ODA大綱見直しについて参考人質疑
4日、ODA特別委員会で参考人質疑にたちました。
以下議事録を掲載します。
議事録を読む
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
薬師寺先生、長先生、貴重な御意見ありがとうございました。
私は、二〇〇一年に、当時コソボ紛争というのがあったときに、コソボで暮らす高校生十人を日本に招聘するプロジェクトを行いまして、生まれてからほとんど平和というのを知らない人たちだったので、平和というのがどんなものかということをいろいろ日本を回って、そういう活動をしておりました。
彼らは、大阪という地名は知らないんですけれども、広島という地名を知っているわけなんですね。それはなぜかというと、やはり原爆を落とされた都市だということで、日本のイメージというのを彼らなりに持っておりまして、つまり、戦後、原爆を落とされたああいうところから復興した町だと、自分たちも日本のように復興したいというふうに言って帰っていったわけなんですね。
ただ、私が一つ驚いたのは、その二〇〇一年の九月の十一日にちょうど彼らが滞在していたわけなんですが、九・一一のあのアメリカの映像を一緒に見たわけなんですが、しかし、彼らはそれに対して、アメリカは当然の報いじゃないかという見方をしていたことに非常に驚いたんですね。ですから、そこでも、やはりNATOなどの空爆の影響ということで憎しみの連鎖などが彼らの心の中にもあったんじゃないかなというふうに思っております。
そこでなんですが、やはり今回の大綱の中で、軍事協力に傾斜するんじゃないかという懸念が先ほどから委員の中からもいろいろありましたし、実際にそれがどのように軍事協力へ転化されていくのかという追跡も本当にできるのかというような懸念も出されていると思います。
そこで、長参考人にお聞きしたいんですけれども、やはりそういう、いわゆる軍事とは切り離したNGOであるとかODAの活動というのを日本はやってきたわけで、やはり日本なりのその面での強みというのが、他国とは違うODA、NGOの活動ですね、強みというのが恐らくあるんじゃないかなというふうに思うんですが、その辺を是非、長参考人の経験とかというところからお話しいただければと思います。
○参考人(長有紀枝君) 御質問ありがとうございます。辰巳先生、お答え申し上げます。
先ほどコソボのお話がありましたが、私自身、コソボ、特にNATOの空爆のときに、あのとき私もベオグラードにいてトマホークのミサイルが飛んでいくのを下から見ました。そういうときに、私たち日本のNGOが現場でどのように捉えられていたかといいますと、あのときNATOに参加していない国、当時、あの旧ユーゴスラビアという国に支援をしている国の大半がNATO加盟国でありましたので、そこに加盟していない日本の支援というのが軍事的にも政治的にも宗教的にもあらゆる意味で中立というふうに見られておりまして、私たちは日の丸を掲げて活動しておりました。日の丸が安全や安心や中立の象徴であったわけでございます。
ですが、先生御心配のような軍事協力に傾斜していくと、その日の丸、私たちが安全や安心や中立、まさに日本ブランドだったと思うのですが、それがブランドとして通じなくなってしまうということに非常な懸念を持っております。
日本といいますのは、やはりこういった国際協力をする国々大半、今新興国が出てきておりますけれども、やはり伝統的には欧米、キリスト教の国々が中心で、そういった中で日本という国が持つ役割というのは非常に大きいと思いますし、私たちはその良さを消してはいけないというふうに強く思っております。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
二つ目は、お二人にお聞きしたいんですけれども、今回の新大綱で発展途上国への民間資金の流入が公的資金を大きくしのいでいるということがあります。
いわゆる民間資金が増えているということで、様々、ウイン・ウインの関係をつくっていくことが必要であるとか、国際益というものが国益につながっていくんではないかという議論がされていると思うんですが、ただ、民間の資金というのが本当に開発のために資するように使われているということがほとんどだと思いますが、しかし同時に、開発をされていくということは負の側面、例えば逆に格差を広げてしまう場合があるじゃないかとか、あとは富が公平に分配されているのかどうかとか、その辺をやはり検証していく必要があるんじゃないかなというふうにも同時に私思っているんですけれども、このことについてお二人の御意見をお伺いできればと思います。
