脱法ハウス 「住まいの貧困」解消を
日本共産党の辰巳孝太郎議員は5日、参院国土交通委員会で初質問に立ち、著しく狭く危険な空間に人を居住させる「脱法ハウス」問題を取り上げ、国として入居者の実態をつかみ、深刻化する「住まいの貧困」の解消に乗り出すよう迫りました。
「格差と貧困問題をライフワークとして活動してきた」と切り出した辰巳氏。現在、建築基準法違反として国が把握している物件だけで362件にのぼるとして、「脱法ハウスを放置してきた行政の責任は免れない」と述べました。太田昭宏国交相は「引き続き調査する」と答えました。
辰巳氏は、閉鎖が決まった東京・千代田区の脱法ハウスの居住者への聞き取りで、「約9割の居住者が同様の施設に行ったことが分かった。これが実態です」と追及しました。
貧困と格差が広がり、低所得で脱法ハウスに住まざるを得ない人が増えている一方、公営住宅は足らず、低所得者が活用できる住宅支援策もほとんどないと批判。相談窓口の設置、民間賃貸住宅への入居時初期費用の負担軽減策としての敷金や礼金の補助、低利または無利子の貸付制度や民間家賃補助制度の創設などに踏み切るべきだと提案しました。
傍聴には大阪から支援者が駆けつけました。女性(49)は「生活相談で貧困層といわれる人たちの声なき声を気持ちで受け止めてきたからでしょう。訴える温度が熱かった。実態にあった具体的な提案でした」と話していました。
2013年11月6日(水)赤旗より転載
議事録を読む
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。七月の参議院選挙で初当選をいたしまして、今日が初質問となります。
私は、格差と貧困の問題をライフワークに活動してまいりましたので、是非この角度から住宅問題、とりわけ脱法ハウス問題を取り上げて質問したいと思います。
戸建てやマンション、事務所などを幾つもの部屋に区切って、そこに貸しルームと称して賃貸料金を取って居住させるこの脱法ハウスが、この間、問題になってきました。窓がないということや、また火災等、安全面において建築基準法や消防法の違反となる物件に少なくない人が居住している実態も明らかになりました。国土交通省の調べで、この建築基準法の違反がどれだけあって、そしてそれが是正された物件数、これがどれほどあるのか、お聞かせください。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
今般実態の明らかになりました違法貸しルーム、これは委員御指摘をまつまでもなく、火災時に非常に危険なものだというふうに思っております。国交省としては、何よりも居住者の方の安全の確保を最優先として、特定行政庁、東京都や区、市でございますけれども、と連携しながら違反の是正を進めることが必要だと考えております。
本年の六月から、国交省及び地方公共団体のホームページに、違反の疑いのある物件に関する情報提供をお願いする受付窓口を設けました。ここに寄せられたものが調査対象になって、特定行政庁の方で多くは消防と一緒に調査をするという流れになるわけでございます。以下は、この寄せられた物件の総数八百二十件の九月三十日時点の状況を御報告申し上げたいと思います。
調査中、まだ違反かどうか分からないものが三百九十二件、それから建築基準法関係条例の違反が判明したもの、これが三百六十二件、そのほかに違反がなかったものが二十一件、あるいは閉鎖されておったり他の用途であったことがはっきりした、違反がないということでございますが、四十五件、すなわち違反がはっきりしたものは三百六十二件でございます。このうち、現在、是正指導の準備をしているもの、相手さんに報告求めたりいろいろ手続ございます、これが百七件でございまして、違反が確定をして是正の行政指導しているもの、これが二百五十四件でございます。最終的に違反を直してもらったというふうに現在まで来ているものは一件ということになってございます。
○辰已孝太郎君 それでは、調査を開始した時点、若しくは調査後に施設が閉鎖されたものというのは幾つあるのか。また、今後閉鎖予定の施設、物件の数や、またそれぞれの戸数ですね、物件ではなくて戸数、そして脱法ハウスに住んでおられる方々の居住者の数、これをお聞かせいただけますか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
先ほどの八百二十件のうち、調査に行ったところもう既に閉鎖をしていた、中にはもう解体していたというようなものもございますが、これが十二件でございます。それから、特定行政庁が調査を開始した後に、もう今居住者がいないというふうにはっきりしているもの、これが三件でございます。さらに、事業者の方から何らかの形で閉鎖の意向が示されているもの、これが六件でございます。
