山下法務大臣の問責決議案に賛成の討論
2018年12月07日
7日に本会議で、入管法を強行しようとする山下法務大臣の問責決議案が出されました。
私が賛成討論に立ちました。議事録を以下に掲載します。
議事録を読む
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、山下貴司法務大臣問責決議案に断固賛成の立場から討論を行います。
問責決議に賛成する第一の理由は、大臣が法案審議の前提となる失踪技能実習生の聴取票を捏造して国会に説明をしたからであります。
政府は、この間、失踪する技能実習生について、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多いと説明し、調査結果でも、最低賃金以下で働かされているのは二十二名であると説明をしてきました。
ところが、聴取票の質問には、より高い賃金を求めてという項目がそもそも存在をしませんでした。そして、実際には、最低賃金以下で働かされていた実習生は実に七割近くに上り、月の残業が八十時間以上、つまり過労死ライン以上で働かされていた人は二百八十九名、約一割にも上っていたのです。
聴取票の結果を捏造して国会に報告した大臣は、辞任に値すると言わなければなりません。
個票からは、実習生が置かれている厳しい実態が更に明らかになりました。それは、ベトナム人実習生一千六十一人のうち九百三名、実に八五・一%が違法、不正な手数料を取られて来日していることが判明したのです。
そして、重大なのは、政府が今なお個票の提出を拒んでいることであります。プライバシーの箇所も黒塗りにされた個票をなぜ提出できないのか。なぜ人数が制限され、国会議員以外のスタッフ、秘書には書き写すことが許されないのか。審議妨害以外の何物でもありません。
大体、当該調査は国会決議の求めに応じて実施されたものであります。にもかかわらず、最後まで審議の土台となる聴取票の公開を拒むような人に大臣の資格はありません。
第二の理由は、実習制度が新制度と地続きであることを認めず、既存制度の問題の解消に背を向け続けてきたからであります。
新制度は技能実習生からの移行を前提とし、その八〇%からほぼ一〇〇%を見込んでいる業種が多数となっています。技能実習生の実態把握は審議の前提です。
野党合同ヒアリングで話してくれたある実習生は、段ボール工場で指を三本切断した後、受入れ企業から使い物にならないからと解雇通知を受けました。製紙工場で働いていた別の実習生は、残業代がたったの時給三百円。パワハラも受け、飛び降り自殺を図りました。建設作業員として働くはずだった別の実習生は、福島での除染作業に従事。作業に必要な教育は一切受けず、日本人には一万五千円ほどの日給が支給される作業を、彼は日給五千六百円でさせられていました。
恋愛も妊娠も禁止され、妊娠が分かった時点で中絶か帰国を迫られるという実態も明らかになりました。私が書き写した個票の中にも、妊娠がきっかけで失踪する人が含まれていました。
外国人労働者が人間として扱われずに物や材料扱いされている実態を覆い隠したい、政府が聴取票の公表を最後まで拒んだ最大の理由がここにあります。
許せないのは、これだけ苛烈な実態を知りながら、法務省は労働基準監督署などへの通報をまともに行わず、劣悪な労働環境やパワハラなどの人権侵害で苦しんでいる実習生たちに手を差し伸べることをしなかったことであります。
大体、大臣は、失踪は全体の数%、九割の実習生はまともに働いているなどと開き直りの説明をしてきました。しかし、それがもはや間違いであることは明白であります。人権侵害から失踪という形で避難できた人は氷山の一角であって、逃げることも声を上げることもできずに耐え忍んでいる実習生がまだたくさんいます。このことを突き付けられ、大臣は実習生に対する調査を指示せざるを得なくなりました。だったら、その調査を速やかに行い、事態を改善させるのが最優先です。法案を強行し、何が何でも四月から受け入れようなど、できるはずがないではありませんか。
新制度への移行を見込んでいるのは技能実習生だけではありません。技能実習生二十八万人を上回る三十二万人にも上る外国人留学生も新制度への移行を見込んでいます。彼らの置かれている実情は技能実習生と大きく重なります。それは、多額の借金をして来日するということです。
彼らは、コンビニ弁当工場、宅配便の仕分、深夜のホテルの清掃など、日本人がやらない仕事を、最賃に張り付き、パワハラが横行する職場であっても、週二十八時間の制限を超えて、ダブルワーク、トリプルワークで働いています。
実習生では職種に制限がありますが、留学生にはありません。企業にとって借金を返せず使い勝手がよい留学生を、現地ブローカーや一部の日本語学校、専門学校などが関与して人材ビジネスを繰り広げ、搾取をしているのです。政府は、こういう実態をまともに把握せず、安価な単純労働力として外国人を扱ってきただけでなく、資格外活動の制限緩和などの拡大をしようとしているわけであります。
