都市再生特別措置法、地域公共交通活性化法案について参考人質疑
8日に都市再生特別措置法、地域公共交通活性化法案の改正について参考人質疑が行われました。
以下議事録を掲載します。
議事録を読む 参考人陳述部分
○参考人(谷口守君) 谷口でございます。よろしくお願いいたします。
済みません、それでは着席で御説明させていただきます。
私、都市計画を専門としておりまして、特に都市の構造、それと、実際にそこに住まれている方の交通行動とか環境負荷とか、そういうものを実際のデータで分析して研究している者でございます。そういう意味で、この審議にそういうデータ等が参考になればということで資料を作成してまいりました。お手元の十五ページほどの、筑波大学谷口守と書いてございます「これからの都市の「形」」という資料で御説明させていただきます。
まず最初、繰っていただいて二ページ目なんですけれども、一応これ共通認識ということで最初にお話しさせていただければと思うんですが、今回の法改正、都市再生特別措置法の改正とそれから地域公共交通活性化・再生法の件ですけれども、これは都市の形がいろいろございますけれども、この一番左側の形ですね、公共交通が主軸になっていて、その中で駅の周辺とかターミナルの周辺がしっかり中心ができているという、コンパクトな形になるべく都市を持っていこうというふうな趣旨で考えられているものかと思います。
逆の、一番右側が、例えばアメリカのロサンゼルスとか、もう完全に自動車に依存してしまうと右側のような都市の形状ができるというふうなことで、都市の形状というのは大体こういうふうに分かれるわけですが、なるべく左側の、そういう公共交通沿いにいろんな都市機能が集まってコンパクトな形で歩いて暮らせる町になるべくしていこうということのメリットは、当然その方がこれからの高齢化社会で暮らしやすいとか、あとエネルギー負荷が小さくなるとか、無駄な投資、それを減らせるとか、あと健康に良いとか、公共交通機関のそういう採算性も良くなるというふうな一石五鳥、六鳥の政策になろうかというふうに考えております。だから、いかにしてこの左側に都市の形を持っていくかというふうなことがこれからの政策のポイントになろうかと思います。
繰っていただきまして三ページ目でございますけれども、三ページ目のところでこういう、済みません、研究分野の資料で申し訳ないんですが、都市の構造を議論するときに必ず出てくる図でございますので、御紹介させていただきます。
左側の方の図が世界の各都市でございますが、その世界の各都市が、人口密度、どれだけコンパクトに住まれているかということですね、ということが横軸になっておりまして、あと縦軸が、その町にお住まいの方の一人当たりの自動車燃料消費量ですね、つまり、どれだけ車に依存している生活をしているかというのが縦軸になってございます。
ということで、一番人口密度が低くて左側の端っこにあるのが、ずっと上にサクラメント、ロサンゼルス、シカゴというふうに名前がございますが、これがアメリカの諸都市です。その下にカナダとかオーストラリアの都市が来ると。この辺りの都市が全然コンパクトでない町ということです。もっと分かりやすく言うと、これは新大陸の都市でございます。自動車ができてから、普及してからその都市ができたということで、自動車を前提にした都市づくりをするとこういうふうな形状になる。
右側にずっと行きますと、アジアの方の都市が右側に出てくるんですが、一番人口密度が高くて一人当たり自動車燃料消費量が低いのは、例えばここでは香港という例で挙がっているということです。
右側の図が日本の都市の実際のデータ分析ですが、形状としては同じようになっているということで、大体、市街化区域の人口密度が倍になりますと一人当たりのガソリン消費量は半分になるという、そういう構造を日本の都市はしてございます。
で、これは都市ごとのお話なんですが、もう一ページ繰っていただきますと、四ページなんですが、じゃ、コンパクトな町をつくりましょうといったときに、我々がいきなり香港をつくれるかというとつくれない、それは無理なわけでございます。どうしたらいいかということは、我々のできることを考えていかなきゃいけないということで、そういう意味でいきますと、この四ページの左上にございます、市全体の中でいろんなパーツがございます。町の中にはいろんなパーツがございます。駅の近くであるとか郊外とか、そういう個々の場所を、一つ一つの場所をどうやって手を入れていけばより良い町になるかということを考えていかなければならない、それが実際我々取れる手段だということになります。
そういうことで、同じような図を、全国の二千の住宅地を持ってきまして、それぞれのところに住まれている方の一人当たりの自動車燃料消費量を縦軸に、横軸にその地区の人口密度を取ると、この右側のような図になってくるということになります。右下に行くほど公共交通の利便性が大きい住宅地であり、なおかつ土地利用のコントロールがしっかりなされている、そういうふうなコンパクトな住宅地というのが右下に来ると。あと、赤いところは商業系でございますけれども、そういう駅前のところとかが一番下側に出てくる、環境負荷が低くて歩いて暮らせるような構造になっているということになります。
五ページに行っていただきますと、そういう町でお一人一人がどれぐらい歩いているかというふうな情報も併せて整理してございます。これは、楽しく町中を歩いていただくという意味では、やっぱりこの上側の人口密度が百人以上、駅から非常に近いところにお住まいの方は徒歩量が非常に多くなっています。あと、下の方の郊外の準工業地域という土地利用計画が余りきちんとされていないようなところでは、車に依存するような形で、健康まちづくりの上でもうちょっと歩行を促進していくというふうな必要があるというふうな差も見えてございます。
六ページに行っていただきまして、このようなことで、日本でコンパクトシティー政策が議論し始めたのは二〇〇〇年以降なんですが、現在に至りますまで、その重要性がいろんな、国ももちろんそうですし、地方自治体でも認識がされるようになってまいりました。地方自治体の都市計画は基本的にマスタープランというものの中でその基本方針が記載されてございますが、その記載の中に果たしてコンパクトシティーという政策が掲げられているかどうかということを、これを丹念に全部集めまして読んで分析したのがこの六ページの例でございます。
これは、下の表にありますような大都市圏から地方圏の都市で何年頃にマスタープランを作成して、それぞれの中に、コンパクトシティーとか、あと都市の低炭素化とか、関係する政策がどれだけきちんと記述されているかということを整理したものでございます。黒が割と昔からそういうプランを作られているところですね。青、赤になるに従って、最近になるに従ってそういうプランを作られた都市ということになります。
これを見ていただきますと、最近、赤の四角ですね、それがコンパクトシティーのところに非常に増えているということで、地方圏都市においてもそういうコンパクトシティー政策を積極的に取り入れようという自治体が増えてきたということがお分かりいただけるかと思います。その中でもいろんな目標を持たれてこういう都市の集約化を進めようとされている。例えば、都市の活力を高めようとする。あと、都市経営ですね、郊外への投資よりも都心に対して重点的に投資をすることで都市全体の投資の効率化を目指そうということで都市経営を目指される、改善を目指されている。あと、当然、周辺の緑を保全することにもなりますので、環境保全を主眼に置かれている都市というふうな形でコンパクトシティーを採用されている都市が倍々のような形で五年ごとに増えてきているというのが実態でございます。
次のページへ行っていただきまして、ところがなんですが、じゃ、実際にこういうプランはできているんですけれども、各自治体の方が本心ではどう思われているかということも実は興味の対象でございまして、いろんな地方で講演とかさせていただく機会に、コンパクトシティーの説明をさせていただくのと併せて、実際どう思われていますかということを地方の行政担当者の方にアンケートをしてまいりました。
実際対象となったのはこの七ページにございます九百三十六名の方で、うち五百二十七名が地方公務員で主に都市計画の担当をされている方で、百三十の自治体の方から回答をいただいております。一番北は北海道から南は沖縄まで、一番小さい町は鳥取県に日吉津村というのがございますが、そこの担当者の方からもいただいております。
その結果が結構ショッキングなんですが、八ページでございまして、八ページで、一回の講演でアンケートしておりますので、その講演を聞く前と後でどうでしたかという差をお尋ねしております。
これ、皆さん、聞いてくださっている方は非常に気を遣われている方ばかりで、私の話を聞いてよく分かったと赤の方が増えているんですが、そこを見ていただきたいのではなくて、見ていただきたいのはここ、オレンジで囲っております。たくさん質問項目あるんですが、その中のDというところのコンパクトなまちづくりの実現可能性はあると思いますかというところに関しては、これは五段階評価の平均なんですが、一・七一なんですね。これ、考え方を受け入れられるかとか、ほかの項目に関しては皆さんそこそこ平均的に回答されているんですが、できると思いますかということに対してはネガティブ、行政担当者の方は無理だと思っているというのが実は実際のところでございました。だから、プランには書くんだけれども無理じゃないかというのが正直な気持ちだったのではないかと思います。
じゃ、なぜ無理ですかというのをお尋ねしたのが九ページの一覧でございます。
九ページのところで、どうしてコンパクトなまちづくり難しいと思いますかという、行政面での障害の部分に対して回答を抜き出したものなんですが、一番は予算がない、それに対応する予算がないということですね。あと、既に決定された計画があるということですね。あと、制度がない。それから、公共交通のサービスレベルが低過ぎる。あと、都市構造が公共交通利用に適していないなどといった項目が上位に挙がってきております。あと、もうちょっと下の、星が付いております適切な事業手法がないというところまで合わせますと、いずれも今回の法律の改正で改善が期待されている項目だというふうに考えております。
実際問題、やろうというふうに各自治体の方は思われているんですが、なかなかできない。それはなぜかというと、ここのように書いてあるこういうことが大変だったということで、そこのところを乗り越えるという意味で今回考えておられる法改正というのは非常に意義があるものではないかというふうに考えております。
残された時間で、十ページ以下の、具体的なコンパクトシティーの例ということで、参考になるかも分からないという海外事例を載せさせていただきました。
十ページ以降にございますのは、カールスルーエというドイツの人口二十万人程度の町でございます。人口二十八万人なんですが、日本で申しますと、県庁所在地だと、人口二十万人ぐらいというと徳島県徳島市とか、あと茨城県水戸市とかのクラスになるんですが、この町が、十一ページ、次のページを見ていただきますと、これは平日の午後、昼下がりなんですけれども、都心でこれだけの人が出ているということでございます。非常ににぎわっておりまして、これ道路の断面見ていただきますと、基本的に公共交通とそれと歩行者のみというふうな道路構成になっているということですね。
