日本の財政事情と財政再建について参考人質疑
議事録を読む
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
まず、井手先生にお聞きしたいんですけれども、今日の資料も含めて、既に日本は小さい政府だということや再分配の機能が弱いということなんかも非常に感銘を受けて、私も非常に同感するところがほとんどでございました。
そして、先生のおっしゃるのは、税金の取り方や使い方、また給付の仕方について信頼を得ることがまず大事だと、その後に税金の取り方ということだと思うんですが、その信頼についてなんですが、いわゆるほかの納税者が納税義務を果たしているかという信頼が一つあるということで、この点について少しお聞きをしたいんですけれども。
先ほどOECDの話もありましたけれども、過去三十年で格差が過去最高になったという問題が一つあると。日本でもこの間、格差と貧困の問題というのが言われてきたということなんですが、私の問題意識としては、やはり今、高額所得者とあとは大企業ですね、主に法人税ということになると思うんですが、ここに対する課税というのが非常に弱いのではないかと、ゆえに信頼を損ねるということにはなりかねないかということでありまして、その点について、この間、大企業も大もうけを上げておりますし、また、アベノミクスということであれば、この二年間で、金融資産一億円以上持つ方がいわゆる富裕層ということになりますが、百万世帯を超えたと、この二年間で二四%ほど増加しているということですので、信頼を得るためにもここへの課税強化というのが必要ではないかと思うんですが、そのことについてどう思うかというのが一点と。
もう一つは、これにも関連してくるんですが、いわゆる大企業に課税をという話をしますと、大企業が潤ってこそ中小企業にと、いわゆるトリクルダウンということがこの間言われてきたことでもありまして、実際、それは本当はないんじゃないかというふうに私は思うんですが、そのトリクルダウンについて先生の御見識をお伺いできたらと思います。この二点。
○参考人(井手英策君) ありがとうございます。
先ほどもちょっとお答えしたんですけれども、税というのは基本的に国の税金と地方の税金というのを分けないといけないと思うんですね。そのときに、人間の生存を保障するような、困っている人や貧しい人を助けるような、そういう役割を担っている国の税金であれば累進性を設けるとか、あるいは大企業に税を掛けるとか、そういうことはやっていいんだと思います。
その国税のレベルで今法人への課税が非常に弱くなっているということは事実で、実際、東京都のアンケートにもございましたけれども、税金を安くしたからといって本当に企業の流出が止まるのかとか、あるいは国内に回帰してくれるのかとか、あるいは従業員の賃金に使うのかということに対して、ほとんどの企業がネガティブな答えを示していますね。
ですから、私も正直に言うと、企業自身が本当にどこまで法人税の減税の必要性を認識しているか分からない中で、九〇年代以降、非常に大胆に法人税を切り下げ過ぎたというふうに私も思っております。その問題が一方でありますね。ただ、あと同様に、所得税について富裕層にもっと掛けるべきだということも国税レベルではそうでしょう。今日お示ししたように、税を通じた再分配効果は非常に弱いですから、これをもうちょっと普通の国民国家並みにしていくということは大事だと僕は思いますね。
その話と、一方で、今度は地方税の話を考えないといけないと思うんですね。その中で、企業に掛けるとか誰々に掛けるということを我々また考えがちなんですが、地方はあくまでも、繰り返しになりますが、人間が必要とするサービスを出しています。これは医療であれ教育であれ、養老、介護であれ育児、保育であれ、人々が必要とするものを出しているわけなので、限りなく全ての層の人々が税を負担するということが私は大事だと思います。だから、究極的に言うと、貧しい人も含めて税を払うということが実は地方税では大事になってきます。そして、そのことが、むしろ中間層や富裕層から見て貧しい人もそれなりに負担をしているじゃないかということで、増税に対する合意が整っていくと。
しかし、これは、じゃ貧しい人に対してつらい税制なんではないかと批判するのは間違いで、それが、今日申し上げたようにあまねく人々に医療であれ教育であれ出していけば、それは税が逆進的であっても全体としては格差が是正されるわけですから、そういった意味で、どのように税を取るかということはもう少し細かい議論をしていく必要があるというふうに思っています。
あと、二つ目のトリクルダウンの御質問ですけれども、財政学者として申し上げられることは、財政を媒介とせずにまずトリクルダウンが起きることはあり得ないと。つまり、大企業であれ富裕層であれ、お金をもうけた人たちが、何というか、ボランティアのような心を持っていて貧しい人に対してお金を寄附していくと、これは全くないわけじゃないでしょうけれども、それを一〇〇%前提にするのもおかしい。とするならば、財政というチャネルを通じて恐らくトリクルダウンは起きるんでしょう。
しかしながら、今日お示ししたように、日本の財政というのは先進国の中で最も再分配機能の弱い財政ですね。ここを通じてなぜトリクルダウンが可能かということは慎重に議論をしないといけないと思いますし、私はそれは難しいというふうに思っています。
以上です。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
