建物に省エネ対策を 大開発規制緩和改めよ
2015年06月30日
以下、しんぶん「赤旗」より転載します。
2015年7月2日(木)
建物に省エネ対策を
辰巳氏 大開発規制緩和改めよ
日本共産党の辰巳孝太郎議員は6月30日の参院国土交通委員会で、建築物の省エネルギー対策について質問し、建物の断熱性能の向上を求め、大規模開発優先の規制緩和政策にメスを入れるべきだと主張しました。
建築物のエネルギー消費を長期間抑えるには、断熱性能の向上が重要です。日本では個別機器の省エネ性能は向上する一方で、建物の断熱対策は諸外国と比べて劣ると指摘されています。
辰巳氏は、壁などの外断熱の効果が高いことは政府の省エネ基準にも反映されているとした上で、外断熱を含めた建物全体の省エネ対策を進めることを主張しました。
太田昭宏国土交通相は「(省エネ対策として)外断熱はますます有効である」と答えました。
辰巳氏は、建築物部門だけエネルギー消費が増えている原因は、容積率の規制緩和でビルの高層化が容易になりオフィスの大型化に拍車をかけ、大手不動産・開発会社などがすすめる大規模再開発事業への支援を強めてきたからだと指摘。「大都市の国際競争力強化」を口実とした東京圏への公共投資の集中や、大規模再開発推進の規制緩和政策を改めるよう求めました。
以下、会議録を掲載。
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
今法案は、現行のエネルギーの使用の合理化等に関する法律から建築部門を抜き出して、建築物の省エネ基準への適合の義務化へ踏み出すものでございます。
今回の法改正が、二千平米以上の非住宅建築物を新築や改修する際の省エネ基準への適合を現行の届出義務から適合義務に強化をする、建築基準法に基づく建築確認の手続に連動させて実効性を担保するという規制措置を盛り込んだことは、第一歩として評価できると思っております。
今日は、住宅、建築物の省エネ対策のその手法の問題について問うていきたいと思います。
今回の法案の内容の一つにもありますこの誘導措置ですね、容積率の特例というのは、省エネ性能向上のための設備について通常の床面積を超える部分を不算入とするものでありまして、これ自体を否定するものではありません。ただ、日本の住宅、建築物の省エネ対策というのは、設備の中でも個別機器の誘導に偏っているのではないかという問題意識を持っておりまして、私は、その断熱性能を高めて建物全体の省エネ効果を高める政策というのがなかなか進んでいないんじゃないかというふうに思っております。
まず、エネ庁に聞きたいと思うんですけれども、住宅・建築部門のエネルギー消費を抑えるためには何が必要なんでしょうか。
○政府参考人(木村陽一君) お尋ねの住宅、建築物のエネルギー消費を抑える手法でございますけれども、一つは、やはり住宅、建築物の断熱性能向上による熱損失の防止に加えまして、もう一つが、住宅、建築物に導入するエネルギー消費機器の効率改善、その二点が併せて必要であろうというふうに考えてございます。
当省でも、断熱性能向上による熱損失の防止につきましては、サッシやガラスあるいは断熱材といった建築材料につきましてトップランナー制度を施行してございます。また、高断熱住宅としては、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの導入支援というのも行っているところでございます。併せまして、エネルギー消費機器の効率改善、これも重要でございますけれども、空調設備でございますとか冷蔵庫といったそういうエネルギー消費機器について、これもそのトップランナー制度を活用しながら機器の高効率化の促進を図る。双方がそれぞれ重要かなということでございます。
○辰巳孝太郎君 熱損失、これを防ぐために断熱効果、進めていく必要があるということだと思うんですね。
経産省の審議会である総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会の第十四回会合が六月の十五日にも開かれておりまして、ここでも、我が国では個別機器の省エネルギー性能は向上している一方で、建物外皮の省エネ対策は諸外国と比べて劣っていると、住宅・建築物対策は直ちに実施するべきだという意見が出されているんですね。
外国と比べて劣っているという指摘もあるとおり、今は機器は十分進んでいると、しかしその断熱性確保の重要性が大事だと、重要だということだと思うんですね。エネルギー効率のいい省エネ機器、また、今政府が進めている、先ほどありましたネット・ゼロ・エネルギー住宅とかネット・ゼロ・エネルギー・ビルなどは、エネルギー消費に見合うエネルギーを消費すればこれはゼロになるからいいという話なんですけれども、そもそも、エネルギーを消費しない、つまり、脱エネルギーという発想、この省エネ発想というのが大事ではないかというふうに思います。
この断熱の仕方なんですけれども、内断熱と外断熱というのがあると、日本では内断熱がより普及しているということだと思うんですが、国交省に確認したいと思うんですが、この外断熱と内断熱、どちらが断熱効果は高いというふうに認識をされているんでしょうか。
それと、長寿命化の話も。
○政府参考人(橋本公博君) 外断熱工法につきましては、躯体の屋外側に断熱材を措置するために室内温度が躯体の影響を直接受けやすいことから、躯体の熱容量が大きいRC造の場合、いわゆるコンクリート造の場合は、暖冷房時の開始時に短時間に効果が現れにくい反面、暖冷房を切った後も効果が継続しやすいという特徴があります。内断熱は逆でございます。
しかしながら、外断熱工法につきましては、躯体の屋外側に断熱材を措置することから、一般的に熱橋、いわゆるヒートブリッジが生じにくいという点を考えますと、外断熱の方が断熱性能を確保しやすい工法と言えると思います。
それから、長寿命化の話で申し上げますと、外断熱工法については、躯体の外側に断熱材がありますので、躯体が外気に触れないということから考えると、劣化も遅くなるということで、外断熱工法の方が長寿命化にも資するものと考えております。
