安全軽視の「白タク解禁」を許すな
日本共産党の辰巳孝太郎議員は23日の参院国土交通委員会で、国家戦略特区法改定で導入される観光客対象の自家用有償観光旅客運送事業は、安全を脅かす「白タク解禁」に道を開く規制緩和だと批判しました。
辰巳氏は、同運送事業が2種免許を必要とせず、通常のバス・タクシー事業よりも安全基準が緩和されると指摘。ドライバーの健康管理、飲酒チェックが通常の旅客運送事業よりも緩いことや兼業が可能で労働時間の管理ができないことを明らかにしました。
辰巳氏は、事業者の登録については運営協議会ではなく国家戦略特別区域会議が主導権を握ることになり「成長戦略」のために安全基準を緩和した事業が広がると追及。石井啓一国交相は「営利を目的としないことを前提としている」と言い訳に終始しました。
辰巳氏は「規制緩和が過密労働・安全軽視をもたらし、事故を起こしてきたのがこの間の教訓だ」と指摘。安全軽視の規制緩和はやめ、地域公共交通の予算増額こそ必要だと述べました。
2016年3月30日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
前回に引き続きまして、タクシーの規制緩和問題について聞きます。前回は、国交省の答弁では、特区の下で区域会議が主導権を握って運営協議会は骨抜きにされると、事業開始の意思決定もこの区域会議が行うということを国交省自身も認めました。これはまさに白タク解禁に道を開くものだと批判をさせていただきました。
今回の自家用有償旅客運送事業は、通常の運送事業よりも緩和された安全基準をそもそも認めております。これは、地域住民の足の確保のためのあくまで例外と、こういう位置付けでやっているわけでありまして、あくまで一般事業者との関係でいえば補完関係にあるのがこの自家用有償旅客運送ということであります。ところが、現在の運用では、申請の過程では地域の声を代表する運営協議会の合意が必要になっていますけれども、それもこの特区の下では必要なくなる、代わりに区域会議が決めると、こういうことであります。そこで、輸送の安全が本当にこれで保たれるのか、広がって保たれるのかということであります。安全確保といえば、やはりすなわちこれは労働条件に直結してくる、労働条件が安全に直結するということでありまして、ドライバーが健康で運行することが大前提であります。
そこで、実施主体がドライバーをどう管理していくのかということについて確認をいたします。当事業において、ドライバーは二種免許を取得する必要はありません。普通免許を持って講習さえ受ければ自家用で運転ができるということであります。
国交省に確認しますけれども、市町村やNPO等などの管理者が、乗車前にドライバーの健康のチェック、またドライバーが飲酒をしているかどうかのチェック、また労働時間の管理、どうやるのか、お答えください。
○政府参考人(藤井直樹君) お答えをいたします。
今委員御指摘の安全管理につきましては、この度の国家戦略特区における制度の中で自家用有償運送制度の活用を図るという形で、運行管理を行う主体がドライバーの安全運転についての確認を行います。これは具体的には、乗務をしようとする運転者に対して、疾病、疲労、飲酒その他の理由によって安全な運転ができないおそれの有無ということを具体的に確認をするということになっているところでございます。
○辰巳孝太郎君 それは対面で行うんでしょうか。
○政府参考人(藤井直樹君) 対面で行うということを原則としております。それができない場合、例えば、行き帰り、向こう側に、行き先に行ってしまって具体的に対面ということが運行管理の立場からできない場合には電話等でも行うということが認められております。なお、これにつきましては営業車においても同様でございます。
○辰巳孝太郎君 ですから、例外は認められているんですね。努力規定なんですよ、あくまで、対面でするというのは。努力規定でこれがやらなきゃいけないということになっているということであります。
安全の問題では、旅客の対象を広げたというのも今回重大だと私は思っております。特区の方針では、旅客の対象は誰でも、実質、観光客等となっていますから、ビジネス客も否定しないということを前回では答弁されていますから、誰でもよくなりました。つまり、不特定多数を運ぶことができるということになりました。