その戸数とか詳細については、特定行政庁もいろいろ手間が掛かりますが、できるだけそろった情報をお願いしているところでございますが、相手の事業者の対応いろいろでございまして、数字が必ずしもそろっておりません。現在報告を受けているところでは、退去済みのものについては三件で部屋の合計九十三、居住者、当然ゼロでございます。それから、閉鎖を検討しているもの、これは百八十四件、六件で百八十四室あるんですが、このうち入居者数が分かっているものは三件でございまして、この三件につきますと百三十六室で現在の入居者は十五名ということでございます。
○辰已孝太郎君 調査した結果、九割以上が違反だったと。それと閉鎖された物件が十二件、現在もういない物件が三件あると、こういうことですね。
これから調査入っていくわけですけれども、これらが建築基準法違反ということになれば、改善をするか若しくは閉鎖をするかと、こういう話になってくるわけですね。そこで住んでいる人が出なきゃいけないということになれば、もう千人単位の人がこれから住む場所に困る、路頭に迷うと、こういうことになるわけです。
そこで、私は大臣に聞きたい。行政として、まず、なぜこのような脱法ハウスにこれだけの人が住んでおられるのか、また、出ていった人はこれからどこに行くのか、これらを把握するために行政として実態調査をするべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) まず、国交省としてやるのは、この違法ハウス、違法貸しルームであるかどうかということについて建築基準法に基づいてこれは調べると。そして、是正をするようにということで全力を注いでいくというのがまず第一義です。
そして、この入居者の今お話がありました実態につきましては、この是正プロセスの中でいろんな情報が出てきます。それを特定行政庁と、そして福祉・雇用担当部局とも連携して対応していくという形になります。これまで数度にわたって会議を開催するなどをしまして、その把握に努めてきたというのが実態でございます。
国土交通省としては必要な情報を把握して、そして東京都や特別区、関係地方公共団体と連携した上で、引き続きこれについては調査をし、また連携を地方自治体等と取っていきたいと、このように考えているところです。
○辰已孝太郎君 今の答弁は、六月の十八日、これは衆議院の方だったんですけれども、ここでも住宅局長が、今後しっかり実情把握に努めてまいり、必要な対策があれば打っていけるようにやっていきたいと、同じような趣旨のことを答えているんですね。
私は、国交省として、建築基準違反があるかどうかを調べるだけでは不十分だと思っております。だって、あのネットカフェ難民のときは、これは行政として、政府として年齢構成も調べた、雇用の形態も調べたんですね。私は、やっぱり人数も把握していない、どこに行ったかも追跡していない、これでどうやって対策を打てるのかと私は思っております。
是非、もう一度大臣に、政府として実態調査やっていただきたい。
○政府参考人(井上俊之君) 前の答弁のときに、違法是正のプロセス通じて調べますというふうにお答えをしたと思いますけれども、行政庁、まだ、実はやっと違反確定したものが出だしておりまして、これ、違反を是正していただくには、相手方から違反があるということをちゃんと申告をしていただいて、どこが違反かということを相手と共有した上で、指導、そして勧告、命令と、こういうふうに手続踏まなければなりません。まだ端緒に就いたばかりでございまして、行政庁の方もまだこれからというところございますけれども、そのプロセス通じながら居住者の皆さんの実態についてもしっかり把握をしてまいりたいと思います。
ただ、これまで退去をされた、あるいはほとんどが退去をされている先ほどの物件でございますけれども、千代田区の一件を除いては、行政の中で、行き先が困っているとか、特段の問題で行政庁側に報告されたものは今のところないというふうに聞いております。
○辰已孝太郎君 相談窓口がありませんから、相談するにしてもなかなかできないんですよね。
先ほど、脱法ハウスで違法だということになれば退去を迫られるところがこれからもたくさん出てくるということになります。
六月十八日の穀田衆議院議員の質問に対して住宅局長は、居住の実態があって一定期間お住まいになれば、居住用の借家権が発生する場合も当然あると、これは契約書の書きぶりにかかわらずでございますと、こう答弁しております。
