戦略港湾政策は中止せよ
以下、28日のしんぶん「赤旗」の記事を転載します。
「戦略港湾」中止を
辰巳議員 北米コンテナ減少
参院国交委
日本共産党の辰巳孝太郎議員は22日の参院国土交通委員会で質問し、港湾政策を競争から協調へ、一極集中から地域経済活性化へ転換するよう求めました。
政府は京浜港と阪神港を「国際コンテナ戦略港湾」に選定し、欧米向け基幹航路の維持・拡大をめざして大水深バースを整備(10年間で5500億円)しています。
辰巳氏は、北米航路コンテナ貨物量の目標と現状について質問。国交省の山縣宣彦港湾局長は、京浜港では2015年265万TEU(コンテナ船の積載能力単位。1TEUは20フィートコンテナ1個分)の目標にたいし12年実績は107万TEU、阪神港では70万TEUの目標にたいし37万TEUであると答えました。
辰巳氏は、「08年の京浜港の実績は159万TEUで、1・7倍に増やす計画だったが逆に3割以上も減少している。阪神港は47万TEUから1・5倍に増やす計画が逆に2割以上も減っている」、「ハードに投資しても貨物は増えない。問題は大企業の海外生産で国内産業が空洞化していることだ」と指摘し、計画の中止と政策の転換を主張しました。
国際戦略港湾の港湾運営会社に政府出資を可能とする港湾法「改正」案は23日の参院本会議で賛成多数で可決・成立しました。日本共産党、社民党は反対しました。
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。
政府はこれまで、大交流時代、スーパー中枢港湾政策、国際コンテナ戦略港湾政策など、国際競争力の名の下に多額の税金を投入してまいりました。今法案においても成長戦略の一環として位置付けて、集貨、創貨、そして国際競争力の強化をするとしております。結局、これは更なる税金の投入を進めるものだと言わなければなりません。私は、これまでの港湾政策の失敗と反省と総括、そして日本の、また世界の産業構造の変化に沿った港湾政策への転換が必要だと考えております。
国際コンテナ戦略港湾政策の目標の一つとして、釜山港などへのトランシップ率を半分に縮減するとしておりますけれども、現状はどこまで達成したのか、お答えください。
○政府参考人(山縣宣彦君) お答えいたします。
平成二十二年八月の国際コンテナ戦略港湾の選定時におきましては、具体的な目標といたしまして、二〇一五年、このときには国内ハブの完成、そのときにはトランシップ率を半減と、先生御指摘のとおりです。それから、二〇二〇年には東アジア主要港としての地位の確立というものを目標として設定をしたところでございます。
直近のトランシップ率につきましては、我が国からのトランシップ貨物の多い釜山港におきまして、現時点で得られるデータとして、釜山港湾公社、BPAの発表によりますと、我が国を発着する釜山港利用コンテナに占めるトランシップ貨物の割合は、二〇〇九年の四七・九%から、二〇一二年には四七・五%ということで、ほぼ横ばいということになってございます。
引き続き、国際基幹航路の維持拡大に向けまして、全力を挙げてこのトランシップ貨物の回復に取り組んでまいりたいと思っております。
○辰已孝太郎君 ほぼ横ばいということで、結局取り返せていないわけですね。私は、そもそも、この計画そもそもが、日本から発生する貨物を増やすのではないということですから、同じパイを結局取ってくるということですから、移動だというふうに思うんですね。
私は、このことについて少し掘り下げたいと思うんですが、なぜならば、この政策の裏返しとして、結局、地方からの荷物を、貨物を奪い取ることにつながるというふうに思うからであります。
二〇一一年、国交省は、日本海側総合的拠点港として幾つか港を選出しております。それぞれ計画を出してもらって、それを点数で評価したと。例えば、伏木富山港は国際海上コンテナ拠点港としても選定をされましたけれども、そのときに伏木富山港が国交省に提出した資料なんですね、これがそうなんですが。これ、見てみますと、関東圏、中京圏、近畿圏から荷物を持ってきて、その荷物をロシア極東、韓国、中国、東南アジアに輸出しようと、また、太平洋側の主要港湾の代替的機能を果たすとか、CO2、これを削減するとか様々な提案をして、そして国交省はそれを認めて選定をしたわけですよ。例えば金沢港を挙げますと、この金沢港も国際海上コンテナ拠点港として選定をされております。