○辰巳孝太郎君 政府もその有効性というのは認めている、長寿命化にも資するということだと思うんですね。
国交省にちょっと確認しますけれども、今官庁施設でこの外断熱工法を用いている官庁施設、建設された例というのは何件ぐらいあるんですか。
○政府参考人(川元茂君) お答え申し上げます。
官庁施設で外断熱工法を採用した件数は、過去十年間に完成した新築の事務庁舎において十八施設でございます。
以上でございます。
○辰巳孝太郎君 政府自身、そういう官庁施設の一部に外断熱工法を用いているということだと思うんですね。
ここで大臣にお聞きをしたいと思うんですけれども、今機器重視というところから断熱も大事だよという話をさせていただいたんですけれども、やはり今この外断熱を含めた建物全体の省エネ対策を進めるためにも、やはりこれを進める施策を積極的に進める必要があると思うんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君) 御指摘のとおり、外断熱工法は躯体の外側に断熱材を措置するようしますものですから、躯体を通じて熱が外に逃げにくい構造となっておりまして、断熱性能を確保しやすい工法です。
現実に、これずっと進めて、私も関わってきたんですが、なかなか、ちょっと値段が高いということもあったりして、うまく進められてこなかった点があるんですが、私、その建物行ったりしますと、非常に穏やかで健康に良くて、ヒートショック等もなくて、そして長寿命化という話ありましたが、結露がもう全く出ないということ、これ大きな要素だと思います。
二十五年に建築物全体の一次エネルギー消費量を評価する基準を導入しまして、様々な新しい技術や我が国で普及していない工法などについても適切に評価をできるようになりました。これを踏まえまして、外断熱工法などの採用による断熱性能の向上も含めて、今後様々な省エネ対策が進むことが期待をされていると思いますが、これまでも、先導的な技術開発や普及に対する補助、あるいは断熱改修等による省エネ性能の向上が図れる事業に対する補助、これらを行って外断熱改修の新工法なども進めてきているところです。
今後とも、外断熱工法などを採用した省エネルギー性能の優れた建築物の普及というものは、ますます私有効だと思っておりまして、進めていきたいと思っています。
○辰巳孝太郎君 積極的に是非進めていただきたいと思います。
それで、私、もう一つ問題意識持っているのは、この設備に対する支援と、断熱性を高めていくということで、本当にそれだけでいいのかということなんですね。根本的な建築物の省エネが実現できるのか。
今回の法改正を見てみますと、その対象となる建築物は既に九〇%以上がもう基準を達成しております。ですから、これ省エネできる量というのは僅かということだと思うんですね。抜本的にエネルギー消費量を減らすためには、建築部門だけエネルギー消費量が増えている原因にメスを入れていく必要があると思うんですね。
国交省に再度確認したいと思うんですが、なぜ運輸部門などと比べてこの建築部門のエネルギー消費量だけが増加してきたんでしょうか。その原因は何でしょうか。
○政府参考人(橋本公博君) 建築物部門におけるエネルギー消費量は、一九七三年比で約二・五倍となっております。これは、まず住宅以外につきましては、床面積が増加をしていること、それから、例えば二十四時間営業等の営業時間が長くなっていることなどがエネルギー消費量増加の原因と考えられます。住宅につきましては、世帯数が増加をしていること、それからエアコンなどの設備機器の世帯当たりの保有台数が増加をしていることがエネルギー消費量増加の原因と考えられます。
なお、非住宅、住宅以外の床面積が増加した要因についてでございますが、これは二〇一二年度におけるオフィスビルあるいは商業施設などの住宅以外の床面積の総量が一九七三年度比で約二・七倍に増加をしております。これに対して、GDP、国内総生産は同じ期間に二・四倍になっておりまして、ここは高い相関関係があることから、いわゆる国全体の経済活動の規模が拡大するに伴って住宅以外の建築物の床面積が増大をしてきたというふうに考えております。
○辰巳孝太郎君 経済規模が大きくなったということももちろんあると思うんですね。ただ、私が指摘したいのは、その非住宅、つまりオフィスの大型化、床面積が広がったという理由の一つは、やはり容積率の規制緩和というのでどんどんビルも高層化できるようになってきたということ、これが一つ拍車掛けている面もあるんじゃないかということなんですね。そのほか、いろいろREITで不動産証券化とか、PFIなどで民間資金活用等のやり方で大手不動産都市開発会社、ディベロッパーが進めるいわゆる大規模開発事業というのを誘導してきていると、支援してきたと。私はここにメス入れる必要があるんじゃないかというふうにも思うんですね。
これからオリンピックを見据えた東京の再開発ということが言われております。また、リニアを見越して、東京、品川、名古屋、大阪などでは駅前開発ということも中間駅も含めて言われております。世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくりということを言って、いわゆる国際競争拠点都市へと、超高層マンションまた複合ビルなどが乱立をするようになる東京大改造ということも言われているわけであります。そういうことをやっていきますと、どんどんオフィスの面積が広がっていくということにもなりますし、都市化ということでいえば、ヒートアイランド現象ということも付随してきて、更にエネルギー消費量が増えるということにもなると思うんですね。さらに、スーパーメガリージョンということで三大都市圏ということになってきますと、更に東京一極集中を進めてしまう可能性もあるということを指摘したいと思っております。
ですから、建築物のエネルギー消費量の増加の原因にやっぱりメスを入れて、省エネを進めるためにも、いわゆる国際競争力の強化を口実とした東京圏などへの公共投資の集中、大型開発プロジェクト推進の規制緩和を改めるべきだということを言って、私の質問を終わります。
ありがとうございました。