TPPと民泊問題で再質問
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豊田俊郎内閣府大臣政務官は22日の参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、民泊を仲介する外国企業に日本で活動する際の国内拠点設置を義務づけることは「TPPに抵触する可能性がある」と述べました。日本共産党の辰巳孝太郎議員に対する答弁。TPPが禁止している国内拠点の設置要求について21日の委員会質疑で豊田氏が答弁不能に陥り、22日の回答を約束していたもの。
違法営業などの問題が多発している民泊について、21日の質疑で田中良生国土交通副大臣は、国内拠点を持たない仲介業者の立ち入り検査や罰則の執行は困難と答弁。民泊の法制化を議論していた政府の検討会も当初は規制の実効性を高めるには国内拠点設置要求が必要だと提言していました。要求がTPPに抵触するという政府答弁は、外国仲介業者が法令に違反しても日本の罰則は及ばず、安全や衛生など必要な規制の実効性が担保されないことを示しています。
辰巳氏が、検討会報告から国内拠点設置要求が消えたことをただしたのに対し、岸田文雄外相は、外務省からTPP違反となる可能性が高いことを伝えたと答弁。TPP先取りで規制緩和を働きかけていたことを明らかにしました。
辰巳氏は「民泊以外でも同様の問題は起こり得る」と強調。安全や衛生、消費者保護に逆行するTPPは批准すべきでないと訴えました。
2016年11月23日付「しんぶん赤旗」より引用
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
まず、本日五時五十九分に福島県沖での地震がありました。津波も起きているということでございます。また、避難をされている方もおられるということでございますので、けがをされた方含めて心からのお見舞いを申し上げたいと思います。
それでは、昨日の続きをまず豊田政務官からお聞きしていきたいと思います。
この民泊新法において、仮に外国法人に対して事務所の国内設置を要求した場合、TPPの協定違反になるのではないか。現地拠点設置要求の禁止に抵触するから、中間整理では要求をしていたものが、これが第二期の中間整理では取り除かれたのではないか。このことについてお答えいただきたい。
○大臣政務官(豊田俊郎君) お答えを申し上げます。
仮に、IT室において、第一期中間整理にあるように、民泊を仲介する海外事業者に対して事業所の国内設置を求める措置について法案を作成し、当該措置が法制化された場合には、当該措置はTPPに抵触する可能性もあるものと考えております。
○辰巳孝太郎君 これをはっきり認めていただいたわけですね。つまり、国民の安全や衛生を守るために必要だと言われているこの規制がTPPではできないということをお認めになったわけであります。
では続けて、外務大臣にお聞きしたいと思います。
外務省はIT戦略室に対して、この第一期の中間整理の事務所要求、これはTPPに抵触するので第一期中間整理から事務所の設置の削除を求めたということだったと私は政府から聞いておりますけれども、これでよろしいでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 確認しましたところ、本年二月、外務省と内閣官房IT総合戦略室の担当者の間で打合せを行い、当省からは、民泊仲介事業者は旅行業サービスを行っているとの認識の下、同事業者に対して現地拠点の設置を要求することはGATSその他締結済みのEPAに違反する可能性が高い旨指摘をし、またTPP協定違反ともなる可能性が高い旨付言したということであります。
外務省としましては、この民泊仲介事業者に対する現地拠点の設置要求の禁止は、TPP協定固有の問題ではなく、GATSや我が国がこれまで締結してきたEPA等とも関連する問題であると認識をしております。
○辰巳孝太郎君 今GATS、EPAという話がありましたけれども、当初それらが結ばれたときというのは、こういう新しい仲介業者というのが旅行業者なのか何なのか、これは分からなかったわけですね。この業者そのものがなかったわけであります。旅行業であるという認識の下、抵触する可能性があるということをおっしゃいましたけれども、今でも政府は、このエアビーアンドビーなどの業種が旅行業なのかどうか、これはっきりさせていないわけなんですね。いないんですよ。
ですから、これ、TPPというのはポジティブリストではなくてネガティブリストですから、旅行業かどうか分からない、そういう業種に関しては、仮に、事務所の設置を要求したいのでこれは留保しますとやろうとしても、これ、どの業種か分からないからできないということになるんですよ。国際的な一致をまだ見ていないし、日本政府もこれは旅行業かどうかというのは分からないということなんですね。
ですから、安全規制を実効性のあるものにするためにも、政府として、TPPの協議の過程においてこの仲介業者をどう位置付けるのか、このような業界、業種に対して拠点設置要求を禁止してしまうのはまずいのではないか、TPPに署名する前にそういう議論をしなきゃならないんですよ。それをしていないからおかしいと言っているんですよ。
石原大臣、最後に聞きますけれども、罰則に外国法人と日本国内の法人に違いがある。これはイコールフッティングではないということだと思いますが、これはどうですか。
○国務大臣(石原伸晃君) 辰巳委員が御指摘されましたとおり、現在、昨日も御答弁をさせていただきましたが、観光庁並びに厚労省において、立入検査や今委員の御指摘の罰則を科すか科さないかを含めて、具体的な制度設計の最中であると認識をしているところでございます。
これももう既に昨日の答弁で明らかになったとおり、我が国に拠点を持たない事業者に立入検査や罰則を科すことは、やはり通常極めて困難であると私も考えております。制度設計を行う場合には、そのことも踏まえた、委員御指摘の内外事業者のバランスを含めた総合的な検討がなされるものだと承知をしております。
具体的な制度設計については、現時点ではまだお答えするほどの情報を持ち得ておりません。
○辰巳孝太郎君 ですから、イコールフッティングではないということですね。
今後も、民泊以外でも同様の問題は起こり得ると思います。安全や衛生、消費者保護のために新たな事業者規制が必要となっても、TPP協定において留保していなければ十分な規制はできません。
多国籍企業利益優先と言わなければならないTPPは絶対に批准すべきではない、このことを申し上げて、私の質問を終わります。