指定基準の見直しを タクシー供給過剰
以下、しんぶん「赤旗」より転載。
2015年5月28日(木)
指定基準の見直しを
タクシー供給過剰 辰巳氏求める
日本共産党の辰巳孝太郎議員は19日の参院国土交通委員会で、タクシー供給過剰の解消を進める「特定地域」の対象が規制改革会議の意見によって狭められたことを批判し、法改正の趣旨を踏まえた見直しを求めました。
2013年のタクシー特措法改正で、供給過剰が著しい「特定地域」で強制的に減車を行うことになり、国交省は当初、全車両数の最大6割の地域が対象になると試算しました。
ところが、14年6月、規制改革会議が「車両数の半数を有意に下回る数にすべきだ」とする意見を公表。今年1月に国交省が公示した指定基準では、「特定地域」の候補が大阪、札幌、福岡など全国29地域、車両総数の約34%に限定され、東京や「人口30万人以上」の基準を満たさない55地域などが外れました。
辰巳氏は、供給過剰の解消、運転者の労働条件の改善という法改正の趣旨に従い基準を見直すべきだと主張しました。
太田昭宏国交相は「供給過剰解消の観点からは多くの地域の指定が求められるが、特定地域は法的効果が強いため、スタート時においては厳格な基準とした」「運用状況や効果を見極め、法改正の趣旨に照らして継続的に見直しを行う」と答えました。
以下、会議録を掲載。
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
本改正案では、鉄道・運輸機構の出資の対象となる会社は営利目的の新しい会社に限定をされております。公共交通機関の民間委託、民営化を更に進めて、地方自治体の関与と責任を弱める点で問題だということをまず指摘しておきたいと思います。
今日は、地域公共交通の一つであるタクシー、このタクシー特定地域指定について質問をいたします。
規制改革会議が、昨年六月十三日に改正タクシー特措法の特定地域に係る指定基準に関する意見を出しております。当委員会でも何度も取り上げられていますけれども、問題となっているのが、特定地域内の営業車両総数が全国の営業車両総数の半数を有意に下回る割合とすべきとしたところであります。
この半数を有意に下回れという要求の根拠となっているのが、タクシー特措法第三条に、一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化を推進することが特に必要であると認めるときは、当該特定の地域を、期間を定めて特定地域として指定することができるという部分でありまして、特にというふうに書いてあるわけだから、この指定が多数になっては駄目だよということを言っているわけですね。
国交省は、昨年十月十六日に、この特に必要というのは数の問題なのかという吉田委員の質問に対して、立法趣旨、法律に求めます要件というものをきちっと当てはめて、それによって指定の是非を判断していく、数的な議論は法律上規定がされているものではないと答弁しているわけですね。
確認をしますけれども、この規制改革会議が言っている半数を有意に下回る割合とするために基準を作ったわけではないということでよろしいですね、これ確認したい。
○政府参考人(田端浩君) お答えいたします。
ただいま御指摘ございましたタクシー改正特措法三条におきまして、供給過剰と認められる場合であって、また事業用自動車の一台当たりの収入、あるいは法令違反などの不適正な事業運営、事故発生の状況に照らして、供給輸送力の削減をしなければタクシーの地域公共交通としての機能を十分に発揮することが困難のため、適正化、活性化を推進することが特に必要であると認めるときには、期間を定めて特定地域の指定を行うことができることとされております。
改正タクシー特措法上、この特定地域の指定比率などについて特に数値的な定めがあるものではございません。
○辰巳孝太郎君 私が申し上げたところはそうだということだという答弁でありました。重要な答弁だと思います。
ところが、国交省は、今年の一月三十日、この規制改革会議の意に沿う形で特定地域の指定基準を公示しております。
国交省は当初は車両数の最大の六割の地域が対象になると試算をしていましたが、結局、候補となるのは大阪、札幌、福岡など全国二十九の地域。東京は外れました。東京は車両の稼働効率の指標を厳しくしたために外れたわけであります。しかし、今でも適正車両数の上限よりも一千台以上供給が上回っているというのが東京の実態でございます。
結局、二十九地域のタクシー車両は約六万五千台、全国の車両総数の約三四%ということになったわけですね。つまり、規制改革会議が言っている半数を下回る割合となったわけでございます。今日資料も用意をしておりますが、人口三十万人以上の都市を含む営業区域という、こういう要件が加わったことで五十五の地域が外されたということになりました。
