甘利問題を追及、不必要な移転補償に切り込む
2016年02月18日
甘利明前経済再生相の金銭授受疑惑で18日、日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は決算委員会で、甘利氏側の口利きを受けた都市再生機構(UR)が、千葉県内の建設会社S興業側への補償を自ら同社に提案していたことを追及しました。UR側は事実関係を認めました。辰巳氏は甘利氏の疑惑はさらに深まったとして、同氏と関係者の証人喚問を改めて求めました。
この問題では千葉ニュータウン整備に伴う県道工事に絡む補償問題について、道路用地に隣接する敷地で操業していたS興業側が甘利氏側に口利きを依頼。URから補償金を受けたS興業側から、甘利氏や当時の秘書が現金などの供与を受けていました。
辰巳氏はS興業が甘利氏側の助言でURに送った内容証明に、URが回答書で補償をいったん断りながら「別途、提案がある」として新たな補償を持ちかけていたことを指摘。UR側は事実を認め、「補償交渉を促進する必要があったため提示した」などと説明しました。
この補償ではS興業の敷地内で建物を移転させる費用として、2013年8月に2億2千万円の支払い契約が結ばれました。しかし現地に産業廃棄物が埋まっていることから千葉県の廃棄物指導課から指導が入り、再配置は不可能となりました。
辰巳氏はこの経緯を指摘しながら「URは産廃が埋設されていることを契約当時から知っていたのでは」と質問。URは「平成4(1992)年ごろ、当地と周辺の土質調査をした頃には知っていた」と答えました。
「ではなぜ補償したのか」と続けて尋ねた辰巳氏にURは「S興業が敷地内での移転を望んだ」と述べ、再配置ができないことについては「千葉県企業庁から情報がなかった」などと弁明しました。
辰巳氏は「再配置ができないことを知りながらUR側から補償を提案し、通常ありえない補償金支払契約を結んだ。甘利氏事務所が介在していたからだとしか考えられない」と指摘。「全容解明のために証人喚問を求める」と述べました。
2016年2月19日付「しんぶん赤旗」より引用
190-参-決算委員会-003号 2016年02月18日
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
甘利前大臣の金銭授受問題について質問をいたします。
この間の国会審議で、甘利氏秘書は二十億円の要求をS社に助言をしたということも明らかになりました。金額交渉はないとしていた甘利前大臣の記者会見での説明と食い違うということになっております。また、UR側は甘利氏側に交渉案件に係る金額を伝えていたということも認めております。
石井大臣にお聞きしますが、二月二日の記者会見でURの対応は問題ないと大臣述べておられますけれども、今もその認識でございますか。
○国務大臣(石井啓一君) 一般的に国会議員の事務所から求めがあったときには丁寧に対応するということが基本でございますので、そういった対応をURはおやりになったというふうに承知をしております。
URにつきましても、補償の方針について一貫した対応を取っているというふうに承知をしておりまして、大きな問題はなかったというふうに思っております。
○辰巳孝太郎君 丁寧な対応をURはしたと、一貫した対応をしてきたということであります。
URとS社の補償は極めて異質で異常でありました。公表された資料によると、URはこれまで三回の補償を行っております。一回目の物件移転補償は一千六百万円、二回目の物件移転補償、再配置補償ですけれども二・二億円、三回目の損失補償で五千百万円超との報道がされております。総額で二億八千七百万円、そして四件目、五件目と協議中のものがあるということであります。
この一件目の補償についてまず確認をいたします。
道路建設が予定をされている上のこのS社が所有する物件はそもそも不法占拠物件ということでありますが、この不法占拠物件は強制撤去できたのになぜ補償をしたんですか。URに確認します。
○参考人(上西郁夫君) お答え申し上げます。
本件の土地は千葉県企業庁が昭和四十五年に取得したものでございますが、平成四年頃からS社は本件土地及びその周辺に移転を開始いたしまして、以来、長期にわたって本土地上に不法占拠物件を存置してきたものと聞いております。この間、土地所有者の千葉県企業庁によれば、平成十三年以降十三回にわたりS社に対し不法占拠物件の撤去と用地の明渡しを要請したものの一向に撤去は進まず、また、占有状態が長期にわたると認められれば裁判所から何らかの権利があると認められる可能性があること、本件土地について法的措置を講じた場合、隣接地に係るS社との補償交渉に影響が生ずるおそれがあるとの理由により、平成二十四年一月に法的措置の実施も困難と判断したものと聞いております。
当機構は、共同事業者である千葉県企業庁が二十年以上にわたり法的措置を講じてこなかった経緯に鑑み、平成二十四年に移転補償を行ったところでございます。
