ODA 大企業優先か インフラ輸出政策に
2014年03月18日
日本共産党の辰巳孝太郎議員は18日の参院ODA(政府開発援助)特別委員会で、ODAを使い海外インフラ輸出を進める動きに対し「一部の大企業の利益優先であってはならない」と批判しました。
辰巳氏は、日本経団連が、インフラ海外展開の推進を求める政策提言(昨年4月)を発表し、外務省も同月、円借款対象の拡大など財界要求に応えていると指摘。経団連が「ばく大な資金を要する基礎インフラを日本のODAをはじめとする公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資は民間で行う」(2010年東アジア・サミットへのメッセージ)姿勢であることを示し、「ODA本来の目的と違うのでないか」とただしました。
岸田外相は「投資につながる支援が重視されている。現地と日本(の民間企業)が共に成長していくODAがあるべき姿だ」と述べ、ODAを通じて大企業のインフラ海外展開を進める立場を明らかにしました。
2014年3月28日(金)赤旗より転載
議事録を読む
○辰已孝太郎君 日本共産党の辰已孝太郎でございます。
まず、大臣にお聞きします。
改めて、ODAの目的をお願いします。
○国務大臣(岸田文雄君) ODAの目的ですが、これはODA大綱の中にも明記されております。国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することであります。
我が国としまして、途上国の貧困削減あるいは持続的な成長、地球的規模の問題への取組、平和の構築、さらには国際協調主義に基づく積極的平和主義、こうした考えの下に、是非、引き続きまして、ODAを通じまして国際社会の平和と安定、繁栄の確保にしっかり貢献していきたいと考えております。
○辰已孝太郎君 さて、そのODA大綱ですね、報道では見直しの作業に入っているとされていますけれども、既に経済界、経団連との話合いを持っていると、こういう報道もあります。一体どのような話合いになっているんでしょうか。
○大臣政務官(木原誠二君) 御質問いただきましたODA大綱についてでございますけれども、もう委員御承知のとおりだと思いますが、二〇〇三年に現行のODA大綱が作成されてから既に十年以上が経過をしているということでございまして、ODAをめぐる環境やODAに求められる役割が徐々に変化をしてきていると。
こうした状況を踏まえまして、今後適切なタイミングでODA大綱を改定することも含めて今検討を行っているところでございますが、現時点においてODA大綱を改定をするということが決まったという状況にはないということでございます。
○辰已孝太郎君 まだ見直しは決まっていないと、見直すことすらまだ決まっていないということでありましたが。
ODAというものが、先ほど大臣がおっしゃったように、途上国の貧困削減、また持続的な成長、国際平和の構築、第一義的にはそれらがあると、こううたっているわけでありますが、それが大企業の、一部の大企業の利益優先になるようなことがあっては私は本末転倒だというふうに考えるんですが、ここのところは同意していただけますか。確認ですけれども。
○政府参考人(石兼公博君) 私ども、ODAの戦略的活用という中で、例えばインフラ輸出等々の後押しということも考えております。
今委員からの御指摘はこういう点を捉まえてのことではないかと存じますが、しかしながら、現在、グローバル化が進む世界において、途上国にはODAを上回る民間資金が流入しているという現実がございます。したがいまして、日本企業が有する優れた技術あるいはノウハウ、大企業であれ中小企業であれ、そういうものを途上国に提供することによって当該途上国の経済活動の基礎を提供し、また投資環境を整えるということは途上国の持続的成長を支援することとなると考えておりまして、これはODAの目的にかなうというふうに考えております。
○辰已孝太郎君 私は、このODAの元々の本旨、目的を逸するようなことが既に着々と進められていると考えざるを得ないと思っております。
例えば、経団連は昨年の四月に「インフラ・システム海外展開の機動的かつ戦略的な推進を求める」という政策提言を発表をしております。そこでは、例えば大型インフラ案件を広げろと、こう要求したり、中進国以上への円借款の供与を求めております。そして、昨年の四月、同じ月に外務省が発表した「円借款の戦略的活用のための改善策について」では、まさにそれら経団連の要求の実現が盛り込まれました。
また、経団連は同じ提言の中でこうも言っております。JICAの海外投融資案件については関係省庁の関与を最小限とし、案件の採用、審査等の政府内プロセスの簡素化、迅速化を実現すべきと、こう言っているんですね。国民の税金であるODAを私は我が物のようにしようという狙いがここではあけすけに語られていると思うんです。とにかく露骨なんですね。
元々、経団連は、遡ること二〇一〇年、「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて 東アジア・サミットに向けたメッセージ」の中で、世界経済の発展のためには成長のボトルネックとなっている基幹・都市インフラを整備することが当面の課題だと、こうした上で、インフラ整備は莫大な資金を要することから、基礎インフラの部分を我が国のODAを始めとする公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用を民間で行う手法というのを活用していくと、こう述べております。つまり、もうからないところはODAで、その後もうかる部分への投資や運用は民間でという、私は、これちょっと身勝手な話をしているんじゃないかというふうに思うんです。