当然、地方港も荷物、貨物をどう増やすのかということに努力注いできたわけで、例えばこれは北陸財務局が作成したポンチ絵なんですけれども、ここには、太平洋側の港から出荷されていた商社取扱いの貨物を金沢港から初の船出しができたとして、これまでの取組を評価しているわけですよ。地方港というのは、この間やっぱり涙ぐましい、私、努力していると思うんです。大阪で不要になったガントリークレーンを舞鶴港なんかは購入してくれて、それを使っているわけですよ。
大臣にお聞きしますけれども、私は、国内の貨物量というのがほとんど増えない中で、結局、京浜や阪神港の貨物を増やそうとすれば、これ結局地方から持ってこざるを得ないと思うんですね。私は、このことは地方港の衰退につながるんじゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 同じものをどこに寄せるかというのでは全く意味がないと。例えば岸壁、その水深をどれだけにするかということをやれば、大きな港になれば、先ほどから申し上げている小名浜のバルク港湾でもそうだし、それから釧路でも、そこが盛んになります。穀物であったりあるいは石炭であったり、それぞれそうしたことを特徴を持つと。金沢も今、例の富山という話もありましたけれども、それぞれが、金沢なんかも、具体的な名前を挙げては何かと思いますが、コマツなんかがもう非常に大きな施設を造って、そこからいわゆる輸出をしようという動きが出ているわけでありまして、そういう、それぞれのところが個性を生かして、この創貨、集貨、国際力の強化ということは、何もこの戦略港の二港だけにとどまらず、それぞれのところが荷物をたくさん生み出して、そして特徴を生かして、それを、海外という場合もあるでしょう、それから国内への阪神そして京浜というところに持ってくるということもあるでしょう。
日本全体の中の物流というものがいかに盛んになるかということが大事で、そのための、心を一致してのこの選択と集中の中でこういう措置をとっているということがこの数年間行われてきたことだと思いますし、その流れの中から今回は更にそこを強化しようということで、是非とも御理解をいただきたいというふうに思います。
○辰已孝太郎君 いや、結局私の質問に答えていないんですね。同じパイの中でこれを取り合うということですから、パイは同じなんですよ、同じなんですよ。国内の貨物を増やすわけじゃないわけですから、同じなんです。それを地方が取るのか、京浜や阪神が取るのかということですから、地方から取るということになれば地方が衰退するということになります。
日本海側の荷物も取らないと基幹港が維持できないというのであれば、これ結局、今トランシップというのはほとんど半減できていないという話になっていますけれども、結局それを地方から取ってくると、私は地方港にとっては死活問題だと言わなければならないと思います。私は、この間の整合性の全くない政策を進めてきた国交省の責任は非常に重いと言わなければならないと思います。
選択と集中というのは、これ今に言ったわけじゃなくて、これはもう昔から言っている話で、スーパー中枢港湾政策始め今回の国際コンテナ戦略港湾政策の中でも、更に深いバースを掘って、造って貨物を呼び込む、そういう港湾政策、続けてきましたし、これからもやろうという話になっております。
それでは聞きますけれども、九〇年代以降、この港湾整備事業費に幾ら使われたんでしょうか。
○政府参考人(山縣宣彦君) お答えいたします。
平成九年の十二月に閣議決定されております第九次の港湾整備七か年計画、この中では、平成八年度から十四年度までの七か年で総投資額は七兆四千九百億円となってございまして、これは港湾整備事業のみならず災害関連の事業、地方単独事業、さらには埠頭用地とか荷役機械を起債によって整備をするいわゆる港湾機能施設整備事業、こういったものを含む額でございまして、港湾事業整備に限って言えば四兆三千百億円となってございます。また、これまでにスーパー中枢港湾に投資した事業費は五千百億円というふうになってございます。
