建設労働者の賃上げを
建設労働者の賃上げを
人手不足深刻 辰巳議員求める
日本共産党の辰巳孝太郎議員は3日の参院国土交通委員会で、建設労働者の賃金引き上げと公契約法の制定を求めました。
建設業界ではダンピング受注、下請けへのしわ寄せから労働者の賃金が下落しています。男性の全産業労働者の平均賃金・年収529万円に比べ、建設業は391万円となっています。こうした中で建設業界の人手不足、若者離れは深刻。辰巳氏は「公共工事発注の積算根拠となる設計労務単価が引き上げられるが、現場労働者の賃金は上がるのか」と質問しました。
太田昭宏国交相は「現場の労働者に還元されるよう企業に申し上げている、徐々に上がっている」と答えました。
辰巳氏は、神奈川県建設労連調査(昨年9月)で設計労務単価よりも2700~1万2000円も低かった賃金実態を示し、「現在、全国10の自治体で公契約条例が制定されている。国も公契約法の制定に踏み出すべきだ」と述べました。
同日、建設業法等改正案が全会一致で可決され、あわせて公共工事の品質確保法改定案の委員長提案を決定しました。両法案は、ダンピング対策の強化、適正な施工体制の確保、建設業の担い手確保が目的。
以下、会議録を掲載。
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。
今回、建設業法等の一部を改正する法律案、またこれから提案されます品確法の一部を改正する法律案は、ダンピング受注や下請いじめの抑制、建設業界における若者の確保、公共工事の品質確保などのためのものであります。今日は、それらを一体的にどう運営し、また実効性のあるものにしていくのかということで、国交省の姿勢などを問うていきたいと思います。
とりわけ、品確法の改正案には、基本理念に、公共工事の品質確保に当たっては、ダンピング契約の排除、下請契約を含む請負契約の適正化、公共工事に従事する者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境改善、調査、設計の能力を有する者の活用促進等に配慮するということが加わりました。これは私たちも求めていたものですので、前進だと考えております。また、同時に、受注者の責務に関しては、若年技術労働者等の育成、確保と、これらの者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善、適正額での下請契約での締結に努めることといたしました。これらをどう実効性のあるものにしていくのかということが一番重要だと思います。
言うまでもなく、建設業界、人手不足であります。とりわけ若者離れは深刻でありまして、全就業者数というのはピークが六百十九万人で、現在は四百九十九万人と。ところが、二十九歳以下だけで見ますと、一割に過ぎないわけですね。この若者離れのやはり大きな原因、要因の一つに挙げられるのが、建設業界における賃金の低下だと言われております。二〇一二年の全産業の男性労働者の平均賃金が五百二十九万円であるのに対し、建設業であれば三百九十一万円で、百三十八万円も低くなっております。
これらを補おうと、設計労務単価がこの間、引き上げられていますけれども、まず大臣にお聞きしたいんですが、この設計労務単価の引上げ、また今回の法律の改正で、本当に現場で働く労働者の賃金は上がっていくんでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 現場で働く人たちの処遇の改善ということが人手不足の一番大事なことだというふうに思います。この職場が若い人にとりまして、処遇という、賃金が安いと、しかもきつい。最近の若者は休みがきちっとないというのは困ると、イレギュラーなのはということもあったりします。その上に、俺はやったぞ、私はやったぞという、こういう胸の中に誇りがなければ仕事がないということからいきまして、公共事業は無駄であり悪玉であるという大合唱の中では、なかなかそういう誇りは生まれないということもあると思います。
雇う側にとりましては、先ほど質問の中にもありましたけれども、いわゆる景気対策の調整弁のような形で急に予算が上がったり下がったりというようなことではなくて、企業経営からいきますと、ずっと安定的に持続的に見通しが利くということがあって初めて人を入れられる、そして育成ができる、期間が掛かりますということだと思います。