ここの町が、結構プランをきちんと考えようということで、次のページの十二ページにお示しするような形で、このFプランという、これはマスタープランに相当する上位計画のものなんですが、こういうプランを作っております。オレンジ色のラインというのは、これはLRTのラインでございまして、百二十キロもちょっと整備して、非常に整備している自治体なんですけれども、そこの大事なターミナルですね、そこをキーにして、A、B、C、Dというふうな形で都市の機能をそこにうまく持っていこうというふうなプランを作っておられるということになります。
十三ページを見ていただきますと、その町中の典型を幾つか入れておりますけれども、例えばAですと、高齢者の方が問題なく町中を移動できるようにということで、沿道も含めて整備を考えるということですね。あとBですが、これはプラットホームとかをわざわざ造らないで、非常にコストを下げた形でターミナルをきちんと造っているとか、あとCはロケーションシステムですけれども、どれぐらいの頻度で次やってくるかというのがこれ見えるかと思いますが、非常に高頻度のサービスをしているということですね。そういうふうなサービスをすると、Dにありますように、大きな荷物を持った買物客の方でも自動車を利用せずに町中に出てきて公共交通を使って生活をしようということになるということでございます。
あと、十四ページ、これは最後の一枚でございますが、やはり日本の空間づくり全体をもうちょっと見直さなければいけないということで、EとF、済みません、国内の事例ですけれども、対比的に入れております。
Fは、例えば交通安全を一生懸命配慮したんだろうと思うんですけれども、歩道とかをいっぱい造っていると思うんですけれども、実は結構逆に危なくなっているというものですね。Gのように、逆にこういうふうに女の子が遊んでいるような、車を入れないで、これトランジットモールと申しますけれども、公共交通と歩行者だけのスペースを造るというふうな形が期待されるということです。
Hはカールスルーエの町中、平日昼下がりで、これ大学生が大学をサボって遊んでいるのかなと思うんですが、日本の大学生はなかなか町中で遊ばないので、大学生が町中で遊ぶような、そういう風景が生まれればよいかなというふうに思っております。
以上、雑駁でございましたが、説明とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
○委員長(藤本祐司君) ありがとうございました。
次に、宇都宮参考人にお願いいたします。宇都宮参考人。
○参考人(宇都宮浄人君) 宇都宮でございます。よろしくお願いします。
では、私も座ってお話をさせていただきたいと思います。
私でございますが、私は交通経済学あるいは経済統計学というのを専門にしておりますが、都市と交通の問題にはそういう意味で大変関心を持っており、これまでもそういった研究者あるいは一市民の立場から都市交通あるいは地域の問題について物を書き、あるいは発言をしてまいりました。今回も、そういう意味で、海外の調査や経験等も踏まえながら私なりの御意見を申し上げていきたいなというふうに思います。
今回のまず法律の改正でございますが、あらかじめ申し上げれば非常にいい方向性であるなと思っておりまして、是非これを推進していきたい。言い換えれば、ただし、それを是非実効性のあるものにしていただきたいなというふうに思っております。逆に言えば、それが実効性がなければ結構日本の状況は厳しいのではないかと、そういう問題意識も持っているということで、海外の事例も含めながらお話をしたいと思います。
資料でございますが、三ページにまず海外の件をちょっとだけ載せております。
現状認識として、日本の現状がかなり厳しい状況であるということは先生方御存じかと思いますが、少し海外を見るとちょっと違った絵が見えてくると。つまり、ここではドイツの例を挙げてございます。実を言うと、ドイツというのも日本と同じように、人口は日本より先に減少していて、さらに高齢化が進み、六十五歳人口が既にもう大分前に二〇%を上回ると。更に言えば、やはり車社会というのはこれはもう避けて通れないわけで、ドイツでもいまだに自動車保有台数は増えている。にもかかわらず、地域公共交通、ここでは都市圏の近距離交通も含めるわけですが、そういったものの利用は増加しているということです。
実際ドイツに行きますと、先ほど人口二十万とかいうお話ありましたけれども、そういったカールスルーエのような町が大変なにぎわいを見せている。日本であればシャッター街であると。この彼我の差は何かあるだろうなと、これはやはり何か政策的な問題があるのではないかという気がするわけでありまして、先ほど谷口先生の紙にもありましたとおり、LRT、公共交通が人を運び、町中が人でにぎわっていると、こういう姿があるわけです。
それで、一枚めくっていただきますと、今度フランスの事例もちょっとだけ書いてございますが、フランスは実はドイツと違って路面電車、このLRTと呼ばれるものを一度全部廃止しました。そういう意味で自動車社会にやはりなったわけですが、実はドイツはかつてあるものをそのまま生かしている、フランスはそれを復活させているわけですね。しかも、これ見ていただくとお分かりのように、ほとんど二〇〇〇年以降に、人口十万前後、フランスの場合は都市の規模が小さいので日本でいうと六掛け、八掛けかもしれませんが、いずれにしても、日本でいうところの人口二十万前後の町がこういった新しいLRT、都市交通を導入することによってやはり同じようににぎわいを取り戻しているということです。
かつては自動車であふれ空気が汚れていた町が復活している、こういう事実があるということを考えると、言い換えれば、日本においても何かそういうことを考えていく必要があるのではないかということを感じるわけであります。
次のページは、実際に海外の地域公共交通の動向のうちLRTがどれぐらい増えているかというのをグラフで表しております。これは、ドイツのように、あるいは日本の広島のように、かつてからある路面電車は含まれておりません。全く新規、あるいは一回廃止してしまったものを新たに造り直したLRTと呼ばれる次世代型路面電車、これだけをカウントして、今やこの三十年余りに百四十を超えるに至っていると。ちなみに、日本は富山のライトレール一か所だけであります、廃止のケースはありましたけれども。こういう現状があるということで、やはり何か日本と世界というのは、政策的な違いがこういうことをもたらしていないかということが考えられるわけです。
それで、次に、私の意見としては、日本の常識は世界の非常識という観点から幾つか、何点か申し上げたいと思います。
まず、日本の場合、公共交通は黒字経営が基本であると。これはこれで一つの考え方でありますし、実際民間事業者が頑張って収支を得ている、これは重要なポイントでありますが、経済学を勉強した人間からすれば、市場メカニズムというのは市場の失敗がある、交通というのはその典型であるということが書かれているわけです。
実は、諸外国では、例えば建設コストも含めた資本コスト、これはもう公的資金で賄うのが基本であります。イギリスの場合は一部それを民間資金を入れるPFIとか議論が始まっていますけれども、これはあくまで社会資本であるというのがもう当然のように常識なわけであって、日本はたまたま、戦後あるいは高度成長期からバブル期まで地価が上がり、右肩上がりで人口が増えと、こういう時代で建設コストが回収できたわけですけれども、そういうことというのはある意味で特別な時代の話であって通常はあり得ないよと、こういう発想であります。これが一つ。
更に言えば、日本の場合は、当然運行費用も運賃収入で賄う、これが当たり前なんですね。よく、これができていても金利払いがあるので赤字だよといっていろいろたたかれるわけですが、実は海外ではそもそも運行費用も運賃収入でカバーすることを求めていないわけであります。別に、都市の一装置である、社会資本である移動装置を、その単体の事業の収支で合わせる必要があるんですかと。それはあたかも、百貨店がエレベーターという装置を設置して、移動手段としての装置を設置していて、エレベーターに百円とか二百円取って、エレベーターのメンテナンス代、電気代、そういった費用を賄って、エレベーターだけで単体の収支取らないのと同じですね。こういう発想なわけです。
実際、それぐらい収支が合うぐらいであればむしろ安くしようみたいな発想すらあるわけで、次のページ見ていただくとかなりの補助率が出ているし、これちょっとデータ古いんですが、最近新しいデータで見ても、やっぱり五十都市辺りぐらい調べても、大体中央値は、運賃で賄えるのはまあ半分前後かなと、こういう状況が一つあります。これがまず一つ目の日本の非常識。
それから次は、都市内の公共交通事業者、当然民間ベースですので市場競争というのが原則になっています。私自身は、非常に、民間活力を生かし、効率的な経営を行い、サービス向上を目指す、これは重要だと思っているし、運行を民間でやること自体は全く異存はありませんが、実は、効率的な資源配分と経済学者は言うわけですが、それはやっぱり調整も必要なんですね。
例えば、ダイヤ調整。今回の法律出ていますけれども、もし競争して、ゼロ分、二十分、四十分のバスに対して次の競争相手はどうするかというと、一分前の五十九分、十九分、三十九分と、こういうバスのダイヤを設定するわけです。そうすると、確かに競争はしているけれども、利用者であるバスの利用者は結局、ゼロ分を逃した後、十九分まで待たされるわけです。これがもしダイヤ調整してゼロ分、十分、二十分になれば十分で済む。この待ち時間九分というのは、経済学的には極めて資源配分が無駄だという言い方をします。なぜなのか。待たなければならないわけですから、その間待つということはすごい資源の浪費なわけです。こういう非効率なことが起こる。
あるいは、日本の場合は運賃も統合されていません。海外では大体、交通計画主体が運賃統合までして共通運賃制、ゾーン運賃制やります。日本はそれぞれ異なる。どういうことが起こるか。例えば、本来であればJRと地下鉄とを組み合わせて行けば最も早い距離であっても、いや、そうすると高くなるから、ぐるりと回って地下鉄に乗ろうとか、あるいは電車は使えないからバスだけ乗ろう。これは結果的に、我々の労働も含めた資源を非効率にゆがめているわけです。だから、そういう意味では、経済学者からすると、こういう仕組みというのはやっぱりよろしくないわけですね。なので、こういう意味で、今の日本の市場原則というものを公共交通市場に単純に生かすわけにはいかないであろうということであります。
それから三点目として、道路の件ですけれども、自動車の円滑な通行、これが交通の発達、これ重要です。私は自動車を全く否定しませんが、やっぱり空間利用ということを考えたときに、自家用車に占拠されるのがいいのか、公共交通に誘導する方が結果的に自動車も含めて便利になりますよというのが、この左の下の、これはストラスブールの図なんです。
それから、もう一枚めくっていただきますと、実は道路というのは、今実際各地でいろいろやろうとするとすぐ渋滞という問題が起こるわけですけれども、本当は、自動車の円滑な通行も重要だけれども、歩行者だって自転車だって、あるいは沿線住民も利用するわけです。
それで、先ほど谷口先生の写真にもありましたとおり、トランジットモール、歩行者と公共交通の専用空間、これでき上がっているわけですね。これはもう世界中あるわけです。日本ではほとんどありません。厳密に言うとバスで一部ありますが、そもそも路面電車入れないんですね、これ道路交通法で。何でも、歩行者専用道路に車両が入る場合は一応許されているんですが、車両等となっていないので路面電車は入れないと。したがって、日本では路面電車は、トランジットモールは、現行制度では駄目らしいということが現行の法解釈であると、こういう非常にナンセンスなことが起こっているわけです。こういったことはやっぱり改めていく必要があるんじゃないかなと思うわけです。