そこで、確認をしたいと思います。家主の都合で一方的に追い出すことはできない。退去を求める場合には正当な事由が必要で、例えば立ち退き料の支払や代わりの住まいを示して解約する、こういうことで間違いないでしょうか。
○政府参考人(萩本修君) いわゆる脱法ハウスと呼ばれるものの貸し手側と入居者との法律関係につきましては、具体的な事案ごとに、その実態に即して個別に判断されることになりますが、建物の賃貸借契約に当たるものであれば借地借家法という法律が適用されることになります。借地借家法が適用される場合、その賃貸人の側から賃貸借契約を解約や更新拒絶によって一方的に終了させるためには、今委員御指摘のとおり、正当な事由があると認められる場合でなければならないとされております。この正当な事由は、建物の賃貸人や賃借人がそれぞれ建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、建物の賃貸人が建物の明渡しの条件としてその賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出の内容を総合考慮して判断するとされております。
したがいまして、御指摘のような、貸し手側による立ち退き料の支払や代替住居の提供が直ちに解約や更新拒絶の条件となっているわけではありませんけれども、貸主からの財産上の給付の申出として正当な事由が認められるための事情として考慮されることになると考えております。
○辰已孝太郎君 今の答弁は、家主の都合で一方的に追い出すことはできないと、立ち退き料を支払うとか代わりの住まいを提供するなどの責任があるということだったと思います。
一方で、この脱法ハウスをこれまで放置してきた行政の責任というのは免れないと思います。これから退去する人がますます増えてくるわけですから、早急な対策が求められます。
九月に閉鎖を決定した、株式会社マンボーが管理している建物に私も行ってまいりました。ここは元々貸し事務所であったビルですけれども、一階から六階までのフロアを細かく仕切って、多いときで百二十名が住んでいたと言われております。この施設に最後まで残っておられた居住者の方から聞き取りの調査を行ったところ、驚くべきことに、この施設からの退去者のうち約九割が同様の施設、つまり脱法ハウスに行ったということでありました。結局、同じような脱法ハウスに行かざるを得ない人がいる、これが実態なんですね。
行政は脱法ハウスを取り締まる、これはもちろん大事なことであります。しかし、後は知りませんでは、私は責任の放棄だと思います。行くところがなくて結局トランクルームのようなところにまた住み始めたという方もおられます。なぜ脱法ハウスに住まざるを得ないのか。住まいの貧困に取り組むネットワークの調査によりますと、脱法ハウス入居の決め手になったのは、すぐに入居できる、家賃が安い、そして保証人が要らないということでありました。
そこで、質問したいと思います。脱法ハウスから退去する人への支援をするために早急に相談窓口を設けるべきではないでしょうか。同時に、行政は、同様の脱法ハウスに行かざるを得ない人をこれ以上出さないために、敷金や礼金を補助する、また、低利あるいは無利子の貸付けを行うべきではないでしょうか。どうでしょうか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
脱法ハウスの居住の実態というのは先ほど来出ておりますけれども、私ども関係省庁、それから東京都、あるいは各区、メンバーはそれぞれでございますけれども、これまで八回ほど会議を持っています。持っている理由は情報の共有でございますけれども、その延長で行政としてやるべきことがあるのであれば、そういうことにはしっかり向かっていきたいと、こういう趣旨で開いてきたわけでございますが、これまでのところ、各区の方で就労支援でありますとか、あるいは生活保護等の窓口、これを設けておりまして、建築行政の側で情報を得ればこちらの方にすぐその情報を流すように、これは最初の段階で通知をしているわけでございますけれども、そういう取組をしてまいりました。今のところ区も、それから東京都の方もそういう窓口の対応で今のところは少なくとも十分だというふうに、これも東京都の見解も確認をいたしましたけれども、言っております。
委員御指摘のようなことでこれから問題が広がるのであれば、あるいは広がる兆しがあるのであれば、そのときにしっかりとした対応を考えると思いますけれども、今はその段階ではない、むしろ安全の問題をしっかり追求していくと、こういう段階だというふうに思っております。
