国際連帯税は実現可能
参院政府開発援助(ODA)特別委員会は2月28日、ODAの課題と今後のあり方についての参考人質疑を行いました。
日本共産党の辰巳孝太郎議員は、先進国の責任と開発援助の課題について質問。持続可能な発展を目指す非政府組織(NGO)など約100団体が参加する一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)の稲場雅紀業務執行理事は、「税と社会保障・財政政策についてJICA(独立行政法人国際協力機構)の専門的能力を強化するなど、貧困をなくす能力の高い政府機関を育てるODAが求められる」と主張しました。
辰巳氏は、グローバル・プラットフォーム企業(世界的規模で事業、生産基盤を有する企業)が国境に関係なく収益を上げる一方、国単位で行われている社会保障などの再分配で格差が拡大しているとして、国際連帯税など国境を超えた再分配について質問。稲場氏は、「グローバルに公的資金をどうつくっていくかというのが国際連帯税の発想だ。お金の移動を追跡する技術の発達により、国際連帯税はより実現可能になってきている」と述べました。
2019年3月6日(水)赤旗より転載
議事録を読む
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
四人の参考人の方々、貴重な御意見、本当にありがとうございました。
まず、稲場参考人にお聞きをしたいんですが、MDGsからSDGsということで、今日の参考文献の中にも書かれていることなんですけれども、一つは、元々MDGsにあった先進国の責任ということで、共通だが差異のある責任という概念があったんだけれども、今回SDGsになった過程でそれが非常に一部に押し込められて、そういう概念が前面には出ずに、むしろ、先進国の責任というものが一つ後退をして、全体の共有された責任という概念に取り仕切られたということがあるというお話をされておりますが、このことの影響ですね、このことのSDGsに与えた影響というのは具体的にはどのようなものなのかということをまずお聞きしたいと思います。
○参考人(稲場雅紀君) ありがとうございます。
私の申し上げた、特にこのCBDR、いわゆる共通だが差異ある責任という概念は、これは基本的には気候変動を中心とした概念でございまして、たくさんCO2を出してきた国はたくさん責任を取るべきだと。逆に、ちょっとしか出していない例えばアフリカのような国々は、いわゆる責任の取り方は共通だけれども、たくさん責任を取る必要はない。こういう形で、いわゆる歴史的な責任を果たすという文脈で責任というのを使っていたわけですね。
ところが、SDGsの交渉の文脈の中では、特に先進国がこのCBDRの持込みには断固反対だということで、前向きのいわゆるシェアードレスポンシビリティー、これはどちらかというと責任というよりは善意とかやる気みたいなものなんですけれども、いわゆるSDGs達成のためのやる気みたいな話になっていったわけですね。
ここで一つありますのは、一つは、これまで先進国はGDPの〇・七%をODAに出さなきゃいけないという、そういった目標があったわけですけれども、これはまだあるんですが、非常にもう今これ言う人はほとんど少なくなっています。一方で、途上国の方が経済成長をしていくことによってどんどんいわゆる援助から自立をせよということで、自立というのが一つのキーワードになっておるわけなんですね。
この中で一番大事なのは、この自立をしていく中で、一番貧しい層だとか少数民族であるとか、あるいは社会的な厳しい状況にある例えばLGBTだとか、こういう人たちに対して今まで援助でやったところがどんどんなくなっていって彼らが取り残されてしまう、こういったことが本当に各地で起こっているということなんですね。この辺りどうするのか。
さらには、私が申し上げたように、現状ではグローバルな収益構造に対して再分配は国内、全て、何というんでしょう、国民国家に回収されるという形になっています。お金がどんどんそちらで痩せ細る。こういう中で、いわゆる自立という言葉も、本当にそれは自立ということだけでいいのかということはあると思うんですね。
ですので、私どもとしまして、私の提言の中では、貧困をなくす、能力の高い政府機関を育てるODAということで、ちゃんと再分配ができる政府というものをきちんとつくる、これが途上国において一番優先されることだということを申し上げておるわけでございます。