ちょっと次、ページ飛ばしまして、三。じゃ、どういう形で総合的な政策を目指していくかということで、私なりに一つ、私というか、世界の交通経済学の人がシェアしている一つの考え方があります。STOと言われています。要は、より良い交通政策、社会を築く上でSとTとO、すなわち、戦略であるストラテジーと戦術であるタクティクス、そしてオペレーションがあると。戦略というのは、交通政策どうすべきかとか、市場シェアどうすべきかとか、どういう地域にどういうターゲットでやるかという長い意味での戦略。戦術は、例えば共通運賃にするのか、どんなイメージの車両を走らせるのか、あるいはどんなダイヤにするのか、こういった戦術がある。そして、実際の運行がある。こういう整理が大体世界の交通経済学者ではシェアされています。私もこのSTOをベースに少し整理をしてみました。
次のページですけれども、私は、今回、交通政策基本法ができ、あるいは今回の法改正の理念的な意味でのストラテジー、戦略というのは大分明確になってきたと思うんですが、じゃ、それを実現するための戦術はどうかと。幸い、ヨーロッパなんかでは実はこのオペレーションの部分も非常に問題になるんですが、日本の場合は、いろいろ問題があるとは言われますが、現場は結構堅実だなと思っていますので、私はやっぱりこのタクティクスをもう少し確立すべきであろうなというふうに感じております。
そこで、私なりに最後に意見を幾つか述べて締めたいと思いますが、まず一つ、真に総合的なということなんですが、これまでも総合という言葉は常に使われてきました。しかし、ともすると総花的になりかねません。海外では、かつては総合政策と日本で訳していたコーディネーションポリシー、言わば個別単位の調整をやっていたわけですが、今はインテグレーテッドポリシー、つまり一つ一つの要素を組み合わせて一体化した政策にすると。さっきの運賃にしてもダイヤにしても、A社とB社が争ったのでそこを調整しましょうじゃない、都市計画全体の中で統合して交通を考えていく、こういうポリシーにしていく必要があると。これ、海外の状況であります。
したがって、単に単純なダイヤ調整ではなく、路線、ダイヤ、更に言えば、それは鉄道間だけではなく鉄道とバス、あるいはバスと場合によっては自転車、あるいは車の駐車料金政策も含めた、こういったものがなければいけない。言い換えると、日本の場合はパーク・アンド・ライドをしても、駐車料金を払ってその後もう一回電車賃を払う、こんなことするぐらいだったらそのまま車で行っちゃおうみたいな話になってしまうわけですね。ということがないようにする必要がある。
あるいは、公共交通に移動するのであれば、車も重要だけれども、都心まで車で来られる方、社長さん、忙しい方、そういう支払意思の高い方は来てもらってもいいよ、ただし都心の駐車場は高くするよと、こういった傾斜的な駐車料金の制度とか、こういったものを含めて全体、統合的な政策が必要なんではないかということが一つ。先ほど来申し上げている初乗り運賃が会社ごとに取られるなんていうのも、そういう意味で変えていく必要があるのではないかというのが一つ。
それから二つ目ですけれども、ここに書いてあるのは、自家用車との適正な役割分担ということも、これは法改正等でも出していますが、具体的に強力に推進してもらう必要があるということで、やはり中心市街地の道路というものは公共交通優先にする、もちろん郊外は車も使っていただく、こういったものをもう少し明確にメッセージ出してほしい。逆に、中心市街地であれば、多分日本で見たことないのでいろいろ問題あるんでしょうけれども、バスと例えば路面電車の通路共用、こういうのが当たり前のように海外では行われているわけですね。例えば、こういう形で公共交通というものを一体化してやっていくような制度も可能じゃないかなというふうに思うわけです。
それから最後、そういったもろもろの統合的な政策をするに当たって、やっぱり広域調整機能というのは担保していただかないといけない。交通というものは一つの行政、自治体で収まるものではありません。場合によってはそれぞれの自治体同士の利害が対立することもある。そこの主体を明確化することによって真に総合的な政策を目指していただくと。
とにかく、今回の法改正によってやはり強いメッセージを送っていただきたい。確かに県が調整に入ると。でも、私聞きますと、やっぱり県もできるんでしょうぐらいで、現場の自治体の方って何か腰がまだ引けているわけですね。そうではないんだと、今後はこういう方向でやっていくんだということをメッセージとして出し、先ほど日本の常識、世界の非常識と申し上げましたが、やっぱりこれまでの時代的な背景の中でとらわれている我々の社会通念、これは一般市民も含めてですけれども、そういった社会通念を今回の法改正によって大きく変化させていく、変革していく、そういうメッセージを発していただけたらなというふうに思います。
取りあえず、私の陳述は以上でございます。
○委員長(藤本祐司君) どうもありがとうございました。
次に、岡本参考人にお願いいたします。岡本参考人。
○参考人(岡本勝規君) 岡本勝規と申します。本日はよろしくお願いいたします。
私は、専門が人文地理学で、フィールドワークとか聞き取りとか、そういった方式で研究を進めているタイプの人間でございます。高等専門学校というところで教員をしておりますけれども、富山というところで暮らす一市民として公共交通に関する市民運動にも関わってまいりました。今回こういう場でお話しさせていただく機会を与えてくださいましたので、コンパクトシティーを標榜する富山に住んでいる者として、理論というよりは実態のようなものを中心にお話をさせていただければと思い、お話しさせていただきます。
コンパクトシティーというふうに言いますと、まず大体名前が挙がりますのが青森、それから富山だと思います。富山でも確かにそういったことを標榜して久しいかとは思います。私自身は富山に住んで十五年ほどになるのですが、確かに来た当初、かなり中心市街地、寂しい印象を受けました。幼少の頃にまた北陸へ、別のところに住んでいたときに富山へ来たときはもう少しにぎわっていたのになという印象を受けました。
その後、コンパクトシティーの名の下、様々な再開発がなされたかと思います。
皆様のお手元の資料を見ていただきたいのですが、お手元の資料の方の一番後ろのこの図でございます、こちらを御覧いただけますでしょうか。三枚目の図でございますけれども、中心の商店街、富山においては総曲輪通り、総曲輪と書いてありますけれども、ここはソウガワ通りといって、ここと、それから中央通り、そしてその間に南北に市電が通っておる通り、この辺りが中心市街地、中心商店街となっております。昨今、コンパクトシティーということで、総曲輪通りの西の端っこ辺り、総曲輪フェリオと書いてある部分がございますが、この辺り一帯が再開発されたと。その目的というのが、やはり中心市街地の活性化、にぎわいを取り戻していくということ、言うなれば再編成の過程で新しい核をつくろうという動きだと思います。
その結果として、一つの例を示しますが、歩行者通行量の変化というものを御覧いただきたいと思います。一枚目を御覧ください。こちらは、この中心商店街の各地における歩行者通行量の変化でございます。
こちらの方を見ていただきますと、そこの総曲輪フェリオと呼ばれている再開発地区ができ上がりましたのが平成の十九年でございました。ですので、効果として平成十九年以降どうなっていくのかというのがやはり重要なのでございますですけれども、なかなか歩行者通行量というのが伸びていないという現状がございます。もちろん、一時的に、例えば平成十八年から十九年の動きを見ていただきますと、赤いラインで示した富山西武南側とか、あるいは青いラインで示している総曲輪フェリオ北西側といったところ、ここの部分は平成十九年に再開発事業が完了したときにぐっと戻しているわけですけど、その後また漸次下がっていっていると、そのような状況にあります。
また、商店の数というものに関しましても、なかなか増加というのが見られていないようでございます。といいますのも、これは私の方で調べたものでございますけれども、例えば総曲輪商店街の振興組合に加盟されている会員数というもの、これが平成二十年には八十三、会員数あったわけでございますが、八十三あったのでございますが、平成二十五年には五十八になってしまっております。
コンパクトシティーということに関する論文をつらつら見ますに、町中の居住者というものについては一定の効果が見られて増えていく傾向というものが多いようでございますが、残念ながら、歩行者交通量とかあるいは商店の数といったような点に関しては余り成果が上がっていないというような見解が多いように思います。
実際のところ、そうなってきますと、そこの地元の商店は一体どうなってしまっているのかということになりますが、歩行者交通量の下に一枚写真が載っております。これは私がこの連休中に撮ってきたものでございます。五月の六日に撮ってまいりました。この写真は中央通り商店街と呼ばれている商店街の一角でございます。どの辺りかと申しますと、市街地のこの再開発の図を見ていただければお分かりになると思いますが、右側の紫のラインが中央通り商店街です。平成十二年にマンション中心のビル完成と書いてあるこの辺り、これより若干東側で撮った写真になります。連休中にもかかわらず余り人がいらっしゃいません。
このような状態ということになってしまいますと、実際に町中に住む人が富山でも増えてはおりますが、増えてはいるにもかかわらず、なかなか歩行者通行量であるなり、あるいは商店の客入りなりに反映してこないという現状があるということで、必ずしも結び付かないなという印象を持ちます。
また、もう一つ問題でありますのは、こういうふうに商店街が閑散としているのを見ると、何もないなというような印象を受けられるかもしれませんが、実はこのような商店街でもぱらぱらと店がございまして、そしてその中ではそれぞれの思いで頑張っておられるわけでございますね。そこへ再開発の事業が降ってくるというような、まあ本来はコンセンサスを得てやっているはずですから降ってくるという表現はおかしいんですけれども、やってきたときにどういう再編成がなされるかということですね。
例えば、総曲輪フェリオという再開発地域においては、かつては六十五の店舗数があったというふうに言われておりますけれども、その後再開発事業が完了したときに元あった店舗で残ったのは幾つだったかというと、六つだというふうに言われております。そうなってきますと、再編成といってもかなりの淘汰がなされて、それから新しい店が外部から招かれているというような傾向になりはしていないか。この辺では、例えば再開発地区に大きな本屋さんが入りましたけれども、そのあおりかどうかは分かりませんが、お向かいにあった老舗の本屋さんがなくなっていたりとかいうようなこともございます。
ですので、コンパクトシティーというのが新しいスクラップ・アンド・ビルドのコンセプトとしてかなり、何といいますか、魅力的なコンセプトにはなってはおるかとは思いますけれども、その過程で、地元に既に存在している、あるいは頑張っているというような商店の存在というものを生かし切れているかどうかというところが一つ懸念材料として残ります。
