財政は暮らしを軸に 緊急の対策求める
政府が今後5年間自由に赤字国債を発行できるようにする特例公債法案が16日の参院本会議で審議入りし、日本共産党の辰巳孝太郎議員が質問しました。
辰巳氏は「無駄遣いはやめて保育所を」という多くの子育て世代の声を強調し、不要不急の大規模開発や軍事費増額より国民生活に軸足を置くべきだと力説。速やかな保育所増に向けて国有地の無料貸し出しなどの緊急対策をとること、高すぎる大学学費負担軽減のため給付型奨学金の創設を求めました。
法案について「幾重にも憲法と財政法の精神を踏みにじるものだ」と強調。1975年、当時の大平正芳蔵相が特例公債法を単年度に限定したのは財政規律を保つための最低限の措置であり、「財政法の精神」だと述べていたことに言及。これにそむく安倍政権の姿勢を批判し、「財政規律でも政権の暴走を止めるのは国会によるチェック。これが憲法の原則だ」と強調しました。
辰巳氏は、量的緩和で日本銀行がどれだけ国債を保有しても財政法5条が禁じる「日銀引き受け」ではないと強弁するのかと批判し、法案に反対すると表明しました。
2016年3月18日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、復興財源確保法及び特例公債法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
まず、消費税問題です。
国民生活も経済も財政も壊す消費税増税は中止すべきです。内閣官房参与の浜田、本田両氏からも見直し、凍結論が出ていますが、財務大臣はどう受け止めますか。
アベノミクスによって労働者の実質賃金は下がり、国民に景気回復の実感はありません。
そんな中、保育所の待機児童をめぐって国民の怒りが爆発しています。無駄遣いはやめて安心して預けられる保育所をつくるべきだ、子育て世代の当然の要求に、政府は対策を講じると言明しました。しかし、この四月に入所できない児童はどうなるのでしょう。悠長にプランを検討している時間はありません。定員拡大のための分園設置や改修などの緊急の財政措置をすべきです。厚労大臣、決断してください。
また、国有地を無料で自治体に貸し出すべきです。これは財務大臣の判断一つで、予算も要りません。大臣、決断ください。
高学費とローンともいうべき奨学金が若者を苦しめています。二〇一二年、政府は、高校、大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約十三条二項(b)、(c)の留保を撤回しました。ならば、少なくとも給付型奨学金の創設などの打開策を立てるべきではないですか。文部科学大臣、いかがですか。
全世代にわたる格差と貧困の広がりの中で、国は予算を何に使っているのか、国民からかつてない厳しい視線が注がれています。予算は、不要不急の大規模開発や軍事費の増額よりも、子育て支援や教育、医療、年金など国民生活を支える社会保障に軸足を置くべきです。GDPに占める子育て支援は、OECD諸国中、日本は最低水準であり、教育への公的支出は最下位です。財務大臣、こうした公的支出の在り方を抜本的に変革すべきではないですか、お答えください。
それでは、まず法案提出の在り方について財務大臣にお聞きします。
政府は、復興財源確保法改正案と特例公債法改正案という、目的も償還財源も違う二つの法案を一括法案として提出いたしました。国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関に対し、内閣が異なる法案を一くくりにして一括審議を求めるというのは、まさに国会軽視であり、立法府を形骸化させるものであります。なぜ本来の在り方に沿って、別々の法案として国会に提出できないのか、その理由をお答えください。
そもそも、赤字国債の発行は財政法四条が禁じているところであります。にもかかわらず、本法案で赤字国債の発行を今後五年間にわたって政府の手に委ねるのは、幾重にも憲法と財政法の精神を踏みにじるものであります。
全く影も形もない、二〇一七年度から二〇二〇年度までの予算案で発生するであろう財源不足の穴埋めを、赤字国債の発行ですべきかどうか、今どうやって審議するのでしょうか。財務大臣、説明ください。
一九七五年十二月、当時の大平正芳大蔵大臣は、特例公債の発行が習い性となっては困るわけでございますので、異例の措置であればその年度に限り、その目的のためにこれだけのものをお願いするというように限定しなければならぬと言いました。つまり、特例公債法を単年度に限定したのは、財政規律を保つための最低限の措置であり、大平氏はそれが財政法の精神だとも述べています。
同じ自民党の麻生財務大臣は、赤字国債の自動発行を五年間も認める法案を提出されました。大臣にとって財政法の精神とはどういうものか、お答えください。
財務大臣は、法案の規定により発行抑制が掛かるとか経済・財政再生計画などが歯止めになると言いますが、このような規定や計画が歯止めにならないのは、目標を達成できず、国民生活と日本経済を痛め付ける毒矢となっているアベノミクスを見ても明白ではありませんか。財政規律においても、時の政権の暴走を止めるのは国会によるチェックにほかならない、これこそが憲法に定めた原則ではありませんか。答弁を求めます。
財政法第五条からの逸脱も重大です。財政法第五条は、全て、公債の発行については日本銀行にこれを引き受けさせ、また、借金の借入れについては日本銀行から借りてはならないと定めています。これは、戦前、戦中において大量の公債発行が日銀引受けによって行われた結果、激しいインフレーションを引き起こしたことへの反省に基づいて規定されたものであります。
しかし、現状はどうでしょう。日本銀行は長期国債を年間八十兆円の規模で買い入れる異次元金融緩和を進め、既に長期国債の保有率は全体の三割を超えています。この規模で量的緩和を進めれば、日銀総裁の任期が切れる二〇一八年度末で五〇%近い保有率にまで上昇します。
財務大臣は、日銀が国債をどれだけ保有しても、たとえ半分を占めるに至っても、財政法第五条が禁止する日銀引受けではないと否定されるのでしょうか。また、量的緩和をどれだけ進めても国債が暴落することはないとの考えなのでしょうか。答弁ください。
金融緩和に歯止めが掛かりません。本年一月にマイナス金利が導入されたことで、財務省の入札で国債を調達し、より高い価格で日銀に転売し利益を得る、いわゆる日銀トレードが加速したとの指摘が起こっています。
財務大臣、アベノミクスが始まって以来、どれだけの新規発行国債を日銀が購入しているのか、年度ごとの保有割合を示していただきたい。
最後に、復興財源について質問します。
東日本大震災から五年。今でも十七万五千人もの被災者が仮設住宅などで避難生活を強いられ、被災関連死は三千四百人に達しています。被災地の復興、被災者のなりわいの再建は国の最重要課題であります。
二〇一一年に成立した復興財源確保法では、復興特別増税を、連帯して負担を分かち合うとして、復興特別所得税は二〇一三年から二十五年間、復興特別住民税は二〇一四年度から十年間、そして復興特別法人税は二〇一二年度から三年間の増税となっていました。
ところが、法人税増税分については、財界の要求を受け入れ、前倒しで廃止をいたしました。理由は、企業収益を賃金の上昇につなげていくきっかけとするでありました。では、賃金の上昇は実際に起こったのですか。結局、過去最高の水準の利益を上げている大企業の内部留保を更に積み上げたのではありませんか。財務大臣、お答えください。
憲法と財政法の規定を幾重にも踏みにじる本改正案には断固反対であることを表明して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