なお、不法占拠物件であっても、所有権その他財産権の成立が認められ、かつ、公共事業の施行に必要な土地の取得に伴いその物件の移転が余儀なくされる以上移転補償が必要であるということについては、これまでも収用委員会の裁決において示されており、一般的に補償業務として定着しているものと存じております。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 定着と言いますけれども、国民には理解のできない話なんですね。
この一千六百万円を支払うという契約が交わされた後も、S社はこの不法占拠物件の撤去も実施をしないまま、次は内容証明で別の営業補償を求めてきたわけであります。ここにありますけれども、この内容証明が出される二週間前にS社が甘利氏側に相談をしていたという、こういう事実があるわけであります。
私どもが入手した内容証明に対するURの回答書では、このS社が求めてきた営業補償に対しては補償はできないと、これ前段できっぱり断っております。ところが、非常に不可解なことに、URはS社が要求してきた補償とは別の提案を行っております。これが補償②のいわゆる物件移転補償、再配置補償契約であります。
URに確認しますけれども、なぜこのような再配置の補償契約を皆さんから提案されたんですか。
○参考人(花岡洋文君) お答え申し上げます。
私どもは平成二十三年からS社と補償の交渉を行ってまいっております。最初は物件調査というところから入るわけでございますけれども、その補償に当たりましては、道路区域の中におきまして物件の移転補償を行うということに加えまして、残地内での会社の営業、従前機能の確保に係る補償が必要であるということで、その全体の物件について調査を掛けているということでございまして、その全体について補償が必要という考え方は当初から一切変更のないものでございます。
御指摘の内容証明郵便につきましては、御指摘のとおり一項と二項がございまして、一項は、道路用地上について移転補償契約を行ったわけでございますけれども更なる補償を要求されているということでございまして、それについては一項の方で我々としてはきっぱりお断りをしているということでございます。
一方で、残地における補償については、従前から補償が必要と考え、また物件調査等も行ってきているものでございますので、こちらについては協議を促進する必要があるということで、こちらの方から補償の内容についてまず提示をするのでそれに基づいて交渉を進めてほしいということで通知をしたということでございます。
一項と二項は全く別物でございます。
○辰巳孝太郎君 前から一緒にやっていたと、こういう話ですけれども、しかし、非常に不自然なのは、このURの回答の最後にこうあるんですね。別途提案がありますので当該折衝は通知人担当者との間で行っていただくようお願いしますと。別途と提案しているわけですから、一回目の物件補償における契約書、この中には、その二条二項に、S社はこの契約に定めるもののほか、名目のいかんを問わず、乙、URに一切の負担を与えないものとする、いわゆる清算条項ですね。これ、清算条項が一千六百万円のときにあるわけですよ。にもかかわらず、別途提案ということを皆さんやっておられるわけですね。
この新たな提案、再配置補償はこの清算条項と矛盾するんじゃないですか。
○参考人(花岡洋文君) お答え申し上げます。
先ほど来御説明しておりますとおり、別々の土地にある別々の物件の補償でございますので、その清算条項には引っかからないものと考えております。
○辰巳孝太郎君 私が更に不可解に感じておるのは、弁護士を外して直接担当者との当事者間交渉をこの二項めの後段の部分でURの皆さんが提案をされているということであります。
確認しますけれども、なぜわざわざ、向こうは弁護士を通じて内容証明を送ってきている、そして皆さんも弁護士を通じて内容証明の回答を送っている、しかし、その中で、第二項で弁護士を外して交渉するということにしたんですか。
○参考人(花岡洋文君) お答え申し上げます。
当機構が内容証明郵便の回答を弁護士名で行いましたのは、S社からの内容証明郵便があちら側の弁護士名で送られてきたことに対応したものでございまして、弁護士の対応は弁護士にお願いをするというために行ったものでございます。
回答書第二項におきまして、必要な補償協議を今後進めようという提案をいたしておりますけれども、私どもの補償協議は通常職員が相手方と行っているものでございまして、補償協議を最初から弁護士を通して行うといったようなことは一般的には行っておりません。補償協議がまとまらない場合に、万一裁判といったようなことになった場合に改めて弁護士の方に依頼すると、そういうやり方を行っているところでございまして、全くもって一般的なやり方だと考えております。