それだけではありません。就労ビザを保有する外国人も搾取の対象となっています。今年、シャープ亀山工場で外国人労働者三千人が解雇される事態が起こりました。新制度では、電気・電子情報関連産業において、人手不足により五年間で四千七百人の外国人を受け入れるといいますが、三千人も雇い止めをしておいて、一体どこが人手不足というのでしょうか。結局、外国人労働者は、仕事がなくなれば切れる雇用の調整弁として、使い捨ての物扱いをされているのです。
大臣は、来年四月施行の理由を、半年遅れると万単位の外国人が帰ってしまうではないかと言いました。新制度の狙いが、劣悪な労働と差別的待遇で苦しんでいる彼らを引き続き搾取し続けるということではないでしょうか。これでは、日本が、選んでもらう国にも、美しい国にもなりようがありません。
人手不足をつくった原因は政府にもあります。新制度の下では、介護業で六万人の外国人を受け入れようとしています。しかし、介護現場での人手不足の原因は、重労働に見合わない、その低い賃金にあります。大体、介護事業所自体への報酬を連続して引き下げて介護職の方々の処遇を悪化させてきたのは、政府自身ではありませんか。
安価な労働力としての外国人を増やすのではなく、介護保険の改悪をやめて、その労働に見合った待遇を介護職の方々に保障することが政府のやるべきことではないでしょうか。他の業種も同様に最低賃金の引上げなどを行って人手不足を解消させることこそ、政府の取るべき施策であります。
第三の理由は、新制度の意義や具体的な運用は省令以下で定めるなど、まさに政府に白紙委任の法案を推し進めているからであります。
新制度で、悪質ブローカー等による民間人材ビジネスの排除はできません。技能実習制度の下では非営利とされていた監理団体ですが、新制度の下での登録支援機関は特にそのような規定は設けられておりません。また、実習制度による監理団体は許可制ですが、新制度での登録支援機関は単なる登録のみとなっています。つまり、外国人労働者を食い物にする団体の排除がないのです。派遣労働も排除されておりません。
新制度でも、家族の帯同も認めず、永住許可要件の就労資格にも該当せず、人道上の問題も残ったままであります。
衆議院で僅か十七時間の審議で強行可決した際、ある与党議員は、議論すればするほど問題が出てくると開き直りました。
外国人の命と人生の懸かった問題を強行的に押し通すやり方は絶対に認められない、法案は廃案にすべきであることを申し上げて、賛成討論といたします。(拍手)
問責決議に賛成する第一の理由は、大臣が法案審議の前提となる失踪技能実習生の聴取票を捏造して国会に説明をしたからであります。
政府は、この間、失踪する技能実習生について、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多いと説明し、調査結果でも、最低賃金以下で働かされているのは二十二名であると説明をしてきました。
ところが、聴取票の質問には、より高い賃金を求めてという項目がそもそも存在をしませんでした。そして、実際には、最低賃金以下で働かされていた実習生は実に七割近くに上り、月の残業が八十時間以上、つまり過労死ライン以上で働かされていた人は二百八十九名、約一割にも上っていたのです。
聴取票の結果を捏造して国会に報告した大臣は、辞任に値すると言わなければなりません。
個票からは、実習生が置かれている厳しい実態が更に明らかになりました。それは、ベトナム人実習生一千六十一人のうち九百三名、実に八五・一%が違法、不正な手数料を取られて来日していることが判明したのです。
そして、重大なのは、政府が今なお個票の提出を拒んでいることであります。プライバシーの箇所も黒塗りにされた個票をなぜ提出できないのか。なぜ人数が制限され、国会議員以外のスタッフ、秘書には書き写すことが許されないのか。審議妨害以外の何物でもありません。
大体、当該調査は国会決議の求めに応じて実施されたものであります。にもかかわらず、最後まで審議の土台となる聴取票の公開を拒むような人に大臣の資格はありません。
第二の理由は、実習制度が新制度と地続きであることを認めず、既存制度の問題の解消に背を向け続けてきたからであります。
新制度は技能実習生からの移行を前提とし、その八〇%からほぼ一〇〇%を見込んでいる業種が多数となっています。技能実習生の実態把握は審議の前提です。
野党合同ヒアリングで話してくれたある実習生は、段ボール工場で指を三本切断した後、受入れ企業から使い物にならないからと解雇通知を受けました。製紙工場で働いていた別の実習生は、残業代がたったの時給三百円。パワハラも受け、飛び降り自殺を図りました。建設作業員として働くはずだった別の実習生は、福島での除染作業に従事。作業に必要な教育は一切受けず、日本人には一万五千円ほどの日給が支給される作業を、彼は日給五千六百円でさせられていました。
