土砂災害防止法改正案の本会議質問に立ちました
以下、会議録を掲載します。
(2014年11月5日参議院本会議)
○議長(山崎正昭君) 辰已孝太郎君。
〔辰已孝太郎君登壇、拍手〕
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。
まず、広島を始め、相次ぐ土砂災害、また御嶽山で犠牲になられた方々へ心から哀悼の意を表しますとともに、全ての被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。あわせて、過酷な状況の下で救助・捜索活動に当たった消防、警察、自衛隊など、関係者の皆さんに敬意を表します。
私は、日本共産党を代表して、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、関係大臣に質問をいたします。
今年八月、広島市で起こった土砂災害により七十四名もの方がお亡くなりになりました。これほどの大惨事を引き起こした根本原因は、土石流災害の危険度が高い土地に家を建てることが規制されないまま放置されてきたことにあります。なぜ、災害の危険区域に公営住宅を含む住宅の建設が認められてきたのでしょうか。国民の安全を守るために、災害の危険がある地域では開発行為そのものを規制するという政策転換こそ求められているのではありませんか。国土交通大臣の答弁を求めます。
今、広島の被災地では、元の家に戻って安全なのか、このまま住み続けることができるのか、生活再建への不安が訴えられています。安全性の判定は国、行政の責任です。被災者の切実な思いにどう応えるのか、お答えください。
法案の具体的内容について伺います。
第一に、警戒区域指定の前提となる基礎調査についてです。
土砂災害防止法が二〇〇〇年に制定されてから既に十四年が経過しています。しかし、二〇〇二年に公表された全国の土砂災害危険箇所約五十二万五千か所のうち、基礎調査の完了は七三%、区域指定の完了は六八%にとどまっています。基礎調査が終了している都道府県は十三県で、そのうち警戒区域の指定が完了しているのは六県、特別警戒区域の指定も完了しているのは三県のみです。
法案は、都道府県に対し、基礎調査の実施の促進と結果の公表を義務付けるとしています。法改正を受け、国は都道府県に計画策定を求め、その進捗状況を把握することで調査や指定を進めるということですけれども、それだけで国の責任を果たしたことになるでしょうか。
これまで基礎調査が遅れてきた最大の原因は、人材と財源が足りないからであり、抜本的な支援の強化こそ求められているのです。土木事務所など土砂災害対策の職員を確保し、基礎調査と区域指定を進めるために、現在、政令で三分の一とされている基礎調査の補助率を大幅に引き上げることが緊急に必要です。広島県議会、北海道議会を始め地方議会から、交付金の拡充、国庫負担の引上げを求める意見書が提出をされています。これらを政府は真剣に受け止めるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。
次に、災害時要援護者関連施設への対応について伺います。
法案は、土砂災害警戒区域の指定があった場合、高齢者、障害者、乳幼児など防災上の配慮を要する者が利用する施設について、市町村防災計画に、より具体的に位置付けることを規定しています。
これらの施設は、これまでも繰り返し土砂災害の被害を受けてきました。一九九八年八月には、福島県西郷村の救護施設で土砂災害により五名が犠牲となりました。当時の建設省や厚生省などが全国の施設の緊急点検を行い、砂防事業の実施等の対策を求めました。
その十一年後の二〇〇九年七月には、山口県防府市の特養ホームを土石流が直撃し、七名が犠牲になりました。この災害を受け行われた調査の結果、土砂災害のおそれのある要援護者関連施設が一万三千七百三十施設あることが公表されました。ところが、このうちの半分以上、七千百二十施設が砂防関係施設が未整備で、かつ土砂災害警戒区域の指定もされていません。
さらに、これらの施設の対策がどれだけ進んだのか国として把握していないことが衆議院での我が党議員の質問で明らかになりました。危険な施設の対策状況を把握せずに土砂災害から命を守る国の責任が果たせるでしょうか。
広島で土砂災害が発生して以降、今もなおこうした施設が警戒区域や特別警戒区域内に立地している実態が次々と明らかになっています。東京都では特養ホームなど三十九施設のほか、小中高校二十二校、大学など二校。広島県では市営住宅や保育所など、京都府では災害時に司令塔となるべき市町村の本庁舎があります。
現時点での要援護者関連施設の立地状況を早急に把握し、必要な対策を講じるべきではありませんか。お答えください。
あわせて、全ての住民の安全を守るために、必要な砂防堰堤や擁壁などの整備を計画的に進めるべきです。財源措置の拡充を求めます。お答えください。
移転する住民への支援強化も重要です。
現在、特別警戒区域の既存不適格住宅を対象に、移転費や新たな住宅ローンの利子を補給する補助制度がありますが、その実績は十三年間で六十一戸にとどまっています。広島では、特別警戒区域として指定される予定であった地域を超えて被害が広がりました。警戒区域も含めて、安全な場所へ移転したいという住民の思いを支援する施策を抜本的に拡充すべきです。答弁を求めます。
次に、宅地販売における説明義務についてお聞きします。
