同じ仕事なら同じ賃金 参院厚労委で参考人質疑
参院厚生労働委員会は19日、職務に応じた待遇確保法案について参考人質疑を行いました。
意見陳述した生協労連の北口明代委員長は、職務評価を比べると正規職員100に対しパート職員88・7%なのに、賃金では正規100にパートは56%だと指摘。「同一労働同一賃金」原則による均等待遇の確保を求めました。法案に均等待遇に加えて「均衡待遇」が盛り込まれたことついて格差是正・待遇改善にとって有効ではないと批判しました。
派遣労働ネットワーク理事長の中野麻美弁護士は、派遣ネットワークの調査で、派遣の賃金は下がる一方だと指摘し、派遣社員と男性正社員では仕事の困難度に変わりはないが、倍の賃金差があるとのべました。
生活が見通せない賃金で、通勤手当など諸手当もなく、福利厚生でも差別され、出産・育児、介護の権利が保障されにくいと指摘。そのうえで賃金と待遇の格差を是正する義務を派遣元、派遣先に負わせるべきだと主張しました。
日本共産党の辰巳孝太郎議員が、「非正規雇用の賃金を上げれば大変になる」という意見もふまえて格差是正・待遇改善をはかるうえで重要な姿勢について質問。北口氏は、非正規労働者の賃金を上げていくとともに、社会保障の拡充が必要だと指摘しました。
辰巳氏は、労働者派遣法の改悪案が、政府の掲げる「女性の活躍」に資するかと質問。中野氏は、女性の正規社員を派遣社員に置き換える常用代替がすすむ危険があると語りました。
2015年8月20日(木)赤旗より転載
議事録を読む 参考人陳述部分
○参考人(泉川玲香君) それでは、お手元にございますイケア・ジャパンという資料を御覧いただきながらお願いをしたいと思います。
イケア・ジャパンから参りました人事本部長の泉川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
トップのページ、すばらしい職場を全てのコワーカーにということで書かせていただいておりますが、サブタイトルで、イケア・ジャパンの短時間正社員活用に向けました取組ということで、そちらを中心に今日はお話をさせていただく予定でございます。
皆様、イケア・ジャパンという形で、ホームファニシングを扱っている会社だということを御存じの方もいらっしゃるかと思います。二〇〇二年七月に、本社船橋ということでスタートしております。私どものビジョンは、より快適な毎日をより多くの方々に、そしてビジネス理念とヒューマンリソース理念というこの三つどもえのもの、今、三ページを御覧いただいているかと思いますが、三つどもえのものを持ちましてビジネスをさせていただいております。
現在、私ども、従業員数は二千八百名、コワーカーという形で書かせていただいておりまして、共に働くという意味合いでコワーカーと私どもの中では呼んでおります。正社員が九九%、うち短時間の正社員が六二%、そして、女性の比率ということでございますが、リテールということもありますので、六四%という高い比率になってございます。
また、こちらは、十年前に私どもがオープンした際から力を入れてまいりましたいわゆる女性の管理職への登用ということで、女性マネジャー比率、現在四八%ということで、現在の日本の一一%という数字に比しまして高い比率であるということをお知らせしておきたいと思います。
あと、ダイバーシティーとかインクルージョンということを掲げておりまして、グローバルの会社ということで、十年前からこちらの方が大きく取り上げられております。
ただ、今回の短時間正社員というところでの取組に関しましては、三つの大きな柱がございました。五ページにそちらの方を書かせていただいております。
イケアは人の力を信じておりますというのがまず一義的なスタートポイントでございます。その下にあります三つのポイント、多様な人材の活用、そして長期的な関係の構築の保障、そして平等な機会創出、ダイバーシティー・アンド・インクルージョン、そしてセキュリティー、そしてイコーリティーというところが三つの柱となってございます。
ということで、このイケア・ジャパン、なぜダイバーシティー・インクルージョンというものをフォーカスしているのか。こちらの方が七ページの方に書かせていただいております。三つございます。
ダイバーシティー・インクルージョンというのは、人を大切にするというイケアの、私どものビジネスのカルチャー、そしてバリュー、価値観に沿っておりまして、正しいものだというふうに考えております。非常にシンプルなのですが、誰もが平等に、そして公平に、人間として生まれてきたからには平等に公平に取り扱われるべきだと、そういった信念に基づいております。
二番目、ダイバーシティーは、グローバルに事業展開をする現在のイケア・ジャパンそのものでございます。多様なコワーカーとお客様がイケアとともにある、そう感じていただくことによって私どもがビジネスを発展させていけると、そういうふうに考えております。
三番目、ダイバーシティーはビジネスにとって不可欠ということで、より豊かな創造性、一段と高い生産性、そして才能を持つ人材の更なる雇用ということで、これらは全てビジネスに良い結果をもたらしていく。つまり、ダイバーシティー・インクルージョンというのがビジネスにとってコアになるというふうに考えてございます。
そして、しつこいようなのですが、平等こそが人権であると。全ての人は平等に扱われる権利を持っている、そして機会は平等であるべきである、そして個性は尊重されるべきであると、そんなふうに考えております。
そして、新しい現実ということで、九ページの方を御覧いただきますと、人口構成の変化、知識経済、グローバル社会に向かう流れというものが新しい現実をつくってまいります。
もちろん、人口構成の変化、国を越えての移住もこれからはたくさん始まるかと思います。また、高齢化を抱える先進国、日本はドイツに続いて二番目ということで、マルチ世代、いわゆる五世代ということも職場環境の中で今後求められてくることになると思います。
また、男女の構成比の変化、LGBTなどという言葉が最近はまたにぎわっておりますけれども、果たして本当にその意味が、私ども、ワーク・ライフ・バランスとかダイバーシティーという言葉が十年前、五年前に出てきたときと同じようにLGBTという言葉は出てきているけれども、果たしてどこまでその本当の内容を理解しているのかというところが、もしかしたらこれから先、何を呼んでいくのかというところで大きなポイントになるのではないかと弊社は考えております。
知識経済と技術革新ということで、能力のある人材の不足というのは、もうこれは免れない事実。そして、デジタルテクノロジーのより一層の活用という社会的な風潮も今ございます。つまり、会社として環境、そして社会に責任を持つ、そういったことがベースになってございます。
ビジネスにとって必要なもの、これは三つ。更なる創造と革新、そして働きやすい職場づくり、そして顧客ベースを拡大していくこと、この三つだと考えます。
ということで、イケアのビジョンというものは、より快適な毎日をより多くの方々にという、たまたま私ども、ホームファニシングを扱っておりますので、私どもが別のものを扱っていたとしても快適な毎日というのはもちろんつくり出していくことはできます。ただし、そこに働く人間たちが快適だと感じなければお客様を快適にすることはできないということで、今回は短時間正社員という形のインフラを整えていくという形になりました。つまり、ダイバーシティー・インクルージョンが自然と生まれるというものではなくて、意識的にデザインをしなきゃいけない、そういった観点で、私ども人事部の方でこちらの動きをスタートいたしました。
よくあるのが、御質問でたくさんいただきましたのが、労働の不足というものを、これからの展望を考えたときに、そこを補うがためにこのパターンで私たちが人事制度をしいたのではないかという推測が非常に多かったのですが、今までお話しさせていただいたイケアのビジョンであったり、そしてダイバーシティー・インクルージョンであったりという、いわゆる人間としての平等性、そして長期的な関係の構築、そして私たちが本当に平等に扱われ、ダイバーシティー、そしてインクルージョンしたいというそんな思いの中から五つの人事制度をしいてまいりました。そちらの方が十三ページ、細かな内容で載っております。
左側が、二〇一四年四月に私ども社内の中で発表、そしてプレスにもリリースをいたしました。二〇一四年九月からこちらに対する動きを始めまして、二〇一五年一月に全てがスタートという形を取りました。左側がビフォー、そして右側がアフターという形で、十三ページの方を御覧いただければと思います。
給与は雇用形態、つまりフルタイマーなのかパートタイマーなのかによって決まっていました。しかし、同じ仕事には同じ報酬、つまり同一労働同一賃金という形のものを今回は導入をいたしました。同じ職務であれば全てのコワーカーが同じ賃金幅で支払をされるべきであると、そういった考えでございます。
二番目、雇用形態に応じて職務期待水準が異なる。これは、いわゆるフルタイマーで働いている、長い労働をしている、四十時間、三十九時間の人間と二十時間しか働かない人間のところに同じジョブプロファイル、同じものを期待値として語っているにもかかわらず、現実には、パートで働く、つまり二十時間で働く人間には水準値が非常に低くなっている、書いてあることは同じなのにマインドセットがそこに行っていないという現状がありました。それを職務に対して、同じ職務であれば労働時間に関係なく職務期待水準が同じであるという、こういったマインドセット、そしてこういった現実をつくるためのトレーニング、教育に非常に力を入れてまいりました。
三番目、福利厚生は雇用形態に基づいておりまして、明瞭に提示がされていないというか、むしろ、パートさんはこれ、そしてフルタイマーはこれですねというふうに明確にそこに区切りを付けているわけではないんですが、いろいろな法律の規制であったりガイドラインであったりというものに沿って、そこにはやはり格差が生まれておりました。それを、全てのコワーカーに同じ福利厚生を提供し、一人一人に意義のある福利厚生となるようにという形で提供いたしました。
四番目、テンポラリーの契約が多い。つまり、六か月であったり一年であったりということで、六か月先は自分の仕事が保証されるのかどうか分からないという女性たちがたくさんおりました。そちらを、期待水準に達したコワーカーに関しては期間の定めのない無期雇用といたしました。
元々、こういった形を取ることによって人を削減していく、人員の削減をしていくというつもりは一切ございませんでしたので、一〇〇%パートタイマーで働いている人間たちを短時間正社員にしていきたいと、そんな思いで今回の動きを始めまして、二〇一四年九月から始まりました実際のトレーニング等々で、二〇一五年の一月、今年の一月にはほぼ九〇%以上の人間が私どもの考えた短時間正社員へと移動してまいりました。
そしてまた、多くのコワーカーというのが週に十二時間から十九時間という労働契約でございまして、そちらの方は、様々なライフステージであったりワーク・ライフ・バランスであったりという、それぞれの人間のニーズ、生活のニーズに合わせた形で会社との契約をしていくと、そういった形でこちらの五つの大きなポイントの変更がございました。
その次のページ、十四ページにございますイケア・ジャパンの短時間正社員制度、こちらのところで今申し上げたものを数字も含めまして分かりやすいように表現をさせていただいたつもりでございます。
例えば、特筆すべきところ、賞与なんですが、これは、以前からもパートタイマーの方には私ども支給をしておりましたが、今回は、それプラス企業型の年金等々も彼らに対応していくということで、全ての正社員、そして短時間正社員に同じ福利厚生の提供となりました。
そして、最後になりますが、短時間正社員の制度の導入によるメリットというのは、もちろんそこで働く短時間正社員も、今や、もはや私どもイケアの中にはパートタイマーという言葉は存在しません。その言葉を使うことが格差や差別を生むと考えるからです。
ですので、そういった短時間正社員の方が以前のパートタイマーとして勤務していたときと比較をいたしまして、一時間当たりのもちろん時給、給与水準がアップしております。そして、有期雇用から無期雇用ということで、長期でのキャリア、そしてライフプランというものを安心してやっていけると、そんな状態となりました。
三つ目、フルタイマーと同様の休暇制度等、福利厚生が利用できることによって、こちらもまた、様々なライフステージ、様々なことが起こってきます。介護であったり、また子供のことであったりと、いろいろと起こってくるものに自分のキャリアパスを重ねて動きやすいという形がここに表れております。
そして、最終的には、イケアで長期的に働き続け、成長したいという意欲の高い応募者がまた増加し、私どもが元々狙った平等で、そして公平な取扱いをするという会社の中にビジネスを本当に運用していくという力が生まれ、最終的にはビジネスがプラスになっていく。つまり、従業員、コワーカーもウインですし、会社もウイン、そして最終的にはお客様にとってもウインなものが生まれるということで、そんな形が生まれてきていると思います。
自分らしくいること、ビーユアセルフというのをよく言いますが、自分らしくいることが一人一人の魅力、そしてイケアをもっと良くするということが、私たちよく使う言葉なんですが、こういった公平性、そしてダイバーシティー・インクルージョン、そして長期的な信用性を掲げるためには、職務に応じた設定というのが非常にこれからの大きな課題だと信じております。
以上でございます。
○委員長(丸川珠代君) ありがとうございました。
次に、北口参考人にお願いいたします。北口参考人。
○参考人(北口明代君) こんにちは。生協労連の北口と申します。
私は、雇用形態の違いによる差別はもう常々人権侵害だと思っており、同一価値労働同一賃金原則を日本に根付かせたい、そのためには職務評価が必要だと考えているので、今日のような発言の場をいただいたことにまず感謝を申し上げたいと思います。
非正規労働者の待遇改善を願って生協労連で実施している取組について発言をさせていただきます。