二枚目を御覧ください。
私が一つ懸念をしておるのは、このままでいった場合、いわゆるウィンブルドン現象と呼ばれている、要するに外側から来た商店で活発になっていって地元の商売が残らない、あるいは、外側から来た商店で一時的に活発にはなるけれども、しかしながら何らかの事情で撤退してまた非常に閑散とした状況に戻ってしまうというようなことを懸念をしております。
続いて、交通の方でお話をさせていただきます。
交通の方では、富山というのは公共交通に力を入れている日本においてもなかなか希有の存在だと思っております。その点は積極的に評価しなければならないと思います。ただ、例えばこの中心市街地において、公共交通が必ずしも政策の軸になっているのかどうかということについては少し検討が必要ではないかと。
というのも、現在中心市街地の駐車場の状況というのを、単純に地図の検索で見ただけでもこれだけばっと出てまいりました。これだけあるのでございますですけれども、中心市街地の再開発においては大体大規模駐車場が造られておりまして、今回総曲輪フェリオを中心とした再開発においても六百三十台の駐車場が造られております。また、今後計画されているシネマコンプレックス等を中心とした再開発においても百六十台ぐらいの駐車場が計画されていると。
先ほど宇都宮先生もおっしゃっておられましたけれども、公共交通というものを軸として考えていくのであるならば、マイカーというものについて、マイカーとの競合というものについても考えていかなければなりません。このままでいきますと、マイカーと公共交通の共存と言いますけれども、本当にマイカーから公共交通の方へ人を誘導しようとしているのかどうかというのがちょっと分からない状態かと思います。コンパクトシティーということに関してある程度腹を決めてやっているのであれば、公共交通についてもある程度腹を決めてそちらに軸足を移してほしいなと思っております。
富山においては、基本的に路線の整備であるとかあるいはフリークエンシーであるとかといったようなことについては割と積極的な対応が取られていると思っておりますけれども、しかしながら、やはり積み残しておるのは、これは富山に限らず言えると思いますが、運賃の問題だと思っております。やはり公共交通というのは、路線があって、じゃんじゃんやってきて、それでかつ安いというのが重要だと思います。やはり周囲の人に話聞いてみますと、公共交通で家族全員で移動するととても高いと言うんですね。本来であれば、車の購入費を考えるとそこまで高いと言えるのかなとは思うんですけれども、高いと言います。その点、先ほど来例に挙がっているカールスルーエなんかは、家族パスを利用すれば休日は無料にするとか、そういった非常に運賃面での優遇策も講じておられる。
また、初乗り運賃の問題というのもございます。本来であればゾーン運賃制を導入すべきだと思いますが、例えばソウル市なんかでは、ICカードで乗っていけば五回までは乗り換えられて、運賃を通算する、距離によって通算するというようなこともやっておりますから、是非そういったことも考えてほしいというふうに思います。
ただ、本来であれば、そういったことをやるに当たっては、自治体なり国なりにしても、何らかの法的な裏付けというものがあるべきではないかとは思います。昨今、交通基本法というのが出ましたですけれども、やはり移動権の問題というものをはっきり位置付けていないのも問題ではないかと思います。自治体にあっては移動権などを盛り込んだ基本条例などを制定するなり、あるいは国は交通基本法でそういったことも保障するなりして、その結果、それを根拠にして公共交通というものの整備に邁進をするというか前進するというような形が私は正しい道だと考えます。
最後に、この公共交通の問題というのはよく高齢者を対象にして話が出てまいりますけれども、実は若年層も結構大変な思いをしております。私なんかの教え子に話を聞きますと、早く免許を取って自由に動きたいというような声を聞きます。そういったことを考えますと、やっぱり若者にもちょっと厳しい町になっているんだろうなと、地方都市は。そういったところに今後残ってくれるのかなというのを非常に懸念をしておりますので、若年層の側にも配慮した整備というのを考えてほしいなと思います。高齢者の行動パターンだけを念頭に置いての整備ではちょっと不十分ではないかなと思っております。
済みません。以上です。
済みません、それでは着席で御説明させていただきます。
私、都市計画を専門としておりまして、特に都市の構造、それと、実際にそこに住まれている方の交通行動とか環境負荷とか、そういうものを実際のデータで分析して研究している者でございます。そういう意味で、この審議にそういうデータ等が参考になればということで資料を作成してまいりました。お手元の十五ページほどの、筑波大学谷口守と書いてございます「これからの都市の「形」」という資料で御説明させていただきます。
まず最初、繰っていただいて二ページ目なんですけれども、一応これ共通認識ということで最初にお話しさせていただければと思うんですが、今回の法改正、都市再生特別措置法の改正とそれから地域公共交通活性化・再生法の件ですけれども、これは都市の形がいろいろございますけれども、この一番左側の形ですね、公共交通が主軸になっていて、その中で駅の周辺とかターミナルの周辺がしっかり中心ができているという、コンパクトな形になるべく都市を持っていこうというふうな趣旨で考えられているものかと思います。
逆の、一番右側が、例えばアメリカのロサンゼルスとか、もう完全に自動車に依存してしまうと右側のような都市の形状ができるというふうなことで、都市の形状というのは大体こういうふうに分かれるわけですが、なるべく左側の、そういう公共交通沿いにいろんな都市機能が集まってコンパクトな形で歩いて暮らせる町になるべくしていこうということのメリットは、当然その方がこれからの高齢化社会で暮らしやすいとか、あとエネルギー負荷が小さくなるとか、無駄な投資、それを減らせるとか、あと健康に良いとか、公共交通機関のそういう採算性も良くなるというふうな一石五鳥、六鳥の政策になろうかというふうに考えております。だから、いかにしてこの左側に都市の形を持っていくかというふうなことがこれからの政策のポイントになろうかと思います。
繰っていただきまして三ページ目でございますけれども、三ページ目のところでこういう、済みません、研究分野の資料で申し訳ないんですが、都市の構造を議論するときに必ず出てくる図でございますので、御紹介させていただきます。
左側の方の図が世界の各都市でございますが、その世界の各都市が、人口密度、どれだけコンパクトに住まれているかということですね、ということが横軸になっておりまして、あと縦軸が、その町にお住まいの方の一人当たりの自動車燃料消費量ですね、つまり、どれだけ車に依存している生活をしているかというのが縦軸になってございます。
ということで、一番人口密度が低くて左側の端っこにあるのが、ずっと上にサクラメント、ロサンゼルス、シカゴというふうに名前がございますが、これがアメリカの諸都市です。その下にカナダとかオーストラリアの都市が来ると。この辺りの都市が全然コンパクトでない町ということです。もっと分かりやすく言うと、これは新大陸の都市でございます。自動車ができてから、普及してからその都市ができたということで、自動車を前提にした都市づくりをするとこういうふうな形状になる。
右側にずっと行きますと、アジアの方の都市が右側に出てくるんですが、一番人口密度が高くて一人当たり自動車燃料消費量が低いのは、例えばここでは香港という例で挙がっているということです。
右側の図が日本の都市の実際のデータ分析ですが、形状としては同じようになっているということで、大体、市街化区域の人口密度が倍になりますと一人当たりのガソリン消費量は半分になるという、そういう構造を日本の都市はしてございます。
で、これは都市ごとのお話なんですが、もう一ページ繰っていただきますと、四ページなんですが、じゃ、コンパクトな町をつくりましょうといったときに、我々がいきなり香港をつくれるかというとつくれない、それは無理なわけでございます。どうしたらいいかということは、我々のできることを考えていかなきゃいけないということで、そういう意味でいきますと、この四ページの左上にございます、市全体の中でいろんなパーツがございます。町の中にはいろんなパーツがございます。駅の近くであるとか郊外とか、そういう個々の場所を、一つ一つの場所をどうやって手を入れていけばより良い町になるかということを考えていかなければならない、それが実際我々取れる手段だということになります。
そういうことで、同じような図を、全国の二千の住宅地を持ってきまして、それぞれのところに住まれている方の一人当たりの自動車燃料消費量を縦軸に、横軸にその地区の人口密度を取ると、この右側のような図になってくるということになります。右下に行くほど公共交通の利便性が大きい住宅地であり、なおかつ土地利用のコントロールがしっかりなされている、そういうふうなコンパクトな住宅地というのが右下に来ると。あと、赤いところは商業系でございますけれども、そういう駅前のところとかが一番下側に出てくる、環境負荷が低くて歩いて暮らせるような構造になっているということになります。
五ページに行っていただきますと、そういう町でお一人一人がどれぐらい歩いているかというふうな情報も併せて整理してございます。これは、楽しく町中を歩いていただくという意味では、やっぱりこの上側の人口密度が百人以上、駅から非常に近いところにお住まいの方は徒歩量が非常に多くなっています。あと、下の方の郊外の準工業地域という土地利用計画が余りきちんとされていないようなところでは、車に依存するような形で、健康まちづくりの上でもうちょっと歩行を促進していくというふうな必要があるというふうな差も見えてございます。
六ページに行っていただきまして、このようなことで、日本でコンパクトシティー政策が議論し始めたのは二〇〇〇年以降なんですが、現在に至りますまで、その重要性がいろんな、国ももちろんそうですし、地方自治体でも認識がされるようになってまいりました。地方自治体の都市計画は基本的にマスタープランというものの中でその基本方針が記載されてございますが、その記載の中に果たしてコンパクトシティーという政策が掲げられているかどうかということを、これを丹念に全部集めまして読んで分析したのがこの六ページの例でございます。
これは、下の表にありますような大都市圏から地方圏の都市で何年頃にマスタープランを作成して、それぞれの中に、コンパクトシティーとか、あと都市の低炭素化とか、関係する政策がどれだけきちんと記述されているかということを整理したものでございます。黒が割と昔からそういうプランを作られているところですね。青、赤になるに従って、最近になるに従ってそういうプランを作られた都市ということになります。
これを見ていただきますと、最近、赤の四角ですね、それがコンパクトシティーのところに非常に増えているということで、地方圏都市においてもそういうコンパクトシティー政策を積極的に取り入れようという自治体が増えてきたということがお分かりいただけるかと思います。その中でもいろんな目標を持たれてこういう都市の集約化を進めようとされている。例えば、都市の活力を高めようとする。あと、都市経営ですね、郊外への投資よりも都心に対して重点的に投資をすることで都市全体の投資の効率化を目指そうということで都市経営を目指される、改善を目指されている。あと、当然、周辺の緑を保全することにもなりますので、環境保全を主眼に置かれている都市というふうな形でコンパクトシティーを採用されている都市が倍々のような形で五年ごとに増えてきているというのが実態でございます。
