分担を明確にしながら、必要に応じて採用しております。いかなる整備方式を採用したとしても、厳格な評価を行い、事業の必要性を確認した上で、コスト縮減を図りながら事業を進めることが重要であると考えています。
次に、高規格幹線道路一万四千キロの事業化されていない区間についてお尋ねがありました。
高規格幹線道路網計画一万四千キロのうち、未事業化区間の延長は、平成二十六年四月現在で約千百キロメートルとなっております。今後も、高規格幹線道路については、厳格な評価を行いながら、コスト縮減を図りつつ、必要な区間の整備に取り組んでまいります。
次に、一万四千キロ以外の道路整備と既存道路の維持管理・更新についてお尋ねがございました。
現在、高規格幹線道路の未整備区間の解消とともに、それ以外の道路についても、地域が抱える様々な問題に対応するため、ネットワーク強化対策、渋滞対策、防災・減災対策などに取り組んでいるところであります。引き続き、既存道路の維持管理や更新を計画的に進めるとともに、厳格な評価を行いながら、地域の課題を解消するための必要な対策に取り組んでまいります。
次に、新名神高速についてお尋ねがございました。
東日本大震災や笹子トンネル天井板落下事故を受け、防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化は極めて大事な取組であり、重点的に実施することが必要であると考えます。
一方、御指摘の新名神二区間については、現名神の渋滞解消やリダンダンシーなどの観点から、引き続き事業を推進することが必要であると考えています。
次に、高速道路の本格的な老朽化対策についてお尋ねがありました。
道路関係四公団の民営化に当たって、管理コストを約三割削減し、その後、損傷箇所の増加に対応すべく予算を増額して対応してまいりました。そのような中、平成二十四年十二月の笹子トンネル天井板落下事故により、道路管理者だけでなく、国民にも老朽化対策の重要性が強く認識をされたと思います。
そこで、昨年をメンテナンス元年として様々な取組を講じてきましたが、今回の提言を重く受け止め、本法案の措置を含め本格的な実行に向けて積極的に取り組んでまいります。
次に、笹子トンネル天井板落下事故と維持管理費用との関連についてお尋ねがありました。
国土交通省では、事故直後に設置した有識者による調査・検討委員会において原因究明を行いました。委員会の報告によれば、事故は天井板をつり下げる部材の施工や経年劣化などが原因とされており、必ずしも維持管理費削減によるものとは言えないと考えています。
今後も、債務償還という制約の下で、できる限り維持管理費を確保し、予防保全を含めた工夫をしながら、適切に維持管理・修繕を実施してまいりたいと考えております。
次に、地方公共団体が管理する道路の大規模更新・修理の費用についてお尋ねがありました。
五十万の橋梁を管理する市町村については、十分な点検がなされていない橋梁もあり、今般、橋梁、トンネルの点検など、道路管理者の義務を明確にしました。これにより、各市町村は、点検、診断の結果に基づいて、計画的な修繕・更新を実施することになります。
今後、これらの結果を踏まえ、将来の修繕・更新需要を見極めつつ、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。
次に、地方公共団体の実情、老朽化対策に対する国の支援についてお尋ねがございました。
御指摘のとおり、町の約五割、村の約七割で橋梁に関する技術者がいないなど、市町村は予算、人員、技術等の面で厳しい状況にあります。そのため、予算による支援に加え、国の技術者による支援なども進めてまいります。
次に、道路の新規整備と老朽化対策の予算の考え方についてお尋ねがございました。
道路は、地域の活性化や物流の効率化などに役立つとともに、リダンダンシーの確保や防災・減災の観点から重要なインフラであると考えています。このため、既存施設の老朽化対策に万全を期すとともに、新規の道路整備についても、厳格な事業評価を行った上で必要な事業を着実に実施すべきと考えております。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇、拍手〕
○国務大臣(新藤義孝君) 辰已孝太郎議員から二点のお尋ねをいただいております。
まず、地方公共団体が管理する社会インフラの更新費用等についてのお尋ねであります。
総務省としても、地方公共団体が管理する社会インフラの大規模更新・修繕、長寿命化等を把握することは重要な課題と認識をしております。
そのために、地方公共団体における公共施設等の管理が総合的かつ計画的に行われるよう、去る四月の二十二日に公共施設等総合管理計画の策定を全地方公共団体に要請したところであります。さらに、今後は、固定資産台帳の整備を前提とした統一的な基準による地方公会計の整備を要請することにしております。
これらの取組を通じまして、各地方公共団体において社会インフラの更新費用が適切に把握されるものと認識をしております。必要な更新費用については、その実態に応じて適切な地方財政措置を講じてまいります。
次に、道路の老朽化対策に関しまして、土木技術職員の不足についてのお尋ねであります。
地方公共団体における土木技師の職員数は、平成二十五年四月現在、約七万八千九百人であり、ピーク時の平成九年から約一万六千五百人の減少となっていますが、十六年ぶりに対前年比約六百人の増加に転じているというところでございます。
地方公共団体においては、地域の実情を踏まえつつ、行政需要の変化に対応しためり張りのある人員配置や、業務委託などを含めた必要な事務処理体制の確保に取り組むことが重要であると考えております。
総務省としても、既存の事務委託や職員派遣の制度に加えて、地方公共団体間で連携して事務を処理できる仕組みの充実を図ってまいりたいと考えております。
以上です。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 新規の大型開発の抑制と老朽化対策への転換の必要についてお尋ねがあっております。
日本の厳しい財政事情や、今後人口が大きく減少していくということを考えれば、今後の社会資本の整備に当たりましては、当然のこととして、徹底的な選択と集中が行われる必要があると考えております。
その際、高度経済成長期に急速に積み上げてきたインフラの整備、相当な水準に達しつつありますことを踏まえると、今後はそれらの有効活用や、寿命が長くなる長寿命化を図るといった観点が重要であろうと考えております。
こうした観点から、平成二十六年度予算におきましては、インフラの老朽化対策のための予算を重点的に拡充いたしております。
ただし、新規投資につきましても、日本の国際競争力を高める事業など、真に必要な事業につきましては、費用対効果等を十分に見極めた上で、重点的に実施する必要があると考えております。
今後とも、社会資本の整備に当たりましては、老朽化対策を始め、真に必要性の高い事業への重点化を図ってまいりたいと考えております。