労務単価の引上げはその一環としてやらさせていただいておりますが、労務単価というものは先行的に上げるものではありませんで、市場の中で現状この賃金がどうなっているかということを的確に反映して、労務単価として表現するということです。それがずっと滞ってきたということは、賃金が下がり続けてきたから。この下がるという、そこを調査してまた下がるという、こうした賃金が下がっていくというスパイラルに陥っていたのを、やっとここで少し上がっていくということに転じてきた状況だと思います。
私は、これが、労務単価を引き上げたというこの率がそのまま現場の一番最前線で働いている人にしっかりと還元されるように、そして社会保険に入っていただくということの中で安定した職場であるということの両面に、しっかり現場に還元されていくということを口を酸っぱくして企業に申し上げていることでございますが、徐々に上がってきていることは間違いない事実だと思います。
○辰已孝太郎君 今、労務単価の話がありましたけれども、これまでの労務単価でいえば、今回は社会保険の分もきちんと加味して入れたということだと思うんですね。逆に言えば、これまでは社会保険などのそれらの必要経費というのが余り加味されていなかったということで、不当にそのものが引き下げられてきたということでもあると思うんです。
私、本当に現場の実態というのをしっかり見ておく必要があると思っておりまして、例えば、神奈川県の建設労働組合連合会が去年の九月に県の公共工事の現場での賃金調査を行っております。ある道路改良工事では設計労務単価よりも二千七百円から六千七百円ほど低いと、賃金がですね、こうなっているわけですね。ある高校の整備事業などでも五千円から一万二千円も低いと、こういう実態となっております。本当にこの末端の労働者の賃金が確実に上がっていくという政策、これがなされることが何よりも重要だと思うんです。
今回、入契法という法律の改正も出されております。この中で、ダンピングの防止というのが盛り込まれておりますけれども、このダンピングというのは、ダンピングが行われればそのしわ寄せが労働者に回ってくる、賃金の引下げになってくるということで、このダンピングの防止、これが盛り込まれましたけれども、じゃ、このことで賃金が適切に支払われることになるんでしょうか。その辺はどうでしょう。
○政府参考人(毛利信二君) 今回の提案させていただいております法案の中で、御指摘のとおり、入札契約適正化法第一条の目的の中にダンピング防止を明文化をいたしているところでございます。
今回の改正では、これを目的の中に追加するだけではなくて、具体化させるために、まず建設業者に対し入札金額の内訳の提出を求めることとしております。これによりまして見積能力がないような業者は排除する、こういったことでダンピング防止には一定の効果があるというふうに考えております。
加えまして、ダンピング防止の実効性を更に確保するためには、発注件数の多くを占めます地方公共団体にダンピング防止の取組を促していくと、こういうことも非常に重要でございます。このため、改正法が施行されますと、入札契約適正化法の権限に基づきまして、ダンピング防止の必要性の認識と対策の強化につきまして総務省とともに連名で公共団体への要請を強く行っていきたいというふうに考えているところでございます。これによりましてダンピング防止を盛り込んだ改正法の趣旨が達成される、これによって現場の労働者の方々の賃金の上昇につながっていくものというふうに期待をしているところでございます。
○辰已孝太郎君 ダンピングの防止というのは当然でありまして、むしろ私もこのような条文がこれまでなかったということの方が不思議に感じております。
あわせて、今回の入契法の改正では、施工体制台帳の作成や提出義務、これが広げられます。この目的については何なのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
○政府参考人(毛利信二君) 御指摘の施工体制台帳でございますが、現在、建設業法によりまして、公共工事に限らず三千万円以上の下請契約を締結した場合にはこの施工体制台帳の作成を求めておりまして、入札契約適正化法の方は公共工事について、さらに作成だけではなくて提出を求めているところでございます。
今回の改正におきましては、近年、工事一件当たりの規模が小さい維持修繕工事の割合が増加いたしているところでございまして、こういった小規模な工事につきましても、下請契約の金額を問わず施工体制台帳の作成、提出を求めることによりまして、小規模な工事において施工体制の確認が可能となるだけではなくて、公共工事における元下間の契約内容ですとか、あるいは下請企業の社会保険加入状況等も確認できるという効果が見込まれまして、こういった狙いでもって改正を提案しているところでございます。