○辰已孝太郎君 今、就労支援、また生活保護の相談、関係部局と相談という話がありましたけれども、脱法ハウスにお住まいの方は仕事を持っている方が多いんですよ。だから、就労支援が主に必要なのではないんです。生活保護の方も中にはおられますけれども、そうじゃないんですね。働いている人が多いんですよ。だから、実態調査もしていないからこういうことが分からないということになるんですね。もう必ず実態調査をしてほしいと思っております。
私は、今、国の住宅政策の在り方が大きく問われていると思っています。二〇一二年の国土交通白書では、可処分所得に占める家賃の割合が増えているというデータが出されております。一九八九年と二〇〇九年を比較しますと、四十歳未満の単身の男性は一二・四%から一九・九%に上がっております。同年代の女性では一九・〇%から二四・七%への上昇になっています。これには理由が二つあります。まず、家賃そのものが上昇しているということ、もう一つは、非正規雇用が増大して低賃金の労働者が増えてきたということであります。この部分では、国の政策に責任があるんです。脱法ハウスは、このような低所得者層の受皿になっているわけであります。
今求められているのは、この低額所得者に対する私は実効性ある施策だと思っております。この低額所得者に対する施策、どのようなものがありますか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
まず、住宅政策として取り組んでいるもの、これは、まず公営住宅があろうかと思います。それから、公共賃貸住宅ということで、都市再生機構の住宅も家賃の安いものがございます。これは下げているわけではございませんけれども、セーフティーネットの機能を果たしているんではないかと思います。それからさらに、地域優良賃貸住宅制度というのがございまして、公営住宅に準ずるものだと思っていただければいいと思いますけれども、こういうものもございます。さらに加えて、社会資本整備交付金の中で、これは公共団体の御判断にもよるんですが、一部家賃補助に類したことを取り組んでいるのに効果促進事業ということで助成をしている、こういうものもあろうかと思います。その他、就労支援等々、厚労部局等で対応されているものもあるというふうに承知をしております。
○辰已孝太郎君 今、公営住宅という話がありましたけれども、じゃ、その公営住宅の戸数はどうなっているのかと。二〇〇五年と二〇一一年の数で見ますと、二〇〇五年では二百十九万一千八百七十五戸ありました。ところが、二〇一一年では二百十七万三千四百十九と、増えているどころか減らしているわけですね。二万戸近く減らしております。
一方で、申込みの倍率どうなっているかと見ますと、全国で八倍、東京では二十四・五倍、大阪では十七・三倍という、結局、申し込んでも入れないというのが実態であります。国が支援している、家賃補助等で支援していると言いますけれども、たった十七団体、ここに使っている予算というのは二・八億円にすぎません。低所得者に対する住宅施策というのが非常に貧困だということがもう明らかだと思います。
脱法ハウス問題というのは、格差と貧困の広がったこの社会の一側面でしかありません。住宅困窮者というのは今あふれています。住まいの貧困の解消のためにどうするべきか。公営住宅は入れない、こうなっているわけですから、私は、低所得者に対して民間賃貸住宅への入居時の初期費用や負担の軽減や、また、民間家賃補助制度の創設に踏み切るべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
御指摘の住宅に対する家賃補助制度等の導入ということでございます。
これまでも何度か御指摘なりをいただいてきたところでございますけれども、諸外国、アメリカでありますとか、イギリスでありますとか、フランスでありますとか、ドイツでありますとか、それぞれ家賃補助制度が行われておりまして、これは必ずしも住宅行政としてではなく、雇用行政としてされているものも多いかと思いますけれども、どの国を見ても負担額の増に苦しんでいる。あるいは、アメリカなんかは抽せん制を取って、結局、当たる人、当たらない人ということで不公平という別の格差を生んでいる、こんな指摘もされているところでございます。
さらに、アメリカ、フランスにおいては、こういう助成をすることによってむしろ民間の家賃の方が上がっていくんではないか、家主に助成をしているんではないか、こういうような指摘もされているところでございます。
加えて言いますと、これを事務を誰がやるかということでございまして、いずれにしましても、公正な制度運用となると相当膨大な事務体制が要るということで、なかなか踏み切るべきではないかというお言葉に対してそうですというふうにはいかない、慎重に検討すべき事柄だというふうに思っております。