確認をしますが、もしこの人口三十万人以上という要件がなければ特定地域の指定基準に合致していた割合というのは何%になるんでしょうか。
○政府参考人(田端浩君) 委員御指摘の五十五地域でございますが、これは車両数でいきますと二万三百四十三両ということでありまして、車両台数ベース全体の一〇・六%となります。これを仮に加えるという場合でありますと、車両数ベースですと全体の四四・四%という計算になります。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 結局、規制改革会議の求めに従って対象地域を狭く、数を限定したためにこういうことになったということははっきりしたと思うんですね。
大臣にお聞きしたいと思います。
今、やっぱり言っていることとやっていることが私は矛盾していると思うんですね。供給過剰の解消、運転者の労働条件の改善という私は法改正の趣旨をゆがめているというふうに思います。改正趣旨に沿った指定基準の見直しを行うべきではないでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 改正タクシー特措法による特定地域制度は、供給過剰等の解消等を一層進めるというために導入されたものでありまして、この観点からは多くの地域を指定することが求められます。
しかし一方で、特定地域については、新規営業許可の禁止、あるいは独占禁止法の適用除外、営業方法の制限命令等の強い法的効果を有する措置が認められております。このために、衆参両院の附帯決議においても、特定地域の指定については、その法的効果に鑑み厳格に行うこととされております。この附帯決議に加えて規制改革会議からも意見が示されたことから、国交省としてもこれも勘案し、特定地域制度の導入については、そのスタート時においてはまずより厳格な内容の指定基準とすることとしたわけでございます。
今後、この基準に基づいて指定された特定地域について、その運用状況や効果等を見極めて、経済状況の動向等も踏まえた上で、タクシー特措法の制定の趣旨及び今回の改正の趣旨に照らしつつ、継続的に見直しの議論を行っていくこととしております。今回の指定基準に基づきまして、まずは供給過剰等の問題が特に深刻な地域から特定地域制度をスタートさせて、その成果をしっかりと出すということが肝要だというふうに考えています。
○辰巳孝太郎君 大臣の方からも客観的な基準が必要だという話がありました。では、その人口三十万人というのが客観的なのかどうなのかということが一つあると思うんですね。これは後からただしたいと思いますけれども。
先ほど局長の方からは、規制改革会議が言っている半数を有意に下回る割合とするために基準を作ったわけではないと、これはお認めになったわけなんですが、改めてこの局長の発言をただしていきたいと思うんですね。
一月の二十二日に開かれた規制改革会議第十回地域活性化ワーキング・グループの議事録が公表をされております。局長はここに参加して、委員にこう報告しているんですよ。全国の営業車両台数の半数を有意に下回る割合とすべきであるという御指摘を承ってございますので、そういった中身を勘案しながら指定基準を作ってきた、半数を有意に下回る割合とすべきであるという点についても満足できる指標案にさせていただいておりますと。
局長、これ、今の説明とここでの発言、矛盾するんじゃないですか。どうですか。
○政府参考人(田端浩君) 先ほど御答弁申し上げましたとおり、規制改革会議からも御意見は示されてまずおります。その中においては、法律の効果が非常に強いこともあり、厳格にあるいは慎重に指定基準は考えていくべきだと、こういう御趣旨であると、このように私どもは理解をしております。
でございますので、ただいま規制改革会議への御説明、私の方から申し上げましたのは、法律の趣旨にのっとって、規制改革会議の御意見というものは、特定地域の判定に適切なちゃんと指標を厳格に作って、それを当てはめて、それで慎重な検討をすべきだと、こういう御意見というものを踏まえて客観的な基準作りをいたしましたと、こういう御説明をしたということでございます。
○辰巳孝太郎君 いや、そうじゃないんですよ。厳格に、また慎重に、客観的にというのは示されているわけですけれども、局長は、この規制改革会議の中で言っているのは、半数を有意に下回る割合とすべきであるという御指摘がありますので、そういった中身を勘案しながら指定基準を作ってきたと言っているんですよ。はっきり言っているんですよ。しかし、冒頭の私の質問に対して局長は、半数を有意に下回るということとするために基準を作ったわけではないと言っているんですよ。矛盾するんじゃないんですか。もう一回答弁ください。