○参考人(薬師寺泰蔵君) 先生、やはり今実際に民間資金がその二倍から三倍ぐらいに回っていると。そのためではないとは思うんですけれども、やっぱり国連の議論も、我々の議論も、そのためにインクルーシブに、疎外されている人たちがいると、それが我々の言う卒業国に対する非常にコミットメントということだというふうに思います。ですから、いわゆるパラオとかいろいろな島、フィリピンの洪水なんか御覧になったように、中にやっぱり富の格差が物すごくある。だから、我々は包摂性と言っているわけですよ、包摂性。それを担保しない限りいわゆる物もやっぱりきちんと行かない、それはODAできちんとやっていこうというのが我々の新しい大綱の考え方です。
○参考人(長有紀枝君) 辰巳先生、お答えいたします。
先生御指摘の開発の負の側面、格差、本当におっしゃるとおりでございまして、私たちも非常に意識しているのですが、先ほど、人間の安全保障の視点というのを常に持つことがこういったものの是正というのにつながるのではないかと思います。言うはやすし行うは難しでなかなか実践は難しいのですが、でも少なくともそういう視点を持つことが大事ではないかと思っています。
それから、民間資金につきましては、様々な民間企業が今途上国で活動しておりまして、本当に社会企業的な事業ですとか、フェアトレードですとか、そういう企業を私たち自身がどんどん応援していくことも重要ではないかというふうに考えております。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
最後に長参考人にお聞きしたいんですが、ODAの中でNGOによる支援が大体一%ぐらいしかないので不十分じゃないかというお話がありましたが、仮にこれが倍、三倍に増えた場合、NGOへの支援が、どのような変化、どのような活動の幅が広がっていくだろうかとお考えでしょうか。是非、思いのたけを語っていただければと思います。
○参考人(長有紀枝君) うれしい御質問をありがとうございます。
まず、NGOで働く方々の職員数が増えると思います。その職員というのは、そもそも国際協力に関心がある方たちだけではなくて、協力隊経験者はもちろんのこと、一般の企業にいる方たち、そういった方たちの人材がより多くNGOに来ることになり、できる事業がより広がっていくと思います。
また、今ニーズはありつつも本当に資金不足から手が届かないような、薬師寺先生が忘れられた飢饉のことも先ほど言及されましたが、そういったところにもより良く入れるようになるのではないかと思います。
ありがとうございます。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
以上です。
薬師寺先生、長先生、貴重な御意見ありがとうございました。
私は、二〇〇一年に、当時コソボ紛争というのがあったときに、コソボで暮らす高校生十人を日本に招聘するプロジェクトを行いまして、生まれてからほとんど平和というのを知らない人たちだったので、平和というのがどんなものかということをいろいろ日本を回って、そういう活動をしておりました。
彼らは、大阪という地名は知らないんですけれども、広島という地名を知っているわけなんですね。それはなぜかというと、やはり原爆を落とされた都市だということで、日本のイメージというのを彼らなりに持っておりまして、つまり、戦後、原爆を落とされたああいうところから復興した町だと、自分たちも日本のように復興したいというふうに言って帰っていったわけなんですね。
ただ、私が一つ驚いたのは、その二〇〇一年の九月の十一日にちょうど彼らが滞在していたわけなんですが、九・一一のあのアメリカの映像を一緒に見たわけなんですが、しかし、彼らはそれに対して、アメリカは当然の報いじゃないかという見方をしていたことに非常に驚いたんですね。ですから、そこでも、やはりNATOなどの空爆の影響ということで憎しみの連鎖などが彼らの心の中にもあったんじゃないかなというふうに思っております。
そこでなんですが、やはり今回の大綱の中で、軍事協力に傾斜するんじゃないかという懸念が先ほどから委員の中からもいろいろありましたし、実際にそれがどのように軍事協力へ転化されていくのかという追跡も本当にできるのかというような懸念も出されていると思います。
そこで、長参考人にお聞きしたいんですけれども、やはりそういう、いわゆる軍事とは切り離したNGOであるとかODAの活動というのを日本はやってきたわけで、やはり日本なりのその面での強みというのが、他国とは違うODA、NGOの活動ですね、強みというのが恐らくあるんじゃないかなというふうに思うんですが、その辺を是非、長参考人の経験とかというところからお話しいただければと思います。
○参考人(長有紀枝君) 御質問ありがとうございます。辰巳先生、お答え申し上げます。