国交省は、この間、様々な規制緩和を求める声に対して、不特定多数の者の運送については、輸送の安全確保の観点から、バス・タクシー事業の許可を取得して行うべきであるという回答をしてまいりました。今回のこの特区での旅客の範囲の拡大というのは、これまでの答弁と矛盾するんじゃないですか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今回、国家戦略特区において認めようとしております制度につきましては、タクシー、バス、そういった事業用の自動車によるサービスができない、あるいはそのサービスが不十分である、そういった場合にその代替措置として自家用車を活用するということを申し述べているものでありまして、委員の御指摘のようなこれまでの私どものスタンスとの違いはないものと考えております。
○辰巳孝太郎君 代替措置だから構わないということでありますけれども、そのことについては少し後でやりましょう。
先ほど聞いたことでまだ回答をいただいていないんですが、労働時間の管理はどうなりますか。
○政府参考人(藤井直樹君) 自家用有償運送におきましては、運転手とそれを管理する運行主体との間に雇用関係があるということが必ずしも求められているわけではございません。運行責任の管理者、運行責任を管理をする者としては、ドライバーの運行時間、そういったものについての管理をしっかり行うと、そういった体系になっているものと理解をしております。
○辰巳孝太郎君 兼業は可能でしょうか。
○政府参考人(藤井直樹君) 兼業を特に禁じているものではございません。
○辰巳孝太郎君 そうなんですよ。兼業ができるんです。あくまでこの事業による労働時間の管理はできるかもしれないけれども、一般に仕事を持っている方が片手間で自家用運送、これ自分がやりたいといって名簿を登録してできるわけですよ。
これ、今トラックやバスの運転手の過密労働が事故を引き起こしているということで様々な問題出てきていますけれども、そういう問題は起こらないという保証はどこにあるんでしょうか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今回の国家戦略特区の制度におきましては、そういった地域における輸送供給が十分でないという、そういったことを前提として、それに代わる代替措置としての自家用車の活用を図ろうとするものでございます。そういった点で、運行頻度が元々十分でないがゆえに事業用の運送はできないということでございますし、今回の運送によってそれが非常に労働過多になるような状況というのはなかなか想定し難いのではないかというふうに考えております。
○辰巳孝太郎君 つまり、この特区制度によって、皆さんがおっしゃるように、観光客やビジネス客がたくさん来たとしても、ドライバーがたくさん必要になったとしても、その場合は自家用有償旅客運送という枠組みではなくて、いわゆる緑で認可をもらって営業することになると、そういうことでよろしいですか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今回の制度は、いわゆる事業用の輸送によることが困難であると、そういった場合に認められるものでありますので、今委員御指摘のように、将来的にそこにおいて十分な事業用の輸送サービスが供給された場合にはそもそもこの特区における輸送というものが不必要であると、そういうことになるものと考えております。
○辰巳孝太郎君 不必要であると判断するのは誰ですか。
○政府参考人(藤井直樹君) 一義的には、このサービスを新たに輸送しようとしている者、これは市町村ないしNPOその他の営利法人でありますけれども、これに対しては私どもが自家用有償運送制度の下で登録を行うということにしております。この登録につきましては二年の更新制ということになっておりますので、今申し上げたような考え方の下に、登録を更新するかどうかという判断は定期的になされるものと考えております。
○辰巳孝太郎君 登録を決定する又は登録を継続するというのは、区域会議ではなくて国交省がやるということですか。
○政府参考人(藤井直樹君) 制度的な詳細は、これから法律ができ、さらには下位の法令ができてきた段階でまた細部にわたって定まってくるものと考えておりますけれども、今、法案の下では、これを始めるときに区域会議での決定を求めるということになっていると存じております。
○辰巳孝太郎君 これまで国交省は、自家用有償旅客運送に関して、この登録に関しては既存事業者を意思決定から排除する仕組みは適切ではないというふうに答えてきましたね。