○委員長(藤本祐司君) 辰已君、時間が来ていますので、簡潔にまとめてください。
○辰已孝太郎君 是非本当に踏み込むべきだと思いますし、低所得者への援助というのは極めて不十分です。一方で、高額所得者、中堅も含めてですけれども、住宅ローン減税などあるわけですよ。これはこれでいいんです。だけど、低所得者にはほとんどありません。格差と貧困が広がる中で、この住生活基本計画でも、住宅困窮者が多様化する中で、住生活の分野において憲法二十五条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティーネットの確保を図っていくことが求められていると書いているわけですから、これの具体化をする必要があるということを申し述べて私の質問といたします。
ありがとうございました。
私は、格差と貧困の問題をライフワークに活動してまいりましたので、是非この角度から住宅問題、とりわけ脱法ハウス問題を取り上げて質問したいと思います。
戸建てやマンション、事務所などを幾つもの部屋に区切って、そこに貸しルームと称して賃貸料金を取って居住させるこの脱法ハウスが、この間、問題になってきました。窓がないということや、また火災等、安全面において建築基準法や消防法の違反となる物件に少なくない人が居住している実態も明らかになりました。国土交通省の調べで、この建築基準法の違反がどれだけあって、そしてそれが是正された物件数、これがどれほどあるのか、お聞かせください。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
今般実態の明らかになりました違法貸しルーム、これは委員御指摘をまつまでもなく、火災時に非常に危険なものだというふうに思っております。国交省としては、何よりも居住者の方の安全の確保を最優先として、特定行政庁、東京都や区、市でございますけれども、と連携しながら違反の是正を進めることが必要だと考えております。
本年の六月から、国交省及び地方公共団体のホームページに、違反の疑いのある物件に関する情報提供をお願いする受付窓口を設けました。ここに寄せられたものが調査対象になって、特定行政庁の方で多くは消防と一緒に調査をするという流れになるわけでございます。以下は、この寄せられた物件の総数八百二十件の九月三十日時点の状況を御報告申し上げたいと思います。
調査中、まだ違反かどうか分からないものが三百九十二件、それから建築基準法関係条例の違反が判明したもの、これが三百六十二件、そのほかに違反がなかったものが二十一件、あるいは閉鎖されておったり他の用途であったことがはっきりした、違反がないということでございますが、四十五件、すなわち違反がはっきりしたものは三百六十二件でございます。このうち、現在、是正指導の準備をしているもの、相手さんに報告求めたりいろいろ手続ございます、これが百七件でございまして、違反が確定をして是正の行政指導しているもの、これが二百五十四件でございます。最終的に違反を直してもらったというふうに現在まで来ているものは一件ということになってございます。
○辰已孝太郎君 それでは、調査を開始した時点、若しくは調査後に施設が閉鎖されたものというのは幾つあるのか。また、今後閉鎖予定の施設、物件の数や、またそれぞれの戸数ですね、物件ではなくて戸数、そして脱法ハウスに住んでおられる方々の居住者の数、これをお聞かせいただけますか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
先ほどの八百二十件のうち、調査に行ったところもう既に閉鎖をしていた、中にはもう解体していたというようなものもございますが、これが十二件でございます。それから、特定行政庁が調査を開始した後に、もう今居住者がいないというふうにはっきりしているもの、これが三件でございます。さらに、事業者の方から何らかの形で閉鎖の意向が示されているもの、これが六件でございます。
その戸数とか詳細については、特定行政庁もいろいろ手間が掛かりますが、できるだけそろった情報をお願いしているところでございますが、相手の事業者の対応いろいろでございまして、数字が必ずしもそろっておりません。現在報告を受けているところでは、退去済みのものについては三件で部屋の合計九十三、居住者、当然ゼロでございます。それから、閉鎖を検討しているもの、これは百八十四件、六件で百八十四室あるんですが、このうち入居者数が分かっているものは三件でございまして、この三件につきますと百三十六室で現在の入居者は十五名ということでございます。
○辰已孝太郎君 調査した結果、九割以上が違反だったと。それと閉鎖された物件が十二件、現在もういない物件が三件あると、こういうことですね。