まず、今回の労働者派遣法の改正案のことなんですけれども、不安定な雇用である派遣労働者を増大させるもので、私は、もう絶対に反対だと思います。むしろ、均等待遇原則を盛り込み、派遣労働は臨時的、一時的業務に限定させるよう法改正すべきだと思います。
また、本日のテーマである本法案でございますけれども、調査研究の後、三年以内に法改正を求めており、その道筋を付けたことについては一歩前進だと考えておりますが、しかしながら、実効力については大いに疑問を感じております。そのことについては後で述べたいというふうに思います。
それでは、まず生協労連の活動について御紹介したいと思います。
生協労連は、全国の地域生協、大学生協、学校生協などで働く労働組合の連合会です。約六万五千人の組合員のうち七割がパートなど非正規労働者です。私自身もパートタイマー出身です。初めて女性で非正規出身の中央執行委員長として三年前に選出をされました。これは、生協労連が二〇〇四年から全ての労働者のディーセントワークの実現とジェンダー平等社会の実現を目指して、そのために、増大する非正規課題を生協労連の主軸とすることと、七割を構成するパート労働者が運動の真ん中に立ち上がるように取組を進めてきた結果です。
現在、中央執行委員、中央委員、大会代議員など、約四割がパート女性が参画をしております。最低賃金の大幅引上げ、均等待遇の実現、無期雇用への転換などを中心に、社会対話、法規制、そして春闘、秋闘での理事会要求を出し、大きな前進を勝ち取ってきているというところでございます。
最低賃金につきましては、いつでもどこでも誰でも今すぐ千円以上にと運動を続け、昨年は全国平均七百八十円と、この十年間で百十五円を引き上げる牽引役を果たしてきたと自負しております。
今年の七月の末に今年度の最賃の目安改定、全国平均十八円の目安答申が出されましたけれども、今、地方の最賃の決定協議が進められているところでございますが、一番高い東京でも、今年十九円ということで九百七円にはなりましたが、低いところではまだ六百円台の半ばだということで、政労使で合意した二〇二〇年までに千円、早期に八百円にほど遠い状況だと。地域間格差も二百十一円から更に広がるということで、この最低賃金の大幅引上げも非正規労働者にとっては大きな課題だというふうに思っております。
もう一つは無期雇用への転換でございますけれども、こちらについては、労働契約法が改正されたことを力に、二〇一二年秋から理事会へ強く要求をして、従前より無期雇用だったところも含め、法律より前倒しで、三十五の生協で約三万五千人のパートやアルバイトなど非正規労働者の無期雇用を実現させました。無期雇用契約というのはパート労働者の長年の要求でしたので、本当に大きな岩が動いたという実感をしております。これは、やっぱり法律を作ることがいかに効力があるのか、そして労働組合があればそれを実現できる、このことに確信を深めております。
ですので、残された課題は均等待遇の実現なんですね。福利厚生や特別休暇制度などの均等待遇については一歩一歩着実に前進させていますし、労契法やパート法も改正されたのを力に活用させていただいているところでございます。したがって、本当に残された課題は賃金の均等待遇の実現でございます。
生協労連は一九八〇年にパート部会を結成し、パートの主体的な運動と組織化を促して、法整備、パート法ですとか労契法ですとか、こういった法律の整備を求めてきました。しかし、パート法につきましては、制定時から都度都度の改正運動を続けて、二〇〇三年には差別禁止規定も盛り込ませましたけれども、残念ながら、抜本的な改善には至っていません。これは、やっぱり法律上の不備があるのだということを言わざるを得ません。
パート法も労契法も法律上の強制力がない、このことが大きな要因だと思っております。しかも、パート法や派遣法では正規と非正規が人事管理上違うとし、雇用形態差別を認めています。昨年のパート法の改正では、差別禁止の三要件、一つには職務と責任が同じ、人材活用の仕組みが同じか、無期か有期かのうち、無期か有期かの要件については削除をされましたけれども、依然として人材活用の仕組みが残っており、ほとんどのパートは残念ながら対象外だと。ここを突破しないと均等待遇は望めないと思います。
だからこそ、人に付く賃金から仕事賃金へ移行し、同じ価値の仕事をしていたら同じ賃金を支払うようにしないと、非正規労働者の待遇改善は一向に進みません。パートや派遣は安くて当たり前は世界の非常識です。早急に導入すべき時期に来ていると思います。
その理由としては、一つには、多くの国では同一価値労働同一賃金原則、仕事を基準として、同じ価値の仕事をしていたら同じ処遇にする、これによって仕事を決めている。性、年齢、人種、信条、雇用形態などを理由とした賃金格差は差別に当たるというのが国際社会の常識だと。
二つ目には、ILO条約適用専門家委員会、国連女性差別撤廃委員会からも男女・雇用形態間の賃金格差の是正が求められています。非正規労働者は女性に多いことからも間接差別に当たるのではないかという指摘もあり、女性の地位向上のためにも非正規労働者の待遇改善は有効です。
三つ目、男性の片働き、女性は家計補助的な労働とのこれまでの家族モデルは崩壊しつつあり、非自発の非正規労働者が増大しています。
四つ目、約四割の非正規労働者はもう既に職務賃金です。終身年功賃金制度の正規労働者の比率は減少しています。生協の中でも、職能資格制度から役割等級制度へ移行している生協もあります。
五つ目、グローバル経済の下、多国籍企業も増え、日本だけの固有の制度を持つのは限界が来ています。先ほどのイケアさんの御報告でもそうだなと本当に思いました。国際基準で一本化することが企業にとってもプラスだと思います。日本ではヨーロッパのような職務給ではない、産別の労働市場が形成されていないという意見がありますが、だからこそ、仕事の価値を点数化することで客観視できる職務評価が有効だというふうに思います。
次に、生協労連で実施した職務評価について説明をしたいというふうに思います。
パート労働黒書の下に一つぺらで資料を付けておりますので、そちらの方を見ていただければというふうに思います。
職務評価というのは仕事の価値を測るもので、やり方としては、評価の基準として職務評価ファクターを作成します。この職務評価ファクターという表を見ていただければいいと思いますが、この四つのファクター、仕事の負担、知識・技能、責任、労働環境、この四つのファクターは国際的な基準でございます。そして、それを十二のサブファクターに分けており、それぞれにウエートを千点満点で配分を決めています。これは、サブファクターから点数については生協版として作成をしています。ここでは、労働者からアンケート方式で労働者に回答をしていただきました。
これは、跡見女子大学の禿准教授の御指導でコープあいちでの調査でございます。調査の結果としましては、後ろのページを見ていただければというふうに思います。生協は、共同購入とか個配とかの配送を正社員やそれからパート社員や、それから最近では委託労働者もしているんですけれども、ここで配送をしている正社員とパート職員にアンケートで聞いていただいた結果でございます。見ていただければ明らかなとおり、正規職員の平均点は六百三十四・二点、パート職員は五百六十二・八点。つまり、仕事の価値は正規一〇〇に対しパートはほぼ九割でございます。表にはありませんけれども、担当者レベルの正規と中核を担うパートとの比較では一〇〇対九八との結果になりました。
では、賃金はどうなっているのかといいますと、時給換算で正規職員は二千五十一円に対しパートは千百五十九円、正規一〇〇に対しパート五六%と、六割にも届いていないと。これを一時金を含めると格差はもっと広がり、ほぼ半分になってしまうと。これは、パートや非正規のところは一時金がない、あっても月数がほんの僅かということで格差が広がる。ほぼ九割の仕事に対し賃金は半分との結果になっています。これを職務の価値に見合った賃金にすると、パートは千八百二十円、一時金込みならば二千百三十八円が妥当との結果になります。店舗の場合についても同様でございますので、見ておいていただければというふうに思います。
このように、正規は仕事の価値の数値が高くなるのは当然ですけれども、パートだからといって単純定型作業ではなく、責任ある仕事をしている。今、正規が店舗ではもう一割もいるかいないかという状況の中で、ほとんどがパートが担っているということでございますので、この賃金格差の実態が明らかになっているということでございます。
次に、生協で働くパートの実態について御紹介したいので、お手元のパート労働黒書の方を御参照いただければというふうに思いますが、時間の関係がございますので詳細は省きますが、離婚後のシングルマザーやリストラ後の中高年とその家族が、非自発のパート、非正規労働者が増大して、ダブルワーク、トリプルワークで生活し、自身の健康や子供の教育の権利を奪う実態が広がっています。格差の縮小、貧困撲滅のためにも、パートや非正規労働者の待遇改善は待ったなしの課題だというふうに思います。
次に、この法案についての実効性について懸念があるということについて幾つか意見を述べさせていただきます。
一つには、雇用の多様化とありますが、これは、企業にとって使い勝手が良いだけで、実際に労働者は選択ができません。シングルマザーや青年の多くが非自発的に非正規雇用を選ばざるを得ない実態からも明らかです。一旦正社員を辞めてしまうと非正規の就職口しかない、これが今の日本の現状です。
また、均等待遇に加え均衡待遇という概念が盛り込まれていますが、この均衡というのはバランスという意味であって、その水準も明確になっておらず、有効ではありません。削除すべきだと思います。
また、意欲、能力に応じてとありますけれども、職務評価ファクターを見ていただければ明らかのように、仕事の価値評価にはこういった文言はありません。意欲や能力というのも人に付くものなんですね。ですので、同一価値労働同一賃金原則には当てはまりません。
したがって、厚生労働省に要請したいのは、今作っている職務評価マニュアルではなくて、同一価値労働同一賃金による職務評価のひな形を作成して広報していただきたいというふうに思っております。明治大学の遠藤先生等々も作成しておりますので、是非参考にしていただければというふうに思います。
最後に、賃金は労使でとよく言いますけれども、しかし、日本における組織率は年々低下しており、残念ながら、労組の力は弱くなっているのが現状です。特に、非正規労働者は九割以上が未組織です。派遣労働者は解雇を覚悟の上で労組に加入し闘わなければならないのが現状です。法律による規制が必要です。
この法案はフルタイムで働く人を対象にしていますけれども、三年以内に同一価値労働同一賃金原則が盛り込まれた有効な法律が施行されれば、パート法への影響は大きいと思いますし、非正規労働者の待遇改善には本当に必要な法律だというふうに思います。是非、的確な調査を行い、三年以内の実効ある法改正を望みます。
あと一分ありますね。では、あと一分あるので、ちょっと実際にパートの労働者の声を聞いていただきたいというふうに思います。今年、春闘で団交で出されたパートの声です。是非、皆さん、経営者になったつもりで、団交の向こう側にいるつもりで聞いていただきたいというふうに思います。
これはある店舗で働く仲間です。
今、人手不足の中で働いています。レジのオープンは二人でしています。体調不良でも休むと一人になるので休めません。熱があっても出勤しています。休めばいいと言われるかもしれないけれども、急な休みに人の補充ができないことが分かっているから休めないのです。一時間早出と一時間残業が最初からシフトに組まれていることはしょっちゅうです。節分のときはグロッサリーから二人レジ応援に一日中入っていました。グロッサリーの仕事は誰がするのでしょうか。夕方の五時からグロッサリーの人が仕事をしていました。また、農産はリニューアルをして売場も増えているし仕事も増えているのに、二十時間のパートが辞めてしまいました。その代わり、二十時間で働いていた人を三十時間に契約を変更しました。週十時間増やしただけで、十時間分は誰かがやらなければいけない。こういう実態になっている、何とかしてほしいという中身なんですけれども。
このように、パート労働者といっても、要するに単純定型でやっているわけではないし、残業ももちろんやっているし、請われればそういう状態で働いている。それなのに、この人たちは千円以下で働かせている実態があります。
是非、有効なる法改正を望みます。
以上でございます。
○委員長(丸川珠代君) ありがとうございました。
次に、今野参考人にお願いいたします。今野参考人。
○参考人(今野浩一郎君) 学習院大学の今野といいます。よろしくお願いします。
私は、専門が人事管理なものですから、今日はその人事管理からお話をしたいというふうに思っておりますので、したがいまして、タイトルも人事管理から同一価値労働同一賃金を考えるというふうにしてあります。
まず、具体的に入る前に、今日のお話をするときに、ちょっと私の思いみたいなのをお話ししておきたいと思うんですが、この法律が扱う内容というのは、これからの労働とか雇用を考える上で非常に重要だなというふうには考えております。したがって、非常に重要でありますので、影響も非常に大きいですので、企業の中の人事管理の実態というのをきちっと理解をしていただいて考えていただきたいというふうに思っております。
そのときに、当然のことながら、企業によって人事管理って多様ですので、今日、イケアさんの話がありましたけれども、イケアさんはイケアさんのタイプがありますが、違うタイプの人事管理っていっぱいありますので、それぞれのタイプについてここでお話ししても分かりにくくなりますので、それを、ベースにある、通底している基本的な考え方についてお話をさせていただいて、それで皆様の議論の参考にしていただければというふうに考えております。したがって、ちょっと理屈っぽくなるかもしれませんが御勘弁いただきたいと、大学の教師だからしようがないというふうに考えていただければと思います。
それで、お手元の資料を見ていただきます。