○辰巳孝太郎君 やっぱりしかし不可解ですよ。これ、まさに弁護士が入れば補償できる筋のものではないということを示しているんじゃないですか。S社にわざわざ補償するために弁護士を外したというふうに疑われても私は仕方がないというふうに思います。あえて弁護士を外したこの再配置の補償交渉がその後どうなっていったのか。これ、まさに必要のない、不必要な不適切な補償の実施が行われたわけでございます。
このS社が使用している賃借地は産業廃棄物が埋設をされている土地でありまして、そもそも、そもそも再配置による建物、建築等は原則認められておりません。千葉県環境部に確認をしますと、この地中に産業廃棄物が存在していることは一九七九年当時から認識をしており、県はURとも相談をしてきたと述べております。
URに確認しますけれども、この残地内に産廃が埋設されていることをこの再配置の契約当時から知っていたんじゃないですか。
○参考人(花岡洋文君) お答え申し上げます。
正確にいつの時点で私どもの職員が認識していたかということについては必ずしも正確な記録は残っておりませんけれども、私どもといたしましては、本件の道路の整備に先立ちまして、平成四年に道路予定地及びその周辺の土地の土質調査というものを行っております。したがいまして、その頃には産業廃棄物の存在について認識していたものと考えられるわけでございます。
○辰巳孝太郎君 平成四年から認識をしていたということであります。ちなみに、再配置で二・二億円の補償契約が結ばれたのは二〇一三年の八月六日でございます。
では、URに続けて聞きますが、この残地内に産廃が存在し再配置が許されない土地であることを知っていながら、なぜこの契約、再配置補償を結んだんですか。
○参考人(花岡洋文君) 先ほども一部お答えしたところではございますけれども、御指摘の二・二億円の補償費といいますのは、営業面で従前の機能を確保するために物件の再配置、建て替えを要する費用を補償したものでございます。要は、建物の建築費用でございまして、建物の建築費用である以上、それが残地の中で行われようと別の土地で行われようと建築費に変わりはないわけでございまして、二・二億円という数字は変わるはずのないものといったふうに考えております。
何で産業廃棄物がある上での再建築を前提とする契約を行ったのかという御指摘でございますけれども、その点につきましては、まず一点目といたしましては、S社が残地内での営業継続というものを強く希望されていたこと、それから、私どもが今まで事業をやってくる中で、全国いろんなところで事業を行っておりますけれども、地中に産業廃棄物が存する場合であってもその土地上に建築物の建築が認められた事例といったようなものを私どもの職員が承知をしていたこと、それから、当該土地について再建築が認められないということについて千葉県の企業庁の方から特段情報がなかったということから、残地の中での建て替えを前提として契約をしたわけでございます。
なお、先ほど申し上げましたように、建築費用はどこで建築しても基本的に同じでございますので、残地の外に移転をすることによる増加費用を見るよりも、残地の中で建て替えをするという補償内容の方が金額的には小さくなるといったようなことも判断要素の中にあったものと考えております。
○辰巳孝太郎君 確認しますけれども、契約当時、再配置の契約を結べばS社は営業をそこでやりたいという求めをしていたわけでありますけれども、URの皆さんは再配置ができるということを前提にこの契約は結んだんですか。そこをはっきりさせてください。
○参考人(花岡洋文君) お答え申し上げます。
少なくとも、再配置ができないというふうな認識はございませんでした。
○辰巳孝太郎君 再配置ができると皆さんが考えていた根拠は何ですか。
○参考人(花岡洋文君) それは、先ほども申し上げましたけれども、全国的に見て、産廃が地下に埋まっておってもケース・バイ・ケースで再建築が認められる例があるというふうに私どもの職員が承知していたからでございます。
○辰巳孝太郎君 だけれども、千葉県からは産廃が埋まっているからできないという指導が入ったわけですね。
皆さんは、この間、このニュータウンの事業を千葉県と一緒に様々な契約を交わしながら行ってきたと私は認識しております。であれば、なぜ二・二億円の再配置の補償が契約がされる前に千葉県に産廃が埋まっているこのところは再配置ができないことを確認しなかったんですか。確認できるでしょう、それぐらいは。確認したら再配置はできないということになるじゃないですか。