○政府参考人(田端浩君) 先ほど御答弁申し上げました法律の第三条におきまして、いろいろ要件を申し上げましたが、その上で特に必要があると認めるときに期間を定めて特定地域の指定を行うことができると、こういう法律でございます。でございますので、特措法上、この指定の比率について、特に法律上、数値的な定めがあるものではまずはございません。ただ、議員立法の趣旨が法的ないろいろ制約、非常に法的な効果が厳しいというところに鑑みて、厳格に行っていく必要があるという御指摘であるというふうに理解をしております。両院の附帯決議においても、法的効果に鑑み厳格に行うという、こういう御趣旨がございました。私どもとしては、附帯決議を勘案しまして指定基準を定めてまいったところであります。
そういう意味で、先ほど、規制改革会議に私が御報告申し上げましたのは、規制改革会議の御意見というものも、立法の趣旨がそういう法的効果が非常に強いので厳格に考えていくべきだと、こういう御趣旨を踏まえた上で指定基準を定めてまいりましたと、こういう御説明を申し上げたということでございます。
○辰巳孝太郎君 結局私の聞いていることに全く答えないと。御自身が発言したことですから、これを結局矛盾と言えないということだと思います。これは結局矛盾しているんですよ。矛盾しているんですよ、数じゃないと言いながら、規制改革会議が求めていることに、結局この会議に出ていって、あなたたちが満足できる指標にしましたと、こう言っているわけですね。むちゃくちゃな話なんです。
じゃ、この三十万人という人口基準、根拠は何なのかということを改めて聞きたいと思います。何でこれ三十万人なんですか。
○政府参考人(田端浩君) タクシー事業の営業形態でございますが、大きく二つに大別されます。一つは流し、これ繁華街でのつじ待ちなども含みますが、流しの営業。もう一つが営業所受けという、こういう形態でございます。
このうち、流し営業につきましては、利用者によるタクシーの選別が困難であることから、事業者間の競争による淘汰のメカニズムが働きにくく、運転者の賃金が歩合制であることと相まって供給過剰の進行を招きやすいとの構造的な問題を抱えております。逆に流し営業が少ない地域においては利用者による選別が可能でありまして、このような懸念が生じる余地は小さいと考えております。
本指標でございますが、このようなタクシー事業の特性に鑑みまして、特定地域の指定を流し営業が多く行われる地域に限ることといたしたところであります。これは、流し営業が市街地等における一定の需要を前提として行われるものであり、現在のタクシー事業に係ります許認可の運用において、流し営業が成り立つ区域を人口三十万人以上の都市を含む営業区域としていることを踏まえて、特定地域の指定基準においてもこれを用いることといたしたものであります。
○委員長(広田一君) 辰巳君、時間が参っておりますので、まとめていただけますようにお願いします。
○辰巳孝太郎君 流し営業と言いますけれども、三十万人というのが流し営業が多いという根拠となるデータというのは実はないんですね。青森市なんかでいいますと二十九万六千人ですよ。盛岡市は二十九万九千五百八十五人なんです。これで切れているんですよ。これ、全く根拠がないということを申し述べて、この指定基準の見直しを求めて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、地域公共交通活性化再生法及び鉄道・運輸機構法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
反対する理由は次の二点です。
第一の理由は、本改正案で鉄道・運輸機構の出資の対象となる会社は営利目的の新しい会社に限定されており、公営で運営すべき地域公共交通の民間委託、民営化を更に進め、地方自治体の関与と責任を弱めることが明らかであるからです。
地方都市や過疎地域などで鉄道、バス事業者等の交通事業者が不採算路線から撤退し、さらには経営破綻によって突然の路線廃止となる事態も生まれています。同時に、営利追求のために安全確保が脅かされている実態が、この間起きたあらゆる事故の背景に見て取れます。この根本原因は、地域公共交通を民間事業者任せにしてきたことにあります。住民の足を守り、安全を確保する上で、地方自治体が鉄道等の整備にとどまらず、管理運営にも責任を持つべきです。
第二の理由は、住民合意のない事業を推進するおそれがあるからです。
地域公共交通活性化再生法の基本方針には、地方公共団体が先頭に立って、公共交通事業者、住民、利用者も含めて知恵を出し合い、合意の下で実現を図るとしているように、本来、住民合意が大前提であります。国交省が出資を想定している宇都宮市のLRT導入計画では、地域住民から、費用対効果が認められないなど大きな反対の声が上がっています。今後、他の地域でも同じようなやり方が広げられるおそれもあり、合意なく事業を推進することは基本方針に照らしても絶対に認められないからです。
以上、反対の理由を申し述べ、討論といたします。