これから調査入っていくわけですけれども、これらが建築基準法違反ということになれば、改善をするか若しくは閉鎖をするかと、こういう話になってくるわけですね。そこで住んでいる人が出なきゃいけないということになれば、もう千人単位の人がこれから住む場所に困る、路頭に迷うと、こういうことになるわけです。
そこで、私は大臣に聞きたい。行政として、まず、なぜこのような脱法ハウスにこれだけの人が住んでおられるのか、また、出ていった人はこれからどこに行くのか、これらを把握するために行政として実態調査をするべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) まず、国交省としてやるのは、この違法ハウス、違法貸しルームであるかどうかということについて建築基準法に基づいてこれは調べると。そして、是正をするようにということで全力を注いでいくというのがまず第一義です。
そして、この入居者の今お話がありました実態につきましては、この是正プロセスの中でいろんな情報が出てきます。それを特定行政庁と、そして福祉・雇用担当部局とも連携して対応していくという形になります。これまで数度にわたって会議を開催するなどをしまして、その把握に努めてきたというのが実態でございます。
国土交通省としては必要な情報を把握して、そして東京都や特別区、関係地方公共団体と連携した上で、引き続きこれについては調査をし、また連携を地方自治体等と取っていきたいと、このように考えているところです。
○辰已孝太郎君 今の答弁は、六月の十八日、これは衆議院の方だったんですけれども、ここでも住宅局長が、今後しっかり実情把握に努めてまいり、必要な対策があれば打っていけるようにやっていきたいと、同じような趣旨のことを答えているんですね。
私は、国交省として、建築基準違反があるかどうかを調べるだけでは不十分だと思っております。だって、あのネットカフェ難民のときは、これは行政として、政府として年齢構成も調べた、雇用の形態も調べたんですね。私は、やっぱり人数も把握していない、どこに行ったかも追跡していない、これでどうやって対策を打てるのかと私は思っております。
是非、もう一度大臣に、政府として実態調査やっていただきたい。
○政府参考人(井上俊之君) 前の答弁のときに、違法是正のプロセス通じて調べますというふうにお答えをしたと思いますけれども、行政庁、まだ、実はやっと違反確定したものが出だしておりまして、これ、違反を是正していただくには、相手方から違反があるということをちゃんと申告をしていただいて、どこが違反かということを相手と共有した上で、指導、そして勧告、命令と、こういうふうに手続踏まなければなりません。まだ端緒に就いたばかりでございまして、行政庁の方もまだこれからというところございますけれども、そのプロセス通じながら居住者の皆さんの実態についてもしっかり把握をしてまいりたいと思います。
ただ、これまで退去をされた、あるいはほとんどが退去をされている先ほどの物件でございますけれども、千代田区の一件を除いては、行政の中で、行き先が困っているとか、特段の問題で行政庁側に報告されたものは今のところないというふうに聞いております。
○辰已孝太郎君 相談窓口がありませんから、相談するにしてもなかなかできないんですよね。
先ほど、脱法ハウスで違法だということになれば退去を迫られるところがこれからもたくさん出てくるということになります。
六月十八日の穀田衆議院議員の質問に対して住宅局長は、居住の実態があって一定期間お住まいになれば、居住用の借家権が発生する場合も当然あると、これは契約書の書きぶりにかかわらずでございますと、こう答弁しております。
そこで、確認をしたいと思います。家主の都合で一方的に追い出すことはできない。退去を求める場合には正当な事由が必要で、例えば立ち退き料の支払や代わりの住まいを示して解約する、こういうことで間違いないでしょうか。
○政府参考人(萩本修君) いわゆる脱法ハウスと呼ばれるものの貸し手側と入居者との法律関係につきましては、具体的な事案ごとに、その実態に即して個別に判断されることになりますが、建物の賃貸借契約に当たるものであれば借地借家法という法律が適用されることになります。借地借家法が適用される場合、その賃貸人の側から賃貸借契約を解約や更新拒絶によって一方的に終了させるためには、今委員御指摘のとおり、正当な事由があると認められる場合でなければならないとされております。この正当な事由は、建物の賃貸人や賃借人がそれぞれ建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、建物の賃貸人が建物の明渡しの条件としてその賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出の内容を総合考慮して判断するとされております。