恋愛も妊娠も禁止され、妊娠が分かった時点で中絶か帰国を迫られるという実態も明らかになりました。私が書き写した個票の中にも、妊娠がきっかけで失踪する人が含まれていました。
外国人労働者が人間として扱われずに物や材料扱いされている実態を覆い隠したい、政府が聴取票の公表を最後まで拒んだ最大の理由がここにあります。
許せないのは、これだけ苛烈な実態を知りながら、法務省は労働基準監督署などへの通報をまともに行わず、劣悪な労働環境やパワハラなどの人権侵害で苦しんでいる実習生たちに手を差し伸べることをしなかったことであります。
大体、大臣は、失踪は全体の数%、九割の実習生はまともに働いているなどと開き直りの説明をしてきました。しかし、それがもはや間違いであることは明白であります。人権侵害から失踪という形で避難できた人は氷山の一角であって、逃げることも声を上げることもできずに耐え忍んでいる実習生がまだたくさんいます。このことを突き付けられ、大臣は実習生に対する調査を指示せざるを得なくなりました。だったら、その調査を速やかに行い、事態を改善させるのが最優先です。法案を強行し、何が何でも四月から受け入れようなど、できるはずがないではありませんか。
新制度への移行を見込んでいるのは技能実習生だけではありません。技能実習生二十八万人を上回る三十二万人にも上る外国人留学生も新制度への移行を見込んでいます。彼らの置かれている実情は技能実習生と大きく重なります。それは、多額の借金をして来日するということです。
彼らは、コンビニ弁当工場、宅配便の仕分、深夜のホテルの清掃など、日本人がやらない仕事を、最賃に張り付き、パワハラが横行する職場であっても、週二十八時間の制限を超えて、ダブルワーク、トリプルワークで働いています。
実習生では職種に制限がありますが、留学生にはありません。企業にとって借金を返せず使い勝手がよい留学生を、現地ブローカーや一部の日本語学校、専門学校などが関与して人材ビジネスを繰り広げ、搾取をしているのです。政府は、こういう実態をまともに把握せず、安価な単純労働力として外国人を扱ってきただけでなく、資格外活動の制限緩和などの拡大をしようとしているわけであります。
それだけではありません。就労ビザを保有する外国人も搾取の対象となっています。今年、シャープ亀山工場で外国人労働者三千人が解雇される事態が起こりました。新制度では、電気・電子情報関連産業において、人手不足により五年間で四千七百人の外国人を受け入れるといいますが、三千人も雇い止めをしておいて、一体どこが人手不足というのでしょうか。結局、外国人労働者は、仕事がなくなれば切れる雇用の調整弁として、使い捨ての物扱いをされているのです。
大臣は、来年四月施行の理由を、半年遅れると万単位の外国人が帰ってしまうではないかと言いました。新制度の狙いが、劣悪な労働と差別的待遇で苦しんでいる彼らを引き続き搾取し続けるということではないでしょうか。これでは、日本が、選んでもらう国にも、美しい国にもなりようがありません。
人手不足をつくった原因は政府にもあります。新制度の下では、介護業で六万人の外国人を受け入れようとしています。しかし、介護現場での人手不足の原因は、重労働に見合わない、その低い賃金にあります。大体、介護事業所自体への報酬を連続して引き下げて介護職の方々の処遇を悪化させてきたのは、政府自身ではありませんか。
安価な労働力としての外国人を増やすのではなく、介護保険の改悪をやめて、その労働に見合った待遇を介護職の方々に保障することが政府のやるべきことではないでしょうか。他の業種も同様に最低賃金の引上げなどを行って人手不足を解消させることこそ、政府の取るべき施策であります。
第三の理由は、新制度の意義や具体的な運用は省令以下で定めるなど、まさに政府に白紙委任の法案を推し進めているからであります。
新制度で、悪質ブローカー等による民間人材ビジネスの排除はできません。技能実習制度の下では非営利とされていた監理団体ですが、新制度の下での登録支援機関は特にそのような規定は設けられておりません。また、実習制度による監理団体は許可制ですが、新制度での登録支援機関は単なる登録のみとなっています。つまり、外国人労働者を食い物にする団体の排除がないのです。派遣労働も排除されておりません。
新制度でも、家族の帯同も認めず、永住許可要件の就労資格にも該当せず、人道上の問題も残ったままであります。
衆議院で僅か十七時間の審議で強行可決した際、ある与党議員は、議論すればするほど問題が出てくると開き直りました。
外国人の命と人生の懸かった問題を強行的に押し通すやり方は絶対に認められない、法案は廃案にすべきであることを申し上げて、賛成討論といたします。(拍手)