次のページへ行っていただきまして、ところがなんですが、じゃ、実際にこういうプランはできているんですけれども、各自治体の方が本心ではどう思われているかということも実は興味の対象でございまして、いろんな地方で講演とかさせていただく機会に、コンパクトシティーの説明をさせていただくのと併せて、実際どう思われていますかということを地方の行政担当者の方にアンケートをしてまいりました。
実際対象となったのはこの七ページにございます九百三十六名の方で、うち五百二十七名が地方公務員で主に都市計画の担当をされている方で、百三十の自治体の方から回答をいただいております。一番北は北海道から南は沖縄まで、一番小さい町は鳥取県に日吉津村というのがございますが、そこの担当者の方からもいただいております。
その結果が結構ショッキングなんですが、八ページでございまして、八ページで、一回の講演でアンケートしておりますので、その講演を聞く前と後でどうでしたかという差をお尋ねしております。
これ、皆さん、聞いてくださっている方は非常に気を遣われている方ばかりで、私の話を聞いてよく分かったと赤の方が増えているんですが、そこを見ていただきたいのではなくて、見ていただきたいのはここ、オレンジで囲っております。たくさん質問項目あるんですが、その中のDというところのコンパクトなまちづくりの実現可能性はあると思いますかというところに関しては、これは五段階評価の平均なんですが、一・七一なんですね。これ、考え方を受け入れられるかとか、ほかの項目に関しては皆さんそこそこ平均的に回答されているんですが、できると思いますかということに対してはネガティブ、行政担当者の方は無理だと思っているというのが実は実際のところでございました。だから、プランには書くんだけれども無理じゃないかというのが正直な気持ちだったのではないかと思います。
じゃ、なぜ無理ですかというのをお尋ねしたのが九ページの一覧でございます。
九ページのところで、どうしてコンパクトなまちづくり難しいと思いますかという、行政面での障害の部分に対して回答を抜き出したものなんですが、一番は予算がない、それに対応する予算がないということですね。あと、既に決定された計画があるということですね。あと、制度がない。それから、公共交通のサービスレベルが低過ぎる。あと、都市構造が公共交通利用に適していないなどといった項目が上位に挙がってきております。あと、もうちょっと下の、星が付いております適切な事業手法がないというところまで合わせますと、いずれも今回の法律の改正で改善が期待されている項目だというふうに考えております。
実際問題、やろうというふうに各自治体の方は思われているんですが、なかなかできない。それはなぜかというと、ここのように書いてあるこういうことが大変だったということで、そこのところを乗り越えるという意味で今回考えておられる法改正というのは非常に意義があるものではないかというふうに考えております。
残された時間で、十ページ以下の、具体的なコンパクトシティーの例ということで、参考になるかも分からないという海外事例を載せさせていただきました。
十ページ以降にございますのは、カールスルーエというドイツの人口二十万人程度の町でございます。人口二十八万人なんですが、日本で申しますと、県庁所在地だと、人口二十万人ぐらいというと徳島県徳島市とか、あと茨城県水戸市とかのクラスになるんですが、この町が、十一ページ、次のページを見ていただきますと、これは平日の午後、昼下がりなんですけれども、都心でこれだけの人が出ているということでございます。非常ににぎわっておりまして、これ道路の断面見ていただきますと、基本的に公共交通とそれと歩行者のみというふうな道路構成になっているということですね。
ここの町が、結構プランをきちんと考えようということで、次のページの十二ページにお示しするような形で、このFプランという、これはマスタープランに相当する上位計画のものなんですが、こういうプランを作っております。オレンジ色のラインというのは、これはLRTのラインでございまして、百二十キロもちょっと整備して、非常に整備している自治体なんですけれども、そこの大事なターミナルですね、そこをキーにして、A、B、C、Dというふうな形で都市の機能をそこにうまく持っていこうというふうなプランを作っておられるということになります。
十三ページを見ていただきますと、その町中の典型を幾つか入れておりますけれども、例えばAですと、高齢者の方が問題なく町中を移動できるようにということで、沿道も含めて整備を考えるということですね。あとBですが、これはプラットホームとかをわざわざ造らないで、非常にコストを下げた形でターミナルをきちんと造っているとか、あとCはロケーションシステムですけれども、どれぐらいの頻度で次やってくるかというのがこれ見えるかと思いますが、非常に高頻度のサービスをしているということですね。そういうふうなサービスをすると、Dにありますように、大きな荷物を持った買物客の方でも自動車を利用せずに町中に出てきて公共交通を使って生活をしようということになるということでございます。
あと、十四ページ、これは最後の一枚でございますが、やはり日本の空間づくり全体をもうちょっと見直さなければいけないということで、EとF、済みません、国内の事例ですけれども、対比的に入れております。
Fは、例えば交通安全を一生懸命配慮したんだろうと思うんですけれども、歩道とかをいっぱい造っていると思うんですけれども、実は結構逆に危なくなっているというものですね。Gのように、逆にこういうふうに女の子が遊んでいるような、車を入れないで、これトランジットモールと申しますけれども、公共交通と歩行者だけのスペースを造るというふうな形が期待されるということです。
Hはカールスルーエの町中、平日昼下がりで、これ大学生が大学をサボって遊んでいるのかなと思うんですが、日本の大学生はなかなか町中で遊ばないので、大学生が町中で遊ぶような、そういう風景が生まれればよいかなというふうに思っております。
以上、雑駁でございましたが、説明とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
○委員長(藤本祐司君) ありがとうございました。
次に、宇都宮参考人にお願いいたします。宇都宮参考人。
○参考人(宇都宮浄人君) 宇都宮でございます。よろしくお願いします。
では、私も座ってお話をさせていただきたいと思います。
私でございますが、私は交通経済学あるいは経済統計学というのを専門にしておりますが、都市と交通の問題にはそういう意味で大変関心を持っており、これまでもそういった研究者あるいは一市民の立場から都市交通あるいは地域の問題について物を書き、あるいは発言をしてまいりました。今回も、そういう意味で、海外の調査や経験等も踏まえながら私なりの御意見を申し上げていきたいなというふうに思います。
今回のまず法律の改正でございますが、あらかじめ申し上げれば非常にいい方向性であるなと思っておりまして、是非これを推進していきたい。言い換えれば、ただし、それを是非実効性のあるものにしていただきたいなというふうに思っております。逆に言えば、それが実効性がなければ結構日本の状況は厳しいのではないかと、そういう問題意識も持っているということで、海外の事例も含めながらお話をしたいと思います。
資料でございますが、三ページにまず海外の件をちょっとだけ載せております。
現状認識として、日本の現状がかなり厳しい状況であるということは先生方御存じかと思いますが、少し海外を見るとちょっと違った絵が見えてくると。つまり、ここではドイツの例を挙げてございます。実を言うと、ドイツというのも日本と同じように、人口は日本より先に減少していて、さらに高齢化が進み、六十五歳人口が既にもう大分前に二〇%を上回ると。更に言えば、やはり車社会というのはこれはもう避けて通れないわけで、ドイツでもいまだに自動車保有台数は増えている。にもかかわらず、地域公共交通、ここでは都市圏の近距離交通も含めるわけですが、そういったものの利用は増加しているということです。
実際ドイツに行きますと、先ほど人口二十万とかいうお話ありましたけれども、そういったカールスルーエのような町が大変なにぎわいを見せている。日本であればシャッター街であると。この彼我の差は何かあるだろうなと、これはやはり何か政策的な問題があるのではないかという気がするわけでありまして、先ほど谷口先生の紙にもありましたとおり、LRT、公共交通が人を運び、町中が人でにぎわっていると、こういう姿があるわけです。
それで、一枚めくっていただきますと、今度フランスの事例もちょっとだけ書いてございますが、フランスは実はドイツと違って路面電車、このLRTと呼ばれるものを一度全部廃止しました。そういう意味で自動車社会にやはりなったわけですが、実はドイツはかつてあるものをそのまま生かしている、フランスはそれを復活させているわけですね。しかも、これ見ていただくとお分かりのように、ほとんど二〇〇〇年以降に、人口十万前後、フランスの場合は都市の規模が小さいので日本でいうと六掛け、八掛けかもしれませんが、いずれにしても、日本でいうところの人口二十万前後の町がこういった新しいLRT、都市交通を導入することによってやはり同じようににぎわいを取り戻しているということです。
かつては自動車であふれ空気が汚れていた町が復活している、こういう事実があるということを考えると、言い換えれば、日本においても何かそういうことを考えていく必要があるのではないかということを感じるわけであります。
次のページは、実際に海外の地域公共交通の動向のうちLRTがどれぐらい増えているかというのをグラフで表しております。これは、ドイツのように、あるいは日本の広島のように、かつてからある路面電車は含まれておりません。全く新規、あるいは一回廃止してしまったものを新たに造り直したLRTと呼ばれる次世代型路面電車、これだけをカウントして、今やこの三十年余りに百四十を超えるに至っていると。ちなみに、日本は富山のライトレール一か所だけであります、廃止のケースはありましたけれども。こういう現状があるということで、やはり何か日本と世界というのは、政策的な違いがこういうことをもたらしていないかということが考えられるわけです。
それで、次に、私の意見としては、日本の常識は世界の非常識という観点から幾つか、何点か申し上げたいと思います。
まず、日本の場合、公共交通は黒字経営が基本であると。これはこれで一つの考え方でありますし、実際民間事業者が頑張って収支を得ている、これは重要なポイントでありますが、経済学を勉強した人間からすれば、市場メカニズムというのは市場の失敗がある、交通というのはその典型であるということが書かれているわけです。
実は、諸外国では、例えば建設コストも含めた資本コスト、これはもう公的資金で賄うのが基本であります。イギリスの場合は一部それを民間資金を入れるPFIとか議論が始まっていますけれども、これはあくまで社会資本であるというのがもう当然のように常識なわけであって、日本はたまたま、戦後あるいは高度成長期からバブル期まで地価が上がり、右肩上がりで人口が増えと、こういう時代で建設コストが回収できたわけですけれども、そういうことというのはある意味で特別な時代の話であって通常はあり得ないよと、こういう発想であります。これが一つ。