したがいまして、御指摘のような、貸し手側による立ち退き料の支払や代替住居の提供が直ちに解約や更新拒絶の条件となっているわけではありませんけれども、貸主からの財産上の給付の申出として正当な事由が認められるための事情として考慮されることになると考えております。
○辰已孝太郎君 今の答弁は、家主の都合で一方的に追い出すことはできないと、立ち退き料を支払うとか代わりの住まいを提供するなどの責任があるということだったと思います。
一方で、この脱法ハウスをこれまで放置してきた行政の責任というのは免れないと思います。これから退去する人がますます増えてくるわけですから、早急な対策が求められます。
九月に閉鎖を決定した、株式会社マンボーが管理している建物に私も行ってまいりました。ここは元々貸し事務所であったビルですけれども、一階から六階までのフロアを細かく仕切って、多いときで百二十名が住んでいたと言われております。この施設に最後まで残っておられた居住者の方から聞き取りの調査を行ったところ、驚くべきことに、この施設からの退去者のうち約九割が同様の施設、つまり脱法ハウスに行ったということでありました。結局、同じような脱法ハウスに行かざるを得ない人がいる、これが実態なんですね。
行政は脱法ハウスを取り締まる、これはもちろん大事なことであります。しかし、後は知りませんでは、私は責任の放棄だと思います。行くところがなくて結局トランクルームのようなところにまた住み始めたという方もおられます。なぜ脱法ハウスに住まざるを得ないのか。住まいの貧困に取り組むネットワークの調査によりますと、脱法ハウス入居の決め手になったのは、すぐに入居できる、家賃が安い、そして保証人が要らないということでありました。
そこで、質問したいと思います。脱法ハウスから退去する人への支援をするために早急に相談窓口を設けるべきではないでしょうか。同時に、行政は、同様の脱法ハウスに行かざるを得ない人をこれ以上出さないために、敷金や礼金を補助する、また、低利あるいは無利子の貸付けを行うべきではないでしょうか。どうでしょうか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
脱法ハウスの居住の実態というのは先ほど来出ておりますけれども、私ども関係省庁、それから東京都、あるいは各区、メンバーはそれぞれでございますけれども、これまで八回ほど会議を持っています。持っている理由は情報の共有でございますけれども、その延長で行政としてやるべきことがあるのであれば、そういうことにはしっかり向かっていきたいと、こういう趣旨で開いてきたわけでございますが、これまでのところ、各区の方で就労支援でありますとか、あるいは生活保護等の窓口、これを設けておりまして、建築行政の側で情報を得ればこちらの方にすぐその情報を流すように、これは最初の段階で通知をしているわけでございますけれども、そういう取組をしてまいりました。今のところ区も、それから東京都の方もそういう窓口の対応で今のところは少なくとも十分だというふうに、これも東京都の見解も確認をいたしましたけれども、言っております。
委員御指摘のようなことでこれから問題が広がるのであれば、あるいは広がる兆しがあるのであれば、そのときにしっかりとした対応を考えると思いますけれども、今はその段階ではない、むしろ安全の問題をしっかり追求していくと、こういう段階だというふうに思っております。
○辰已孝太郎君 今、就労支援、また生活保護の相談、関係部局と相談という話がありましたけれども、脱法ハウスにお住まいの方は仕事を持っている方が多いんですよ。だから、就労支援が主に必要なのではないんです。生活保護の方も中にはおられますけれども、そうじゃないんですね。働いている人が多いんですよ。だから、実態調査もしていないからこういうことが分からないということになるんですね。もう必ず実態調査をしてほしいと思っております。
私は、今、国の住宅政策の在り方が大きく問われていると思っています。二〇一二年の国土交通白書では、可処分所得に占める家賃の割合が増えているというデータが出されております。一九八九年と二〇〇九年を比較しますと、四十歳未満の単身の男性は一二・四%から一九・九%に上がっております。同年代の女性では一九・〇%から二四・七%への上昇になっています。これには理由が二つあります。まず、家賃そのものが上昇しているということ、もう一つは、非正規雇用が増大して低賃金の労働者が増えてきたということであります。この部分では、国の政策に責任があるんです。脱法ハウスは、このような低所得者層の受皿になっているわけであります。