○辰已孝太郎君 もう本当に巨額の税金がこの政策に注ぎ込まれております。
基幹航路の確保維持ということで、北米向けのコンテナ個数のこれ目標がそれぞれ京浜と阪神港で出されておりますけれども、この北米航路向けの二〇一五年の貨物量の目標値と、そして現在の貨物量を示してください。
○政府参考人(山縣宣彦君) お答えいたします。
二〇一五年の北米向け取扱貨物量の目標値でございますけれども、国際コンテナ戦略港湾の選定時に京浜港、阪神港の方から提出されました計画書におきましては、京浜港が約二百六十五万TEU、二百六十五万個ですね、それから阪神港が約七十万TEUというふうにされてございます。これに対しまして、直近の二〇一二年の実績ですけれども、港湾統計によりますと、京浜港は約百七万TEU、阪神港は約三十七万TEUというふうになってございます。
○辰已孝太郎君 目標を決めた当時、二〇〇八年の実績が、京浜が百五十九万TEUなんですね。阪神が四十七万TEUだったわけですよ。つまり、京浜は、二〇〇八年から見て一・七倍に増やす目標が逆に三割減少しているわけですね。阪神は、一・五倍に増やす計画が逆に二割以上減少して、京浜、阪神共に、目標に近づくどころか遠ざかったのがこれ現状なんです。ですから、先ほどどれぐらいの税金という話がありましたけれども、これだけの巨額の税金を注ぎ込んでもこういう結果になっているわけであります。
ところが、国は更なる港湾整備を進めようとしているわけです。国際コンテナ戦略港湾政策における大水深コンテナバースターミナルを二〇一六年までに東京港で一つと、横浜港で現在の三つからプラス三つ、阪神港で五つ造るとしております。大水深コンテナバースというのは、岸壁の深さのみならず、当然、航路、主航路、その深さに合わせる必要がありますから、これ莫大な費用が掛かるわけです。費用はどれぐらい掛かるのか、お示しください。
○政府参考人(山縣宣彦君) 国際コンテナ戦略港湾政策に係る事業費でございますけれども、水深十六メーターの大水深コンテナターミナルの整備等に、平成三十二年度までに約五千五百億を見込んでございます。平成二十三年度から平成二十五年度まで、昨年度まで約千九百億円の予算を計上してございまして、今後の事業としては三千六百億を予定してございます。
○辰已孝太郎君 これからも巨額の税金を使うということです。
大阪にはマイナス十六メートルのバースが一つありますけれども、これ、実はもうほとんど使われておりません。そもそも、北米航路、欧州航路の往来において、大阪に満載で来ることもほとんどありませんし、出ていくこともないと。幾ら深いバースを造っても必要がないということであります。大阪港で五万トン以上のフルコンテナ船というのは大体四千から五千TEUなんですけれども、二〇一二年で百五十五回入港しているんですね。そのうち、マイナス十六メートルの岸壁を使ったのは、たったの三回ですよ、年間で。マイナス十三メートルのところでも楽々入港しているわけです。昨年、二〇一三年は、マイナス十六メートルのこの岸壁というのは、たった二回しか使われなかったということであります。
大水深コンテナバースがないと船が来ないと、こう言うわけですけれども、じゃ、世界一の売上げを誇るマースク・ラインの役員の一人はどう言っているか。これ、朝日新聞のインタビューでこう答えております。日本市場が大きな市場で、我々にとって重要だとしても、成長は中国にはかなわない、中国の港湾と大きさを競い合う必要性を私は感じないし、むしろ効率性を高めていくことに注力した方がええと、こういう話を世界一番の売上げのマースク・ラインの役員が言っているわけですよ。
私は、欧米航路、これ基幹航路と言って、これまでもこれからも大水深バースの整備を進めようとしておりますけれども、今や港の主役はアジアになっております。アジアと北米の輸出入のコンテナベースでの割合は直近の数字でどうなっているのか、お示しください。