更に言えば、日本の場合は、当然運行費用も運賃収入で賄う、これが当たり前なんですね。よく、これができていても金利払いがあるので赤字だよといっていろいろたたかれるわけですが、実は海外ではそもそも運行費用も運賃収入でカバーすることを求めていないわけであります。別に、都市の一装置である、社会資本である移動装置を、その単体の事業の収支で合わせる必要があるんですかと。それはあたかも、百貨店がエレベーターという装置を設置して、移動手段としての装置を設置していて、エレベーターに百円とか二百円取って、エレベーターのメンテナンス代、電気代、そういった費用を賄って、エレベーターだけで単体の収支取らないのと同じですね。こういう発想なわけです。
実際、それぐらい収支が合うぐらいであればむしろ安くしようみたいな発想すらあるわけで、次のページ見ていただくとかなりの補助率が出ているし、これちょっとデータ古いんですが、最近新しいデータで見ても、やっぱり五十都市辺りぐらい調べても、大体中央値は、運賃で賄えるのはまあ半分前後かなと、こういう状況が一つあります。これがまず一つ目の日本の非常識。
それから次は、都市内の公共交通事業者、当然民間ベースですので市場競争というのが原則になっています。私自身は、非常に、民間活力を生かし、効率的な経営を行い、サービス向上を目指す、これは重要だと思っているし、運行を民間でやること自体は全く異存はありませんが、実は、効率的な資源配分と経済学者は言うわけですが、それはやっぱり調整も必要なんですね。
例えば、ダイヤ調整。今回の法律出ていますけれども、もし競争して、ゼロ分、二十分、四十分のバスに対して次の競争相手はどうするかというと、一分前の五十九分、十九分、三十九分と、こういうバスのダイヤを設定するわけです。そうすると、確かに競争はしているけれども、利用者であるバスの利用者は結局、ゼロ分を逃した後、十九分まで待たされるわけです。これがもしダイヤ調整してゼロ分、十分、二十分になれば十分で済む。この待ち時間九分というのは、経済学的には極めて資源配分が無駄だという言い方をします。なぜなのか。待たなければならないわけですから、その間待つということはすごい資源の浪費なわけです。こういう非効率なことが起こる。
あるいは、日本の場合は運賃も統合されていません。海外では大体、交通計画主体が運賃統合までして共通運賃制、ゾーン運賃制やります。日本はそれぞれ異なる。どういうことが起こるか。例えば、本来であればJRと地下鉄とを組み合わせて行けば最も早い距離であっても、いや、そうすると高くなるから、ぐるりと回って地下鉄に乗ろうとか、あるいは電車は使えないからバスだけ乗ろう。これは結果的に、我々の労働も含めた資源を非効率にゆがめているわけです。だから、そういう意味では、経済学者からすると、こういう仕組みというのはやっぱりよろしくないわけですね。なので、こういう意味で、今の日本の市場原則というものを公共交通市場に単純に生かすわけにはいかないであろうということであります。
それから三点目として、道路の件ですけれども、自動車の円滑な通行、これが交通の発達、これ重要です。私は自動車を全く否定しませんが、やっぱり空間利用ということを考えたときに、自家用車に占拠されるのがいいのか、公共交通に誘導する方が結果的に自動車も含めて便利になりますよというのが、この左の下の、これはストラスブールの図なんです。
それから、もう一枚めくっていただきますと、実は道路というのは、今実際各地でいろいろやろうとするとすぐ渋滞という問題が起こるわけですけれども、本当は、自動車の円滑な通行も重要だけれども、歩行者だって自転車だって、あるいは沿線住民も利用するわけです。
それで、先ほど谷口先生の写真にもありましたとおり、トランジットモール、歩行者と公共交通の専用空間、これでき上がっているわけですね。これはもう世界中あるわけです。日本ではほとんどありません。厳密に言うとバスで一部ありますが、そもそも路面電車入れないんですね、これ道路交通法で。何でも、歩行者専用道路に車両が入る場合は一応許されているんですが、車両等となっていないので路面電車は入れないと。したがって、日本では路面電車は、トランジットモールは、現行制度では駄目らしいということが現行の法解釈であると、こういう非常にナンセンスなことが起こっているわけです。こういったことはやっぱり改めていく必要があるんじゃないかなと思うわけです。
ちょっと次、ページ飛ばしまして、三。じゃ、どういう形で総合的な政策を目指していくかということで、私なりに一つ、私というか、世界の交通経済学の人がシェアしている一つの考え方があります。STOと言われています。要は、より良い交通政策、社会を築く上でSとTとO、すなわち、戦略であるストラテジーと戦術であるタクティクス、そしてオペレーションがあると。戦略というのは、交通政策どうすべきかとか、市場シェアどうすべきかとか、どういう地域にどういうターゲットでやるかという長い意味での戦略。戦術は、例えば共通運賃にするのか、どんなイメージの車両を走らせるのか、あるいはどんなダイヤにするのか、こういった戦術がある。そして、実際の運行がある。こういう整理が大体世界の交通経済学者ではシェアされています。私もこのSTOをベースに少し整理をしてみました。
次のページですけれども、私は、今回、交通政策基本法ができ、あるいは今回の法改正の理念的な意味でのストラテジー、戦略というのは大分明確になってきたと思うんですが、じゃ、それを実現するための戦術はどうかと。幸い、ヨーロッパなんかでは実はこのオペレーションの部分も非常に問題になるんですが、日本の場合は、いろいろ問題があるとは言われますが、現場は結構堅実だなと思っていますので、私はやっぱりこのタクティクスをもう少し確立すべきであろうなというふうに感じております。
そこで、私なりに最後に意見を幾つか述べて締めたいと思いますが、まず一つ、真に総合的なということなんですが、これまでも総合という言葉は常に使われてきました。しかし、ともすると総花的になりかねません。海外では、かつては総合政策と日本で訳していたコーディネーションポリシー、言わば個別単位の調整をやっていたわけですが、今はインテグレーテッドポリシー、つまり一つ一つの要素を組み合わせて一体化した政策にすると。さっきの運賃にしてもダイヤにしても、A社とB社が争ったのでそこを調整しましょうじゃない、都市計画全体の中で統合して交通を考えていく、こういうポリシーにしていく必要があると。これ、海外の状況であります。
したがって、単に単純なダイヤ調整ではなく、路線、ダイヤ、更に言えば、それは鉄道間だけではなく鉄道とバス、あるいはバスと場合によっては自転車、あるいは車の駐車料金政策も含めた、こういったものがなければいけない。言い換えると、日本の場合はパーク・アンド・ライドをしても、駐車料金を払ってその後もう一回電車賃を払う、こんなことするぐらいだったらそのまま車で行っちゃおうみたいな話になってしまうわけですね。ということがないようにする必要がある。
あるいは、公共交通に移動するのであれば、車も重要だけれども、都心まで車で来られる方、社長さん、忙しい方、そういう支払意思の高い方は来てもらってもいいよ、ただし都心の駐車場は高くするよと、こういった傾斜的な駐車料金の制度とか、こういったものを含めて全体、統合的な政策が必要なんではないかということが一つ。先ほど来申し上げている初乗り運賃が会社ごとに取られるなんていうのも、そういう意味で変えていく必要があるのではないかというのが一つ。
それから二つ目ですけれども、ここに書いてあるのは、自家用車との適正な役割分担ということも、これは法改正等でも出していますが、具体的に強力に推進してもらう必要があるということで、やはり中心市街地の道路というものは公共交通優先にする、もちろん郊外は車も使っていただく、こういったものをもう少し明確にメッセージ出してほしい。逆に、中心市街地であれば、多分日本で見たことないのでいろいろ問題あるんでしょうけれども、バスと例えば路面電車の通路共用、こういうのが当たり前のように海外では行われているわけですね。例えば、こういう形で公共交通というものを一体化してやっていくような制度も可能じゃないかなというふうに思うわけです。
それから最後、そういったもろもろの統合的な政策をするに当たって、やっぱり広域調整機能というのは担保していただかないといけない。交通というものは一つの行政、自治体で収まるものではありません。場合によってはそれぞれの自治体同士の利害が対立することもある。そこの主体を明確化することによって真に総合的な政策を目指していただくと。
とにかく、今回の法改正によってやはり強いメッセージを送っていただきたい。確かに県が調整に入ると。でも、私聞きますと、やっぱり県もできるんでしょうぐらいで、現場の自治体の方って何か腰がまだ引けているわけですね。そうではないんだと、今後はこういう方向でやっていくんだということをメッセージとして出し、先ほど日本の常識、世界の非常識と申し上げましたが、やっぱりこれまでの時代的な背景の中でとらわれている我々の社会通念、これは一般市民も含めてですけれども、そういった社会通念を今回の法改正によって大きく変化させていく、変革していく、そういうメッセージを発していただけたらなというふうに思います。
取りあえず、私の陳述は以上でございます。
○委員長(藤本祐司君) どうもありがとうございました。
次に、岡本参考人にお願いいたします。岡本参考人。
○参考人(岡本勝規君) 岡本勝規と申します。本日はよろしくお願いいたします。
私は、専門が人文地理学で、フィールドワークとか聞き取りとか、そういった方式で研究を進めているタイプの人間でございます。高等専門学校というところで教員をしておりますけれども、富山というところで暮らす一市民として公共交通に関する市民運動にも関わってまいりました。今回こういう場でお話しさせていただく機会を与えてくださいましたので、コンパクトシティーを標榜する富山に住んでいる者として、理論というよりは実態のようなものを中心にお話をさせていただければと思い、お話しさせていただきます。
コンパクトシティーというふうに言いますと、まず大体名前が挙がりますのが青森、それから富山だと思います。富山でも確かにそういったことを標榜して久しいかとは思います。私自身は富山に住んで十五年ほどになるのですが、確かに来た当初、かなり中心市街地、寂しい印象を受けました。幼少の頃にまた北陸へ、別のところに住んでいたときに富山へ来たときはもう少しにぎわっていたのになという印象を受けました。
その後、コンパクトシティーの名の下、様々な再開発がなされたかと思います。
皆様のお手元の資料を見ていただきたいのですが、お手元の資料の方の一番後ろのこの図でございます、こちらを御覧いただけますでしょうか。三枚目の図でございますけれども、中心の商店街、富山においては総曲輪通り、総曲輪と書いてありますけれども、ここはソウガワ通りといって、ここと、それから中央通り、そしてその間に南北に市電が通っておる通り、この辺りが中心市街地、中心商店街となっております。昨今、コンパクトシティーということで、総曲輪通りの西の端っこ辺り、総曲輪フェリオと書いてある部分がございますが、この辺り一帯が再開発されたと。その目的というのが、やはり中心市街地の活性化、にぎわいを取り戻していくということ、言うなれば再編成の過程で新しい核をつくろうという動きだと思います。