まず、人事管理にとって企業内での処遇とか賃金の決定の基本的な考え方って何かというと、いろいろありますが、最後の最後まで行くと、ここに書いてあるように、会社に同じ貢献をする社員には同じに払おうじゃないかと、これが基本原則です。これ、通常、人事管理では公平性原則というふうに呼んでいて、昔から言っている言葉です。ちょっと恐縮なんですが、欧米なんかではインターナルエクイティーと言うんですが、内部的に公平性を保てというのと同じ意味ですので。
ですから、公平性原則というのは国を越えてどこでも基本原則としてあるというふうにお考えいただきたい。そうすると、今回ここで議論になっている同一価値労働同一賃金とか均等・均衡処遇とかいうのに掛からない、ちょっと類似したコンセプトであるというふうに考えていただければと思います。
ただ、問題は、この貢献をどうやって捉えるかなんです。
この貢献については、例えば企業は、元々の大きな問題の一例を申し上げますと、そこにも書いてありますが、営業の人がいて技術の人がいて、同じ給料を払う、同じ貢献だからといったときに、営業の仕事と技術の仕事は全く違いますよね。違うものを貢献が一緒だというふうに捉えて同じ賃金を払うわけですね。そうすると、どういう観点から見て同じとしたのかということが、これが非常に大きな元々の問題なんです。
したがって、お手元の資料では、②のすぐ下にありますが、仕事等の違いを超えて貢献をどう捉えるかということが先ほどの公平性原則があった下で非常に重要な問題だと。この点については、人事管理は昔から頭の痛い課題としてずっと取り組んできたというふうにお考えいただきたいと思います。
今日は時間がないので省きますが、詳細は。そうやっていろいろ経験してきた中の幾つかの経験のタイプとして、例えば、日本は能力を重視して公平性を出そうと、アメリカは職務を重視して公平性を出そうと、ヨーロッパは職務ですが、アメリカと違って仕事のくくりは大ぐくりにしておいて公平性を出そうとか、いろんなタイプがあるというふうに思っていただければと思います。したがって、一言で言うと、どのタイプもある種の合理性を全部持っているわけです。そうすると、今までの経験が教えることというのは、そういう意味では、公平性原則をベースにする基準というのは多様な合理性があるんだということがこれまでの経験かなというふうに思います。
したがって、一番最後に書いてありますが、今回は雇用形態の多様化ですよね。ということは、多分、働き方の違う人について公平性原則をどうやって適用するかということですので、したがって、これまで人事管理がずっと扱ってきた公平性原則の応用問題だというふうに私は考えていて、その点だけ見ると、別に新しい問題ではないというふうに思っております。これが前段です。
急がないと時間がないですね。次のページをめくっていただきたいと思います。
それでは、この雇用形態の多様化ということに絞って議論をお話ししたいというのが二ページ目になります。これもモデル化してしゃべっていますが、伝統的に日本の企業ってこういうやり方をしていましたというお話をします。
その前に、①のすぐ下に、雇用形態の多様化に対応する労働者に共通することは制約社員と書いてありますが、実は、パートにしても契約社員にしてもいろんな多様な社員がいるんですが、そういう人たちを共通して見ると、働く時間とか働く場所とか仕事内容に制約を持っている人なんです。そういう意味では共通しているんです。いろんなタイプがいますから、そういう人たちをタイプごとにやってもしようがないので、共通してそういう人を制約社員と呼ぼうというのが私が今一生懸命言っていることなんです。そうすると、従来の正社員は、何でもします、どこでも働きます、何時間でも働きますということだから無制約社員と、そういうふうに私は考えているというふうにお考えいただきます。
それを前提に、①の矢印の二個目を見ていただきたいんですが、従来の伝統的な日本の人事管理というのは、無制約社員は基幹的業務をします、制約社員は周辺業務をしますという職域分離を明確にしておく、職域分離を明確にしておいて違う人事管理を適用すると。例を挙げると、無制約社員型の正社員は年功賃金にするけれども、制約社員型の例えばパートの人には職務型の賃金をするとかというように、違う人事管理を適用するというやり方をしてきました。それがここに書いてある一国二制度型人事管理というふうに私が呼んでいるところです。これが伝統型のタイプなんですが。
②です。今起きていることというのはどういうことかというと、例えば、無制約の正社員の人でも、育児の問題があります、介護の問題があります。さらには、ここには書いていないですが、病気で通院している人が今物すごく増えています。こういう人たちというのは、無制約で入ったんですが、そのときになって制約社員化しているわけですよ。ですから、無制約社員イコール正社員といっても、その中が、私の言葉で言うと制約社員化してきちゃっているということがあります。
今度は、もう一つは、制約社員の方も非常に基幹的な業務をする、例えば店長さんがパートとかいう人が増えていますから、制約社員の人が基幹業務をするようになってきちゃっている。ということは、私が先ほど言った制約社員と無制約社員の職域分離が壊れてきちゃっている。したがって、日本の企業は今までの一国二制度は変えなきゃいけないという状況に置かれているというふうに考えていただきたいと思います。
そうすると、方向は、②の二番目の矢印のところに書いてありますが、求められることは、無制約社員、制約社員にかかわらず、ここの言葉で言うと、雇用形態の多様化にかかわらず、社員の人にしてみれば活躍できる、企業からすると戦力化できる、そういうような人事管理に組み替えていかないとうまくいきませんよという状況になってきていますということです。
こういうことを踏まえて、じゃ一国二制度に代わる人事管理はどうやってつくっていこうかということが次の話題になって、今回の法律とも、ここから先が考え方としては具体的に関連してくると思うんですが、細かいことはもう時間がないので、結論というか出口だけお話をしますと、次のページを見ていただきたいと思います。絵が描いてあります。
これは、先ほど言ったように、公平性原則というのは、同じ貢献をしている人には同じに払おうじゃないかと、そういうことですので、その貢献はどういう状況で起こるのかということを理解しようということで作った絵になります。
一番左側は、ある社員を例えば採用しますというのが人材確保です。その社員は仕事に入ります。そうすると、仕事のプロセスの中に入ります。そうすると、その社員は、ある能力を持って、その能力を業務上のニーズに合わせて発揮をして、ここでは投入と書いてありますが、発揮して、特定の仕事をして、その結果として成果、ここの言葉で言う貢献が表れるというふうに考えますと、実は、貢献に貢献するファクターというのは、能力とか業務ニーズに合わせて能力を投入する行動とか、あるいはどんな仕事をしているのか、こういうことで決まってくるということになります。
そうすると、賃金決定要素というのは、仕事とか業務ニーズに合わせて能力を投入する行動とか仕事ということになります。これをきちっとこの観点から、先ほど言ったように無制約社員、制約社員とかいうのは取っ払って、これでもって全ての社員の貢献度を測ろうという考え方はどうだろうかというのが、私のこれは私案です。
それに対して、賃金決定原則を下に書いておきました。一番右側の仕事については、仕事原則とありますが、同じレベルの仕事をやっているんだったら同じに払おうじゃないかということになります。
次の業務ニーズに合わせた能力ですけれども、会社にしてみれば、例えば、一番分かりやすい例は、今度中国に工場を出します、ここの工場が我が社にとって生命線です、そうすると、その生命線の工場に行ってくれる社員と、いろんな事情があって行けない社員というのは、我が社に対する貢献度は違うんです、能力とかそれまでやっている仕事は一緒でも、貢献度は違うということで、真ん中ですけれども、そういうのを制約配慮原則と私は呼んでいるんですが、同じ仕事でも働く制約度が違えば賃金は異なるということになります。
さらに、能力については、能力の大小あるわけですが、特に日本の企業の場合は、若年層で、そこに書いてありますが、能力養成期、特に、いわゆる正社員として採られた方たちは、最初の五年、会社によって違いますけれども、三年、五年、十年は養成しますので、そうすると、養成する時代はやはりどれだけ能力が上がったかということが非常に重要ですので、そういう時代には仕事より能力を重視する賃金の方が合っているということになります。それをここで育成配慮原則と書いてあります。
いずれにしても、この三つの組合せで、それは会社の状況はいろいろ違いますから、これを上手に組み合わせる、つまり、この三つを一つのアンカーとして決めていってくださいということになります。
さらに、もう一つ重要なことがあります。仕事のプロセスに投入されるというか入る社員も、実は、企業というのは、世界どこもそうですが、幾つかのタイプがある。例えば、日本の例でいうと、一番いい例は、我が社の将来幹部になってほしいので長期的に養成して長期的に活用してという社員がいるのと、今この仕事をやってくれという社員がいると。そうすると、この社員というのは、企業にとっては社員のタイプが違いますので、そうすると、社員タイプごとに人材をマーケットから採ろうとすると、これは労働市場でのマーケットが違います、そうすると賃金が違ってきますということが一番左側の市場原則ということです。
ですから、あとは、具体的な賃金制度は、こういうことを考えながら、前のページを見ていただきたいんですが、二ページ目の一番下に書いてありますが、今言った諸原則の具体的な適用というのは、結局、個別企業で事情が違いますので、そういうのを考えながら労使できちっと考えてやってくれということだろうというふうに考えております。
最後のページを見ていただきます。最後にとあります。もう時間ですね。求められていることでいきますかね、一つだけ。
ここは雇用形態の多様化に従って処遇等をどうしようかということが主要なテーマだと思いますが、この真ん中に書いてありますが、人事管理上からすると、雇用形態の多様化した、例えばパートの人でもいいんですけれども、そういう人たちがきちっと企業内でキャリアを踏んでいけるような仕掛けをきちっとつくっておくというのが実は非常に重要で、ですから、人事管理上は、賃金とともにそういう人事管理の仕組みというのをきちっとつくっておくということが非常に重要だというふうに思っています。
最後、私が言いたいことは②に書いてありますので、読んでいただきたいと思います。
済みません、少し時間をオーバーして失礼いたしました。ありがとうございました。
○委員長(丸川珠代君) ありがとうございました。
次に、中野参考人にお願いいたします。中野参考人。
○参考人(中野麻美君) 貴重な時間を意見陳述のために割いていただきまして、心から感謝を申し上げます。
私は、非正規雇用、とりわけ派遣労働者の賃金等の実態を踏まえて、雇用形態、派遣労働者であることを理由とする不合理な取扱いを禁止すること、また、均等待遇確保に向けた是正措置を講じるべきであること、それに当たって留意すべき点は何かといったようなことについて意見を申し上げます。
私の資料は二部あります。それで、スライドになっている囲みのいろいろグラフが書いてあるものと、それからその解説版というやつです。スライド一とか二とか書いてあるのは、これはスライドの番号でして、ページ番号ではありませんので、よろしくお願いをいたします。これに沿って解説をしていきたいと思います。
まず、実態です。スライドの二から二十一までなんですけれども、派遣労働ネットワークの調査によりますと、賃金は下がる一方でした。生活の見通しが利かないどころか、これでは子供を産み育てることなどできません。そして、性別、常用型、登録型、派遣先社員との間に何重にもわたる格差があります。最近では、賃金は上昇傾向を示していますけれども、派遣料金は上がっても賃金はダウンする傾向もあります。また、下がらなくても、物価上昇していますので生活は苦しくなっています。賃金は細切れ化して、派遣では仕事と生活の両立はできない、子供を産めば仕事を失い、仕事がないから保育所に預けられない、預けられないから働けないという悪循環に置かれています。
スライドの二十二です。均等法や労働者派遣法が制定された一九八六年以降の法体制というのは日本型雇用慣行に親和的でありまして、契約の違いでしかない正規と非正規を身分固定化してしまいました。そして、登録型派遣は、均等法では救えない女性の働き方の選択肢として、仕事と生活の両立のために契約本位に専門技能を発揮して働けるということで容認された形態でしたけれども、実際には全く真逆でした。
そもそも、契約区分の要素というのは性中立性に疑問があります。職務とか人事ローテーション、配置、そして将来への期待によって格差を設けること自体、合理的な根拠が本来的に問われるべきであったというふうに思います。
職務の外形だとか人事ローテーションの有無や幅が違うから格差も当然といったことは神話でしかありません。それを示すものが、三つのシートに掲げておきました職務評価の結果です。これは、二十五、二十六、二十七にスライドで掲げておきました。
まず、転勤がなく補助定型業務に位置付けられた社員、国内外の転勤があって基幹判断業務に位置付けられた男性社員とを比較したものでありますけれども、二十五と二十六のスライドを見ていただいても、仕事の困難度には余り変わりはないということがお分かりいただけると思います。この二つのコースの間の賃金差は五〇ポイントでございます。
スライドの二十七に飛びますけれども、労働市場の二極化、格差と貧困というのは、日本型雇用慣行を下敷きにした経済分配システムの合理性を問うものでした。転勤条項は間接性差別となる基準というふうに厚生労働省令で規定されているわけですが、これに留意して不合理な格差を解消するという新しい制度が必要になっていると思います。
多様な正社員構想というのは、正規と非正規の二分された労働市場の改革を眼目としていまして、日本型雇用慣行から離れた新しい正社員像を広げて、同時に、非正規雇用からの転換の受皿というふうに位置付けられるものであると私は理解しております。しかし、これには副作用がある、それに留意する必要があると思います。