今求められているのは、この低額所得者に対する私は実効性ある施策だと思っております。この低額所得者に対する施策、どのようなものがありますか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
まず、住宅政策として取り組んでいるもの、これは、まず公営住宅があろうかと思います。それから、公共賃貸住宅ということで、都市再生機構の住宅も家賃の安いものがございます。これは下げているわけではございませんけれども、セーフティーネットの機能を果たしているんではないかと思います。それからさらに、地域優良賃貸住宅制度というのがございまして、公営住宅に準ずるものだと思っていただければいいと思いますけれども、こういうものもございます。さらに加えて、社会資本整備交付金の中で、これは公共団体の御判断にもよるんですが、一部家賃補助に類したことを取り組んでいるのに効果促進事業ということで助成をしている、こういうものもあろうかと思います。その他、就労支援等々、厚労部局等で対応されているものもあるというふうに承知をしております。
○辰已孝太郎君 今、公営住宅という話がありましたけれども、じゃ、その公営住宅の戸数はどうなっているのかと。二〇〇五年と二〇一一年の数で見ますと、二〇〇五年では二百十九万一千八百七十五戸ありました。ところが、二〇一一年では二百十七万三千四百十九と、増えているどころか減らしているわけですね。二万戸近く減らしております。
一方で、申込みの倍率どうなっているかと見ますと、全国で八倍、東京では二十四・五倍、大阪では十七・三倍という、結局、申し込んでも入れないというのが実態であります。国が支援している、家賃補助等で支援していると言いますけれども、たった十七団体、ここに使っている予算というのは二・八億円にすぎません。低所得者に対する住宅施策というのが非常に貧困だということがもう明らかだと思います。
脱法ハウス問題というのは、格差と貧困の広がったこの社会の一側面でしかありません。住宅困窮者というのは今あふれています。住まいの貧困の解消のためにどうするべきか。公営住宅は入れない、こうなっているわけですから、私は、低所得者に対して民間賃貸住宅への入居時の初期費用や負担の軽減や、また、民間家賃補助制度の創設に踏み切るべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(井上俊之君) お答え申し上げます。
御指摘の住宅に対する家賃補助制度等の導入ということでございます。
これまでも何度か御指摘なりをいただいてきたところでございますけれども、諸外国、アメリカでありますとか、イギリスでありますとか、フランスでありますとか、ドイツでありますとか、それぞれ家賃補助制度が行われておりまして、これは必ずしも住宅行政としてではなく、雇用行政としてされているものも多いかと思いますけれども、どの国を見ても負担額の増に苦しんでいる。あるいは、アメリカなんかは抽せん制を取って、結局、当たる人、当たらない人ということで不公平という別の格差を生んでいる、こんな指摘もされているところでございます。
さらに、アメリカ、フランスにおいては、こういう助成をすることによってむしろ民間の家賃の方が上がっていくんではないか、家主に助成をしているんではないか、こういうような指摘もされているところでございます。
加えて言いますと、これを事務を誰がやるかということでございまして、いずれにしましても、公正な制度運用となると相当膨大な事務体制が要るということで、なかなか踏み切るべきではないかというお言葉に対してそうですというふうにはいかない、慎重に検討すべき事柄だというふうに思っております。
○委員長(藤本祐司君) 辰已君、時間が来ていますので、簡潔にまとめてください。
○辰已孝太郎君 是非本当に踏み込むべきだと思いますし、低所得者への援助というのは極めて不十分です。一方で、高額所得者、中堅も含めてですけれども、住宅ローン減税などあるわけですよ。これはこれでいいんです。だけど、低所得者にはほとんどありません。格差と貧困が広がる中で、この住生活基本計画でも、住宅困窮者が多様化する中で、住生活の分野において憲法二十五条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティーネットの確保を図っていくことが求められていると書いているわけですから、これの具体化をする必要があるということを申し述べて私の質問といたします。
ありがとうございました。