その結果として、一つの例を示しますが、歩行者通行量の変化というものを御覧いただきたいと思います。一枚目を御覧ください。こちらは、この中心商店街の各地における歩行者通行量の変化でございます。
こちらの方を見ていただきますと、そこの総曲輪フェリオと呼ばれている再開発地区ができ上がりましたのが平成の十九年でございました。ですので、効果として平成十九年以降どうなっていくのかというのがやはり重要なのでございますですけれども、なかなか歩行者通行量というのが伸びていないという現状がございます。もちろん、一時的に、例えば平成十八年から十九年の動きを見ていただきますと、赤いラインで示した富山西武南側とか、あるいは青いラインで示している総曲輪フェリオ北西側といったところ、ここの部分は平成十九年に再開発事業が完了したときにぐっと戻しているわけですけど、その後また漸次下がっていっていると、そのような状況にあります。
また、商店の数というものに関しましても、なかなか増加というのが見られていないようでございます。といいますのも、これは私の方で調べたものでございますけれども、例えば総曲輪商店街の振興組合に加盟されている会員数というもの、これが平成二十年には八十三、会員数あったわけでございますが、八十三あったのでございますが、平成二十五年には五十八になってしまっております。
コンパクトシティーということに関する論文をつらつら見ますに、町中の居住者というものについては一定の効果が見られて増えていく傾向というものが多いようでございますが、残念ながら、歩行者交通量とかあるいは商店の数といったような点に関しては余り成果が上がっていないというような見解が多いように思います。
実際のところ、そうなってきますと、そこの地元の商店は一体どうなってしまっているのかということになりますが、歩行者交通量の下に一枚写真が載っております。これは私がこの連休中に撮ってきたものでございます。五月の六日に撮ってまいりました。この写真は中央通り商店街と呼ばれている商店街の一角でございます。どの辺りかと申しますと、市街地のこの再開発の図を見ていただければお分かりになると思いますが、右側の紫のラインが中央通り商店街です。平成十二年にマンション中心のビル完成と書いてあるこの辺り、これより若干東側で撮った写真になります。連休中にもかかわらず余り人がいらっしゃいません。
このような状態ということになってしまいますと、実際に町中に住む人が富山でも増えてはおりますが、増えてはいるにもかかわらず、なかなか歩行者通行量であるなり、あるいは商店の客入りなりに反映してこないという現状があるということで、必ずしも結び付かないなという印象を持ちます。
また、もう一つ問題でありますのは、こういうふうに商店街が閑散としているのを見ると、何もないなというような印象を受けられるかもしれませんが、実はこのような商店街でもぱらぱらと店がございまして、そしてその中ではそれぞれの思いで頑張っておられるわけでございますね。そこへ再開発の事業が降ってくるというような、まあ本来はコンセンサスを得てやっているはずですから降ってくるという表現はおかしいんですけれども、やってきたときにどういう再編成がなされるかということですね。
例えば、総曲輪フェリオという再開発地域においては、かつては六十五の店舗数があったというふうに言われておりますけれども、その後再開発事業が完了したときに元あった店舗で残ったのは幾つだったかというと、六つだというふうに言われております。そうなってきますと、再編成といってもかなりの淘汰がなされて、それから新しい店が外部から招かれているというような傾向になりはしていないか。この辺では、例えば再開発地区に大きな本屋さんが入りましたけれども、そのあおりかどうかは分かりませんが、お向かいにあった老舗の本屋さんがなくなっていたりとかいうようなこともございます。
ですので、コンパクトシティーというのが新しいスクラップ・アンド・ビルドのコンセプトとしてかなり、何といいますか、魅力的なコンセプトにはなってはおるかとは思いますけれども、その過程で、地元に既に存在している、あるいは頑張っているというような商店の存在というものを生かし切れているかどうかというところが一つ懸念材料として残ります。
二枚目を御覧ください。
私が一つ懸念をしておるのは、このままでいった場合、いわゆるウィンブルドン現象と呼ばれている、要するに外側から来た商店で活発になっていって地元の商売が残らない、あるいは、外側から来た商店で一時的に活発にはなるけれども、しかしながら何らかの事情で撤退してまた非常に閑散とした状況に戻ってしまうというようなことを懸念をしております。
続いて、交通の方でお話をさせていただきます。
交通の方では、富山というのは公共交通に力を入れている日本においてもなかなか希有の存在だと思っております。その点は積極的に評価しなければならないと思います。ただ、例えばこの中心市街地において、公共交通が必ずしも政策の軸になっているのかどうかということについては少し検討が必要ではないかと。
というのも、現在中心市街地の駐車場の状況というのを、単純に地図の検索で見ただけでもこれだけばっと出てまいりました。これだけあるのでございますですけれども、中心市街地の再開発においては大体大規模駐車場が造られておりまして、今回総曲輪フェリオを中心とした再開発においても六百三十台の駐車場が造られております。また、今後計画されているシネマコンプレックス等を中心とした再開発においても百六十台ぐらいの駐車場が計画されていると。
先ほど宇都宮先生もおっしゃっておられましたけれども、公共交通というものを軸として考えていくのであるならば、マイカーというものについて、マイカーとの競合というものについても考えていかなければなりません。このままでいきますと、マイカーと公共交通の共存と言いますけれども、本当にマイカーから公共交通の方へ人を誘導しようとしているのかどうかというのがちょっと分からない状態かと思います。コンパクトシティーということに関してある程度腹を決めてやっているのであれば、公共交通についてもある程度腹を決めてそちらに軸足を移してほしいなと思っております。
富山においては、基本的に路線の整備であるとかあるいはフリークエンシーであるとかといったようなことについては割と積極的な対応が取られていると思っておりますけれども、しかしながら、やはり積み残しておるのは、これは富山に限らず言えると思いますが、運賃の問題だと思っております。やはり公共交通というのは、路線があって、じゃんじゃんやってきて、それでかつ安いというのが重要だと思います。やはり周囲の人に話聞いてみますと、公共交通で家族全員で移動するととても高いと言うんですね。本来であれば、車の購入費を考えるとそこまで高いと言えるのかなとは思うんですけれども、高いと言います。その点、先ほど来例に挙がっているカールスルーエなんかは、家族パスを利用すれば休日は無料にするとか、そういった非常に運賃面での優遇策も講じておられる。
また、初乗り運賃の問題というのもございます。本来であればゾーン運賃制を導入すべきだと思いますが、例えばソウル市なんかでは、ICカードで乗っていけば五回までは乗り換えられて、運賃を通算する、距離によって通算するというようなこともやっておりますから、是非そういったことも考えてほしいというふうに思います。
ただ、本来であれば、そういったことをやるに当たっては、自治体なり国なりにしても、何らかの法的な裏付けというものがあるべきではないかとは思います。昨今、交通基本法というのが出ましたですけれども、やはり移動権の問題というものをはっきり位置付けていないのも問題ではないかと思います。自治体にあっては移動権などを盛り込んだ基本条例などを制定するなり、あるいは国は交通基本法でそういったことも保障するなりして、その結果、それを根拠にして公共交通というものの整備に邁進をするというか前進するというような形が私は正しい道だと考えます。
最後に、この公共交通の問題というのはよく高齢者を対象にして話が出てまいりますけれども、実は若年層も結構大変な思いをしております。私なんかの教え子に話を聞きますと、早く免許を取って自由に動きたいというような声を聞きます。そういったことを考えますと、やっぱり若者にもちょっと厳しい町になっているんだろうなと、地方都市は。そういったところに今後残ってくれるのかなというのを非常に懸念をしておりますので、若年層の側にも配慮した整備というのを考えてほしいなと思います。高齢者の行動パターンだけを念頭に置いての整備ではちょっと不十分ではないかなと思っております。
済みません。以上です。
議事録を読む 辰巳質問部分
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎です。
お三人の先生方、お忙しいところ、本当にありがとうございました。
三人の先生方に共通しているのはやはり自動車交通に過度に依存した社会の転換ということだと思うんですけれども、私の方からはそれぞれ違った質問を三人の先生にさせていただきたいと思います。
まず谷口先生なんですけれども、カールスルーエの例を挙げていただきました。百二十キロのLRTということで非常に私もびっくりしたんですが、このLRTに関してなんですが、日本で本格的なLRTの実現というのは富山だけだと思うんですが、ヨーロッパでは広く活用されていると。なぜ日本でLRTの普及がなかなか進まないのかということについて御見解があればということ、これ一点、谷口先生に。
もう一点、谷口先生なんですが、公共交通を担う機関としてバスの役割というのがどこでも大きいと思うんです。今日本ではバスの事故というのが増えておりまして、度々ニュースにもバスの事故というのが取り上げられております。
このバスの事故なんですが、やはりバスの運転手の待遇が私、非常に大きいんじゃないかと、長時間労働や低賃金ということなんですが。先生は海外の公共交通機関などの調査もされているということなので、海外、ヨーロッパなどでのバスの運転手さんの待遇であるとか社会的地位であるとか、そういったものを日本と比較してどうなのか、また日本ではどうあるべきなのかという御見解、御見識があれば是非お聞かせいただければと思います。
続いて、質問全部言わせていただきますが、宇都宮先生にですけれども、先生は関西大学で教鞭を執っておられるということなんですが、私も大阪出身なんですが、今、大阪の公共交通機関でいえば大阪市の市営交通があります。この大阪市の市営交通、この間、民営化ということが言われて久しいわけなんですが、私自身は民営化するべきではないと思っておりますが、先生も日本の非常識ということで、公共交通、黒字が基本という考え方、また市場に委ねていいのかという考え方を持っておられるということで、先生の地元である大阪の市営交通の民営化についてどのようにお考えであるのかということをお聞かせいただければと思います。
最後に岡本先生なんですが、岡本先生は富山にお住まいということで、この間、国の政策としても、青森や富山のコンパクトシティーの様々な取組、これを参考に広げていこうという流れが一つあると思うんですが、しかし、富山の例を成功例として全国に広げていこうというのであれば、しかし、住んでいる先生としては様々な課題があるよということもお持ちであるかと思います。そこで、やはり富山にしてもこういうところは改善するところあるよというところをお聞かせいただければと思います。
○参考人(谷口守君) まず一点目、LRTがなぜ普及しないかというのは、これは大分既に宇都宮参考人の方から最初にお話があったこととダブってしまうかと思うんですけれども、やはり赤字になってしまうのではないかという危惧で反対される方がたくさんいらっしゃるということですよね。