○辰已孝太郎君 非常に大事なことだと思うんですね。
ただ、では、この施工体制台帳の提出義務が広げられたと。では、その下請、元請間できちんとそれに見合った賃金が支払われているのかどうかというのはこれで確認できるんでしょうか。そこ、どうでしょう。
○政府参考人(毛利信二君) 施工体制台帳は、適正な施工体制の確保という目的から、元請に一定の義務付けをしているものでございます。したがいまして、現場におきます賃金の具体的な支払状況まで、これを元請に責任を持って記載させるということは、これはなかなか難しいという問題があるところでございます。
○辰已孝太郎君 やはりもう一歩私踏み込んで、発注者がそういう賃金が適正に支払われているかどうか把握して、そして指導する権限というのを持たせていくということも私は必要ではないかなというふうに思っております。
今回、この建設業界の問題に関しては、やはり社会保険料の未加入問題というのが深刻だと思っております。まず、年金、医療、雇用のこの三保険全てに加入している業者、労働者の割合というのを、ちょっと報告お願いします。
○政府参考人(毛利信二君) 社会保険の加入状況でございますが、企業別の加入状況、これは三保険全てで見ますと、三保険全てでは八七%、これが加入をいたしております。これを労働者別に見ますと数字が変わってまいりますけれども、三保険全体で見ますと八七%の企業が何らかの形で加入をいたしているというふうになっております。ただ、これは労働者別で見ると、また下請状況によっては変わってくるという状況でございます。
○辰已孝太郎君 元請が七九%で、労働者別ですと、一次下請が五五、二次下請が四六、三次が四八ということで、だんだんだんだんやっぱり下がっていくわけですね。なぜ下がるかといえば、やはり結局負担ができないということでありまして、やはりここには、重層的な下請構造の下で、労働や材料費に見合う額での受注が下請企業にはなかなかできていないということの反映だと思っております。
今回、法定福利費が、社会保険等のですね、法定福利費が確実に確保されるために、社会保険等の内訳を明示した標準見積書、これが下請から、下から元請に提出されることになりました。これ昨年の九月から始まったということでありますが、全ての直轄工事でこの標準見積書は出されているんでしょうか。どうでしょう。
○政府参考人(毛利信二君) ただいま御指摘のありました標準見積書と申しますのは、御指摘のとおり昨年九月末から、この法定福利費というのが内訳としてまず明示をされないで、言わば丼で見積りが出てくる中で支払が行われてはよく分からないということで、下請団体がそれぞれの様式で作成しているものでございまして、現在は、その見積書を下請が元請に提出する取組というのを官民一体で取り組んでいるという状況にあります。したがいまして、まだ直轄全てにおきましてこの見積書の採用を義務付けているという状況ではございません。
○辰已孝太郎君 どれぐらい出されているかということは調べるつもりはありませんか。調べる必要が僕はあると思うんですけれども、どうでしょう。
○政府参考人(毛利信二君) 標準見積書の意義というのは非常に大きなものがございまして、まず標準タイプで、下請が個別には元請に物が言いにくいという中にありますが、標準的なものだということでその利用を促進するという大きな効果があると考えております。
ただ、その標準見積書におきまして、今どのような使用状況にあるのかという段階のまだ前で、まだ昨年九月末からこれを取組を推進しているという状況でございますから、もう少し定着を見ながらその活用状況を把握してみたいというふうに考えております。
○辰已孝太郎君 是非調べていただきたいと思います。
やっぱり、下請の代金が保障されることが何よりも重要だと思いますし、また、末端の労働者のところにまで賃金がきちんと保障されること、これなしには業界の人手不足、若者の業界離れというのは私は解消できないと思いますし、ひいては公共工事の品質確保にも、確保することはできないと思います。
そういう意味では、やはり上からということじゃなくて、やはり現場で働く人たちの賃金、つまり、これ以下の賃金は駄目だよと規定する。今現在では全国十の自治体で公契約条例というのが制定をされていますけれども、私は、やはり国としても公契約法の制定に向けて、研究も含めて踏み出すべきだということを申し付けたいと思います。