2014年度補正予算案に対する反対討論 軍拡に道ひらく補正予算に反対
以下、しんぶん「赤旗」より転載。
2015年2月4日(水)
家計に背 補正予算成立
辰巳氏反対討論
2014年度補正予算案が3日、参院本会議で自民、公明などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党は反対しました。
同予算は総額3兆1180億円。「経済の好循環の拡大」といいながら、日本経済の再生に必要な国民の家計を温めるものとはなっていません。「緊急経済対策」とは何の関係もない2110億円もの軍事費をもぐりこませ、15年度予算案と合わせると5兆円を超す大軍拡に道を開く予算です。原発再稼働を前提にした過酷事故対応に90億円を計上していることも問題です。
採決に先立ち日本共産党の辰巳孝太郎議員が反対討論をしました。辰巳氏は「大企業や富裕層には能力に応じた負担を求めて消費税に頼らない別の道を進むこと、軍備拡大路線をやめ、国民の命と暮らし第一の政治へ転換すること」を求めました。
以下、会議録を掲載。
○議長(山崎正昭君) 辰巳孝太郎君。
〔辰巳孝太郎君登壇、拍手〕
○辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、二〇一四年度補正予算三案に反対の討論を行います。
まず、湯川遥菜さんに続き、ジャーナリストの後藤健二さんが過激武装組織、いわゆるイスラム国によって殺害されたとする映像が明らかになりました。絶対に許されない蛮行であり、強い憤りを禁じ得ません。お二人への心からの哀悼の意を表するものであります。
このような悲劇を繰り返さないためにも、この間の日本政府の対応について冷静な検証が必要であります。二人の日本人が拘束されてから今日に至るまで、政府が取ってきた対応について、検証にとって必要不可欠な情報を公表することを求めます。
今大事なことは、国連安保理決議二一七〇が求めているように、イスラム国への外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断つなどして孤立させ、武装解除、解体に国際社会が一致して追い込んでいくことです。
総理は、今回の事件に関わって、米軍などによるイスラム国への空爆などへの自衛隊の支援が憲法上は可能だと述べ、邦人救出を名目にした自衛隊の海外派兵の一層の拡大の検討を表明しています。テロ集団による蛮行を機に海外で戦争する国づくりを推進するという動きは断じて認められないことも強調しておきたいと思います。
本補正予算案に反対する第一の理由は、地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策といいながら、本案が地方経済の再生と住民の暮らしの向上につながるものではないからです。
そもそも、アベノミクスと消費税増税が地方経済の疲弊を加速させるものであります。異次元の金融緩和と財政支出、円安誘導によって、一部の資産家、大企業は莫大な利益を上げました。ところが、GDPは二期連続でマイナス、労働者の実質賃金は十七か月連続で下がっており、どの世論調査でもアベノミクスで景気回復の実感はないが多数を占めています。
それだけではありません。非正規雇用労働者が全体の四割に上り、将来に展望を持って働くことができない青年が増える中、政府は、岩盤規制をドリルで打ち破ると言って、不安定雇用を増やす一生派遣の労働者派遣法改悪法案や、過労死を促進するいわゆる残業代ゼロ法案を今国会に提出することを決めています。労働者の雇用を破壊すれば、GDPの約六割を占める個人消費をますます落ち込ませるではありませんか。
一方で、安倍政権は、法人税の実効税率を二年で三・二九%も引き下げ、もうかっている大企業を更に応援する方針です。しかし、昨年六月の帝国データバンクの調査によると、法人税引下げの使い道トップは内部留保であります。
今必要なのは、労働者の雇用を守り、中小企業への手当てを強めながら、最低賃金を大幅に引き上げ、年金削減をやめ、国民の所得を上げることです。アベノミクスはきっぱりやめて、大企業や大資産家にもうけに応じた負担を求め、国民の懐を温める経済政策への転換を日本共産党は強く求めるものであります。
経済の好循環のためには、格差と貧困をなくすことが急務です。年収が二百万円未満のワーキングプアが一千万人を超え、今や我が国の子供の貧困率は先進国最悪レベルに落ち込んでいます。また、ナショナルミニマムである生活保護基準が二〇一三年八月以降二回にわたって切り下げられた結果、就学援助の認定基準まで狭められ、行政サービスから締め出される子供が増えました。まさに政府自身が子供を更なる貧困へ追いやる張本人となっているではありませんか。
OECDは、昨年の報告書で、貧困層の教育投資不足が全体の成長を損なうと分析をしました。格差と貧困を放置して国の発展はないのです。持続可能な成長のためにも、今こそ格差と貧困の解消に政府が本腰を入れて取組を強化することを求めるものであります。
昨年四月の消費税増税以降、国民の暮らしは更に苦しくなっています。内閣府が一月十三日に公表したミニ経済白書では、実質所得の減少で、二〇一四年四月から九月にかけて日本経済を支える個人消費が一兆円程度押し下げられたことを認めています。同白書は、消費税率引上げによる物価の上昇は将来にわたって個人消費を抑制するとも述べています。
そして、消費税増税は中小企業の営業にも深刻な影響を及ぼしています。日本商工会議所が昨年十月に公表した実態調査では、消費税の増税分を全て価格に転嫁できていると答えた企業は六割にとどまりました。また、消費税が今後一〇%になった場合、全額転嫁できると答えた業者はたった四割にすぎません。今も身銭を切って消費税を納めているのが中小零細企業なのです。
地方経済の再生のためにも、消費税の増税は先送りではなく、きっぱり中止することを日本共産党は求めるものであります。
本補正予算に反対する第二の理由、それは二千百十億円もの軍事費の増強を含んでいるからです。
中には、沖縄の米軍海兵隊のグアム移転費用や、ジブチにおける自衛隊海外基地の恒久化を進めるための活動費まで入っており、来年度予算案と合わせると五兆円を超え、大軍拡に道を開く予算であります。
また、本案には、辺野古新基地建設に係る護岸工事費、安全対策費が含まれ、認めるわけにはいきません。
沖縄は、昨年の県知事選挙での翁長新知事の勝利、続く総選挙でのオール沖縄候補の完勝で、新基地建設にノーの民意が明確に示されています。ところが、総理は、選挙の結果を真摯に受け止めると言いながら、辺野古新基地建設を進め、抗議する市民に対しては過剰な警備を続けています。
総理は、昨年九月二十九日に行われた所信表明演説において、沖縄の方々の気持ちに寄り添うと述べました。その言葉に偽りがないなら、沖縄の方々の気持ちを踏みにじる辺野古新基地建設は今すぐ中止するべきです。
第三に、原発再稼働を前提とした過酷事故対応等に九十億円を計上していることであります。
東京電力福島原発事故から今年で四年。いまだに十二万人もの避難者が故郷に帰れず暮らしています。汚染水対策は行き詰まり、一度事故が起こればコントロールできず、故郷もなりわいも失い、家族とも引き離されるのが原発です。人類と共存はできない、これがあの事故の重大な教訓です。国民の多数が反対する原発再稼働は絶対にすべきではありません。
以上、大企業や富裕層には能力に応じた負担を求めて、消費税に頼らない別の道を進むこと、軍備拡大路線をやめること、格差と貧困をなくすためにも、所得の再分配機能を強化し、国民の命と暮らしが第一の政治へ転換することを求めて、補正予算案に反対する反対討論を終わります。(拍手)
○議長(山崎正昭君) これにて討論は終局いたしました。