それで、ヨーロッパではなぜオーケーかというと、社会的に黒字になればオーケーですよというコンセンサスが取れているということで、単に交通機関だけで赤か黒かというのを議論するというのがばかげているというのがコンセンサスになっているというのが一番大きいかなということと、あと、やっぱり昔の路面電車のイメージを持たれている方が結構いて、いわゆる遅くてぼろくてというイメージで、あんなものをまた導入してもと言われている方も結構いるんですが、最近のものは非常に性能がよろしいですので、一度そういう実際に行かれて経験された方は非常に賛成派に急に回られるみたいな感じでびっくりしてしまうこともあるんですが、そういう実際のことを御存じになれば変わるんじゃないかなというのはあります。それが最初ですね。
あと、バスの運転手さんの待遇ということなんですが、私、済みません、その分野の専門家ではないんですけれども、ただ、日本の運転手さんに関して言えることは、一時期やはり規制緩和の影響をかなり強く受けられて、労働条件としてはかなり厳しい、今もそうかも分かりませんが、そういう状況ではないかな、タクシーの運転手さんなんかもやはり給料的にはかなり厳しいかなというところもあります。だから、そういう意味では、要するにこれは交通運輸業界だけの話ではなくて世の中全般の、労働者全般の話として、規制緩和的な発想でぐいぐいやるといろんなところにしわ寄せが行ってしまうというのは事実ではないかなというふうに感じております。
済みません、余り専門家的な回答ではなくて申し訳ないです。
○参考人(宇都宮浄人君) 御質問ありがとうございます。
大阪の公共交通の民営化ということですが、御質問いただいて大変恐縮ですが、私は多分先生とはちょっと意見を異にしているということでありまして、私は民営化には基本的には賛成ということで、実を言うと、黒字が基本ということに対しては、要は施設も含めて黒字であるという話とは別で、この私のお配りした資料で十二ページにSTOの枠組みで整理をしたいということが書いてございます。
つまり、今の日本というのは、戦略も戦術もぱっとしない中で、運行を全て民間が担っているということはいかがなものかと。これで黒字を求めたらどんどんサービスが悪化していくということなんですが、むしろしっかり方向性としての戦略、戦術を立て、その上でオペレーションとしての運行は民間の創意工夫と力によって行っていただく、これが私としては一番いい仕組みなのではないかと。
最近でいえば、公設民営とか上下分離ということを言われますけれども、多分、運行主体としてはやはり民間の力というのは大いに活用していただく、ただし、広い意味での戦略は当然のことながら、戦術面でも、小さな争いではなくしっかりと統合した政策というものを公共団体も含めて今回の法改正でやっていただくと、こういうことが重要なのではないかなというふうに思っているというのが私の考えであります。
○参考人(岡本勝規君) 申し上げます。
富山では確かに先駆けた取組が行われております。ただ、例えばレジュメで示しました歩行者通行量などを見ましても、いっときちょっと食い止めたかなと思ったら、だらだらだらっと下がってくるという、そういう状態にございます。
これ実は、この変化は八月のある特定の日曜日ばかりを追ってやっている変化でございますけれども、例えば別の、イベントのあるときなどはやはり通行量は増えてはおるんです。イベントのあるときには通行量が増えている、また一方で居住者は若干増えている、にもかかわらずイベントのないときの通行量が増えないというのは、これは一体何を意味しているかと申しますと、日常の拠点として再生がまだなされていないということではないかと思います。
本当に富山市に限ってしまって申し訳ないんですけれども、富山市では中心商店街を広域拠点として位置付けてはおられますけれども、その前に日常の拠点として再生していかなければいけないというふうに思いますので、今後改善すべき点としましては、人々が日常生活を営んでいく上で何が必要なのか、例えばお魚屋さんが必要なのか八百屋さんが必要なのかといったそういう細かいところを見て、その上でのまちづくり戦略というものを考えていくべきではないかなと思います。
以上です。
○辰已孝太郎君 ありがとうございました。
お三人の先生方、お忙しいところ、本当にありがとうございました。
三人の先生方に共通しているのはやはり自動車交通に過度に依存した社会の転換ということだと思うんですけれども、私の方からはそれぞれ違った質問を三人の先生にさせていただきたいと思います。
まず谷口先生なんですけれども、カールスルーエの例を挙げていただきました。百二十キロのLRTということで非常に私もびっくりしたんですが、このLRTに関してなんですが、日本で本格的なLRTの実現というのは富山だけだと思うんですが、ヨーロッパでは広く活用されていると。なぜ日本でLRTの普及がなかなか進まないのかということについて御見解があればということ、これ一点、谷口先生に。
もう一点、谷口先生なんですが、公共交通を担う機関としてバスの役割というのがどこでも大きいと思うんです。今日本ではバスの事故というのが増えておりまして、度々ニュースにもバスの事故というのが取り上げられております。
このバスの事故なんですが、やはりバスの運転手の待遇が私、非常に大きいんじゃないかと、長時間労働や低賃金ということなんですが。先生は海外の公共交通機関などの調査もされているということなので、海外、ヨーロッパなどでのバスの運転手さんの待遇であるとか社会的地位であるとか、そういったものを日本と比較してどうなのか、また日本ではどうあるべきなのかという御見解、御見識があれば是非お聞かせいただければと思います。
続いて、質問全部言わせていただきますが、宇都宮先生にですけれども、先生は関西大学で教鞭を執っておられるということなんですが、私も大阪出身なんですが、今、大阪の公共交通機関でいえば大阪市の市営交通があります。この大阪市の市営交通、この間、民営化ということが言われて久しいわけなんですが、私自身は民営化するべきではないと思っておりますが、先生も日本の非常識ということで、公共交通、黒字が基本という考え方、また市場に委ねていいのかという考え方を持っておられるということで、先生の地元である大阪の市営交通の民営化についてどのようにお考えであるのかということをお聞かせいただければと思います。
最後に岡本先生なんですが、岡本先生は富山にお住まいということで、この間、国の政策としても、青森や富山のコンパクトシティーの様々な取組、これを参考に広げていこうという流れが一つあると思うんですが、しかし、富山の例を成功例として全国に広げていこうというのであれば、しかし、住んでいる先生としては様々な課題があるよということもお持ちであるかと思います。そこで、やはり富山にしてもこういうところは改善するところあるよというところをお聞かせいただければと思います。
○参考人(谷口守君) まず一点目、LRTがなぜ普及しないかというのは、これは大分既に宇都宮参考人の方から最初にお話があったこととダブってしまうかと思うんですけれども、やはり赤字になってしまうのではないかという危惧で反対される方がたくさんいらっしゃるということですよね。
それで、ヨーロッパではなぜオーケーかというと、社会的に黒字になればオーケーですよというコンセンサスが取れているということで、単に交通機関だけで赤か黒かというのを議論するというのがばかげているというのがコンセンサスになっているというのが一番大きいかなということと、あと、やっぱり昔の路面電車のイメージを持たれている方が結構いて、いわゆる遅くてぼろくてというイメージで、あんなものをまた導入してもと言われている方も結構いるんですが、最近のものは非常に性能がよろしいですので、一度そういう実際に行かれて経験された方は非常に賛成派に急に回られるみたいな感じでびっくりしてしまうこともあるんですが、そういう実際のことを御存じになれば変わるんじゃないかなというのはあります。それが最初ですね。
あと、バスの運転手さんの待遇ということなんですが、私、済みません、その分野の専門家ではないんですけれども、ただ、日本の運転手さんに関して言えることは、一時期やはり規制緩和の影響をかなり強く受けられて、労働条件としてはかなり厳しい、今もそうかも分かりませんが、そういう状況ではないかな、タクシーの運転手さんなんかもやはり給料的にはかなり厳しいかなというところもあります。だから、そういう意味では、要するにこれは交通運輸業界だけの話ではなくて世の中全般の、労働者全般の話として、規制緩和的な発想でぐいぐいやるといろんなところにしわ寄せが行ってしまうというのは事実ではないかなというふうに感じております。
済みません、余り専門家的な回答ではなくて申し訳ないです。
○参考人(宇都宮浄人君) 御質問ありがとうございます。
大阪の公共交通の民営化ということですが、御質問いただいて大変恐縮ですが、私は多分先生とはちょっと意見を異にしているということでありまして、私は民営化には基本的には賛成ということで、実を言うと、黒字が基本ということに対しては、要は施設も含めて黒字であるという話とは別で、この私のお配りした資料で十二ページにSTOの枠組みで整理をしたいということが書いてございます。
つまり、今の日本というのは、戦略も戦術もぱっとしない中で、運行を全て民間が担っているということはいかがなものかと。これで黒字を求めたらどんどんサービスが悪化していくということなんですが、むしろしっかり方向性としての戦略、戦術を立て、その上でオペレーションとしての運行は民間の創意工夫と力によって行っていただく、これが私としては一番いい仕組みなのではないかと。
最近でいえば、公設民営とか上下分離ということを言われますけれども、多分、運行主体としてはやはり民間の力というのは大いに活用していただく、ただし、広い意味での戦略は当然のことながら、戦術面でも、小さな争いではなくしっかりと統合した政策というものを公共団体も含めて今回の法改正でやっていただくと、こういうことが重要なのではないかなというふうに思っているというのが私の考えであります。
○参考人(岡本勝規君) 申し上げます。
富山では確かに先駆けた取組が行われております。ただ、例えばレジュメで示しました歩行者通行量などを見ましても、いっときちょっと食い止めたかなと思ったら、だらだらだらっと下がってくるという、そういう状態にございます。
これ実は、この変化は八月のある特定の日曜日ばかりを追ってやっている変化でございますけれども、例えば別の、イベントのあるときなどはやはり通行量は増えてはおるんです。イベントのあるときには通行量が増えている、また一方で居住者は若干増えている、にもかかわらずイベントのないときの通行量が増えないというのは、これは一体何を意味しているかと申しますと、日常の拠点として再生がまだなされていないということではないかと思います。
本当に富山市に限ってしまって申し訳ないんですけれども、富山市では中心商店街を広域拠点として位置付けてはおられますけれども、その前に日常の拠点として再生していかなければいけないというふうに思いますので、今後改善すべき点としましては、人々が日常生活を営んでいく上で何が必要なのか、例えばお魚屋さんが必要なのか八百屋さんが必要なのかといったそういう細かいところを見て、その上でのまちづくり戦略というものを考えていくべきではないかなと思います。
以上です。
○辰已孝太郎君 ありがとうございました。