○政府参考人(山縣宣彦君) お答えいたします。
平成二十年度の全国輸出入コンテナ貨物流動調査という調査がございます。これは、一か月間の調査結果なんですけれども、これによりますと、我が国の外貿コンテナ取扱貨物の方面別の内訳、重量ベースの割合でございますが、北米向けでは輸出が一六・四%、輸入が一二・〇%、それからアジア向けが輸出が六一・二%、それから輸入が七四・一%となってございます。
○辰已孝太郎君 もう輸出入のシェアが圧倒的にアジアになっているわけですよ。七〇年代であれば、これ北米、欧州が輸出入共に六割から七割を占めていたわけですよね。ちなみに大阪港では、二〇一二年は、北米向け輸出入のコンテナの割合というのは一・九%、香港を含む中国向けは全体で六二%ですから、これはもう天と地の差があると言わなければなりません。ですから、結局、中国との行き来ですから、これ大型船ではないわけですので、大水深のバースは要らないと、こういうことになるわけです。
私は、結局、本当にハードに投資していけば貨物の量は増えるのかと。これ増えないですよ。つまるところ、コンテナの数というのは国内産業の規模に比例するわけです。問題は国内産業の空洞化なんですね。
日本銀行の神戸支店が「神戸港の質的変貌」というレポートを昨年の十一月に発表しておりますけれども、ここでは、神戸港の国際競争力の低下はハード面以外の三つを見ることが大事だと。一つは日本の製造業の海外生産シフト、荷主のニーズが中国へシフトした、地方港湾の海外港湾との連携、これを挙げているんですよ。
私は、自動車業界を見ても、これどんどんどんどん日本じゃなくて海外の生産を進めていますけれども、これが現実だと思います。根源的な問題から目をそらし、幾ら深いバースを造っても荷物は増えません。私は国際コンテナ戦略港湾政策の中止と撤回を求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○辰已孝太郎君 港湾法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本改正案は、国際競争力を強化するとして国際コンテナ戦略港湾政策を一層強力に進めることを主な目的としています。この政策は、欧米向け基幹航路の維持強化や東アジア主要港でのトランシップ率の半減を目標に掲げ、港湾運営の民営化や十年間で事業費約五千五百億円を投じる大水深コンテナバース等の整備を進めてきました。
しかし、基幹航路は維持強化されるどころか著しく減少し、トランシップ率も高止まりしています。今やこの政策の有効性が問われる状況になっているにもかかわらず、政府は反省もなく、この政策を更に加速させ、矛盾を拡大しようとしています。
基幹航路の取扱量が伸びない主な原因は、日本国内の内需が低迷していることと、大企業が海外生産を推進し、産業空洞化を進行させることにあります。法改正を行い、大水深コンテナバースの整備や集貨事業に巨額の税金をつぎ込んでも基幹航路が維持される保証はありません。国際コンテナ戦略港湾政策は中止、見直しすべきです。これが反対する第一の理由です。
反対する第二の理由は、国際戦略港湾への一極集中を強め、地方港からの集貨を更に強力に推し進め、地方港と地方経済を衰退させることになるからです。
今、急激に取扱貨物量を大きく増やしているアジア諸港との関係で必要なのは、国際競争力の名による競争優先ではなく協調できる方向を探ることです。国際戦略港湾への一極集中政策を改め、地方の地域経済の活性化に資する港湾政策への転換こそ必要です。
反対する理由の第三は、港湾運営会社への国の出資が国際コンテナ戦略港湾政策を更に強力に推進することを目的にしており、港の公共性、安全性を低下させるおそれがあるからです。
これまでも港湾の規制緩和により港湾で働く労働者に犠牲が押し付けられてきました。国際戦略港湾政策に基づきコスト削減を強力に推し進めれば、港湾労働者の雇用、労働条件の更なる悪化が危惧され、港湾の公共性と安全性が脅かされるおそれがあります。
以上、反対理由を申し述べ、討論を終わります。