先ほどコソボのお話がありましたが、私自身、コソボ、特にNATOの空爆のときに、あのとき私もベオグラードにいてトマホークのミサイルが飛んでいくのを下から見ました。そういうときに、私たち日本のNGOが現場でどのように捉えられていたかといいますと、あのときNATOに参加していない国、当時、あの旧ユーゴスラビアという国に支援をしている国の大半がNATO加盟国でありましたので、そこに加盟していない日本の支援というのが軍事的にも政治的にも宗教的にもあらゆる意味で中立というふうに見られておりまして、私たちは日の丸を掲げて活動しておりました。日の丸が安全や安心や中立の象徴であったわけでございます。
ですが、先生御心配のような軍事協力に傾斜していくと、その日の丸、私たちが安全や安心や中立、まさに日本ブランドだったと思うのですが、それがブランドとして通じなくなってしまうということに非常な懸念を持っております。
日本といいますのは、やはりこういった国際協力をする国々大半、今新興国が出てきておりますけれども、やはり伝統的には欧米、キリスト教の国々が中心で、そういった中で日本という国が持つ役割というのは非常に大きいと思いますし、私たちはその良さを消してはいけないというふうに強く思っております。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
二つ目は、お二人にお聞きしたいんですけれども、今回の新大綱で発展途上国への民間資金の流入が公的資金を大きくしのいでいるということがあります。
いわゆる民間資金が増えているということで、様々、ウイン・ウインの関係をつくっていくことが必要であるとか、国際益というものが国益につながっていくんではないかという議論がされていると思うんですが、ただ、民間の資金というのが本当に開発のために資するように使われているということがほとんどだと思いますが、しかし同時に、開発をされていくということは負の側面、例えば逆に格差を広げてしまう場合があるじゃないかとか、あとは富が公平に分配されているのかどうかとか、その辺をやはり検証していく必要があるんじゃないかなというふうにも同時に私思っているんですけれども、このことについてお二人の御意見をお伺いできればと思います。
○参考人(薬師寺泰蔵君) 先生、やはり今実際に民間資金がその二倍から三倍ぐらいに回っていると。そのためではないとは思うんですけれども、やっぱり国連の議論も、我々の議論も、そのためにインクルーシブに、疎外されている人たちがいると、それが我々の言う卒業国に対する非常にコミットメントということだというふうに思います。ですから、いわゆるパラオとかいろいろな島、フィリピンの洪水なんか御覧になったように、中にやっぱり富の格差が物すごくある。だから、我々は包摂性と言っているわけですよ、包摂性。それを担保しない限りいわゆる物もやっぱりきちんと行かない、それはODAできちんとやっていこうというのが我々の新しい大綱の考え方です。
○参考人(長有紀枝君) 辰巳先生、お答えいたします。
先生御指摘の開発の負の側面、格差、本当におっしゃるとおりでございまして、私たちも非常に意識しているのですが、先ほど、人間の安全保障の視点というのを常に持つことがこういったものの是正というのにつながるのではないかと思います。言うはやすし行うは難しでなかなか実践は難しいのですが、でも少なくともそういう視点を持つことが大事ではないかと思っています。
それから、民間資金につきましては、様々な民間企業が今途上国で活動しておりまして、本当に社会企業的な事業ですとか、フェアトレードですとか、そういう企業を私たち自身がどんどん応援していくことも重要ではないかというふうに考えております。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
最後に長参考人にお聞きしたいんですが、ODAの中でNGOによる支援が大体一%ぐらいしかないので不十分じゃないかというお話がありましたが、仮にこれが倍、三倍に増えた場合、NGOへの支援が、どのような変化、どのような活動の幅が広がっていくだろうかとお考えでしょうか。是非、思いのたけを語っていただければと思います。
○参考人(長有紀枝君) うれしい御質問をありがとうございます。
まず、NGOで働く方々の職員数が増えると思います。その職員というのは、そもそも国際協力に関心がある方たちだけではなくて、協力隊経験者はもちろんのこと、一般の企業にいる方たち、そういった方たちの人材がより多くNGOに来ることになり、できる事業がより広がっていくと思います。
また、今ニーズはありつつも本当に資金不足から手が届かないような、薬師寺先生が忘れられた飢饉のことも先ほど言及されましたが、そういったところにもより良く入れるようになるのではないかと思います。
ありがとうございます。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
以上です。