そういった意味合いにおいて、一つは、この再分配機能が痩せ細るというグローバルな状況に対してどう立ち向かうのかということが、SDGs時代において援助に一番求められることかなというふうに思っておるところです。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございます。
今、再分配という話があったわけなんですが、ソサエティー五・〇、AI社会とか、そういう科学技術イノベーションというものが不可避な状況の下で、一部のプラットフォーマー、一部のグローバルな企業というものがいろんなところで利益を上げるんだけれども、租税回避という点でどこにも配分がされない、収益はグローバルで分配はローカルであると。この課題というのが一つあるわけですよね。日本も国際的なBEPSどうするのかというところでいろんな議論はしているんですけれども、なかなか目に見えた前進ということにはなっていない。これ、非常に大きな課題だと思っているんです。
そこで、じゃ、収益はグローバル、分配はローカル、税金を取るのはもちろん国ごとですけれども、文献拝見しておりますと、国際連帯税というものも実はこのSDGsの中には非常に後退をしてしまっているんじゃないかということなんですが、この国際連帯税についての構想ですね、これについて稲場参考人の御意見とかあれば是非教えてください。
○参考人(稲場雅紀君) 簡潔に進めさせていただきます。
一つは、先ほどおっしゃったBEPSですね、やはりこれはG20、そしてOECDで検討されている。いわゆるグローバルに収益を上げて、それをもうかった国に還元しないというこの在り方をどのように規制するのかということに関しましては、これは実際OECDでしっかり議論がだんだんされてはいるんですね。これを具体的にどういうふうにやっていくのかということが非常に大事だというふうに思います。そういう形でいわゆる国内の公的資金を充実させていくという方向性が一つ。
あともう一つは、グローバル化に対応してグローバルに公的資金をどうつくっていくのかというのが国際連帯税の発想であります。例えば、現状では、逆に言うと、フィンテックというような形でいわゆるお金の移動をトレースする技術というのはどんどん発達しているわけですね。それを考えますと、実は国際連帯税というのはより実現可能になってきているというふうに言えると思います。
ですから、そういった意味において、このグローバル化の文脈、デジタル経済の文脈の中で、どのように新しい技術を用いて国際的に公的資金をつくり出していくのかということが国際連帯税の非常に大きな課題だと思うんですね。
そういった意味合いに関しましては、現状、実際、今の外務大臣、河野外務大臣も国際連帯税推進すべきということをおっしゃっておりますが、これを更に進めて、どのような形で、航空券連帯税にとどまらず、どういう形で国際連帯税をより大きな形で国際的に公的資金をつくっていく、システムとしてつくっていくのかということに関しては、実は新しい技術というものをどんどん使うべきだなというふうに私自身は思っているところでございます。
○辰巳孝太郎君 もう一点だけ最後にお聞かせください。
日本政府がアクションプラン二〇一八ということで三つほど掲げているんですけれども、そのうちの三つ目に、SDGの担い手として次世代、女性のエンパワーメントというのが掲げられております。これは全体のSDGsということではなくて、この今、日本の課題として、日本社会の課題として、LGBTやあるいはマイノリティー問題、このエンパワーメントとか権利の状況とか、是非、稲場さんの、今、日本の社会の状況、抱えている問題とか課題とか、もしあれば教えてください。
○参考人(稲場雅紀君) ありがとうございます。
一つ申し上げますと、一番大事なのは、民主主義の徹底ということが大事なのかなと。参加型民主主義の徹底、例えば女性、若者、こういった人たちが政策決定の場にしっかり表現ができるということが大事なのかなというふうに思います。
というのも、先ほど梅本先生がおっしゃられた、北九州の公害を克服する上で一番最初に声を上げたのは婦人会であったというようなお話があったと思うんですね。これ、婦人会が声を上げられないようなシステムであれば、そもそも公害を克服する話にならなくて、その結果、PM二・五がどんどん流出するというあの特定の国のような話になっていくわけですね。そういう意味で考えると、いかに人々がちゃんと声を上げ、そして民主主義の形で政策にしっかり自分たちの意見をインプットできるのかと。この民主主義が辛うじてあり、三権分立が辛うじてあったがゆえに、我が国はあの公害を克服できたというふうに思っておるわけですね。