特に、非正規雇用からの転換の受皿というふうに位置付けられるとなりますと、正社員の低賃金化が進むのではないか、また、これらの副作用による影響で、仕事への誇りであるとか努力しようとする意欲が損なわれてしまったり、あるいは職場での連携が希薄化して生産性が低下するのではないかといった懸念が強く出てまいります。
スライドの三十ですけれども、こういった状況の中で非正規、特に派遣労働者が負っている格差というのを派遣労働者のなぜということで示しておきました。
職場に長く貢献しているのに真っ先に調整の対象になる、雇用継続への期待は法的に保護されない。同時に、同等に力を発揮しているのに生活が見通せない賃金で、将来発揮する役割というものも見通せない。働いて生活を維持しているのは皆同じなのに、通勤手当など諸手当の支給もなく、そのほか福利厚生でも差別されている。同じ人間なのに、出産、育児、介護の権利が保障されづらく、団結権であるとか団体交渉権の保障が実質的に機能していない。こういったことは人間の生活と人格的尊厳に関わるものです。
スライドの三十一に書いておきましたけれども、働き手の力の源泉とは何か。仕事に挑む自尊というものを核心とする人権の保障にあるのではないかと思います。アンケート調査結果でも賃金の格差への不満が大きいわけですが、これは、生活が苦しいことと併せて、賃金等の待遇はその人の仕事や働き手の人格的な価値を象徴しているからではないのかというふうに思います。
労働者の職務に応じた待遇の確保に当たり留意すべきことが三つあります。第一に、雇用形態による不合理な格差を撤廃することに向けた法制度を整備するという明確な目標を持つべきです。第二に、この課題をあらゆる差別、特に性別、年齢、障害による差別の禁止を徹底させる課題と有機的に結合させなければいけません。第三に、日本型雇用慣行を構成している包括的な労働関係、これに構造化された差別を取り除くこと、誰にも保障されるべき普遍的な雇用関係の在り方というものを確立する、これと不即不離の関係に立つものとして政策を推進しなければならないと思います。
合理性判断には、職務の価値評価あるいは間接差別の法理、そして合理的配慮の欠如といったような観点を組み入れて、雇用上の地位、賃金等待遇の不合理な格差を契約上是正する義務を派遣元、派遣先に負わせるべきです。
この間行われてきた雇用改革というのは、基本、第一に正規雇用への転換あるいはみなし、第二番目に均等待遇の保障、そして第三に受皿としての正規雇用改革という三つの歯車を起動させようとするものですけれども、まだまだうまく機能していないという問題があります。特に、派遣労働は特有の問題を抱えています。それは、雇用と使用責任が異なる主体に分離しているということ、それから登録型派遣の法的関係の特殊性といったものからくるものです。
今回の労働者派遣法見直し法案も、そういった限界があって、均等待遇保障の目的からすると極めて不十分だというふうに私は捉えております。これは、スライド三十五に今回の見直し法案の概要というものを図式化しておきました。
スライドの三十六に、派遣労働者に均等待遇を保障すべき法的根拠は何かということで、三点挙げておきました。一つは、派遣労働者の人格的尊厳、人権の保障の要請です。第二番目に、労働者派遣法の基本趣旨である常用代替防止の徹底ということが根拠になります。そして第三に、配分的正義の実現です。
特に今回は、期間と業務を組み合わせて正規と派遣との競合を回避する規制から、根本的にこれを見直して、正規雇用と派遣の競合可能性というものを格段に高めるという内容になっています。そうしたところでは、配分的正義の実現は制度の大前提だというふうに考えるべきであって、むしろ、こういった制度が実現しているところでこの労働者派遣法の改正を論じるのであればともかくとして、それを全く棚上げにしてこの改正が論じられるということに非常に強い違和感を感じます。
スライドの三十七ですけれども、派遣労働関係の特殊性を踏まえて、あらゆる差別の禁止と派遣労働者であることを理由とする不合理な差別を解消する制度の確立、それを図式化しておきましたけれども、こういったものをイメージして政策を進めていくことが求められるのではないかと思います。
派遣労働者の格差というのは、先ほども申しましたように、性別、常用型、登録型、派遣先に直接雇用された労働者との間に多重的に存在しています。常用型、登録型の格差解消の可能性を検討したとしても、労働契約法二十条はほとんど機能しないと思われます。それは、登録型という契約の特殊性から、将来にわたる職務であるとかあるいは人事ローテーションの枠組みの同一性といったようなことを問題にされてしまうと、格差の合理性を問う前提を欠いているとしか考えられない、そういった労働形態だからです。
しかし、職務関連性のある賃金につきましては、職務に必要な技能、仕事の困難度というのは同等であるのかどうかという視点から見直すことができますし、人事ローテーションの有無、範囲の違いが仕事の困難度に連動するかどうかという観点からの見直しはしていくべきだと思いますし、また、格差はワーク・ライフ・バランスへの配慮の欠如によって生じていないかどうかということが問われていくべきだと考えます。そして、就労・生活支援のための賃金であるとかあるいは福利厚生については同一の権利が認められてしかるべきだというふうに考えます。
スライドの四十一に、派遣先社員との均等・均衡処遇に必要な法制度として踏まえるべき基本というものを示しておきました。先ほど、均衡ということを入れることについての意義というのがありましたけれども、格差が不合理であるという場合に、どれほど不合理であるのかと、その程度を勘案して柔軟に判断していくということも必要な観点なのではないかと私は考えております。
そして、まず第一に、派遣社員であることを理由とする不合理な格差、取扱いの禁止を明確にすべきです。これぐらい何らかの形で法制化するということが緊急にできないものであろうかというふうに疑問に思っているところですが、この禁止というのは、派遣受入れから就労の継続、終了、そして賃金等待遇上の取扱いの全てが対象にされるべきものでありますし、それらの責任は派遣先、派遣元に、両者に義務付けられるべきであると考えます。
第二番目に、合理性判断の枠組みとしては、少なくとも以下の差別を取り除く観点が必要だと思います。一つは、職務の同価値性判断というものを前提にするということ。二つは、人事ローテーションの有無、範囲は、職務との関連性、合理的関連性といいますか、そして同価値性、それから合理的配慮の観点から検討が加えられるべきだということです。
そして三番目に、使用者側に説明義務、主張立証責任を負わせるということだと思います。合理性の主張立証責任は、対象となる労働条件ごとに派遣先、派遣元の各責任主体がそれぞれ負担するというのが合理的であると考えます。そして、労使の取組を可能にする制度というものにこういった考え方をつなげていくということではないかと思います。
第四に、どこまで是正するかという問題があります。それが同一価値労働同一賃金であるのかどうかといったような問題につながっていくわけですけれども、比較対象者を誰にするのか、同一価値労働に対して同じ賃金を支払うという原則を是正義務の内容とするのか、是正するのは正社員の職務関連賃金だけなのかといったことをきちんと整理をしていく必要があると思います。
しかし、私は、比較対象者が存在しなくても、当該労働者が正社員だったら支給される賃金に是正するように契約内容を修正するという法制化というのは可能ではないかというふうに考えております。そういった方向で検討するということが求められていると思います。
是正に向けた設計図を描く上で、二〇〇八年のEU指令は参考に値するものだと思います。日本において形成されてきた派遣労働の位置、あるいは正規雇用の構造的な問題を踏まえて、制度改革を急いでいただきますようにお願いを申し上げます。
以上です。
イケア・ジャパンから参りました人事本部長の泉川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
トップのページ、すばらしい職場を全てのコワーカーにということで書かせていただいておりますが、サブタイトルで、イケア・ジャパンの短時間正社員活用に向けました取組ということで、そちらを中心に今日はお話をさせていただく予定でございます。
皆様、イケア・ジャパンという形で、ホームファニシングを扱っている会社だということを御存じの方もいらっしゃるかと思います。二〇〇二年七月に、本社船橋ということでスタートしております。私どものビジョンは、より快適な毎日をより多くの方々に、そしてビジネス理念とヒューマンリソース理念というこの三つどもえのもの、今、三ページを御覧いただいているかと思いますが、三つどもえのものを持ちましてビジネスをさせていただいております。
現在、私ども、従業員数は二千八百名、コワーカーという形で書かせていただいておりまして、共に働くという意味合いでコワーカーと私どもの中では呼んでおります。正社員が九九%、うち短時間の正社員が六二%、そして、女性の比率ということでございますが、リテールということもありますので、六四%という高い比率になってございます。
また、こちらは、十年前に私どもがオープンした際から力を入れてまいりましたいわゆる女性の管理職への登用ということで、女性マネジャー比率、現在四八%ということで、現在の日本の一一%という数字に比しまして高い比率であるということをお知らせしておきたいと思います。
あと、ダイバーシティーとかインクルージョンということを掲げておりまして、グローバルの会社ということで、十年前からこちらの方が大きく取り上げられております。
ただ、今回の短時間正社員というところでの取組に関しましては、三つの大きな柱がございました。五ページにそちらの方を書かせていただいております。
イケアは人の力を信じておりますというのがまず一義的なスタートポイントでございます。その下にあります三つのポイント、多様な人材の活用、そして長期的な関係の構築の保障、そして平等な機会創出、ダイバーシティー・アンド・インクルージョン、そしてセキュリティー、そしてイコーリティーというところが三つの柱となってございます。
ということで、このイケア・ジャパン、なぜダイバーシティー・インクルージョンというものをフォーカスしているのか。こちらの方が七ページの方に書かせていただいております。三つございます。
ダイバーシティー・インクルージョンというのは、人を大切にするというイケアの、私どものビジネスのカルチャー、そしてバリュー、価値観に沿っておりまして、正しいものだというふうに考えております。非常にシンプルなのですが、誰もが平等に、そして公平に、人間として生まれてきたからには平等に公平に取り扱われるべきだと、そういった信念に基づいております。
二番目、ダイバーシティーは、グローバルに事業展開をする現在のイケア・ジャパンそのものでございます。多様なコワーカーとお客様がイケアとともにある、そう感じていただくことによって私どもがビジネスを発展させていけると、そういうふうに考えております。
三番目、ダイバーシティーはビジネスにとって不可欠ということで、より豊かな創造性、一段と高い生産性、そして才能を持つ人材の更なる雇用ということで、これらは全てビジネスに良い結果をもたらしていく。つまり、ダイバーシティー・インクルージョンというのがビジネスにとってコアになるというふうに考えてございます。
そして、しつこいようなのですが、平等こそが人権であると。全ての人は平等に扱われる権利を持っている、そして機会は平等であるべきである、そして個性は尊重されるべきであると、そんなふうに考えております。
そして、新しい現実ということで、九ページの方を御覧いただきますと、人口構成の変化、知識経済、グローバル社会に向かう流れというものが新しい現実をつくってまいります。
もちろん、人口構成の変化、国を越えての移住もこれからはたくさん始まるかと思います。また、高齢化を抱える先進国、日本はドイツに続いて二番目ということで、マルチ世代、いわゆる五世代ということも職場環境の中で今後求められてくることになると思います。
また、男女の構成比の変化、LGBTなどという言葉が最近はまたにぎわっておりますけれども、果たして本当にその意味が、私ども、ワーク・ライフ・バランスとかダイバーシティーという言葉が十年前、五年前に出てきたときと同じようにLGBTという言葉は出てきているけれども、果たしてどこまでその本当の内容を理解しているのかというところが、もしかしたらこれから先、何を呼んでいくのかというところで大きなポイントになるのではないかと弊社は考えております。
知識経済と技術革新ということで、能力のある人材の不足というのは、もうこれは免れない事実。そして、デジタルテクノロジーのより一層の活用という社会的な風潮も今ございます。つまり、会社として環境、そして社会に責任を持つ、そういったことがベースになってございます。
ビジネスにとって必要なもの、これは三つ。更なる創造と革新、そして働きやすい職場づくり、そして顧客ベースを拡大していくこと、この三つだと考えます。
ということで、イケアのビジョンというものは、より快適な毎日をより多くの方々にという、たまたま私ども、ホームファニシングを扱っておりますので、私どもが別のものを扱っていたとしても快適な毎日というのはもちろんつくり出していくことはできます。ただし、そこに働く人間たちが快適だと感じなければお客様を快適にすることはできないということで、今回は短時間正社員という形のインフラを整えていくという形になりました。つまり、ダイバーシティー・インクルージョンが自然と生まれるというものではなくて、意識的にデザインをしなきゃいけない、そういった観点で、私ども人事部の方でこちらの動きをスタートいたしました。