○参考人(花岡洋文君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますが、ほかの土地で、いや、再配置が必要なこと自体は、当該道路工事によりまして面積が非常に小さくなる、土地の真ん中を道路が掘り割り構造で横切っていくわけでございまして両方の土地の間の行き来もできなくなるといったようなことがございますので、再配置が必要なことは私は議論の余地はないものと思っておりますけれども、そのためにどういう補償をするかということにつきましては、建物の再建築費用というのはいずれにせよ必要でございますので、それは土地がどこかにかかわらず必要なものでございますので、それを補償するということには合理性があると思います。
そのときに、先生の御指摘は、その土地でできないことを知っていれば最初から新しい土地の所有権なり賃借権を得るための必要な経費を追加して払うべきだったんではないかというふうに私どもには受け取れるわけでございますけれども、それは値段が高くなるわけでございまして、私どもといたしましては、できるだけ安価に済ませたいといったような点もあったわけでございます。
○辰巳孝太郎君 これ、千葉県に確認したら、産廃が埋まっているところには建てれない、再配置できないというのはすぐに分かったんですよ。これ聞かなかったんですよ、皆さんが。あえて千葉県に聞かなかったんですよ。なぜ千葉県に聞かなかったか。それは、皆さんがこの再配置の補償契約を結びたかったからなんです。なぜ結ばざるを得なくなったかというのは、これは甘利前大臣側の事務所がS社のバックにいるからなんですよ。これはもう明らかじゃないですか。
そもそも再配置ができないことを知っていながらわざわざURから補償の提案を行って、その際、法律の専門家である弁護士を入れてしまってはこれまたできない補償であるから弁護士を外して補償を契約を行った。通常では考えられない補償を、URは甘利事務所の介在があったからこそこういう契約を結んだということは全く明らかだと言わなければなりません。
もっとあきれた話があります。先ほど来言われているとおり、再配置はできないということになりました。そして、今、この④、⑤のところで皆さんは全面移転という交渉をしておりますね。そうでしょう。同じ物件じゃないですか。同じ物件に対して、これ、二・二億円の物件移転補償契約でも同じような清算条項を入れているわけですよ。同じような物件で清算条項を入れているのに、なぜ補償ができるんですか。
○参考人(花岡洋文君) お答えいたします。
直接の御質問にお答えする前に前段の御指摘について一言触れさせていただきますと、私どもが公表させていただいております甘利事務所との応接録等を御覧いただければ、この当該補償契約を結ぶ前に甘利事務所の秘書さんと私どもの職員が接触したのはたった一回でございます。ある日、ある日突然、ある日突然、横浜の本社の方に甘利事務所の秘書さんがアポイントもなしに突然来られて、十分間だけ、内容証明郵便の返事をいつくれるんだというやり取りをしただけです。やり取りの中身は応接録で公表しているとおりでございまして、その十分間の内容証明郵便の取扱いに関する協議が私どもの補償内容に影響を与えたとは全くもって考えておりません。
それから、二点目の、二・二億円の補償に対して追加補償を行うことがあるのかという、おかしいじゃないかという御指摘でございますけれども、これは今までの私の答弁の中に断片的に出ているところでございますけれども、二・二億円というのはあくまで建物の建築費でございまして、これが別の土地に移転する、そして別の土地に移転することに伴ってその土地を利用する権利、所有権か賃借権か分かりませんけれども、そういったようなものを取得するために増加費用が掛かるという場合には、それを補償するということは一般的に至極当然のことであると考えております。二・二億円は建築費です。追加で交渉しているのは土地の権原でございます。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 十分の交渉と言いますけれども、その十分が圧力になっているんですよ。それ、一回か二回かじゃないんですよ。これ、全く行う必要のない、そもそもできない補償を無理やり行った上に、今度は同じ物件で交渉を、協議をしていること自身がおかしいと言わなければなりません。
URの元職員はこう言っております。補償は一回でまとめるのが基本、次から次へと補償を重ねるのは極めて異例と、こう言っております。
最後に大臣に聞きます。大臣、URは一般的な丁寧な対応をしたと言っていますけれども、一連の補償交渉、これ一般的な交渉だと今思いますか。
○国務大臣(石井啓一君) URの補償の在り方については、私個々に詳細に承知をしているわけではありませんけれども、難しい物件のようでしたが、粘り強く交渉されたんではないかというふうに思っております。
○辰巳孝太郎君 全く粘り強い交渉じゃないですよ。甘利氏側の介在によってURの皆さんが不必要なものを補償しているんですよ。
今回の一連の疑惑で、甘利氏側が受け取った金銭への疑惑、ますます介在含めて深まったと思っております。全容解明のために甘利前大臣を含めた関係者の証人喚問を求めて、私の質問を終わります。