そういう意味合いにおいては、これからも実際に参加型民主主義というものを、しっかり若者そして女性というようなところにしっかり焦点を当てて、そこを保障するということがSDGs時代において取り残さない社会をつくっていく上では非常に大事だというふうに思っています。そういった意味において、民主主義の徹底ということを是非、これはゴール十六に書いてあるんですね、そのことが。ですので、その点を是非お願いしたいなというふうに思っておるところです。
○辰巳孝太郎君 時間が来たので終わりますが、ほかの先生方も、時間の都合で聞けませんでしたが、今日は本当にありがとうございました。
四人の参考人の方々、貴重な御意見、本当にありがとうございました。
まず、稲場参考人にお聞きをしたいんですが、MDGsからSDGsということで、今日の参考文献の中にも書かれていることなんですけれども、一つは、元々MDGsにあった先進国の責任ということで、共通だが差異のある責任という概念があったんだけれども、今回SDGsになった過程でそれが非常に一部に押し込められて、そういう概念が前面には出ずに、むしろ、先進国の責任というものが一つ後退をして、全体の共有された責任という概念に取り仕切られたということがあるというお話をされておりますが、このことの影響ですね、このことのSDGsに与えた影響というのは具体的にはどのようなものなのかということをまずお聞きしたいと思います。
○参考人(稲場雅紀君) ありがとうございます。
私の申し上げた、特にこのCBDR、いわゆる共通だが差異ある責任という概念は、これは基本的には気候変動を中心とした概念でございまして、たくさんCO2を出してきた国はたくさん責任を取るべきだと。逆に、ちょっとしか出していない例えばアフリカのような国々は、いわゆる責任の取り方は共通だけれども、たくさん責任を取る必要はない。こういう形で、いわゆる歴史的な責任を果たすという文脈で責任というのを使っていたわけですね。
ところが、SDGsの交渉の文脈の中では、特に先進国がこのCBDRの持込みには断固反対だということで、前向きのいわゆるシェアードレスポンシビリティー、これはどちらかというと責任というよりは善意とかやる気みたいなものなんですけれども、いわゆるSDGs達成のためのやる気みたいな話になっていったわけですね。
ここで一つありますのは、一つは、これまで先進国はGDPの〇・七%をODAに出さなきゃいけないという、そういった目標があったわけですけれども、これはまだあるんですが、非常にもう今これ言う人はほとんど少なくなっています。一方で、途上国の方が経済成長をしていくことによってどんどんいわゆる援助から自立をせよということで、自立というのが一つのキーワードになっておるわけなんですね。
この中で一番大事なのは、この自立をしていく中で、一番貧しい層だとか少数民族であるとか、あるいは社会的な厳しい状況にある例えばLGBTだとか、こういう人たちに対して今まで援助でやったところがどんどんなくなっていって彼らが取り残されてしまう、こういったことが本当に各地で起こっているということなんですね。この辺りどうするのか。
さらには、私が申し上げたように、現状ではグローバルな収益構造に対して再分配は国内、全て、何というんでしょう、国民国家に回収されるという形になっています。お金がどんどんそちらで痩せ細る。こういう中で、いわゆる自立という言葉も、本当にそれは自立ということだけでいいのかということはあると思うんですね。
ですので、私どもとしまして、私の提言の中では、貧困をなくす、能力の高い政府機関を育てるODAということで、ちゃんと再分配ができる政府というものをきちんとつくる、これが途上国において一番優先されることだということを申し上げておるわけでございます。
そういった意味合いにおいて、一つは、この再分配機能が痩せ細るというグローバルな状況に対してどう立ち向かうのかということが、SDGs時代において援助に一番求められることかなというふうに思っておるところです。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございます。
今、再分配という話があったわけなんですが、ソサエティー五・〇、AI社会とか、そういう科学技術イノベーションというものが不可避な状況の下で、一部のプラットフォーマー、一部のグローバルな企業というものがいろんなところで利益を上げるんだけれども、租税回避という点でどこにも配分がされない、収益はグローバルで分配はローカルであると。この課題というのが一つあるわけですよね。日本も国際的なBEPSどうするのかというところでいろんな議論はしているんですけれども、なかなか目に見えた前進ということにはなっていない。これ、非常に大きな課題だと思っているんです。