よくあるのが、御質問でたくさんいただきましたのが、労働の不足というものを、これからの展望を考えたときに、そこを補うがためにこのパターンで私たちが人事制度をしいたのではないかという推測が非常に多かったのですが、今までお話しさせていただいたイケアのビジョンであったり、そしてダイバーシティー・インクルージョンであったりという、いわゆる人間としての平等性、そして長期的な関係の構築、そして私たちが本当に平等に扱われ、ダイバーシティー、そしてインクルージョンしたいというそんな思いの中から五つの人事制度をしいてまいりました。そちらの方が十三ページ、細かな内容で載っております。
左側が、二〇一四年四月に私ども社内の中で発表、そしてプレスにもリリースをいたしました。二〇一四年九月からこちらに対する動きを始めまして、二〇一五年一月に全てがスタートという形を取りました。左側がビフォー、そして右側がアフターという形で、十三ページの方を御覧いただければと思います。
給与は雇用形態、つまりフルタイマーなのかパートタイマーなのかによって決まっていました。しかし、同じ仕事には同じ報酬、つまり同一労働同一賃金という形のものを今回は導入をいたしました。同じ職務であれば全てのコワーカーが同じ賃金幅で支払をされるべきであると、そういった考えでございます。
二番目、雇用形態に応じて職務期待水準が異なる。これは、いわゆるフルタイマーで働いている、長い労働をしている、四十時間、三十九時間の人間と二十時間しか働かない人間のところに同じジョブプロファイル、同じものを期待値として語っているにもかかわらず、現実には、パートで働く、つまり二十時間で働く人間には水準値が非常に低くなっている、書いてあることは同じなのにマインドセットがそこに行っていないという現状がありました。それを職務に対して、同じ職務であれば労働時間に関係なく職務期待水準が同じであるという、こういったマインドセット、そしてこういった現実をつくるためのトレーニング、教育に非常に力を入れてまいりました。
三番目、福利厚生は雇用形態に基づいておりまして、明瞭に提示がされていないというか、むしろ、パートさんはこれ、そしてフルタイマーはこれですねというふうに明確にそこに区切りを付けているわけではないんですが、いろいろな法律の規制であったりガイドラインであったりというものに沿って、そこにはやはり格差が生まれておりました。それを、全てのコワーカーに同じ福利厚生を提供し、一人一人に意義のある福利厚生となるようにという形で提供いたしました。
四番目、テンポラリーの契約が多い。つまり、六か月であったり一年であったりということで、六か月先は自分の仕事が保証されるのかどうか分からないという女性たちがたくさんおりました。そちらを、期待水準に達したコワーカーに関しては期間の定めのない無期雇用といたしました。
元々、こういった形を取ることによって人を削減していく、人員の削減をしていくというつもりは一切ございませんでしたので、一〇〇%パートタイマーで働いている人間たちを短時間正社員にしていきたいと、そんな思いで今回の動きを始めまして、二〇一四年九月から始まりました実際のトレーニング等々で、二〇一五年の一月、今年の一月にはほぼ九〇%以上の人間が私どもの考えた短時間正社員へと移動してまいりました。
そしてまた、多くのコワーカーというのが週に十二時間から十九時間という労働契約でございまして、そちらの方は、様々なライフステージであったりワーク・ライフ・バランスであったりという、それぞれの人間のニーズ、生活のニーズに合わせた形で会社との契約をしていくと、そういった形でこちらの五つの大きなポイントの変更がございました。
その次のページ、十四ページにございますイケア・ジャパンの短時間正社員制度、こちらのところで今申し上げたものを数字も含めまして分かりやすいように表現をさせていただいたつもりでございます。
例えば、特筆すべきところ、賞与なんですが、これは、以前からもパートタイマーの方には私ども支給をしておりましたが、今回は、それプラス企業型の年金等々も彼らに対応していくということで、全ての正社員、そして短時間正社員に同じ福利厚生の提供となりました。
そして、最後になりますが、短時間正社員の制度の導入によるメリットというのは、もちろんそこで働く短時間正社員も、今や、もはや私どもイケアの中にはパートタイマーという言葉は存在しません。その言葉を使うことが格差や差別を生むと考えるからです。
ですので、そういった短時間正社員の方が以前のパートタイマーとして勤務していたときと比較をいたしまして、一時間当たりのもちろん時給、給与水準がアップしております。そして、有期雇用から無期雇用ということで、長期でのキャリア、そしてライフプランというものを安心してやっていけると、そんな状態となりました。
三つ目、フルタイマーと同様の休暇制度等、福利厚生が利用できることによって、こちらもまた、様々なライフステージ、様々なことが起こってきます。介護であったり、また子供のことであったりと、いろいろと起こってくるものに自分のキャリアパスを重ねて動きやすいという形がここに表れております。
そして、最終的には、イケアで長期的に働き続け、成長したいという意欲の高い応募者がまた増加し、私どもが元々狙った平等で、そして公平な取扱いをするという会社の中にビジネスを本当に運用していくという力が生まれ、最終的にはビジネスがプラスになっていく。つまり、従業員、コワーカーもウインですし、会社もウイン、そして最終的にはお客様にとってもウインなものが生まれるということで、そんな形が生まれてきていると思います。
自分らしくいること、ビーユアセルフというのをよく言いますが、自分らしくいることが一人一人の魅力、そしてイケアをもっと良くするということが、私たちよく使う言葉なんですが、こういった公平性、そしてダイバーシティー・インクルージョン、そして長期的な信用性を掲げるためには、職務に応じた設定というのが非常にこれからの大きな課題だと信じております。
以上でございます。
○委員長(丸川珠代君) ありがとうございました。
次に、北口参考人にお願いいたします。北口参考人。
○参考人(北口明代君) こんにちは。生協労連の北口と申します。
私は、雇用形態の違いによる差別はもう常々人権侵害だと思っており、同一価値労働同一賃金原則を日本に根付かせたい、そのためには職務評価が必要だと考えているので、今日のような発言の場をいただいたことにまず感謝を申し上げたいと思います。
非正規労働者の待遇改善を願って生協労連で実施している取組について発言をさせていただきます。
まず、今回の労働者派遣法の改正案のことなんですけれども、不安定な雇用である派遣労働者を増大させるもので、私は、もう絶対に反対だと思います。むしろ、均等待遇原則を盛り込み、派遣労働は臨時的、一時的業務に限定させるよう法改正すべきだと思います。
また、本日のテーマである本法案でございますけれども、調査研究の後、三年以内に法改正を求めており、その道筋を付けたことについては一歩前進だと考えておりますが、しかしながら、実効力については大いに疑問を感じております。そのことについては後で述べたいというふうに思います。
それでは、まず生協労連の活動について御紹介したいと思います。
生協労連は、全国の地域生協、大学生協、学校生協などで働く労働組合の連合会です。約六万五千人の組合員のうち七割がパートなど非正規労働者です。私自身もパートタイマー出身です。初めて女性で非正規出身の中央執行委員長として三年前に選出をされました。これは、生協労連が二〇〇四年から全ての労働者のディーセントワークの実現とジェンダー平等社会の実現を目指して、そのために、増大する非正規課題を生協労連の主軸とすることと、七割を構成するパート労働者が運動の真ん中に立ち上がるように取組を進めてきた結果です。
現在、中央執行委員、中央委員、大会代議員など、約四割がパート女性が参画をしております。最低賃金の大幅引上げ、均等待遇の実現、無期雇用への転換などを中心に、社会対話、法規制、そして春闘、秋闘での理事会要求を出し、大きな前進を勝ち取ってきているというところでございます。
最低賃金につきましては、いつでもどこでも誰でも今すぐ千円以上にと運動を続け、昨年は全国平均七百八十円と、この十年間で百十五円を引き上げる牽引役を果たしてきたと自負しております。
今年の七月の末に今年度の最賃の目安改定、全国平均十八円の目安答申が出されましたけれども、今、地方の最賃の決定協議が進められているところでございますが、一番高い東京でも、今年十九円ということで九百七円にはなりましたが、低いところではまだ六百円台の半ばだということで、政労使で合意した二〇二〇年までに千円、早期に八百円にほど遠い状況だと。地域間格差も二百十一円から更に広がるということで、この最低賃金の大幅引上げも非正規労働者にとっては大きな課題だというふうに思っております。
もう一つは無期雇用への転換でございますけれども、こちらについては、労働契約法が改正されたことを力に、二〇一二年秋から理事会へ強く要求をして、従前より無期雇用だったところも含め、法律より前倒しで、三十五の生協で約三万五千人のパートやアルバイトなど非正規労働者の無期雇用を実現させました。無期雇用契約というのはパート労働者の長年の要求でしたので、本当に大きな岩が動いたという実感をしております。これは、やっぱり法律を作ることがいかに効力があるのか、そして労働組合があればそれを実現できる、このことに確信を深めております。
ですので、残された課題は均等待遇の実現なんですね。福利厚生や特別休暇制度などの均等待遇については一歩一歩着実に前進させていますし、労契法やパート法も改正されたのを力に活用させていただいているところでございます。したがって、本当に残された課題は賃金の均等待遇の実現でございます。
生協労連は一九八〇年にパート部会を結成し、パートの主体的な運動と組織化を促して、法整備、パート法ですとか労契法ですとか、こういった法律の整備を求めてきました。しかし、パート法につきましては、制定時から都度都度の改正運動を続けて、二〇〇三年には差別禁止規定も盛り込ませましたけれども、残念ながら、抜本的な改善には至っていません。これは、やっぱり法律上の不備があるのだということを言わざるを得ません。
パート法も労契法も法律上の強制力がない、このことが大きな要因だと思っております。しかも、パート法や派遣法では正規と非正規が人事管理上違うとし、雇用形態差別を認めています。昨年のパート法の改正では、差別禁止の三要件、一つには職務と責任が同じ、人材活用の仕組みが同じか、無期か有期かのうち、無期か有期かの要件については削除をされましたけれども、依然として人材活用の仕組みが残っており、ほとんどのパートは残念ながら対象外だと。ここを突破しないと均等待遇は望めないと思います。
だからこそ、人に付く賃金から仕事賃金へ移行し、同じ価値の仕事をしていたら同じ賃金を支払うようにしないと、非正規労働者の待遇改善は一向に進みません。パートや派遣は安くて当たり前は世界の非常識です。早急に導入すべき時期に来ていると思います。
その理由としては、一つには、多くの国では同一価値労働同一賃金原則、仕事を基準として、同じ価値の仕事をしていたら同じ処遇にする、これによって仕事を決めている。性、年齢、人種、信条、雇用形態などを理由とした賃金格差は差別に当たるというのが国際社会の常識だと。
二つ目には、ILO条約適用専門家委員会、国連女性差別撤廃委員会からも男女・雇用形態間の賃金格差の是正が求められています。非正規労働者は女性に多いことからも間接差別に当たるのではないかという指摘もあり、女性の地位向上のためにも非正規労働者の待遇改善は有効です。
三つ目、男性の片働き、女性は家計補助的な労働とのこれまでの家族モデルは崩壊しつつあり、非自発の非正規労働者が増大しています。
四つ目、約四割の非正規労働者はもう既に職務賃金です。終身年功賃金制度の正規労働者の比率は減少しています。生協の中でも、職能資格制度から役割等級制度へ移行している生協もあります。
五つ目、グローバル経済の下、多国籍企業も増え、日本だけの固有の制度を持つのは限界が来ています。先ほどのイケアさんの御報告でもそうだなと本当に思いました。国際基準で一本化することが企業にとってもプラスだと思います。日本ではヨーロッパのような職務給ではない、産別の労働市場が形成されていないという意見がありますが、だからこそ、仕事の価値を点数化することで客観視できる職務評価が有効だというふうに思います。
次に、生協労連で実施した職務評価について説明をしたいというふうに思います。
パート労働黒書の下に一つぺらで資料を付けておりますので、そちらの方を見ていただければというふうに思います。
職務評価というのは仕事の価値を測るもので、やり方としては、評価の基準として職務評価ファクターを作成します。この職務評価ファクターという表を見ていただければいいと思いますが、この四つのファクター、仕事の負担、知識・技能、責任、労働環境、この四つのファクターは国際的な基準でございます。そして、それを十二のサブファクターに分けており、それぞれにウエートを千点満点で配分を決めています。これは、サブファクターから点数については生協版として作成をしています。ここでは、労働者からアンケート方式で労働者に回答をしていただきました。
これは、跡見女子大学の禿准教授の御指導でコープあいちでの調査でございます。調査の結果としましては、後ろのページを見ていただければというふうに思います。生協は、共同購入とか個配とかの配送を正社員やそれからパート社員や、それから最近では委託労働者もしているんですけれども、ここで配送をしている正社員とパート職員にアンケートで聞いていただいた結果でございます。見ていただければ明らかなとおり、正規職員の平均点は六百三十四・二点、パート職員は五百六十二・八点。つまり、仕事の価値は正規一〇〇に対しパートはほぼ九割でございます。表にはありませんけれども、担当者レベルの正規と中核を担うパートとの比較では一〇〇対九八との結果になりました。
では、賃金はどうなっているのかといいますと、時給換算で正規職員は二千五十一円に対しパートは千百五十九円、正規一〇〇に対しパート五六%と、六割にも届いていないと。これを一時金を含めると格差はもっと広がり、ほぼ半分になってしまうと。これは、パートや非正規のところは一時金がない、あっても月数がほんの僅かということで格差が広がる。ほぼ九割の仕事に対し賃金は半分との結果になっています。これを職務の価値に見合った賃金にすると、パートは千八百二十円、一時金込みならば二千百三十八円が妥当との結果になります。店舗の場合についても同様でございますので、見ておいていただければというふうに思います。