こうなってきますと、先ほど冒頭大臣がおっしゃったODAの目的、途上国の貧困の削減や持続的成長、また国際平和への寄与という話とは大分違った話になってくるんじゃないかなと思うんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) ODAを通じまして途上国の貧困撲滅、削減、あるいは持続的な成長を確保する、これは大変重要な視点だと思います。
しかし、その際に、現実の各国のニーズあるいは要求を見ますと、最近は単なる支援ではなくして、やはり現地に雇用や技術移転、こういったものがもたらされる、そういったことによって現地の国民がしっかり裨益する、こういった支援であってもらいたい、こういった具体的なニーズがどんどん広がっています。そういったことから、投資につながる支援というものが重視されている、こういった現実があります。投資につながるということで、日本の民間企業がこうした支援に関わっていく、こういったことが起こっています。こうした現地とそして日本がウイン・ウインの関係で共に成長していく、こういったODAはあるべき姿だといって、先ほども申し上げました、ODAの三本柱として、我が国が掲げている三本柱の一つとして掲げているわけでありますが、そうしたウイン・ウインのODAを実現するためにインフラ整備や人材育成の重要性が指摘をされています。
こうした考え方の中で日本の民間企業がどう関わっていくのか、是非、こうした大きな目的のために資する関わりを実現していくべきだと我々は考えています。
○辰已孝太郎君 現地のニーズ、要求、これをもちろん否定するものではありませんが、しかし、それじゃなくて日本の一部の大企業のまず利益というふうになると、やはりODAの本旨から私は外れると思うんですね。
最後にお聞きしたいのは、安倍総理が去年五月にトルコと原子力協定に調印をいたしました。そこには大企業百二十一社から二百人が同行すると、こういうものでありましたが、現地の新聞では日本からもう一人の原発セールスマンが来たと、こうやゆされる始末でもありました。このような事業には私たち、もちろん反対なんですが、この原発輸出に関連した形でODAが使われるというのももちろん反対です。
そこで、確認、お聞きをしますが、原発そのものをODAで造ることはこれできませんが、送電網などの周辺整備もODAで造ること、これやるべきではないと思いますが、どうでしょう。
○委員長(岸宏一君) どなたがお答えしますか。大臣ですか。岸田大臣。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、原子力の発電プラントの建設には、OECDのガイドライン上、援助による支援をしてはならない、こういった制限が課せられています。
そして、御質問は周辺の機器についての御質問でありますが、これはOECDの公的輸出信用アレンジメントの中にこの対象あるいは制限が課せられております。我が国としましては、その制限、ルールをしっかり守った上でこうした案件について輸出を考えていかなければいけない、これは当然のことだと認識をしております。
○辰已孝太郎君 原発を買ってくれたら周辺整備、円借款でやるというようなことは絶対にやってはならないというふうに思います。
最後に、ODAの大綱の見直しというならば、現地、日本で活動しているNGOにもきちんと話を聞いてODAの運用を本来のものに沿うように変えるべきだということを訴えて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
まず、大臣にお聞きします。
改めて、ODAの目的をお願いします。
○国務大臣(岸田文雄君) ODAの目的ですが、これはODA大綱の中にも明記されております。国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することであります。
我が国としまして、途上国の貧困削減あるいは持続的な成長、地球的規模の問題への取組、平和の構築、さらには国際協調主義に基づく積極的平和主義、こうした考えの下に、是非、引き続きまして、ODAを通じまして国際社会の平和と安定、繁栄の確保にしっかり貢献していきたいと考えております。
○辰已孝太郎君 さて、そのODA大綱ですね、報道では見直しの作業に入っているとされていますけれども、既に経済界、経団連との話合いを持っていると、こういう報道もあります。一体どのような話合いになっているんでしょうか。
○大臣政務官(木原誠二君) 御質問いただきましたODA大綱についてでございますけれども、もう委員御承知のとおりだと思いますが、二〇〇三年に現行のODA大綱が作成されてから既に十年以上が経過をしているということでございまして、ODAをめぐる環境やODAに求められる役割が徐々に変化をしてきていると。
こうした状況を踏まえまして、今後適切なタイミングでODA大綱を改定することも含めて今検討を行っているところでございますが、現時点においてODA大綱を改定をするということが決まったという状況にはないということでございます。
○辰已孝太郎君 まだ見直しは決まっていないと、見直すことすらまだ決まっていないということでありましたが。
ODAというものが、先ほど大臣がおっしゃったように、途上国の貧困削減、また持続的な成長、国際平和の構築、第一義的にはそれらがあると、こううたっているわけでありますが、それが大企業の、一部の大企業の利益優先になるようなことがあっては私は本末転倒だというふうに考えるんですが、ここのところは同意していただけますか。確認ですけれども。
○政府参考人(石兼公博君) 私ども、ODAの戦略的活用という中で、例えばインフラ輸出等々の後押しということも考えております。