そこで、じゃ、収益はグローバル、分配はローカル、税金を取るのはもちろん国ごとですけれども、文献拝見しておりますと、国際連帯税というものも実はこのSDGsの中には非常に後退をしてしまっているんじゃないかということなんですが、この国際連帯税についての構想ですね、これについて稲場参考人の御意見とかあれば是非教えてください。
○参考人(稲場雅紀君) 簡潔に進めさせていただきます。
一つは、先ほどおっしゃったBEPSですね、やはりこれはG20、そしてOECDで検討されている。いわゆるグローバルに収益を上げて、それをもうかった国に還元しないというこの在り方をどのように規制するのかということに関しましては、これは実際OECDでしっかり議論がだんだんされてはいるんですね。これを具体的にどういうふうにやっていくのかということが非常に大事だというふうに思います。そういう形でいわゆる国内の公的資金を充実させていくという方向性が一つ。
あともう一つは、グローバル化に対応してグローバルに公的資金をどうつくっていくのかというのが国際連帯税の発想であります。例えば、現状では、逆に言うと、フィンテックというような形でいわゆるお金の移動をトレースする技術というのはどんどん発達しているわけですね。それを考えますと、実は国際連帯税というのはより実現可能になってきているというふうに言えると思います。
ですから、そういった意味において、このグローバル化の文脈、デジタル経済の文脈の中で、どのように新しい技術を用いて国際的に公的資金をつくり出していくのかということが国際連帯税の非常に大きな課題だと思うんですね。
そういった意味合いに関しましては、現状、実際、今の外務大臣、河野外務大臣も国際連帯税推進すべきということをおっしゃっておりますが、これを更に進めて、どのような形で、航空券連帯税にとどまらず、どういう形で国際連帯税をより大きな形で国際的に公的資金をつくっていく、システムとしてつくっていくのかということに関しては、実は新しい技術というものをどんどん使うべきだなというふうに私自身は思っているところでございます。
○辰巳孝太郎君 もう一点だけ最後にお聞かせください。
日本政府がアクションプラン二〇一八ということで三つほど掲げているんですけれども、そのうちの三つ目に、SDGの担い手として次世代、女性のエンパワーメントというのが掲げられております。これは全体のSDGsということではなくて、この今、日本の課題として、日本社会の課題として、LGBTやあるいはマイノリティー問題、このエンパワーメントとか権利の状況とか、是非、稲場さんの、今、日本の社会の状況、抱えている問題とか課題とか、もしあれば教えてください。
○参考人(稲場雅紀君) ありがとうございます。
一つ申し上げますと、一番大事なのは、民主主義の徹底ということが大事なのかなと。参加型民主主義の徹底、例えば女性、若者、こういった人たちが政策決定の場にしっかり表現ができるということが大事なのかなというふうに思います。
というのも、先ほど梅本先生がおっしゃられた、北九州の公害を克服する上で一番最初に声を上げたのは婦人会であったというようなお話があったと思うんですね。これ、婦人会が声を上げられないようなシステムであれば、そもそも公害を克服する話にならなくて、その結果、PM二・五がどんどん流出するというあの特定の国のような話になっていくわけですね。そういう意味で考えると、いかに人々がちゃんと声を上げ、そして民主主義の形で政策にしっかり自分たちの意見をインプットできるのかと。この民主主義が辛うじてあり、三権分立が辛うじてあったがゆえに、我が国はあの公害を克服できたというふうに思っておるわけですね。
そういう意味合いにおいては、これからも実際に参加型民主主義というものを、しっかり若者そして女性というようなところにしっかり焦点を当てて、そこを保障するということがSDGs時代において取り残さない社会をつくっていく上では非常に大事だというふうに思っています。そういった意味において、民主主義の徹底ということを是非、これはゴール十六に書いてあるんですね、そのことが。ですので、その点を是非お願いしたいなというふうに思っておるところです。
○辰巳孝太郎君 時間が来たので終わりますが、ほかの先生方も、時間の都合で聞けませんでしたが、今日は本当にありがとうございました。