このように、正規は仕事の価値の数値が高くなるのは当然ですけれども、パートだからといって単純定型作業ではなく、責任ある仕事をしている。今、正規が店舗ではもう一割もいるかいないかという状況の中で、ほとんどがパートが担っているということでございますので、この賃金格差の実態が明らかになっているということでございます。
次に、生協で働くパートの実態について御紹介したいので、お手元のパート労働黒書の方を御参照いただければというふうに思いますが、時間の関係がございますので詳細は省きますが、離婚後のシングルマザーやリストラ後の中高年とその家族が、非自発のパート、非正規労働者が増大して、ダブルワーク、トリプルワークで生活し、自身の健康や子供の教育の権利を奪う実態が広がっています。格差の縮小、貧困撲滅のためにも、パートや非正規労働者の待遇改善は待ったなしの課題だというふうに思います。
次に、この法案についての実効性について懸念があるということについて幾つか意見を述べさせていただきます。
一つには、雇用の多様化とありますが、これは、企業にとって使い勝手が良いだけで、実際に労働者は選択ができません。シングルマザーや青年の多くが非自発的に非正規雇用を選ばざるを得ない実態からも明らかです。一旦正社員を辞めてしまうと非正規の就職口しかない、これが今の日本の現状です。
また、均等待遇に加え均衡待遇という概念が盛り込まれていますが、この均衡というのはバランスという意味であって、その水準も明確になっておらず、有効ではありません。削除すべきだと思います。
また、意欲、能力に応じてとありますけれども、職務評価ファクターを見ていただければ明らかのように、仕事の価値評価にはこういった文言はありません。意欲や能力というのも人に付くものなんですね。ですので、同一価値労働同一賃金原則には当てはまりません。
したがって、厚生労働省に要請したいのは、今作っている職務評価マニュアルではなくて、同一価値労働同一賃金による職務評価のひな形を作成して広報していただきたいというふうに思っております。明治大学の遠藤先生等々も作成しておりますので、是非参考にしていただければというふうに思います。
最後に、賃金は労使でとよく言いますけれども、しかし、日本における組織率は年々低下しており、残念ながら、労組の力は弱くなっているのが現状です。特に、非正規労働者は九割以上が未組織です。派遣労働者は解雇を覚悟の上で労組に加入し闘わなければならないのが現状です。法律による規制が必要です。
この法案はフルタイムで働く人を対象にしていますけれども、三年以内に同一価値労働同一賃金原則が盛り込まれた有効な法律が施行されれば、パート法への影響は大きいと思いますし、非正規労働者の待遇改善には本当に必要な法律だというふうに思います。是非、的確な調査を行い、三年以内の実効ある法改正を望みます。
あと一分ありますね。では、あと一分あるので、ちょっと実際にパートの労働者の声を聞いていただきたいというふうに思います。今年、春闘で団交で出されたパートの声です。是非、皆さん、経営者になったつもりで、団交の向こう側にいるつもりで聞いていただきたいというふうに思います。
これはある店舗で働く仲間です。
今、人手不足の中で働いています。レジのオープンは二人でしています。体調不良でも休むと一人になるので休めません。熱があっても出勤しています。休めばいいと言われるかもしれないけれども、急な休みに人の補充ができないことが分かっているから休めないのです。一時間早出と一時間残業が最初からシフトに組まれていることはしょっちゅうです。節分のときはグロッサリーから二人レジ応援に一日中入っていました。グロッサリーの仕事は誰がするのでしょうか。夕方の五時からグロッサリーの人が仕事をしていました。また、農産はリニューアルをして売場も増えているし仕事も増えているのに、二十時間のパートが辞めてしまいました。その代わり、二十時間で働いていた人を三十時間に契約を変更しました。週十時間増やしただけで、十時間分は誰かがやらなければいけない。こういう実態になっている、何とかしてほしいという中身なんですけれども。
このように、パート労働者といっても、要するに単純定型でやっているわけではないし、残業ももちろんやっているし、請われればそういう状態で働いている。それなのに、この人たちは千円以下で働かせている実態があります。
是非、有効なる法改正を望みます。
以上でございます。
○委員長(丸川珠代君) ありがとうございました。
次に、今野参考人にお願いいたします。今野参考人。
○参考人(今野浩一郎君) 学習院大学の今野といいます。よろしくお願いします。
私は、専門が人事管理なものですから、今日はその人事管理からお話をしたいというふうに思っておりますので、したがいまして、タイトルも人事管理から同一価値労働同一賃金を考えるというふうにしてあります。
まず、具体的に入る前に、今日のお話をするときに、ちょっと私の思いみたいなのをお話ししておきたいと思うんですが、この法律が扱う内容というのは、これからの労働とか雇用を考える上で非常に重要だなというふうには考えております。したがって、非常に重要でありますので、影響も非常に大きいですので、企業の中の人事管理の実態というのをきちっと理解をしていただいて考えていただきたいというふうに思っております。
そのときに、当然のことながら、企業によって人事管理って多様ですので、今日、イケアさんの話がありましたけれども、イケアさんはイケアさんのタイプがありますが、違うタイプの人事管理っていっぱいありますので、それぞれのタイプについてここでお話ししても分かりにくくなりますので、それを、ベースにある、通底している基本的な考え方についてお話をさせていただいて、それで皆様の議論の参考にしていただければというふうに考えております。したがって、ちょっと理屈っぽくなるかもしれませんが御勘弁いただきたいと、大学の教師だからしようがないというふうに考えていただければと思います。
それで、お手元の資料を見ていただきます。
まず、人事管理にとって企業内での処遇とか賃金の決定の基本的な考え方って何かというと、いろいろありますが、最後の最後まで行くと、ここに書いてあるように、会社に同じ貢献をする社員には同じに払おうじゃないかと、これが基本原則です。これ、通常、人事管理では公平性原則というふうに呼んでいて、昔から言っている言葉です。ちょっと恐縮なんですが、欧米なんかではインターナルエクイティーと言うんですが、内部的に公平性を保てというのと同じ意味ですので。
ですから、公平性原則というのは国を越えてどこでも基本原則としてあるというふうにお考えいただきたい。そうすると、今回ここで議論になっている同一価値労働同一賃金とか均等・均衡処遇とかいうのに掛からない、ちょっと類似したコンセプトであるというふうに考えていただければと思います。
ただ、問題は、この貢献をどうやって捉えるかなんです。
この貢献については、例えば企業は、元々の大きな問題の一例を申し上げますと、そこにも書いてありますが、営業の人がいて技術の人がいて、同じ給料を払う、同じ貢献だからといったときに、営業の仕事と技術の仕事は全く違いますよね。違うものを貢献が一緒だというふうに捉えて同じ賃金を払うわけですね。そうすると、どういう観点から見て同じとしたのかということが、これが非常に大きな元々の問題なんです。
したがって、お手元の資料では、②のすぐ下にありますが、仕事等の違いを超えて貢献をどう捉えるかということが先ほどの公平性原則があった下で非常に重要な問題だと。この点については、人事管理は昔から頭の痛い課題としてずっと取り組んできたというふうにお考えいただきたいと思います。
今日は時間がないので省きますが、詳細は。そうやっていろいろ経験してきた中の幾つかの経験のタイプとして、例えば、日本は能力を重視して公平性を出そうと、アメリカは職務を重視して公平性を出そうと、ヨーロッパは職務ですが、アメリカと違って仕事のくくりは大ぐくりにしておいて公平性を出そうとか、いろんなタイプがあるというふうに思っていただければと思います。したがって、一言で言うと、どのタイプもある種の合理性を全部持っているわけです。そうすると、今までの経験が教えることというのは、そういう意味では、公平性原則をベースにする基準というのは多様な合理性があるんだということがこれまでの経験かなというふうに思います。
したがって、一番最後に書いてありますが、今回は雇用形態の多様化ですよね。ということは、多分、働き方の違う人について公平性原則をどうやって適用するかということですので、したがって、これまで人事管理がずっと扱ってきた公平性原則の応用問題だというふうに私は考えていて、その点だけ見ると、別に新しい問題ではないというふうに思っております。これが前段です。
急がないと時間がないですね。次のページをめくっていただきたいと思います。
それでは、この雇用形態の多様化ということに絞って議論をお話ししたいというのが二ページ目になります。これもモデル化してしゃべっていますが、伝統的に日本の企業ってこういうやり方をしていましたというお話をします。
その前に、①のすぐ下に、雇用形態の多様化に対応する労働者に共通することは制約社員と書いてありますが、実は、パートにしても契約社員にしてもいろんな多様な社員がいるんですが、そういう人たちを共通して見ると、働く時間とか働く場所とか仕事内容に制約を持っている人なんです。そういう意味では共通しているんです。いろんなタイプがいますから、そういう人たちをタイプごとにやってもしようがないので、共通してそういう人を制約社員と呼ぼうというのが私が今一生懸命言っていることなんです。そうすると、従来の正社員は、何でもします、どこでも働きます、何時間でも働きますということだから無制約社員と、そういうふうに私は考えているというふうにお考えいただきます。
それを前提に、①の矢印の二個目を見ていただきたいんですが、従来の伝統的な日本の人事管理というのは、無制約社員は基幹的業務をします、制約社員は周辺業務をしますという職域分離を明確にしておく、職域分離を明確にしておいて違う人事管理を適用すると。例を挙げると、無制約社員型の正社員は年功賃金にするけれども、制約社員型の例えばパートの人には職務型の賃金をするとかというように、違う人事管理を適用するというやり方をしてきました。それがここに書いてある一国二制度型人事管理というふうに私が呼んでいるところです。これが伝統型のタイプなんですが。
②です。今起きていることというのはどういうことかというと、例えば、無制約の正社員の人でも、育児の問題があります、介護の問題があります。さらには、ここには書いていないですが、病気で通院している人が今物すごく増えています。こういう人たちというのは、無制約で入ったんですが、そのときになって制約社員化しているわけですよ。ですから、無制約社員イコール正社員といっても、その中が、私の言葉で言うと制約社員化してきちゃっているということがあります。
今度は、もう一つは、制約社員の方も非常に基幹的な業務をする、例えば店長さんがパートとかいう人が増えていますから、制約社員の人が基幹業務をするようになってきちゃっている。ということは、私が先ほど言った制約社員と無制約社員の職域分離が壊れてきちゃっている。したがって、日本の企業は今までの一国二制度は変えなきゃいけないという状況に置かれているというふうに考えていただきたいと思います。
そうすると、方向は、②の二番目の矢印のところに書いてありますが、求められることは、無制約社員、制約社員にかかわらず、ここの言葉で言うと、雇用形態の多様化にかかわらず、社員の人にしてみれば活躍できる、企業からすると戦力化できる、そういうような人事管理に組み替えていかないとうまくいきませんよという状況になってきていますということです。
こういうことを踏まえて、じゃ一国二制度に代わる人事管理はどうやってつくっていこうかということが次の話題になって、今回の法律とも、ここから先が考え方としては具体的に関連してくると思うんですが、細かいことはもう時間がないので、結論というか出口だけお話をしますと、次のページを見ていただきたいと思います。絵が描いてあります。
これは、先ほど言ったように、公平性原則というのは、同じ貢献をしている人には同じに払おうじゃないかと、そういうことですので、その貢献はどういう状況で起こるのかということを理解しようということで作った絵になります。
一番左側は、ある社員を例えば採用しますというのが人材確保です。その社員は仕事に入ります。そうすると、仕事のプロセスの中に入ります。そうすると、その社員は、ある能力を持って、その能力を業務上のニーズに合わせて発揮をして、ここでは投入と書いてありますが、発揮して、特定の仕事をして、その結果として成果、ここの言葉で言う貢献が表れるというふうに考えますと、実は、貢献に貢献するファクターというのは、能力とか業務ニーズに合わせて能力を投入する行動とか、あるいはどんな仕事をしているのか、こういうことで決まってくるということになります。
そうすると、賃金決定要素というのは、仕事とか業務ニーズに合わせて能力を投入する行動とか仕事ということになります。これをきちっとこの観点から、先ほど言ったように無制約社員、制約社員とかいうのは取っ払って、これでもって全ての社員の貢献度を測ろうという考え方はどうだろうかというのが、私のこれは私案です。
それに対して、賃金決定原則を下に書いておきました。一番右側の仕事については、仕事原則とありますが、同じレベルの仕事をやっているんだったら同じに払おうじゃないかということになります。
次の業務ニーズに合わせた能力ですけれども、会社にしてみれば、例えば、一番分かりやすい例は、今度中国に工場を出します、ここの工場が我が社にとって生命線です、そうすると、その生命線の工場に行ってくれる社員と、いろんな事情があって行けない社員というのは、我が社に対する貢献度は違うんです、能力とかそれまでやっている仕事は一緒でも、貢献度は違うということで、真ん中ですけれども、そういうのを制約配慮原則と私は呼んでいるんですが、同じ仕事でも働く制約度が違えば賃金は異なるということになります。