続けて、高橋先生にお聞きしたいんですが、先生は、消費税のことなんですが、消費税そのものは必要だという考えだと思うんですが、一方で、増税に関しては、時期のことも含めて、また消費税に関する誤解、またそれに関する吹聴といいますか、そういうことに関しては否定的な面もあったと思うんですが、では、二年後に一〇%という話はあるんですが、私たちは反対なんですね。日本の経済構造からして、経済成長をということであれば、GDPの六割を個人消費が占めるのが日本ですから、消費税を、一〇%でこれでとどまるかどうかというのはまだいろいろあると思うんですが、これを上げてしまうと、又はそれ以上やってしまうと、日本の経済そのものを冷え込まして、そしてそれは税収減になっていってしまうんじゃないかというふうに思うんですが、先生の消費税の増税に関する今後のことも含めて御見識をお聞かせいただければ。
○参考人(高橋洋一君) 確かに、増税してGDP減らして全体の税収が下がったら元も子もないというふうに思います。そして、それはだから経済状況に依存するんじゃないかなというふうに思いまして、これはそのちょっと経済理論からかなり予測は可能だと思うんですね。ですから、それを予測して全部納得していかないといけないというふうに思います。
もう一つの可能性としては、すごく景気が良くなって、さっきもちょっと言いましたけど、すごく景気が良くなって実は増税の方が望ましいというときもあるかもしれませんね。だから、一番多分国民的に望ましいのは、すごく景気が良くなって増税が望ましい。更に言えば、すごく景気が良くなり過ぎちゃってもう増税は要らなくなってしまったというのが最高ですね。
ですから、いろんなステージが考えられるし、それとあと、確かに税法で決まっているのは決まっているんです。決まっているのは決まっているんですけど、政治的なことを考えたら、実はこれは、あと二年後の四月ということですけど、その前の年の国政選挙でほとんど決まると思いますよ。ですから、その意味では、税法で決まっているということは何もなければそのままするというだけの意味でして、それを本当にするかしないかというのはその前の政治判断だと思うので、そのときに、ですからきちんと議論したらよろしいんじゃないでしょうかと思います。
ただし、税法で決まっているのは事実ですから、何も議論しなければ、それは上がります。そこは間違いないです。ただし、その前に国政選挙があるので、恐らくその国政選挙のときに議論になると思いますね。議論になったときにどうなるかという話で、この間のときもそうですけど、解散をして国政選挙をすれば実は税法は覆るということもありますよね。ですから、いろんなパターンがあるというのは非常にいいことなんで、そのときの経済情勢を見ながら、これは是非その前の国政選挙で議論してもらいたいと思います。
○辰巳孝太郎君 以上で終わります。
まず、井手先生にお聞きしたいんですけれども、今日の資料も含めて、既に日本は小さい政府だということや再分配の機能が弱いということなんかも非常に感銘を受けて、私も非常に同感するところがほとんどでございました。
そして、先生のおっしゃるのは、税金の取り方や使い方、また給付の仕方について信頼を得ることがまず大事だと、その後に税金の取り方ということだと思うんですが、その信頼についてなんですが、いわゆるほかの納税者が納税義務を果たしているかという信頼が一つあるということで、この点について少しお聞きをしたいんですけれども。
先ほどOECDの話もありましたけれども、過去三十年で格差が過去最高になったという問題が一つあると。日本でもこの間、格差と貧困の問題というのが言われてきたということなんですが、私の問題意識としては、やはり今、高額所得者とあとは大企業ですね、主に法人税ということになると思うんですが、ここに対する課税というのが非常に弱いのではないかと、ゆえに信頼を損ねるということにはなりかねないかということでありまして、その点について、この間、大企業も大もうけを上げておりますし、また、アベノミクスということであれば、この二年間で、金融資産一億円以上持つ方がいわゆる富裕層ということになりますが、百万世帯を超えたと、この二年間で二四%ほど増加しているということですので、信頼を得るためにもここへの課税強化というのが必要ではないかと思うんですが、そのことについてどう思うかというのが一点と。
もう一つは、これにも関連してくるんですが、いわゆる大企業に課税をという話をしますと、大企業が潤ってこそ中小企業にと、いわゆるトリクルダウンということがこの間言われてきたことでもありまして、実際、それは本当はないんじゃないかというふうに私は思うんですが、そのトリクルダウンについて先生の御見識をお伺いできたらと思います。この二点。
○参考人(井手英策君) ありがとうございます。
先ほどもちょっとお答えしたんですけれども、税というのは基本的に国の税金と地方の税金というのを分けないといけないと思うんですね。そのときに、人間の生存を保障するような、困っている人や貧しい人を助けるような、そういう役割を担っている国の税金であれば累進性を設けるとか、あるいは大企業に税を掛けるとか、そういうことはやっていいんだと思います。
その国税のレベルで今法人への課税が非常に弱くなっているということは事実で、実際、東京都のアンケートにもございましたけれども、税金を安くしたからといって本当に企業の流出が止まるのかとか、あるいは国内に回帰してくれるのかとか、あるいは従業員の賃金に使うのかということに対して、ほとんどの企業がネガティブな答えを示していますね。