そもそも、危険な場所に住宅を立地させないことがこの度の災害の重要な教訓です。そのために、住宅などを販売する宅建業者に対し、土砂災害など災害の危険を説明するよう法律で義務付けるべきです。警戒区域、特別警戒区域に指定された場合だけでなく、危険箇所として認識されている地域についても説明すること、警戒区域については避難計画の有無や概要なども重要事項として説明することを明確に規定すべきではありませんか。お答えください。
最後に、山林の管理保全について伺います。
戦後、杉やヒノキの植林が国策で進められ、根が浅い山林が全国各地に広がりました。その後の木材輸入自由化によって国内の木材需要が減少し、山林が間伐されないまま放置されており、土砂災害や崩落の原因となっています。
問題は、砂防堰堤や治山ダムなどをどれだけ造っても、山林そのものの再生にはならないということです。土砂災害防止のためにも山林の再生が不可欠であり、そのための施策を抜本的に強化することが必要ではありませんか。農林水産大臣、お答えください。
そもそも、二〇〇〇年に土砂災害防止法が制定された目的は、土砂災害の危険がある区域を指定し、指定された区域での土地利用の規制と安全な避難体制を確立することにより、国民の生命及び身体を保護するということであります。土砂災害により尊い命が失われる事態を繰り返さないために、これまで述べてきた人材と財源の確保の責任を国が果たし切ることを求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣太田昭宏君登壇、拍手〕
○国務大臣(太田昭宏君) 辰已孝太郎議員の御質問にお答えいたします。
まず、災害の危険がある地域での開発行為の規制についてお尋ねがございました。
都市計画法の開発許可制度では、土砂災害特別警戒区域が指定されている場合には、原則として開発行為を許可してはならないこととされています。一方、今回の広島の被災地は、土砂災害防止法が制定される前の昭和四十年、五十年代に開発されたところが多く、また、警戒区域等の指定もされていなかったことから、規制の対象外となっていたと考えます。
今回の被災を踏まえ、まずは土砂災害警戒区域、特別警戒区域の指定促進が重要と認識しており、本法案において、基礎調査結果の公表の義務化などの措置により、その促進を図ることとしています。さらに、中長期的には、人口減少に対応したコンパクトシティー化を進めていく中で、災害の危険のあるエリアにはできるだけ人が住まないような町づくりを目指してまいります。
次に、広島市の被災地の安全性の判定についてお尋ねがございました。
被災地の安全性を判断する上で、特別警戒区域を早期に設定することが重要と考えています。特別警戒区域が指定されれば建築規制や特定開発行為の規制が行われることとなりますが、広島県に対し、その指定のための助言を行っているところです。今後とも、被災地で早期の生活再建が図られるよう支援してまいります。
次に、基礎調査等を進めるための財政支援についてお尋ねがございました。
基礎調査の経費については、都道府県に対して防災・安全交付金により支援を行ってまいります。その国費率の引上げについては、現行制度の下で既に基礎調査を完了した自治体とのバランスも踏まえ、慎重に検討する必要があると考えています。
次に、災害時要援護者関連施設の対策についてお尋ねがございました。
危険な区域内にあるこのような施設の実態を把握し、対策を講じていくことは重要であると認識しています。このため、災害時要援護者関連施設の立地状況やハード対策の実施状況について、国が都道府県と連携し把握することとしています。また、このような施設への情報伝達方法を定め、警戒避難体制の充実強化を図ってまいります。
次に、砂防堰堤等の整備に必要な財源措置についてお尋ねがございました。
砂防堰堤等の整備については、財政制約はありますが、災害時要援護者関連施設を含め、人命を守る効果が高い箇所等の優先順位を付けて、砂防堰堤の整備等を計画的に進められるよう、防災・安全交付金等により支援してまいります。
次に、移転を促進する施策についてお尋ねがございました。
がけ地近接等危険住宅移転事業は、これまで累計して約一万八千件という実績がありますが、土砂災害特別警戒区域のものは六十一件にとどまっています。今回の広島県の災害に鑑み、こうした事業が更に進むことが重要と考えており、十分な周知を図ってまいります。
次に、宅建業者に土砂災害等の危険性の説明を義務付けることについてお尋ねがございました。
宅地建物取引業法の重要事項説明の対象は、法令上の制限が掛かる区域や法令に基づき指定されている区域などに限定をされています。したがって、御指摘のような、危険箇所として認識されている地域や避難計画の有無、概要などについては重要事項説明の対象とすることになじまないと考えます。しかしながら、不動産の購入者に対し土砂災害の危険性に関する情報を提供することは重要と考えております。
このため、基礎調査結果が公表された場合には、取引判断に重要な影響を及ぼす事項として、不動産購入者に情報提供をすることが望ましい旨を宅建業者に指導してまいります。(拍手)
〔国務大臣西川公也君登壇、拍手〕
○国務大臣(西川公也君) 辰已孝太郎議員の御質問にお答えいたします。
土砂災害を防止するためには山林の再生が不可欠ではないかとのお尋ねがありました。
最近の山地災害が多発している状況に鑑み、森林の持つ土砂流出の防止などの機能を発揮させるため、適切な森林整備を行っていくことが重要であると認識しております。
このため、治山施設の整備による崩壊地の復旧に加え、間伐の実施等の健全な森林づくりを通じ、緑の国土強靱化に積極的に努めてまいります。(拍手)
○議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。