さらに、能力については、能力の大小あるわけですが、特に日本の企業の場合は、若年層で、そこに書いてありますが、能力養成期、特に、いわゆる正社員として採られた方たちは、最初の五年、会社によって違いますけれども、三年、五年、十年は養成しますので、そうすると、養成する時代はやはりどれだけ能力が上がったかということが非常に重要ですので、そういう時代には仕事より能力を重視する賃金の方が合っているということになります。それをここで育成配慮原則と書いてあります。
いずれにしても、この三つの組合せで、それは会社の状況はいろいろ違いますから、これを上手に組み合わせる、つまり、この三つを一つのアンカーとして決めていってくださいということになります。
さらに、もう一つ重要なことがあります。仕事のプロセスに投入されるというか入る社員も、実は、企業というのは、世界どこもそうですが、幾つかのタイプがある。例えば、日本の例でいうと、一番いい例は、我が社の将来幹部になってほしいので長期的に養成して長期的に活用してという社員がいるのと、今この仕事をやってくれという社員がいると。そうすると、この社員というのは、企業にとっては社員のタイプが違いますので、そうすると、社員タイプごとに人材をマーケットから採ろうとすると、これは労働市場でのマーケットが違います、そうすると賃金が違ってきますということが一番左側の市場原則ということです。
ですから、あとは、具体的な賃金制度は、こういうことを考えながら、前のページを見ていただきたいんですが、二ページ目の一番下に書いてありますが、今言った諸原則の具体的な適用というのは、結局、個別企業で事情が違いますので、そういうのを考えながら労使できちっと考えてやってくれということだろうというふうに考えております。
最後のページを見ていただきます。最後にとあります。もう時間ですね。求められていることでいきますかね、一つだけ。
ここは雇用形態の多様化に従って処遇等をどうしようかということが主要なテーマだと思いますが、この真ん中に書いてありますが、人事管理上からすると、雇用形態の多様化した、例えばパートの人でもいいんですけれども、そういう人たちがきちっと企業内でキャリアを踏んでいけるような仕掛けをきちっとつくっておくというのが実は非常に重要で、ですから、人事管理上は、賃金とともにそういう人事管理の仕組みというのをきちっとつくっておくということが非常に重要だというふうに思っています。
最後、私が言いたいことは②に書いてありますので、読んでいただきたいと思います。
済みません、少し時間をオーバーして失礼いたしました。ありがとうございました。
○委員長(丸川珠代君) ありがとうございました。
次に、中野参考人にお願いいたします。中野参考人。
○参考人(中野麻美君) 貴重な時間を意見陳述のために割いていただきまして、心から感謝を申し上げます。
私は、非正規雇用、とりわけ派遣労働者の賃金等の実態を踏まえて、雇用形態、派遣労働者であることを理由とする不合理な取扱いを禁止すること、また、均等待遇確保に向けた是正措置を講じるべきであること、それに当たって留意すべき点は何かといったようなことについて意見を申し上げます。
私の資料は二部あります。それで、スライドになっている囲みのいろいろグラフが書いてあるものと、それからその解説版というやつです。スライド一とか二とか書いてあるのは、これはスライドの番号でして、ページ番号ではありませんので、よろしくお願いをいたします。これに沿って解説をしていきたいと思います。
まず、実態です。スライドの二から二十一までなんですけれども、派遣労働ネットワークの調査によりますと、賃金は下がる一方でした。生活の見通しが利かないどころか、これでは子供を産み育てることなどできません。そして、性別、常用型、登録型、派遣先社員との間に何重にもわたる格差があります。最近では、賃金は上昇傾向を示していますけれども、派遣料金は上がっても賃金はダウンする傾向もあります。また、下がらなくても、物価上昇していますので生活は苦しくなっています。賃金は細切れ化して、派遣では仕事と生活の両立はできない、子供を産めば仕事を失い、仕事がないから保育所に預けられない、預けられないから働けないという悪循環に置かれています。
スライドの二十二です。均等法や労働者派遣法が制定された一九八六年以降の法体制というのは日本型雇用慣行に親和的でありまして、契約の違いでしかない正規と非正規を身分固定化してしまいました。そして、登録型派遣は、均等法では救えない女性の働き方の選択肢として、仕事と生活の両立のために契約本位に専門技能を発揮して働けるということで容認された形態でしたけれども、実際には全く真逆でした。
そもそも、契約区分の要素というのは性中立性に疑問があります。職務とか人事ローテーション、配置、そして将来への期待によって格差を設けること自体、合理的な根拠が本来的に問われるべきであったというふうに思います。
職務の外形だとか人事ローテーションの有無や幅が違うから格差も当然といったことは神話でしかありません。それを示すものが、三つのシートに掲げておきました職務評価の結果です。これは、二十五、二十六、二十七にスライドで掲げておきました。
まず、転勤がなく補助定型業務に位置付けられた社員、国内外の転勤があって基幹判断業務に位置付けられた男性社員とを比較したものでありますけれども、二十五と二十六のスライドを見ていただいても、仕事の困難度には余り変わりはないということがお分かりいただけると思います。この二つのコースの間の賃金差は五〇ポイントでございます。
スライドの二十七に飛びますけれども、労働市場の二極化、格差と貧困というのは、日本型雇用慣行を下敷きにした経済分配システムの合理性を問うものでした。転勤条項は間接性差別となる基準というふうに厚生労働省令で規定されているわけですが、これに留意して不合理な格差を解消するという新しい制度が必要になっていると思います。
多様な正社員構想というのは、正規と非正規の二分された労働市場の改革を眼目としていまして、日本型雇用慣行から離れた新しい正社員像を広げて、同時に、非正規雇用からの転換の受皿というふうに位置付けられるものであると私は理解しております。しかし、これには副作用がある、それに留意する必要があると思います。
特に、非正規雇用からの転換の受皿というふうに位置付けられるとなりますと、正社員の低賃金化が進むのではないか、また、これらの副作用による影響で、仕事への誇りであるとか努力しようとする意欲が損なわれてしまったり、あるいは職場での連携が希薄化して生産性が低下するのではないかといった懸念が強く出てまいります。
スライドの三十ですけれども、こういった状況の中で非正規、特に派遣労働者が負っている格差というのを派遣労働者のなぜということで示しておきました。
職場に長く貢献しているのに真っ先に調整の対象になる、雇用継続への期待は法的に保護されない。同時に、同等に力を発揮しているのに生活が見通せない賃金で、将来発揮する役割というものも見通せない。働いて生活を維持しているのは皆同じなのに、通勤手当など諸手当の支給もなく、そのほか福利厚生でも差別されている。同じ人間なのに、出産、育児、介護の権利が保障されづらく、団結権であるとか団体交渉権の保障が実質的に機能していない。こういったことは人間の生活と人格的尊厳に関わるものです。
スライドの三十一に書いておきましたけれども、働き手の力の源泉とは何か。仕事に挑む自尊というものを核心とする人権の保障にあるのではないかと思います。アンケート調査結果でも賃金の格差への不満が大きいわけですが、これは、生活が苦しいことと併せて、賃金等の待遇はその人の仕事や働き手の人格的な価値を象徴しているからではないのかというふうに思います。
労働者の職務に応じた待遇の確保に当たり留意すべきことが三つあります。第一に、雇用形態による不合理な格差を撤廃することに向けた法制度を整備するという明確な目標を持つべきです。第二に、この課題をあらゆる差別、特に性別、年齢、障害による差別の禁止を徹底させる課題と有機的に結合させなければいけません。第三に、日本型雇用慣行を構成している包括的な労働関係、これに構造化された差別を取り除くこと、誰にも保障されるべき普遍的な雇用関係の在り方というものを確立する、これと不即不離の関係に立つものとして政策を推進しなければならないと思います。
合理性判断には、職務の価値評価あるいは間接差別の法理、そして合理的配慮の欠如といったような観点を組み入れて、雇用上の地位、賃金等待遇の不合理な格差を契約上是正する義務を派遣元、派遣先に負わせるべきです。
この間行われてきた雇用改革というのは、基本、第一に正規雇用への転換あるいはみなし、第二番目に均等待遇の保障、そして第三に受皿としての正規雇用改革という三つの歯車を起動させようとするものですけれども、まだまだうまく機能していないという問題があります。特に、派遣労働は特有の問題を抱えています。それは、雇用と使用責任が異なる主体に分離しているということ、それから登録型派遣の法的関係の特殊性といったものからくるものです。
今回の労働者派遣法見直し法案も、そういった限界があって、均等待遇保障の目的からすると極めて不十分だというふうに私は捉えております。これは、スライド三十五に今回の見直し法案の概要というものを図式化しておきました。
スライドの三十六に、派遣労働者に均等待遇を保障すべき法的根拠は何かということで、三点挙げておきました。一つは、派遣労働者の人格的尊厳、人権の保障の要請です。第二番目に、労働者派遣法の基本趣旨である常用代替防止の徹底ということが根拠になります。そして第三に、配分的正義の実現です。
特に今回は、期間と業務を組み合わせて正規と派遣との競合を回避する規制から、根本的にこれを見直して、正規雇用と派遣の競合可能性というものを格段に高めるという内容になっています。そうしたところでは、配分的正義の実現は制度の大前提だというふうに考えるべきであって、むしろ、こういった制度が実現しているところでこの労働者派遣法の改正を論じるのであればともかくとして、それを全く棚上げにしてこの改正が論じられるということに非常に強い違和感を感じます。
スライドの三十七ですけれども、派遣労働関係の特殊性を踏まえて、あらゆる差別の禁止と派遣労働者であることを理由とする不合理な差別を解消する制度の確立、それを図式化しておきましたけれども、こういったものをイメージして政策を進めていくことが求められるのではないかと思います。
派遣労働者の格差というのは、先ほども申しましたように、性別、常用型、登録型、派遣先に直接雇用された労働者との間に多重的に存在しています。常用型、登録型の格差解消の可能性を検討したとしても、労働契約法二十条はほとんど機能しないと思われます。それは、登録型という契約の特殊性から、将来にわたる職務であるとかあるいは人事ローテーションの枠組みの同一性といったようなことを問題にされてしまうと、格差の合理性を問う前提を欠いているとしか考えられない、そういった労働形態だからです。
しかし、職務関連性のある賃金につきましては、職務に必要な技能、仕事の困難度というのは同等であるのかどうかという視点から見直すことができますし、人事ローテーションの有無、範囲の違いが仕事の困難度に連動するかどうかという観点からの見直しはしていくべきだと思いますし、また、格差はワーク・ライフ・バランスへの配慮の欠如によって生じていないかどうかということが問われていくべきだと考えます。そして、就労・生活支援のための賃金であるとかあるいは福利厚生については同一の権利が認められてしかるべきだというふうに考えます。
スライドの四十一に、派遣先社員との均等・均衡処遇に必要な法制度として踏まえるべき基本というものを示しておきました。先ほど、均衡ということを入れることについての意義というのがありましたけれども、格差が不合理であるという場合に、どれほど不合理であるのかと、その程度を勘案して柔軟に判断していくということも必要な観点なのではないかと私は考えております。
そして、まず第一に、派遣社員であることを理由とする不合理な格差、取扱いの禁止を明確にすべきです。これぐらい何らかの形で法制化するということが緊急にできないものであろうかというふうに疑問に思っているところですが、この禁止というのは、派遣受入れから就労の継続、終了、そして賃金等待遇上の取扱いの全てが対象にされるべきものでありますし、それらの責任は派遣先、派遣元に、両者に義務付けられるべきであると考えます。
第二番目に、合理性判断の枠組みとしては、少なくとも以下の差別を取り除く観点が必要だと思います。一つは、職務の同価値性判断というものを前提にするということ。二つは、人事ローテーションの有無、範囲は、職務との関連性、合理的関連性といいますか、そして同価値性、それから合理的配慮の観点から検討が加えられるべきだということです。
そして三番目に、使用者側に説明義務、主張立証責任を負わせるということだと思います。合理性の主張立証責任は、対象となる労働条件ごとに派遣先、派遣元の各責任主体がそれぞれ負担するというのが合理的であると考えます。そして、労使の取組を可能にする制度というものにこういった考え方をつなげていくということではないかと思います。
第四に、どこまで是正するかという問題があります。それが同一価値労働同一賃金であるのかどうかといったような問題につながっていくわけですけれども、比較対象者を誰にするのか、同一価値労働に対して同じ賃金を支払うという原則を是正義務の内容とするのか、是正するのは正社員の職務関連賃金だけなのかといったことをきちんと整理をしていく必要があると思います。
しかし、私は、比較対象者が存在しなくても、当該労働者が正社員だったら支給される賃金に是正するように契約内容を修正するという法制化というのは可能ではないかというふうに考えております。そういった方向で検討するということが求められていると思います。