ですから、私も正直に言うと、企業自身が本当にどこまで法人税の減税の必要性を認識しているか分からない中で、九〇年代以降、非常に大胆に法人税を切り下げ過ぎたというふうに私も思っております。その問題が一方でありますね。ただ、あと同様に、所得税について富裕層にもっと掛けるべきだということも国税レベルではそうでしょう。今日お示ししたように、税を通じた再分配効果は非常に弱いですから、これをもうちょっと普通の国民国家並みにしていくということは大事だと僕は思いますね。
その話と、一方で、今度は地方税の話を考えないといけないと思うんですね。その中で、企業に掛けるとか誰々に掛けるということを我々また考えがちなんですが、地方はあくまでも、繰り返しになりますが、人間が必要とするサービスを出しています。これは医療であれ教育であれ、養老、介護であれ育児、保育であれ、人々が必要とするものを出しているわけなので、限りなく全ての層の人々が税を負担するということが私は大事だと思います。だから、究極的に言うと、貧しい人も含めて税を払うということが実は地方税では大事になってきます。そして、そのことが、むしろ中間層や富裕層から見て貧しい人もそれなりに負担をしているじゃないかということで、増税に対する合意が整っていくと。
しかし、これは、じゃ貧しい人に対してつらい税制なんではないかと批判するのは間違いで、それが、今日申し上げたようにあまねく人々に医療であれ教育であれ出していけば、それは税が逆進的であっても全体としては格差が是正されるわけですから、そういった意味で、どのように税を取るかということはもう少し細かい議論をしていく必要があるというふうに思っています。
あと、二つ目のトリクルダウンの御質問ですけれども、財政学者として申し上げられることは、財政を媒介とせずにまずトリクルダウンが起きることはあり得ないと。つまり、大企業であれ富裕層であれ、お金をもうけた人たちが、何というか、ボランティアのような心を持っていて貧しい人に対してお金を寄附していくと、これは全くないわけじゃないでしょうけれども、それを一〇〇%前提にするのもおかしい。とするならば、財政というチャネルを通じて恐らくトリクルダウンは起きるんでしょう。
しかしながら、今日お示ししたように、日本の財政というのは先進国の中で最も再分配機能の弱い財政ですね。ここを通じてなぜトリクルダウンが可能かということは慎重に議論をしないといけないと思いますし、私はそれは難しいというふうに思っています。
以上です。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
続けて、高橋先生にお聞きしたいんですが、先生は、消費税のことなんですが、消費税そのものは必要だという考えだと思うんですが、一方で、増税に関しては、時期のことも含めて、また消費税に関する誤解、またそれに関する吹聴といいますか、そういうことに関しては否定的な面もあったと思うんですが、では、二年後に一〇%という話はあるんですが、私たちは反対なんですね。日本の経済構造からして、経済成長をということであれば、GDPの六割を個人消費が占めるのが日本ですから、消費税を、一〇%でこれでとどまるかどうかというのはまだいろいろあると思うんですが、これを上げてしまうと、又はそれ以上やってしまうと、日本の経済そのものを冷え込まして、そしてそれは税収減になっていってしまうんじゃないかというふうに思うんですが、先生の消費税の増税に関する今後のことも含めて御見識をお聞かせいただければ。
○参考人(高橋洋一君) 確かに、増税してGDP減らして全体の税収が下がったら元も子もないというふうに思います。そして、それはだから経済状況に依存するんじゃないかなというふうに思いまして、これはそのちょっと経済理論からかなり予測は可能だと思うんですね。ですから、それを予測して全部納得していかないといけないというふうに思います。
もう一つの可能性としては、すごく景気が良くなって、さっきもちょっと言いましたけど、すごく景気が良くなって実は増税の方が望ましいというときもあるかもしれませんね。だから、一番多分国民的に望ましいのは、すごく景気が良くなって増税が望ましい。更に言えば、すごく景気が良くなり過ぎちゃってもう増税は要らなくなってしまったというのが最高ですね。
ですから、いろんなステージが考えられるし、それとあと、確かに税法で決まっているのは決まっているんです。決まっているのは決まっているんですけど、政治的なことを考えたら、実はこれは、あと二年後の四月ということですけど、その前の年の国政選挙でほとんど決まると思いますよ。ですから、その意味では、税法で決まっているということは何もなければそのままするというだけの意味でして、それを本当にするかしないかというのはその前の政治判断だと思うので、そのときに、ですからきちんと議論したらよろしいんじゃないでしょうかと思います。
ただし、税法で決まっているのは事実ですから、何も議論しなければ、それは上がります。そこは間違いないです。ただし、その前に国政選挙があるので、恐らくその国政選挙のときに議論になると思いますね。議論になったときにどうなるかという話で、この間のときもそうですけど、解散をして国政選挙をすれば実は税法は覆るということもありますよね。ですから、いろんなパターンがあるというのは非常にいいことなんで、そのときの経済情勢を見ながら、これは是非その前の国政選挙で議論してもらいたいと思います。
○辰巳孝太郎君 以上で終わります。