今委員からの御指摘はこういう点を捉まえてのことではないかと存じますが、しかしながら、現在、グローバル化が進む世界において、途上国にはODAを上回る民間資金が流入しているという現実がございます。したがいまして、日本企業が有する優れた技術あるいはノウハウ、大企業であれ中小企業であれ、そういうものを途上国に提供することによって当該途上国の経済活動の基礎を提供し、また投資環境を整えるということは途上国の持続的成長を支援することとなると考えておりまして、これはODAの目的にかなうというふうに考えております。
○辰已孝太郎君 私は、このODAの元々の本旨、目的を逸するようなことが既に着々と進められていると考えざるを得ないと思っております。
例えば、経団連は昨年の四月に「インフラ・システム海外展開の機動的かつ戦略的な推進を求める」という政策提言を発表をしております。そこでは、例えば大型インフラ案件を広げろと、こう要求したり、中進国以上への円借款の供与を求めております。そして、昨年の四月、同じ月に外務省が発表した「円借款の戦略的活用のための改善策について」では、まさにそれら経団連の要求の実現が盛り込まれました。
また、経団連は同じ提言の中でこうも言っております。JICAの海外投融資案件については関係省庁の関与を最小限とし、案件の採用、審査等の政府内プロセスの簡素化、迅速化を実現すべきと、こう言っているんですね。国民の税金であるODAを私は我が物のようにしようという狙いがここではあけすけに語られていると思うんです。とにかく露骨なんですね。
元々、経団連は、遡ること二〇一〇年、「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて 東アジア・サミットに向けたメッセージ」の中で、世界経済の発展のためには成長のボトルネックとなっている基幹・都市インフラを整備することが当面の課題だと、こうした上で、インフラ整備は莫大な資金を要することから、基礎インフラの部分を我が国のODAを始めとする公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用を民間で行う手法というのを活用していくと、こう述べております。つまり、もうからないところはODAで、その後もうかる部分への投資や運用は民間でという、私は、これちょっと身勝手な話をしているんじゃないかというふうに思うんです。
こうなってきますと、先ほど冒頭大臣がおっしゃったODAの目的、途上国の貧困の削減や持続的成長、また国際平和への寄与という話とは大分違った話になってくるんじゃないかなと思うんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) ODAを通じまして途上国の貧困撲滅、削減、あるいは持続的な成長を確保する、これは大変重要な視点だと思います。
しかし、その際に、現実の各国のニーズあるいは要求を見ますと、最近は単なる支援ではなくして、やはり現地に雇用や技術移転、こういったものがもたらされる、そういったことによって現地の国民がしっかり裨益する、こういった支援であってもらいたい、こういった具体的なニーズがどんどん広がっています。そういったことから、投資につながる支援というものが重視されている、こういった現実があります。投資につながるということで、日本の民間企業がこうした支援に関わっていく、こういったことが起こっています。こうした現地とそして日本がウイン・ウインの関係で共に成長していく、こういったODAはあるべき姿だといって、先ほども申し上げました、ODAの三本柱として、我が国が掲げている三本柱の一つとして掲げているわけでありますが、そうしたウイン・ウインのODAを実現するためにインフラ整備や人材育成の重要性が指摘をされています。
こうした考え方の中で日本の民間企業がどう関わっていくのか、是非、こうした大きな目的のために資する関わりを実現していくべきだと我々は考えています。
○辰已孝太郎君 現地のニーズ、要求、これをもちろん否定するものではありませんが、しかし、それじゃなくて日本の一部の大企業のまず利益というふうになると、やはりODAの本旨から私は外れると思うんですね。
最後にお聞きしたいのは、安倍総理が去年五月にトルコと原子力協定に調印をいたしました。そこには大企業百二十一社から二百人が同行すると、こういうものでありましたが、現地の新聞では日本からもう一人の原発セールスマンが来たと、こうやゆされる始末でもありました。このような事業には私たち、もちろん反対なんですが、この原発輸出に関連した形でODAが使われるというのももちろん反対です。
そこで、確認、お聞きをしますが、原発そのものをODAで造ることはこれできませんが、送電網などの周辺整備もODAで造ること、これやるべきではないと思いますが、どうでしょう。
○委員長(岸宏一君) どなたがお答えしますか。大臣ですか。岸田大臣。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、原子力の発電プラントの建設には、OECDのガイドライン上、援助による支援をしてはならない、こういった制限が課せられています。
そして、御質問は周辺の機器についての御質問でありますが、これはOECDの公的輸出信用アレンジメントの中にこの対象あるいは制限が課せられております。我が国としましては、その制限、ルールをしっかり守った上でこうした案件について輸出を考えていかなければいけない、これは当然のことだと認識をしております。
○辰已孝太郎君 原発を買ってくれたら周辺整備、円借款でやるというようなことは絶対にやってはならないというふうに思います。
最後に、ODAの大綱の見直しというならば、現地、日本で活動しているNGOにもきちんと話を聞いてODAの運用を本来のものに沿うように変えるべきだということを訴えて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。