是正に向けた設計図を描く上で、二〇〇八年のEU指令は参考に値するものだと思います。日本において形成されてきた派遣労働の位置、あるいは正規雇用の構造的な問題を踏まえて、制度改革を急いでいただきますようにお願いを申し上げます。
以上です。
議事録を読む 辰巳質問部分
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
まず、北口参考人にお伺いしますけれども、同一労働同一賃金、職務を実際に数値化するという試み、可視化の試み、非常にすばらしいと思って聞きました。様々な試行錯誤もあったと思うんですけれども、数値を見ますと、やはり非正規の方々が不当に賃金が低くなっているというのは明らかということでありました。
ただ、先ほどの質問と重複するところもあると思いますけれども、これを、実際に非正規の賃金を上げていこうということになりますと、生協などは非正規が七割というふうにも聞いておりますので、経営者の立場からしますと、なかなか賃金が、うわっと全体の賃金が上がってしまって大変になるということも出てくるのではないかというふうに思いますが、その辺りをどのように課題として乗り越えていくべきだとお考えでしょうか。
○参考人(北口明代君) ありがとうございます。
御承知のとおりに、日本の労働者の賃金って、もう一九九七年から下がり続けているという実態がまずあるということで、非正規の賃金を上げていくということが私は重要だというふうに思っていますが、今おっしゃったように、では原資の問題をどうするのかということもあるんですけれども、そのときに、今、日本は賃金だけに依存している社会だというふうに思うんですね。ヨーロッパはやっぱり賃金と社会保障の組合せで生活を支えるという構造になっているかと思います。
ですので、生協労連では、年収二百五十万円でも幸せに暮らせる社会の実現を目指そうということで、社会システム自体を在り方を変える、働くルール、それから賃金、税と税制、それから社会保障、教育・子育て、住宅、こういった六課題を見直しをしてやっていけばいいのではないかというようなことを今話合いを進めているところです。
生協の家計簿調査によれば、月収二十三万円の非正規のシングルマザーがいたんです。彼女の家計簿を見ていて、現在では五、六千円のマイナスなんですけれども、それを教育費ゼロ、消費税ゼロ、住宅費を補助した場合に大体三万から四万円の黒字になるということも出ていますので、やっぱり仕事賃金に移行していくという場合には社会保障の拡充ということを併せてやっていかなければならないのではないかというふうに考えています。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
続けて、中野参考人にお聞きしたいんですけれども、今回のいわゆる同一労働同一賃金法の中では、元々均等という言葉があって、修正案として均衡という言葉が入り込んできたと。このことでいろいろ議論がされているわけでありますけれども、中野参考人はこの均衡という言葉が入ったことをどのように評価されていますでしょうかということを率直に聞きたいと思います。
○参考人(中野麻美君) ありがとうございます。
均衡というのは柔らかな均等というふうにも言われて、それからバランスを取るということも言われていて、ゼロか一〇〇かということではなくて、その格差の不合理性の程度によって何十%をカバーするかと、そういった考え方が成り立ち得るということだと思います。
私は、均衡処遇だけですと問題が大きい、余りにもファジーであるということですけれども、均等というものが基本になりながらそういった弾力的な解決をも射程に置くという意味では、私はそれもありかなというふうに思っております。
○辰巳孝太郎君 続けて、中野参考人にお聞きしたいんですけれども、今回の法案の中にも、いわゆる均等待遇とする基準として、職務が同じということに加えて、人材活用の仕組みが同じ、責任が同じという基準というのが示されております。
その人材活用の仕組みの中身でいいますと、転勤があるというようなことだと思うんですけれども、このケースを派遣労働者に置き換えてみた場合、実際問題として、派遣労働者が今一つの事業所に働いていて別のところに派遣されたりとか、そういうことがあり得るのかと。つまり、法制上特定はしてはならないということになりますから、この人材活用というのを今の法案に入れてしまうと、これが本当に合理性の判断のときに、派遣労働者は転勤することがないんだから、これはマイナス評価でいいということにつながらないかなということを私心配しているんですけれども、その辺のことはどう見ておられますでしょうか。
○参考人(中野麻美君) ありがとうございます。
まず、格差の場合に、常用型と登録型の間の格差を論じる観点と、それと派遣先の労働者と派遣労働者との格差を論じる観点と、それは違ってくると思います。
ただ、二つの側面で共通するのは、転勤の可能性というものがその人が従事する職務の困難度というものを規定するのかどうか、つまり合理的に関連するのかどうかという観点からきちんと検討していく必要があるだろうと。そのために職務評価を示しておいたわけですけれども、一般的な固定的な観念からしますと、転勤の幅というのは処理できる仕事の困難度を規定するというふうに言われていますけれども、必ずしもそうではないという結果が出ておりますので、それがどうなのかということで検討する必要があると思います。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございます。
続けて、中野参考人にお聞きをしたいんですけれども、今政府は、女性の活躍ということを推進しているというふうに言っております。一方で、日本経団連の方は、女性の活躍推進というのはこれは企業の競争力を左右するもので、経営戦略、日本経済の持続的な発展を可能にするための成長戦略そのものだという立場、位置付けをしております。
経済界の立場は明確なんですけれども、今回、労働者派遣法改定ということが審議されておりますけれども、一方で、派遣のニーズがあるというような話もありますが、この今回の改定が女性の活躍ということに資するのかどうかということを中野参考人の御意見を聞きたいと思います。
○参考人(中野麻美君) ありがとうございます。
まず、活躍するためにはその前提があるということをきちんと踏まえるべきだと。それは今日の参考人の方々の意見からも明白だろうと思います。人格的な尊厳というものをどれだけ確保できるかということで、私も四つのメルクマールを示しておきましたけれども、そういったことが満たされているのかどうかということがまず検証されるべきだというふうに思います。
また、今回の労働者派遣法ですけれども、懸念されるのは、これまで女性たちが占めてきた職務分野で正規労働とそれから派遣労働者との関係が競合関係に立つということが非常に多くなるだろうというふうに考えられて、女性の正規社員が常用代替によって追われていくという関係が促進される可能性があるといいますか、そういう危険性があるというふうには思っております。ですから、それをどのように阻止するのかといいますか、食い止めていくのかということが大きな課題だと思います。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。終わります。
まず、北口参考人にお伺いしますけれども、同一労働同一賃金、職務を実際に数値化するという試み、可視化の試み、非常にすばらしいと思って聞きました。様々な試行錯誤もあったと思うんですけれども、数値を見ますと、やはり非正規の方々が不当に賃金が低くなっているというのは明らかということでありました。
ただ、先ほどの質問と重複するところもあると思いますけれども、これを、実際に非正規の賃金を上げていこうということになりますと、生協などは非正規が七割というふうにも聞いておりますので、経営者の立場からしますと、なかなか賃金が、うわっと全体の賃金が上がってしまって大変になるということも出てくるのではないかというふうに思いますが、その辺りをどのように課題として乗り越えていくべきだとお考えでしょうか。
○参考人(北口明代君) ありがとうございます。
御承知のとおりに、日本の労働者の賃金って、もう一九九七年から下がり続けているという実態がまずあるということで、非正規の賃金を上げていくということが私は重要だというふうに思っていますが、今おっしゃったように、では原資の問題をどうするのかということもあるんですけれども、そのときに、今、日本は賃金だけに依存している社会だというふうに思うんですね。ヨーロッパはやっぱり賃金と社会保障の組合せで生活を支えるという構造になっているかと思います。
ですので、生協労連では、年収二百五十万円でも幸せに暮らせる社会の実現を目指そうということで、社会システム自体を在り方を変える、働くルール、それから賃金、税と税制、それから社会保障、教育・子育て、住宅、こういった六課題を見直しをしてやっていけばいいのではないかというようなことを今話合いを進めているところです。
生協の家計簿調査によれば、月収二十三万円の非正規のシングルマザーがいたんです。彼女の家計簿を見ていて、現在では五、六千円のマイナスなんですけれども、それを教育費ゼロ、消費税ゼロ、住宅費を補助した場合に大体三万から四万円の黒字になるということも出ていますので、やっぱり仕事賃金に移行していくという場合には社会保障の拡充ということを併せてやっていかなければならないのではないかというふうに考えています。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
続けて、中野参考人にお聞きしたいんですけれども、今回のいわゆる同一労働同一賃金法の中では、元々均等という言葉があって、修正案として均衡という言葉が入り込んできたと。このことでいろいろ議論がされているわけでありますけれども、中野参考人はこの均衡という言葉が入ったことをどのように評価されていますでしょうかということを率直に聞きたいと思います。
○参考人(中野麻美君) ありがとうございます。
均衡というのは柔らかな均等というふうにも言われて、それからバランスを取るということも言われていて、ゼロか一〇〇かということではなくて、その格差の不合理性の程度によって何十%をカバーするかと、そういった考え方が成り立ち得るということだと思います。
私は、均衡処遇だけですと問題が大きい、余りにもファジーであるということですけれども、均等というものが基本になりながらそういった弾力的な解決をも射程に置くという意味では、私はそれもありかなというふうに思っております。
○辰巳孝太郎君 続けて、中野参考人にお聞きしたいんですけれども、今回の法案の中にも、いわゆる均等待遇とする基準として、職務が同じということに加えて、人材活用の仕組みが同じ、責任が同じという基準というのが示されております。
その人材活用の仕組みの中身でいいますと、転勤があるというようなことだと思うんですけれども、このケースを派遣労働者に置き換えてみた場合、実際問題として、派遣労働者が今一つの事業所に働いていて別のところに派遣されたりとか、そういうことがあり得るのかと。つまり、法制上特定はしてはならないということになりますから、この人材活用というのを今の法案に入れてしまうと、これが本当に合理性の判断のときに、派遣労働者は転勤することがないんだから、これはマイナス評価でいいということにつながらないかなということを私心配しているんですけれども、その辺のことはどう見ておられますでしょうか。
○参考人(中野麻美君) ありがとうございます。
まず、格差の場合に、常用型と登録型の間の格差を論じる観点と、それと派遣先の労働者と派遣労働者との格差を論じる観点と、それは違ってくると思います。
ただ、二つの側面で共通するのは、転勤の可能性というものがその人が従事する職務の困難度というものを規定するのかどうか、つまり合理的に関連するのかどうかという観点からきちんと検討していく必要があるだろうと。そのために職務評価を示しておいたわけですけれども、一般的な固定的な観念からしますと、転勤の幅というのは処理できる仕事の困難度を規定するというふうに言われていますけれども、必ずしもそうではないという結果が出ておりますので、それがどうなのかということで検討する必要があると思います。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございます。
続けて、中野参考人にお聞きをしたいんですけれども、今政府は、女性の活躍ということを推進しているというふうに言っております。一方で、日本経団連の方は、女性の活躍推進というのはこれは企業の競争力を左右するもので、経営戦略、日本経済の持続的な発展を可能にするための成長戦略そのものだという立場、位置付けをしております。
経済界の立場は明確なんですけれども、今回、労働者派遣法改定ということが審議されておりますけれども、一方で、派遣のニーズがあるというような話もありますが、この今回の改定が女性の活躍ということに資するのかどうかということを中野参考人の御意見を聞きたいと思います。
○参考人(中野麻美君) ありがとうございます。
まず、活躍するためにはその前提があるということをきちんと踏まえるべきだと。それは今日の参考人の方々の意見からも明白だろうと思います。人格的な尊厳というものをどれだけ確保できるかということで、私も四つのメルクマールを示しておきましたけれども、そういったことが満たされているのかどうかということがまず検証されるべきだというふうに思います。
また、今回の労働者派遣法ですけれども、懸念されるのは、これまで女性たちが占めてきた職務分野で正規労働とそれから派遣労働者との関係が競合関係に立つということが非常に多くなるだろうというふうに考えられて、女性の正規社員が常用代替によって追われていくという関係が促進される可能性があるといいますか、そういう危険性があるというふうには思っております。ですから、それをどのように阻止するのかといいますか、食い止めていくのかということが大きな課題だと思います。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。終わります。