今回、登録に関してはまさに区域会議が主導権握ってやると。登録をもうやめるのか、更新するのか、これまだ設計が決まっていないということですけれども、区域会議はやらない、地域の運営協議会や地元の業者、ここがきちっと意思決定に加わるということでよろしいですね。決定ですから、協議じゃないですよ。
○政府参考人(藤井直樹君) 今回の制度の下では、こういった事業について国家戦略特区の区域会議での決定がなされるその前に、市町村、新しく今回の事業を始める主体、さらには関係する既存の交通事業者、こういった方々での協議ということを必ずその前に行うということを法案上求めているところでございます。ここで委員が御指摘になったような、まさに地域全体における交通ネットワークの在り方、あるいは既存の事業者と新しい事業を行おうとされる方の連携、こういったことが議論をされることになるものと考えております。
これにつきましては当初行われるということでありますけれども、まさにそういった調整というのをこの運行が開始した後も継続してやっていくということが持続的な交通ネットワークの確保ということに意味があると思っておりますので、そういった運用がなされるように、私どももしっかり運輸局その他を通じまして指導を行っていきたいと思っております。
○辰巳孝太郎君 今、結局、運営協議会の話はされませんでした。結局、協議した上で最終的に登録するのか継続するのか決めるのは区域会議だということなんですよ。
ここでの問題は、現行制度では地域の足がないから例外的に安全基準を緩和した自家用有償旅客運送をやるということなんです。ところが、今回の特区の制度の下ではそうじゃないんですよ。これは元々特区ですから、成長戦略のためにやるというのが大前提になるわけですね。だから、今回、成長戦略のために例外を認めていく、例外を広げていくということになるわけであります。大臣、こういう例外を広げていくことになるんです、特区は。これ、安全基準が緩和されたこの事業が広がるということは安全に直結する問題じゃないですか、どうですか。
○国務大臣(石井啓一君) 今回、国家戦略特区法の改正により新たに導入する特例措置は、あくまでもバス・タクシー事業者による旅客運送が困難な地域において、現在は地域住民を対象としている自家用有償旅客運送制度について、訪日外国人を始めとする観光客の輸送を主な目的とする活用を可能とするものであります。その実施主体は、現行の自家用有償旅客運送制度と同様に、市町村、NPO法人等の非営利の団体に限定をしており、営利を目的としないことを前提としております。
また、この特例の実施に当たっては、運行管理や車両整備等事故を未然に防止するための措置や、万一の事故の際に金銭面での補償にとどまらない責任ある対応が取れる体制の整備が不可欠であると考えております。
現行制度の下では、このような体制を整えているものを国土交通大臣が登録した上で自家用車による有償運送を認めているところでありまして、今回の自家用車の活用拡大についてもこの枠組みを前提としているところであります。これにより、安全、安心を確保しつつ、自家用車の活用の拡大を図ることができるものと考えております。
○辰巳孝太郎君 NPOだから、非営利だから安全は確保されるということにはならないわけであります。こういう経済論理優先主義が安全運行や安全運行に必要な当然の労働条件を切り下げて、その結果、旅客の安全が脅かされることになったというのがこの二十年来の規制緩和の我々の教訓じゃないですか。
既に、保険業界動いていますよ。東京海上日動保険は、自家用車を使った地域住民の送り迎えサービスを提供する自治体やNPO法人向けの自動車保険を七日取り扱うことを決めております。東京海上はこう言っております。今回、特区の方針決定でライドシェアは市場拡大が見込まれ、東京海上日動は登録する事業者が今後増える見込みとしていると。まさに、もうけの対象にこの事業をやっていこうというのが今、企業、財界の動きだと言わなければなりません。
こういう白タク解禁に道を開くよりも、今国交省の事業で行っている地域公共交通確保維持改善事業、これ過疎地域等におけるバスやデマンドタクシーの運行補助というのがあるわけです。しかし、これ年間三十億円ほどしかないわけですね。このタクシーの運転手さんは二種免許の保有の運転、ちゃんと義務付けられているわけであります。
安全軽視の規制緩和よりも、こういう予算をきちんと増額をして地域の足を守っていく国交行政にすべきだというふうに申し上げて、私の質問を終わります。